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14 答辞

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 俺は寮に戻り、友人に発破を掛けながら残りの約半年を過ごした。


 その間もよく放課後は図書館で過ごした。

 秋の優しい日差しの中で。

 冬、雪がちらつくような日も。

 やっとやって来た春らしい青空が窓から見える日も。

 自分のペンを走らせる音と彼女が頁を捲る音。お互いに交わる事のない心地いい空間を心から愉しんだ。

 偶に目が会うと屈託のない笑顔を見せてくれる彼女に、微笑んで目礼を返すだけ。

 学生達が卒業に向けて、図書館に溢れかえり座る席を苦労して見つけなければいけない日なんかもあったりして。

 たまに親友に勉強を教えるためにヒートアップしてつい声が出て、司書に怒られたり。


 そんな日々の繰り返しだった。


 卒業したら零れ落ちるように無くなるこの瞬間を記憶の片隅に残すようにと、残り少なくなった日々を祈るような気持ちで過ごしていた。


 6歳年上の会話もしない先輩なんか、きっとあの子は忘れてしまうだろうし。

 親友は領主である父親に自分を認めさせるための闘いを始めるし。

 そしてこの場にいる友人達も、そうじゃない唯の同級生達も。

 皆が自分の進む道へと羽ばたいて行くのだろう。


 いつか同級生に会う時は、せいぜい見目の悪い中年男にならないように気を付けて過ごすか? なんて。

 偶に馬鹿みたいな事を考えては一人で苦笑いをした。


 そして卒業式当日は、もう戻る事のない学生時代を思い出しながら答辞を壇上から在校生に贈った――


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