最強で最弱な英雄&優しい魔女の物語~♡♡♡

ゆきちゃん

文字の大きさ
10 / 108

10 魔女の妹と会う

しおりを挟む
 その世界には、さまざな色の花々が咲き乱れていた。

 たくさんの色の花々は互いに相手を引き立て、全体として完全に調和していた。



 はるか彼方までその光景は続いていた。

 そして、花々の間を何か小さなものがいっぱい飛び回っていた。



「クラリスさん。何かたくさんのものが飛んで、すばやく動いていますが? 」



「アーサー王子様、妖精ですよ。たぶん、王子様は妖精に好かれると思います。楽しみです。」



「えっ、妖精ですか。あっ、よく見ると確かに羽がはえた人間のような姿をしています。」



 すると、飛んでいた妖精の一人が2人に気がついた。

「あっ。魔女様がいるよ。一緒にいるのは英雄! 美しき心を守る人だ! 気高き人! 」



 最初は少しずつ、そしてだんだんその数は多くなり、最後には大群となり2人の回りは妖精だらけになった。



 飛んでいた妖精がたずねた。

「真実に至る魔女の娘、クラリス様。お隣にいる英雄のお名前を教えてください。」



「この背の高いイケメンはアーサー王子様よ。今日は一緒にピクニックに来たの。」

「英雄がいるだけで、僕達は元気になれます。ゆっくりしていってください。」





「じゃあ、みなさん。私と王子様を2人だけにしてくれませんか。」



「はーい。わかりました。」



 そう言うと、妖精達の姿は急に見えなくなった。



「王子様。あそこに小高い丘がありますね。あそこに登ってお昼にしましょう。」

 クラリスはアーサーの前を先導して、丘を登り始めた。



 登り終えると景色は最高だった。

 はるか彼方まで美しかった。



 2人はそこにシートを敷いて並んで座った。

 ちょうど良い気温で、ここちよい、そよ風が吹いてきた。



「このそよ風は、妖精達のプレゼントですね。さあどうぞ、今日はサンドウィッチを作ってきました。お口に合えばうれしいのですが。」



 アーサーは進められるまま、サンドウィッチを食べ始めた。

 口にいれた途端、最高の味わいだった。



「う――ん。最高です。こんなにおいしいサンドウィッチは食べたことがありません。特にこのジャムはおいしいですね。なんの果物かはわかりませんが、とにかくおいしいです。」



「ありがとうございます。作りがいがあります。そのジャムの原料となった果物についてお教えしましょうか。」



「ええ、何でしょうか。」



「イチゴ、なし、ブルーべーリーなど、それぞれのの果物味が最高に引き立つ割合で混ぜたものです。魔女が生み出した最高の調和には魔法の効果があるのです。」



「どのような効果ですか。」



「ふふふふ。食べると、そのジャムを調和した人をとても好きになってしまうのですよ。アーサー王子様はもう私にメロメロのはずです。」



「え――――っ! それでもかまいません。あの、すいません。後、何個かいただけますか。こうなったらどんどん食べて、クラリスさんの完全奴隷になりメロメロになります。」



「ごめんなさい。うそです。でも、どんどん食べてください。たくさん作ってきましたから。それから、飲み物もあります。サンドウィッチによく合う新鮮なミルクです。」



「はい。遠慮無くいただきます。」



 美しき心が映す世界の空は、クレヨンで描かれているようだった。

 最高の青色の中に、優しそうな太陽が浮かんでいた。



 太陽の光りはポカポカ陽気で2人を包んだ。

 満腹になったアーサーは眠くなってしまった。



「クラリスさん。すいません。私はとても眠くなってしまいました。このところ、いろいろな事で緊張した毎日が続いて、このように眠くなることなどなかったのです。もう、がまんできません。」



「アーサー王子様。それでは、私のひざを枕にしてしばらく眠ってください。」



「すいません。もうだめです。よろしくお願いします。」

 アーサーはクラリスにひざ枕をしてもらって深い眠りに落ちた。



 2人にとって、あたたかくて優しい時間が続いた。







 しばらくして、2人がいる小高い丘を照らしていた光りがさえぎられた。

 空に大きな手で、黒いおおいがされたようだった。



 クラリスの顔が険しくなった。

「ザラ! 」



 おおきな声がした。

「おやおやおやおや、お姉様。ものすごいイケメンにひざ枕をしているじゃないですか。」



 空に浮かんだ大きな手の黒い影から、何かがジャンプして落ちてきた。

 最初はものすごく早かったが、地面が近づくに連れてゆっくりと落ちてきた。



 そして、丘の上の空中に止った。

 全身黒ずくめの甲冑に身を包んだ女騎士だった。



 髪の毛も黒色、瞳の色は青色でクラリスにとてもよく似ていた。

 ただよく見ると、透き通った海のようなクラリスの青い瞳とは違い、青い瞳は深海のようだった。



「ザラ。今日は何をしに落ちてきたのですか。ここは、あなたがいるべき世界とは全く反対、お願いだから無用な戦いを起さないでください。」



「反対の世界の勢いが強くなったので、見に行くようにと我が主に言われたのです。やはり、英雄がこの世界にいて、神聖の力をまき散らしているじゃないですか。私の世界に攻めてくるのですか。」



「そんな気持ちは全くないわ。そもそも、この『美しき心が映す世界』と、あなたがいる『悪しき心が映す世界』は対になって存在するもの。反対の世界だからといって排除することはないわ。」



「そうですか。でも私はお姉様の全てを排除したい。なぜかというと、私は人の幸せが許せない『ねたみのザラ』だから。こうするの―――― 」



 そう言うと、ザラは剣を抜き、いきなり空中から2人に向かって剣を振り下ろした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

【完結】一番腹黒いのはだあれ?

やまぐちこはる
恋愛
■□■ 貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。 三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。 しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。 ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。

【完結】侍女が王女に転生?!英雄と結婚して破滅の国を救います!

カナタカエデ
ファンタジー
八十歳で生涯を終えた、元王宮侍女カリナ。 その最期の瞬間――枕元に、かつて仕えた王女アメリアが現れた。 「お願い…私の人生をやり直して。国を、私を、救って――」 次に目を開くと、カリナは十八歳の“王女アメリア”として転生していた。 彼女は知っている。 このままでは王国は滅び、愛する主君が破滅する未来を。 未来を変えるため、アメリアは 冷徹と噂される英雄ヴァルクとの政略結婚を選ぶ。 これは、かつて守れなかった主人のための転生。 そのはずなのに――彼への想いは、気づけば変わり始めていた。 王女と英雄が紡ぐ、破滅回避ラブファンタジー開幕。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜 挿絵はA I画像を使用 10/20 第一章完結 12/20 第二章完結 2/16 第三章完結 他サイト掲載 (小説家になろう、Caita)

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

【完結】身代わり皇妃は処刑を逃れたい

マロン株式
恋愛
「おまえは前提条件が悪すぎる。皇妃になる前に、離縁してくれ。」 新婚初夜に皇太子に告げられた言葉。 1度目の人生で聖女を害した罪により皇妃となった妹が処刑された。 2度目の人生は妹の代わりに私が皇妃候補として王宮へ行く事になった。 そんな中での離縁の申し出に喜ぶテリアだったがー… 別サイトにて、コミックアラカルト漫画原作大賞最終候補28作品ノミネート

処理中です...