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〈Another Story〉story of duke and wife
24 ハトコ
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「いやー、相変わらずいい腕してるねえ」
東の離宮内にある中庭はぐるりと回廊に囲まれ、更にその外側には高い壁が張り巡らされている。
花が咲き乱れる優雅な佇まいのその庭で良く似た黒髪の青年達二人がサーベルを互いに手にして、じゃれ合っている。
周りの従者達もニコニコ笑いながらそれを眺め、野次を飛ばして楽しんでいる様に見受けられる。
「もうここらにしとこうか。負けるとカッコ悪いから」
「まあ、お互いにだけどね」
そう言いながら同時に手に持つ剣を互いにダラリと下げる。
「はとこ殿が黒髪にすると、俺にそっくりになるとは思ってもみなかったよ」
笑いながら片方が軍服を模したグレーの上着を脱ぐ。
「そう? 顔が似てるから髪色さえ変えれば双子みたいになると私は思ってたわ」
もう片方は、白いドレスシャツの首元を緩める。
侍従達が差し出すタオルを受け取りながら笑い合う二人。
片方は髪を切り黒く染めたオフィーリア、もう一人は本物の帝国の皇子ヒューイである。
「急にお忍びで来るから焦るじゃないの。しかもいきなり手合わせしようだなんて言い出すし」
「やー、だってさぁ手紙もらってさ、急に俺のフリしてもいいかなんて聞かれたらさぁ気になるじゃん。でさ、お前の最愛とお前、婚約破棄したの?」
ニヤニヤ笑う皇子。
「殴るわよ」
目を細めるオフィーリアを見て、肩を竦めるヒューイ皇子。
「してねえか」
「何よ?」
眉を顰めるオフィーリア。
「俺の嫁はどうよ?」
そう言いながら彼はハトコの顔を覗き込む仕草をする。
「おんなじ顔を毎日見るの? お互いに? 鏡で上等だわよ」
「そらそうか。つまんねーな~、俺ってば、毎日遊んでもらえる相手が欲しいんだけど」
「それ、奥さんじゃなくてもいいじゃん」
呆れ顔になるオフィーリア。
「や、丁度いいかなって。探す面倒が無くていいじゃん」
へへへと笑う皇子。
「大伯父様に言っちゃうわよ」
オフィーリアが口を尖らすと、
「いやんヤメテ、爺ちゃんこええからぁ」
身体をくねらせて両肩を抱く真似をする皇子に、
「優しいじゃん」
とオフィーリアが返すと、
「お前にはな~。俺は駄目よぉ跡継ぎだもーん厳しいったらね~のよ」
ケタケタ笑いながらタオルを振り回すヒューイ皇子。
「ま、どこも一緒よ。ウチだって父様は厳しかったもの。そのお陰で生き残ってるんだけどね」
肩を竦めるオフィーリア。
「兄を殺した犯人がやっと尻尾を出したんだから、絶対に仇をとってやるわよ」
その言葉を呟いて翡翠色の瞳をギラギラさせる彼女を見ながら、
「ま、その為に俺の名前貸したんだからな」
と、ヒューイは青空に向けて思い切りタオルを投げた。
「俺だって『兄ちゃん』が大好きだったんだ。捕まえたら・・・」
ヒラリと落ちてきた白いタオルをヒューイが『ヒュッ』という音をさせて右手に持ったサーベルで真っ二つにする。
二人は何も言わずに地面に落ちたタオルにグサリと二本のサーベルの先を突き立てた・・・
東の離宮内にある中庭はぐるりと回廊に囲まれ、更にその外側には高い壁が張り巡らされている。
花が咲き乱れる優雅な佇まいのその庭で良く似た黒髪の青年達二人がサーベルを互いに手にして、じゃれ合っている。
周りの従者達もニコニコ笑いながらそれを眺め、野次を飛ばして楽しんでいる様に見受けられる。
「もうここらにしとこうか。負けるとカッコ悪いから」
「まあ、お互いにだけどね」
そう言いながら同時に手に持つ剣を互いにダラリと下げる。
「はとこ殿が黒髪にすると、俺にそっくりになるとは思ってもみなかったよ」
笑いながら片方が軍服を模したグレーの上着を脱ぐ。
「そう? 顔が似てるから髪色さえ変えれば双子みたいになると私は思ってたわ」
もう片方は、白いドレスシャツの首元を緩める。
侍従達が差し出すタオルを受け取りながら笑い合う二人。
片方は髪を切り黒く染めたオフィーリア、もう一人は本物の帝国の皇子ヒューイである。
「急にお忍びで来るから焦るじゃないの。しかもいきなり手合わせしようだなんて言い出すし」
「やー、だってさぁ手紙もらってさ、急に俺のフリしてもいいかなんて聞かれたらさぁ気になるじゃん。でさ、お前の最愛とお前、婚約破棄したの?」
ニヤニヤ笑う皇子。
「殴るわよ」
目を細めるオフィーリアを見て、肩を竦めるヒューイ皇子。
「してねえか」
「何よ?」
眉を顰めるオフィーリア。
「俺の嫁はどうよ?」
そう言いながら彼はハトコの顔を覗き込む仕草をする。
「おんなじ顔を毎日見るの? お互いに? 鏡で上等だわよ」
「そらそうか。つまんねーな~、俺ってば、毎日遊んでもらえる相手が欲しいんだけど」
「それ、奥さんじゃなくてもいいじゃん」
呆れ顔になるオフィーリア。
「や、丁度いいかなって。探す面倒が無くていいじゃん」
へへへと笑う皇子。
「大伯父様に言っちゃうわよ」
オフィーリアが口を尖らすと、
「いやんヤメテ、爺ちゃんこええからぁ」
身体をくねらせて両肩を抱く真似をする皇子に、
「優しいじゃん」
とオフィーリアが返すと、
「お前にはな~。俺は駄目よぉ跡継ぎだもーん厳しいったらね~のよ」
ケタケタ笑いながらタオルを振り回すヒューイ皇子。
「ま、どこも一緒よ。ウチだって父様は厳しかったもの。そのお陰で生き残ってるんだけどね」
肩を竦めるオフィーリア。
「兄を殺した犯人がやっと尻尾を出したんだから、絶対に仇をとってやるわよ」
その言葉を呟いて翡翠色の瞳をギラギラさせる彼女を見ながら、
「ま、その為に俺の名前貸したんだからな」
と、ヒューイは青空に向けて思い切りタオルを投げた。
「俺だって『兄ちゃん』が大好きだったんだ。捕まえたら・・・」
ヒラリと落ちてきた白いタオルをヒューイが『ヒュッ』という音をさせて右手に持ったサーベルで真っ二つにする。
二人は何も言わずに地面に落ちたタオルにグサリと二本のサーベルの先を突き立てた・・・
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