物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら

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物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら

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 雲一つない空は澄み渡り、心地よい風が頬を撫でていく。

 王都の広場。
 その中央に設けられた処刑台は、ただ静かに今日の主役を待っている。

 近年、ほとんど行われることのない公開処刑は「残酷すぎる」「時代錯誤だ」と批判の声が上がっていたが、いざ当日になると多くの人々が集まった。

 ――歓声、ざわめき、囁き。
 人々の目は公開処刑という娯楽を求め、広場に立ち込める熱気はまるで祭りのようだった。

 “稀代の悪女”
 レイチェル・グリンハーク。
 この国でその名を知らない者はいない。

 かつては公爵家の令嬢。
 そして、俺――王太子メルド・エヴァンジェリンの元婚約者で、次の婚約者に内定している聖女・アリアの異母姉でもある。
 彼女にかけられた罪は、国家機密の漏洩、違法薬物の製造・流通、武器の密輸、複数件の殺人と死体遺棄。
 どれも重罪であり、公爵家の令嬢だからといって逃れられるものではない。

 俺は王太子として、この場の責任者を父王から任された。
 処刑台のそばに設けられた位置から広場を見渡しながら、手の震えを必死で抑える。たとえ“稀代の悪女”であろうと、人の命を奪う責任は重い。まして相手は元婚約者だ。

「大丈夫ですか?」

 斜め後ろにいた護衛騎士のケイが心配そうに声をかけてくる。
 彼は俺の乳兄弟であり、幼馴染でもある。取り繕っている俺の不安にすぐ気づいたのだろう。

「……あぁ、大丈夫だ」

 無理やり笑顔を作って、そう答えた。

 レイチェルとは十三の頃に婚約し、それから必要な交流を重ねてきた。
 ただ、彼女はいつも冷たく、必要最低限の言葉しか返してこなかった。彼女の心からの笑顔を一度も見たことがない。
 それでも、王太子の婚約者としては完璧だった。
 もし証拠や証言がなければ、あんな罪を犯したとはとても信じられなかっただろう。

「お姉さま……」

 隣にいたアリアが、処刑台で拘束されたレイチェルを見つめながらつぶやく。
 平民のメイドを母に持つアリアは幼い頃から、異母姉のレイチェルにいじめられていたらしい。
 聖女に認定された数ヶ月前、命の危機を感じた彼女が勇気を出して訴えたことで、レイチェルの悪事は次々と明るみに出た。

「メルド殿下、最後にお姉様とお別れの挨拶をさせてください」

 涙を浮かべて願い出てくるアリア。その健気な姿に、俺はうなずいた。

「……わかった。拘束されているとはいえ、あまり近づきすぎないように」

「はい、ありがとうございます」

 アリアが処刑台へ向かうその背中に、俺はこっそり追跡魔術の魔道具を起動する。
 この魔道具はいざという時に備えるために、父から持たされたふたつと無い貴重なものだ。

 魔力を持たない俺でも使えるこの魔道具は、小鳥の姿をした透明な使い魔を送り出し、その視界と聴覚を共有できる。
 まるで盗み見ているようで後ろめたいが、相手は“稀代の悪女”。用心に越したことはない。

 アリアがレイチェルの前に立ち、口を開く。

「レイチェルお姉様……」

「アリア、お願い! メルド殿下に伝えて! 私は人殺しなんてしていないの!」

(……この期に及んでまだそんなことを。証拠も証人も揃っているというのに)

「――あぁ、お可哀想なレイチェルお姉様」

(……アリア、優しいな。さすが聖女だ)

「……本当に哀れで、可哀想。ふふっ、その顔が見たかったの」

(……ん?)

 さっきまで天使のようだった笑顔が、ぞっとするほど歪んでいく。

「馬鹿なお姉様。これで公爵家も、メルド殿下も、私のものよ」

「アリア、あなた……まさか……!」

(……えっ!?)

「ふふ、本当に馬鹿ばかりで助かったわ。全部私がやったことなのに。偽の証拠と涙だけで、誰も彼も簡単に信じてくれた。私、昔からお姉様のことが大嫌いだったの。あんたの澄ました顔を見るたびに吐き気がしたわ。私の母が平民のメイドだからって見下しやがって! ただ殺すだけじゃ足りないわ。だから徹底的に地に堕としてから殺すことにしたの。……その絶望した顔、最高だわ」

「そんなことのために人を殺したの?」

「もちろんそれだけじゃないわ。私はメルド殿下と結婚して、王妃になって、この国を手に入れるの。殿下には王位を継がせたあと、都合の良い罪を被せて幽閉する予定。そうすれば、この国は完全に私のものよ。素敵でしょ?」

 俺は血の気が引いていくのを感じながら、呆然と魔道具を握りしめていた。

(うそだろ……本当にアリアが……?)

「どうかされましたか?」

 後ろで見守っていたケイが、異変に気づいて声をかけてくる。

「……どうしよう。アリアが、本当の悪女だった……!」

「……は?」

「今、追跡魔術で聞いてたんだ。レイチェルの罪状……アリアが全部自分の仕業だって告白してた……」

「……はああ!?」

 公の場では決して素を見せないケイまでも、思わず素の声を漏らす。

「しかも王妃になったら俺を幽閉して、この国を乗っ取る気らしい……」

「マジっすか……」

 俺とケイが揃って真っ青になっていると、アリアが処刑台から戻ってきた。

「メルド様、ありがとうございました」

 天使のような笑顔。先ほど見た狂気に歪んだ顔はどこにもない。

(いやいやいや、顔変わりすぎだろ!?怖っ!)

 思わず一歩下がる。

「ケイ!」

「はっ!」

 俺の声に即座に反応したケイが、アリアを取り押さえる。

「な、何なのよっ!?」

 取り押さえるケイを睨みつけるアリア。怒りで歪んだその表情は“天使”とはかけ離れていた。

(……アリアが黒幕。じゃあ、レイチェルは無実ってことか……?)

 混乱して頭を抱えていると、ケイが叫ぶ。

「真の悪女を確保した! この処刑は囮だ! レイチェル嬢を解放せよ!」

 ポカンとしていた騎士たちがようやく動き出す。
 ざわつく群衆の中、処刑台のレイチェルのもとへ駆け寄る一人の男の姿があった。

「レイチェルお嬢様!」

「エリック!」

 それはレイチェルの従者だった。

 エリックは騎士たちを次々に殴り倒し、処刑台の上でレイチェルを力強く抱きしめる。
 うっとりと彼を見上げるレイチェルーーそして二人の情熱的なキス。
 そのまま二人は近くにいた馬に飛び乗り、走り去っていった。

(え……なにそれ……えぇ……)
 情報量が多すぎる……。呆然とする俺の肩をケイが叩く。

「殿下、あとは我ら騎士団が処理しますので、お戻りください」

「……すまない、頼んだ」

 フラフラと馬車へ乗り込み、城へ戻るよう御者に告げた。


 ◆◆◆


 あの公開処刑の日から、一週間が経った。
 真の悪女――アリアは投獄され、現在は取り調べを受けている最中だ。

 そこで明らかになったのが、アリアの協力者の存在。
 それは、この国の宰相を務めるケイシー侯爵だった。どうやらアリアの色仕掛けにまんまと嵌められ、彼女に協力していたらしい。
 しかも、レイチェルの捜査の指揮を執っていたのが、そのケイシー侯爵だったため、偽の証拠に誰も気づけなかったという。他にも、アリアが証人となった複数の者たちと肉体関係にあったことも判明している。

 さらに、アリアに “聖女” の称号を与えていた教会にも、教徒たちから非難の声が上がっていた。
 曰く、アリアの聖女認定は異例の抜擢だったようで、その認定を行った教会のNo.2――神官長とアリアは、愛人関係だったと噂されている。

 儚げで可憐な笑顔の裏にとんでもない本性を隠していたらしい。

「それにしても殿下、性悪女アリアに見事に騙されましたね」

 護衛騎士のケイが、茶を飲む俺の向かいのソファーにドカッと腰を下ろした。護衛とは思えない気安い態度だが、こいつは昔からこんな調子だ。
 無駄に整った顔をしているせいか、かなりモテるが、中身は大雑把で口も悪い。

「殿下も最初は性悪女アリアを警戒してたくせに、すぐ 『俺、あの子のこと好きかもしれない。レイチェルと婚約破棄しようと思う』 なんて言い出しましたもんね」

「うぐっ、やめろ! 人の失敗を蒸し返すな。俺だって最初は怪しいって思ってたんだよ? 姉の婚約者である俺に距離が近すぎたし、でも……でもさ……その……おっぱいが……」

「え?」

「アリアって、話しかけてくるときに俺の腕を掴んでギュッとしてきて、しかも、その……腕におっぱいを当ててくるんだよ! おっぱいだぞ! それって、絶対好意あるって思うじゃん? そんな子に上目遣いで涙なんか見せられたら、守ってあげたくなるだろ!」

「うわ、殿下チョロっ……」

「チョロいって言うな! でもマジで危なかった。無実のレイチェルを処刑するところだった」

 あの時、魔道具を使ってアリアとレイチェルの会話を盗み聞きしていて、本当に良かった。そもそも騙されるなって話なんだけど。

「まぁ、レイチェル様も従者と浮気していたみたいですし、仮に騙されないで婚約を続けていても、いずれ破綻してたんじゃないですか?」

 処刑台での騒動の後、レイチェルはその従者と駆け落ちして隣国へ向かったらしい。
 聞けば、あの従者は行方不明になっていた隣国の王子だったようで、今は二人で隣国の王宮にいるそうだ。
 ……なんで隣国王子が、公爵家で従者なんかやっていたかは謎だが、もう確かめようもない。

「婚約中、レイチェルは俺とアリアの距離が近いって、何度も文句を言ってきてたのに……。自分は従者と愛を育んでたんだな」

(いつも無関心な目を向けていた婚約者が、やっと俺に興味を持ってくれたのかと思っていたけど、まったく見当違いだった訳で……)

「今回の件で調べて分かったんですけど、レイチェル様、殿下の有責で婚約破棄できるように、裏で色々と動いてたみたいですよ。殿下に関する悪い噂――ギャンブル依存症とか、女癖が悪いとか、城下に隠し子がいるとか――全部レイチェル様が流してたそうです」

 思い返せば、婚約中、やけに俺の悪評が多かった。それが全部、レイチェルが流してたっていうんだから驚きだ。
 俺、ギャンブルなんて一度もやったことないし、女遊びの記憶もない。ましてや隠し子なんているわけがない。俺、童貞だよ!

(結局 俺はレイチェルにもアリアにも愛されてなかったんだな)

「なんかさ、女って怖いな。俺もう、結婚できないかも」

「そうですね。殿下、この件の責任を問われて、王位継承権も剥奪されちゃいましたし」

 そう、処刑のときは何とか誤魔化したものの、公爵令嬢である元婚約者を投獄した責任を問われ、王位継承権を剥奪されてしまった。
 次の王は、父の年の離れた弟が継ぐことになり、俺はしばらく離宮に幽閉されることになっている。

「俺なんて、王位継承権がなきゃただのボンクラ王子だし……能力も叔父上に敵わないし。こんな離宮に追いやられて、友人だと思ってた側近たちも誰も来なくなったし……う、なんか泣きそう」

 側近の中で、この離宮までついてきてくれたのは、護衛騎士のケイただ一人だった。

(俺って……本当に人望なかったんだな)

 本当に涙が滲んできたので、それを悟られまいと、俺は立ち上がって窓の外へ目を向けた。
 離宮は城の奥まった場所にあるため、ろくに手入れもされておらず、草が生い茂った荒れた庭が広がっている。

「俺がいますよ」

 そう言って、ケイが背後から俺を抱きしめてきた。

「おう……いつもありがとな」

 そう言って離れようとしても、その腕は強く俺を抱いたまま離そうとしない。

 ……いや、ちょっと、力強すぎない?

「殿下、もう女には懲りましたよね?」

「ま、まぁな」

「じゃあ、俺が立候補しても……いいですよね?」

「え、何に?」

 ギュウギュウと抱きしめてきて、手を離そうとしないケイ。
 ――そしてなにか棒状の硬いものが俺の腰のあたりに当たっている。

「おっぱい当てて落ちるぐらいなら、ちんこ押し付けたら俺のこと好きになってくれますか?」

「はぁ!?」

 自身の硬いものを俺にグリグリと押し付けてくるケイ。

「子供の頃から、ずっと好きでした。チョロくて情に脆くて、同じ年の優秀な王弟殿下に負けたくなくて、徹夜で勉強したのに、テスト当日風邪ひいて寝込んじゃう残念なところも。まったく才能が無いのに女の子にモテたい一心で剣術の稽古を頑張って、無駄な努力をしているところも。字は綺麗なくせに、絵が壊滅的にへたくそなところも、全部好きです」

「なんか貶されてない?」

「女に懲りたんでしょう? じゃあ俺にしませんか?」

「だから、ちんこ擦りつけてくるな! うぉ、力強っ! やめろ! や、やめてください……」

 懇願してもケイはその腕を解いてはくれない。俺、王子なのに……。

 そのまま引きずるように寝室へ連れていかれベッドに押し倒される。

「ケイ、ふざけるのも大概にしろって!」

 ベッドに押し倒されてもがく俺にケイが覆いかぶさる。
 俺の抵抗もむなしく、シャツを剥ぎ取られ、下着も一気に脱がされる。

「殿下、愛しています」

 いつもの軽口を叩くケイとは違い真剣で懇願するような瞳にドキリと胸が跳ねる。
 何も言えないでいる俺に、ケイが優しく口づけを落とし、だんだんと深いものになっていく。
 触れ合う粘膜が気持ちいい。俺の下腹部に熱が集まってくるのが分かる。
 チュッと音を立ててケイの唇が離れ、その唇が首、鎖骨、胸とキスを落としていく。
 ケイの手が脇腹をなぞり、俺のすっかり立ち上がったものをゆっくりと手で扱いていく。

「や、やめっ、んんっ」

 しばらくため込んでいたせいか、あっという間に果てた俺を見ながら、ケイがくすりと笑う。

 その手は果てたばかりの俺の下腹部を容赦なく扱く。

「や、ぁっ……」

 ぐちゅぐちゅと響く音、俺の下腹部はまた果てる寸前だ。

「んっ、んっ、はっ」

 今まさに果てようというときにケイがその手を止める。
 そして深いキスをしてまた俺の下腹部を扱き、イキそうになるとまた手をとめた。

「ふぇ、なんで……」

(イキたいのに、なんで)

 頭がイクことでいっぱいになった俺は涙目になっている。

「はぁ可愛い。殿下、イキたいですか? じゃぁ俺と一緒に沢山気持ちよくなりましょう、ね?」

 チョロい俺はその魅惑的な提案に抗う事は出来ず、黙ってうなずいた。


 ◆◆◆


 夢を見た。
 黒髪の女が、黒髪の男に話しかけている。
 顔はぼんやりとして見えない。

「ねぇ、私の新連載のネーム、出来た!!  読んで! 今ここですぐ読んで!!  あなたの姉の新連載のネームを!!  さぁ、早く読んで感想をよこせっっ!」

「圧が強い! わかった、わかった、すぐ読むよ」

 男は手渡された紙を渋々と読み始める。

 紙に描かれている絵はレイチェルによく似ていた……似ているだけでなく名前も一緒だ。

 その紙には絵で物語が綴られていた。
 題名は『悪役令嬢に転生したけど、溺愛されて困ります~無実の罪で投獄されたけど実は隣国の王子だった従者と隣国で幸せになって、裏切り者の王子と妹に復讐します~』

 題名長いな、読まなくても内容が全部わかる…….。

 内容は題名通り、婚約者の王子に婚約破棄をされ、妹に罪を擦り付けられた主人公のレイチェル。
 無実の彼女が処刑される寸前の所を、密かに心を通わせていた従者が助け、隣国へ逃亡。
 その従者、実は身分を隠していた隣国の王子で、レイチェルは裏切られた復讐と自身の名誉の回復の為、隣国の王子と共に、元婚約者の王子と妹の婚約パーティで、妹が行った数々の悪事を暴く。

 その結果、妹は処刑され、元婚約者の王子は継承権剥奪の上、国外追放。
 国を追い出されて直ぐに、レイチェルを溺愛する隣国の王子が手配した暗殺者に嬲り殺される。いわゆる「ざまぁ」系のお話。

 その妹はアリアという名で、元婚約者の王子の名前は……俺と同じメルドという。

 しかし作者よ、王子へのざまぁが少しやりすぎじゃないか?
 この王子は少しだけ頭が悪くて、チョロかっただけで、妹のように殺人やら違法薬物やらの犯罪を犯したわけじゃないのに、嬲り殺されるの?……と俺が思っていると

「このメルドって王子、ちょっと可哀想じゃない?」

 読んでいた男も同じ事を思ったようだ。なんだかこの男、他人とは思えないんだよなぁ……

「こういう『ざまぁ』は、やりすぎるくらいが丁度いいのよ、悪役令嬢もの舐めんなよ?」

 感想を求められたから伝えたのにめっちゃキレられている。あまりの理不尽さにその男に同情してしまう。

「これがBL同人誌なら、この王子は娼館送りにして、汚いオッサンに雌にされて、アヘ顔エンドなんだけどな……ヤバい、なんか滾ってきた! 王子のアヘ顔描きたくなってきた! それ今度の同人誌用のネームにするわ」

 彼女の腐った心が刺激されたらしい。
「アヘガオエンド」って言葉が分からないが嫌な予感しかしない。王子逃げて!全力で逃げて!!


 ◆◆◆


 ――物語の王子の身の危険を感じたところで意識がフワッと上昇する。

「ってこれ俺の事やないかーい!」

 夢から覚めると同時に理解し思わず叫んでしまう。
 これは俺の前世の夢だ。
 何かで死んだ俺は姉の漫画の世界に転生したらしい。

「何、目覚めてすぐツッコミ入れてんですか?」

 隣で寝ていたケイが起きる。

「殿下はツッコミじゃなくて、突っ込まれる方でしょ?」

「お、お前っ」

 ニヤリと笑いかけてくるケイ。
 ほんとこいつ、無駄に顔がいいな。

「殿下が大きい声出すから、俺のちんこも起きちゃった『おはよぅ♡』 ほら、ちんこがおはようって言ってるよ。殿下も挨拶して?」

「ちんこにアテレコすんな!」

 逃げようとする俺の腰に手を回し、ベッドに押し倒す。

「や、やめ……んんっ」

 俺の上に覆いかぶさり、乳首をペロリと舐めてくる。

「殿下の後ろの穴、まだ柔らかいですね。これなら直ぐに入りそうだ」

「やっ、そこ、指をつっこむなぁ……あっ、んんっ」

「はぁ、可愛い。後ろでこれだけ気持ちよくなっちゃうなんて、この先、女は抱けませんね?童貞だけど」

 そう言って俺の尻に香油をトロリと垂らし、一気に自身のちんこを突き立ててくる。

「あぁっ」

 寝起きに一気に突き立てられ頭がくらくらする。
 そんな俺を貪るようにケイはガツガツと攻め立ててくる。

「もう手放しません。一生俺のちんこで我慢してください」

「やっ、ぁあっ、んぁ、あっ」
 
「お願いだから、俺のものになって……んっ」

 ケイは懇願するように俺を抱きしめて、中に熱を吐き出した。


 ◆◆◆


 ケイから衝撃の告白をされた後、ケイに押し倒され、ちんこをケツに突っ込まれたのが昨日の事。

 告白に驚きはしたが……実を言うと俺も子供のころからケイの事が好きだった。
 あまり優秀ではない俺は、父の年の離れた弟で、同じ年の優秀な叔父上と何かと比べられ、努力しても周囲には認められず、心がボロボロだった。
 そんな時に乳母の息子であるケイが、ずっと傍で寄り添ってくれた。

「俺は何があっても殿下の味方ですよ」

 そう言って笑いかけてくれるケイに、俺は救われたんだ。

 それでも王位継承者として決められた婚約者と結婚する事は義務だった。
 この気持ちはいけないものだと自分の奥底にしまい込んだ。

(王位継承者としての義務があって、気持ちをしまい込んでいたけど……もう我慢しなくていいんだよな)

「体を清めるものを持ってきます」と言い、ベッドから離れようとするケイの腕を掴んで引き留める。

「あのさ、俺…… 俺も、子供の頃からずっとケイが好きだ!」

 改めて言うとなんだか照れ臭い。
 お互い裸だし、なんか汗とかいろんな液でドロドロだし。

「ふぇ?」

「だから、俺もお前が好きなんだよ、ずっと」

「……」

 俺の言葉を聞いたケイは、その場で固まって動かなくなった。

「……ケイ?」

「——殿下ぁ!!」

 しばらく固まっていたケイが感極まった表情でギュウギュウ抱きしめてくる。
 そしてまたベッド押し倒され、元気を取り戻しすっかり硬くなったケイのちんこを何度も突っ込まれた俺は、次の日、起き上がれずにベッドの住人になったのだった。


 ◆◆◆


 その後、「元従者の愛が重すぎて辛い、塔のようなところに監禁されているから助けてほしい」と隣国のレイチェルから連絡が来たりなどしたが、俺はケイと離宮で仲良く暮らしている。

 ——物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら、護衛騎士と幸せになった。


 ◆◆◆


 私はそっと“薄い本”を閉じる。これは自分で描いた同人誌。
 この本が完成する前に事故で死んでしまった弟を思い出す。
 ゲイであることを周囲に隠し、隠していることに疲れて、いつも俯きがちだった弟。

「あんたが『王子が可哀そう』って言ったから、幸せな結末に変えたんだよ」

 もし生まれ変わりがあるのなら、弟が好きな人と幸せになれますように。
 そう願いながら窓の外の雲一つない空を見上げた。

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