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130 アデライン視点⑱
しおりを挟むだからといって。
勃起不全を理由に他の女性を彼が抱いていた事を許せるかといえばそれは全然別問題だ。
しかも我が家のタウンハウスで。
夫婦の寝室ではなく客間だったからというのはただの言い訳に過ぎない。
――だっていくらなんでもデリカシー無さ過ぎだと思うもの。
昔の貴族男性は閨教育があったと言っても、今は殆ど廃れてる制度だし、10代の小娘じゃ無くたって気持ちの上では許せないものは許せないわけで・・・
×××
「ステファン、お互いにもう1度最初からやり直しましょう」
私の言葉に彼の綺麗な透き通るような空色の目が瞬いた。
「え? 最初からって・・・」
「そうね。今回どういう訳か新聞の記事になった事は全く無かったという事らしいから」
ステファンは後ろめたいのだろう。
顔色を悪くしながらコクコクと頷いた。
「プロポーズからやり直しましょうか?」
「え?!」
「だって、小さい頃からの約束だから絶対に結婚して欲しいっていうのって、ズルくないかしら? ちゃんと心を込めて本当の気持ちを言ってくれると私も嬉しいのだけれど? どうする?」
――その後。
首を傾げた私の隣に座ったままで私の手を握りもう1度自分の気持ちを正直に吐露する彼が、本当に前代未聞の泣き虫だったということを思い知ることになるとは思わなかった・・・
×××
「ただいま、アディ?」
「あら、おかえりなさい」
私室にやって来たステファンが、私が手にした招待状を見て
「もうそんな時期かぁ」
領地の水路の点検をしなくちゃと呟きながら天井を見上げる彼を見ながら微笑んで
「いつ頃一緒に行けそう?」
そう言って私は微笑んだ。
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