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20 残念令嬢、自分にとっての残念を知る。
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本日のリリーは王都にある孤児院に来ていた。同伴者は当然フィリア嬢(女装姿のアルフィー)だ。
初日こそ辿々しい所もあったが人間3日も繰り返せば馴れる。すっかり俳優も顔負けの優雅な所作で王子様を発揮中だ。
公爵家が出資している孤児院の子供達に囲まれ、文字を教えている。所謂ノブレス・オブリージュ(富める者の義務)というやつである。
×××
アルファベットの書き取りから辞書の使い方迄、様々な要望に答えていると自然に女の子たちが周りに集まり距離を詰めてくる。
皆イケメンが大好きだから仕方ない。
リアム様の取り合いで仲間割れをし始め、まあまあ穏便にと濁しながら過ごしていたが休憩の時間が訪れると、それまでは大人しかった女の子達がリリーを質問攻めにし始めた。
「ね~、リアム様は貴族なんでしょう?」「好きな女の子はどんなタイプ?」「婚約者はいるの?」「お嫁さんにして!」
と。
10歳にも満たないような女の子達に囲まれ苦笑していると、シスター達が慌てて飛んできてリリーから彼女達を引き剥がしてお菓子を食べさせるために準備された隣室へと連れて行く。
それをボンヤリ見送り浮かない顔をするリリーに気が付き、集めていた教科書を手に持ったまま声を掛けるアルフィー。
「リアム? どうしたの」
「ん? ああ。ちょっと羨ましいなって思ってさ」
「?」
「彼女達はまだ子供でしょ? なのに自分をちゃんと女の子として認識してる。私の幼い頃とは違うなって思ってさ」
「どういう事?」
「ん~~、なんていうかさ、あの歳で既に女の自覚があるんだなって。あと自信満々で自己肯定感がスゴイなって思ってさ」
「あ~・・・」
『リアム様の奥さんにしてッ!』と随分迫られてたなぁ、と思い出して遠い目になるアルフィー。
「確かに個人差はあるけど逞しいよね~・・・小さくても女の子だわ」
「はぁ~・・・」
小声で二人が学習室の隅で立話しをしていると、隣室から一人の男の子が飛び込んで来て、
「勝負だッ!」
と。
元気に叫ばれ、リリーとアルフィーは顔を見合わせた。
××××
庭に引っ張られるように出ていくと、子供用の木剣を足元に投げつけられ呆然とするリリー。
「え~と、君は私と手合わせをしたいのかな?」
「違うッ! 俺の妹に相応しいか俺が相手をしてやるッ! 決闘だッ!」
「「・・・・」」
この黒髪の男の子は10歳は過ぎているだろうか。どうやら先程リリーの周りに集まっていた女の子の集団の中に妹が居たらしい。
この孤児院は将来騎士になる事を目指せるように定期的に騎士団からの指導も入っていると父から聞いた事がある。
彼は他の子より大柄だからきっと熱心に指導されているのだろう。
だからって、支援者側の貴族に勝負を挑むのは・・・ 再教育が必要かもなぁ、と青空を思わず仰ぐリリー。
「いや、良いけど、負けたらどうするの? 決闘だと負けたら殺されても文句は言えないんだけど」
妙に真剣な男の子に確認するリリー。
アルフィーは離れた場所に移動しながら、
「リアム、本気でヤったらだめよ~」
と笑うだけだ。
仕方ないなあ、と足元に落ちた木剣を拾い上げるリリーはそれを左手に持ち替えた。
その様子をキョトンとした顔で
「左利き?」
と問う男の子にリリーは
「いや、力が入らないようにする為だよ」
と笑顔を見せる。
「馬鹿にしやがって・・・」
彼の顔が真っ赤に染まった。
初日こそ辿々しい所もあったが人間3日も繰り返せば馴れる。すっかり俳優も顔負けの優雅な所作で王子様を発揮中だ。
公爵家が出資している孤児院の子供達に囲まれ、文字を教えている。所謂ノブレス・オブリージュ(富める者の義務)というやつである。
×××
アルファベットの書き取りから辞書の使い方迄、様々な要望に答えていると自然に女の子たちが周りに集まり距離を詰めてくる。
皆イケメンが大好きだから仕方ない。
リアム様の取り合いで仲間割れをし始め、まあまあ穏便にと濁しながら過ごしていたが休憩の時間が訪れると、それまでは大人しかった女の子達がリリーを質問攻めにし始めた。
「ね~、リアム様は貴族なんでしょう?」「好きな女の子はどんなタイプ?」「婚約者はいるの?」「お嫁さんにして!」
と。
10歳にも満たないような女の子達に囲まれ苦笑していると、シスター達が慌てて飛んできてリリーから彼女達を引き剥がしてお菓子を食べさせるために準備された隣室へと連れて行く。
それをボンヤリ見送り浮かない顔をするリリーに気が付き、集めていた教科書を手に持ったまま声を掛けるアルフィー。
「リアム? どうしたの」
「ん? ああ。ちょっと羨ましいなって思ってさ」
「?」
「彼女達はまだ子供でしょ? なのに自分をちゃんと女の子として認識してる。私の幼い頃とは違うなって思ってさ」
「どういう事?」
「ん~~、なんていうかさ、あの歳で既に女の自覚があるんだなって。あと自信満々で自己肯定感がスゴイなって思ってさ」
「あ~・・・」
『リアム様の奥さんにしてッ!』と随分迫られてたなぁ、と思い出して遠い目になるアルフィー。
「確かに個人差はあるけど逞しいよね~・・・小さくても女の子だわ」
「はぁ~・・・」
小声で二人が学習室の隅で立話しをしていると、隣室から一人の男の子が飛び込んで来て、
「勝負だッ!」
と。
元気に叫ばれ、リリーとアルフィーは顔を見合わせた。
××××
庭に引っ張られるように出ていくと、子供用の木剣を足元に投げつけられ呆然とするリリー。
「え~と、君は私と手合わせをしたいのかな?」
「違うッ! 俺の妹に相応しいか俺が相手をしてやるッ! 決闘だッ!」
「「・・・・」」
この黒髪の男の子は10歳は過ぎているだろうか。どうやら先程リリーの周りに集まっていた女の子の集団の中に妹が居たらしい。
この孤児院は将来騎士になる事を目指せるように定期的に騎士団からの指導も入っていると父から聞いた事がある。
彼は他の子より大柄だからきっと熱心に指導されているのだろう。
だからって、支援者側の貴族に勝負を挑むのは・・・ 再教育が必要かもなぁ、と青空を思わず仰ぐリリー。
「いや、良いけど、負けたらどうするの? 決闘だと負けたら殺されても文句は言えないんだけど」
妙に真剣な男の子に確認するリリー。
アルフィーは離れた場所に移動しながら、
「リアム、本気でヤったらだめよ~」
と笑うだけだ。
仕方ないなあ、と足元に落ちた木剣を拾い上げるリリーはそれを左手に持ち替えた。
その様子をキョトンとした顔で
「左利き?」
と問う男の子にリリーは
「いや、力が入らないようにする為だよ」
と笑顔を見せる。
「馬鹿にしやがって・・・」
彼の顔が真っ赤に染まった。
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