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5 初めての朝
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私は大公が去ったあと温泉入って爆睡して、朝、侍女に起こされるまで全然起きなかった。
「ミレイユ様、おはようございます」
起こしに来たのはメロディではなく、ここの王宮の侍女だった。
紅い瞳に、肩まで伸びた金色の髪……そして、髪の毛の間から生えた、焦げ茶色の三角形の耳……
獣人の女性だ。
目が覚めたら彼女の顔がすぐそこにあったから、私は驚き声を上げてしまった。
「うわぁ!」
お姫様らしくない悲鳴に、彼女は首を傾げて不思議そうな顔をする。
「まあ、起きたなら良かったです。おはようございます。朝から昼間まで、ミレイユ様のお世話を担当いたします、レーナ=ペトリスです。レーナとお呼び頂いて構いませんので」
言いながら、彼女は私の掛け布団を剥ぎ取った。
頭には白い三角巾をして、紺色のワンピースに白いエプロンをつけている。昨日、私がここに着いたときには見かけなかった人だ。
私は起き上がり、
「お、おはようございます」
と、慌てて頭を下げた。
レーナさんははぎ取った布団を畳み、
「大公様とお食事となりますので、準備が整い次第、食堂へとご案内いたします」
そう言って頭を下げたレーナさんは、顔を洗うための桶を用意してくれた。
紺色のワンピースに着替え、髪を整えたあと私はレーナさんに伴われて食堂へと向かう。
誰かと一緒に朝食を食べるのなんて、超久しぶりなんだけど。
ギュスターヴ王とご飯食べたこと、殆どないし。
案内された食堂は、昨日晩餐会があった広間に比べたらだいぶシンプルな部屋だった。
壁には絵画が一枚掛けられていて、棚に花が生けられている。
派手な装飾がない大人しめな部屋の中央にひとつ長いテーブルがあり、両端に黒い紺色の布地が張られた椅子が置かれている。
うーん、緊張するなあ。
ちゃんとご飯食べられるかな……
出されたものは全部食べろ。
王宮に連れてこられてからそう教えられた。
礼儀作法の先生ほんと、怖かったなあ……
ボロがでなければいいんだけど……
でも私の生い立ち、大公は知ってるのかな。
ギュスターヴ王がなぜ私をここに嫁入りさせることにしたのか全然わかんないんだよなあ。
最後、お別れもしなかったし。
……結婚式、来るのかな?
……来てほしいようなどうでもいいような。
私の気持ちは複雑だ。
もうちょっと話すようにしたら良かったなー、ギュスターヴ王と。まあ、今更だけど。
椅子に腰掛けてすぐ、大公が入ってくる。
長テーブルの端と端。
向かい合うとか緊張するなあ。
大公の姿を見て、私は立ち上がり、
「おはようございます、ノエル大公」
と告げ、頭を下げる。
紺のスーツを着た彼はにこっと微笑み、
「おはようございます、ミレイユ殿下。私のことは、ノエルでいいですよ」
と言い、椅子に座った。
それを見て私も椅子に戻り、
「では、私のこともミレイユとお呼びください」
と答える。
正直、殿下、と呼ばれるの苦手なのよ。
いや、合ってるんだけどさ、様付け呼ばれるのも苦手なのに殿下、なんて呼ばれるとむず痒くて仕方ない。
ノエル大公……じゃなくって、ノエル……さんは、一瞬戸惑った顔をしたあと、
「ミレイユ……さん」
と言い、顔を伏せてしまう。
……なんですかこの反応。
恥ずかしいの……?
んな馬鹿な。
……そういえば、大公って何歳だ。
年齢とか全然聞いてないや。
私より年上なのは確かだろうけど……それなら今時、女性と交際位あるでしょ?
私はいい感じの相手はいたけど、そうなる前に王宮に連れて行かれちゃったからなあ……付き合ったことは一度もない。
昨日もだけど、一定の距離以上近づいて来ようとしないよね?
なんでだろ?
不思議に思っていると、食事が運ばれてくる。
「えーと、式は一か月後に行われますので、それまでに必要な準備については侍女から説明がありますから……今日は、ゆっくりお過ごしください」
そういえば昨日の夜、そんなこと言ってましたね。
……結婚式って何やるのか全然わかってないけど、練習とかあるのかな?
ドレスとか選べるのかなあ。考えるだけで楽しくなってくる。
……でも、私、ノエルさんの事、よく知らないんだよな……
今は部屋、別々だけど……そのうち一緒の部屋で寝たりするのかなあ。
普通がわからないから想像もつかないや。
後で聞いてみよう。
「はい、わかりました」
微笑み答えると、ノエルさんは顔を上げて微笑み返してくる。
……目を、合わせないわけじゃないんだよねえ……
でも、さっきあからさまに視線、そらされたよねぇ……なんなんだろ?
不思議に思いつつ、私は用意された朝食に目を向けた。
丸いパンに、生ハム、サラダ、果物。それに、お茶……かな?
見知らぬ野菜とかあったけど残さず食べて、私は自室へと戻った。
しばらくしたら、獣人の侍女……レーナさんが色々と説明してくれるって言うから聞きたいこときいてみよ。
「ミレイユ様、おはようございます」
起こしに来たのはメロディではなく、ここの王宮の侍女だった。
紅い瞳に、肩まで伸びた金色の髪……そして、髪の毛の間から生えた、焦げ茶色の三角形の耳……
獣人の女性だ。
目が覚めたら彼女の顔がすぐそこにあったから、私は驚き声を上げてしまった。
「うわぁ!」
お姫様らしくない悲鳴に、彼女は首を傾げて不思議そうな顔をする。
「まあ、起きたなら良かったです。おはようございます。朝から昼間まで、ミレイユ様のお世話を担当いたします、レーナ=ペトリスです。レーナとお呼び頂いて構いませんので」
言いながら、彼女は私の掛け布団を剥ぎ取った。
頭には白い三角巾をして、紺色のワンピースに白いエプロンをつけている。昨日、私がここに着いたときには見かけなかった人だ。
私は起き上がり、
「お、おはようございます」
と、慌てて頭を下げた。
レーナさんははぎ取った布団を畳み、
「大公様とお食事となりますので、準備が整い次第、食堂へとご案内いたします」
そう言って頭を下げたレーナさんは、顔を洗うための桶を用意してくれた。
紺色のワンピースに着替え、髪を整えたあと私はレーナさんに伴われて食堂へと向かう。
誰かと一緒に朝食を食べるのなんて、超久しぶりなんだけど。
ギュスターヴ王とご飯食べたこと、殆どないし。
案内された食堂は、昨日晩餐会があった広間に比べたらだいぶシンプルな部屋だった。
壁には絵画が一枚掛けられていて、棚に花が生けられている。
派手な装飾がない大人しめな部屋の中央にひとつ長いテーブルがあり、両端に黒い紺色の布地が張られた椅子が置かれている。
うーん、緊張するなあ。
ちゃんとご飯食べられるかな……
出されたものは全部食べろ。
王宮に連れてこられてからそう教えられた。
礼儀作法の先生ほんと、怖かったなあ……
ボロがでなければいいんだけど……
でも私の生い立ち、大公は知ってるのかな。
ギュスターヴ王がなぜ私をここに嫁入りさせることにしたのか全然わかんないんだよなあ。
最後、お別れもしなかったし。
……結婚式、来るのかな?
……来てほしいようなどうでもいいような。
私の気持ちは複雑だ。
もうちょっと話すようにしたら良かったなー、ギュスターヴ王と。まあ、今更だけど。
椅子に腰掛けてすぐ、大公が入ってくる。
長テーブルの端と端。
向かい合うとか緊張するなあ。
大公の姿を見て、私は立ち上がり、
「おはようございます、ノエル大公」
と告げ、頭を下げる。
紺のスーツを着た彼はにこっと微笑み、
「おはようございます、ミレイユ殿下。私のことは、ノエルでいいですよ」
と言い、椅子に座った。
それを見て私も椅子に戻り、
「では、私のこともミレイユとお呼びください」
と答える。
正直、殿下、と呼ばれるの苦手なのよ。
いや、合ってるんだけどさ、様付け呼ばれるのも苦手なのに殿下、なんて呼ばれるとむず痒くて仕方ない。
ノエル大公……じゃなくって、ノエル……さんは、一瞬戸惑った顔をしたあと、
「ミレイユ……さん」
と言い、顔を伏せてしまう。
……なんですかこの反応。
恥ずかしいの……?
んな馬鹿な。
……そういえば、大公って何歳だ。
年齢とか全然聞いてないや。
私より年上なのは確かだろうけど……それなら今時、女性と交際位あるでしょ?
私はいい感じの相手はいたけど、そうなる前に王宮に連れて行かれちゃったからなあ……付き合ったことは一度もない。
昨日もだけど、一定の距離以上近づいて来ようとしないよね?
なんでだろ?
不思議に思っていると、食事が運ばれてくる。
「えーと、式は一か月後に行われますので、それまでに必要な準備については侍女から説明がありますから……今日は、ゆっくりお過ごしください」
そういえば昨日の夜、そんなこと言ってましたね。
……結婚式って何やるのか全然わかってないけど、練習とかあるのかな?
ドレスとか選べるのかなあ。考えるだけで楽しくなってくる。
……でも、私、ノエルさんの事、よく知らないんだよな……
今は部屋、別々だけど……そのうち一緒の部屋で寝たりするのかなあ。
普通がわからないから想像もつかないや。
後で聞いてみよう。
「はい、わかりました」
微笑み答えると、ノエルさんは顔を上げて微笑み返してくる。
……目を、合わせないわけじゃないんだよねえ……
でも、さっきあからさまに視線、そらされたよねぇ……なんなんだろ?
不思議に思いつつ、私は用意された朝食に目を向けた。
丸いパンに、生ハム、サラダ、果物。それに、お茶……かな?
見知らぬ野菜とかあったけど残さず食べて、私は自室へと戻った。
しばらくしたら、獣人の侍女……レーナさんが色々と説明してくれるって言うから聞きたいこときいてみよ。
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