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129 アデライン視点⑰
しおりを挟む元々ステファンは女性にいい顔をする人だという事は知っていたし、学生時代も周りに沢山女性を侍らしていたのだから浮気をするかもしれない事は分かり切っていたはずだったのに、結婚すれば彼は変わるかもしれないと何処かで安易に考えていた自分を呪って正直夜通し泣いた事もあった。
帰ってからステファンからの閨の誘いは無かった。
複雑な思いもあったが正直どんな顔をしてそれを受ければいいのかも分からなかったので誘いが無い事に胸を撫で下ろし、夫婦別々の部屋で夜は眠る日がずっと続いていた。
だけどある日――
『子供ができたかもしれない』
という彼の告白に打ちのめされた時に、結局私は耐えきれずにエイダンに電話をしたのだ。
『助けて欲しい』
と。
思えば私自身、母が死んでから父や弟に頼ったことが無かった。
――継母の事があったからだろうと今なら分かるけれど・・・――
気が付けば信頼を寄せていたのはオルコットの義理の家族とエイダンだったように思う。
でも、鼻を啜りながら涙を浮かべるステファンの告白を聞いて、頭に浮かんだ疑問は私は本当に彼自身の事を見ていたのだろうか? という事だった。
確かに学生の頃は信頼するに値しない放蕩っぷりだったと思う。
だけど留年確定と囁かれていた彼が、突然真面目に勉強に取り組み始め、無事卒業に漕ぎ着けてからは寝る間も惜しんで領地改革をし、その甲斐あって陞爵したのだ。
その努力と周りからの評価は並大抵では得られなかったはず。
其れはオルコット家が陞爵した時に実感した事だ。
領民の生き方そのものが変わるくらいの経済効果を生み出さなければ陞爵などあり得ない。
其れを私がいたからこそやり遂げたのだと言った彼と私はちゃんと正面から向き合っていたのだろうか?
散々傷つけられてきたからこれ以上は傷つきたくないと、殻にこもって逃げていたのは私の方だったのでは無いだろうか・・・。
――幼い頃から私の側で、私だけだと愛を囁き続けて来た彼を見ていなかったのは、本当は私の方だったのかもしれない。
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