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偽りの月光を映す川面
#11
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「だから言ったのに、なんで私と一緒にヴァローナに来なかったかねぇ。来てればそーんなめんどくさい事にならないで済んだと思うけどねぇ」
「石に関しての調査は決して無駄にはならないかと思います」
約二ヶ月ぶりでしょうか、お元気そうで何よりです。
「そうだねぇ、でもそれでウチの隠密使おうなんて中々いい神経してるねぇ。知ってる? ハーロルト・シーラッハって今私の部下で隠密やらせてんだよねぇ、気軽に鳶越しに頼むのやめて欲しいよねぇ」
「承知致しました、次回から彼宛ての連絡は別の手段をとろうかと思います」
「ん? 連絡手段の事なんて言ってないよね? キー坊は今私の隠密使おうとしてるんだよねぇ? 私のカラス返しておいて別の所有物使おうなんて、ちょっと会わない間に随っ分と価値観が変わったみたいだねぇ」
この人は暇なのでしょうか。
フィルマに頼んで師匠のカラスにハーロルトとやりとりがしたい旨を伝えてもらったところ、すぐにベランダにいたフィルマの座標に合わせて師匠が来ました。
招き入れるか考える前にベランダから部屋に入り、当然のようにソファに腰掛けます。
対応に迷いましたが、とりあえず暖かいお茶を用意してお出ししました。
今後フィルマに仲介を頼む際は、部屋から遠い場所に居てもらうのが良いかもしれません。
「それでさ、アイツに頼んでも良いの?」
ここまでのやり取りに少し苛立っていたのか、ビャンコ様が提案なさいます。
ですが私の経験則だけで言うなら、対象が私からビャンコ様に移るだけかと思います。
「あれ、白いのさ」
「ビャンコね、白いのじゃなくて」
「それってそっちの言葉で白って意味でしょ? じゃあヴァローナ語で言えばビィエーラヤで良い?」
「なんでよ、勝手に名付けるのやめてくんない?」
「そんな露骨な偽名で呼ぶわけないよねぇ、名付けたくはないけどそんなうっさん臭い名前よりマシだよねぇ」
「……もう面倒だし好きに呼びなよ」
「あっそ。じゃあ白いのさ、私の隠密に頼めるかって言ったねぇ。考えてあげない事もないんだけど、そっちが出す条件を先に聞かせて欲しいねぇ」
「良いよ、なんで」
「お待ちください」
なんでも良いと言うように思えたので、一度止めた方が良さそうです。
「何、考えないで私呼んだの?」
「そもそもネーゾロっさん呼んだわけじゃないし」
「ネウゾロフね」
「白いのよりマシでしょ」
師匠が大袈裟に呆れた反応を見せ、露骨な表情でビャンコ様を見ます。
「あぁ、やーっぱ君好きになれそうもないねぇ、白いのから鳩に格下げだねぇ」
「鳩じゃねぇよ、ったく好かれなくてケッコーだよ」
どうしてお二人の仲が悪いのか分かりませんが、交換条件に関して師匠経由でハーロルトに話すのは違う気もします。
「ご相談したいのは、かの帝国で使われている石の由来の調査です」
まずは目的を話してしまうのが早いと思いました。
交換条件はハーロルトに繋いで頂いてから提示する方が安全かと思います。
「あぁ、由来で良いの? 私が知ってるけど、その情報が欲しいのかねぇ?」
私もですが、ビャンコ様が言葉に詰まるのが分かります。
師匠が知っている可能性を失念しておりました、これから交渉を持ちかけられるのが目に見えます。
頼む相手が変わった事で交換条件の難易度が上がったのは間違いありません。
ビャンコ様が気を取り直して師匠に声をかけます。
「で、何したら教えてくれんの?」
「あれ、鳩君? それが私にもの頼む態度とは思えないけどねぇ」
「で? 何すれば教えてくれるん?」
「ん~、そうだねぇ……」
師匠は考える素振りを見せますが、おそらく私がフィルマを通じて連絡した段階で既に何か考えがあるのでしょう。
「じゃ、キー坊を私の好きな時に借りる権利が欲しいねぇ。正直に言うと別になくても勝手に借りるけど、私も一応立場があるから? 鳩みたいな局長様の言質でもある方がやりやすくてねぇ」
「マジで余計な一言多いな」
「ん? 何? 聞こえなかったことにしてあげても良いけど、聞こえた方が良かった?」
「それなら一回だけ、それならオレの責任で何とかするよ」
「えぇ~? たったの一回? それでも局長様~?」
「局長とか関係ないの、一回だけ!」
険悪な雰囲気で言い出しにくくはありますが、私の話ですよね?
私の意思に関係なく話が進んでおります。
「ふぅん、じゃあ……」
師匠がため息をつきながら姿勢を少し正します。
「あの石って、土を固めた泥団子なんだよねぇ」
「知ってる」
「あれ、そうなの?」
「他には?」
「んーじゃあアレ人と同じ成分なんだよねぇ」
「……それも知ってる」
「何、結構調べたんだねぇ。どうせキー坊が調べたんだろうけど」
「他は? 情報ないならキーちゃん貸出券ナシね」
少し得意げにビャンコ様が仰います。
それに少し眉をひそめて師匠が答えます。
「他ねぇ……アレ、リュンヌに生えてる木の下の土を精錬して作ってんだよねぇ。本当に気味が悪い、なんで人と同じ成分なんだか」
「木って、もしかして変わった桜?」
「ん? 違うと思うけどどうだろうねぇ」
「なんだ違うんか」
「あの木が何なのかはミヌレの連中しか知らないだろうしねぇ」
「え、知らないの?」
「必要無かったからねぇ。一応なんとなくの由来分かったし、壊し方も分かってたし」
「アンタも壊せんの?」
「あ、アンタとか言うの鳩君」
師匠の右手が上がり指を鳴らします。
小さな稲光が光りビャンコ様に当たるかと思いましたが、その直前で何かに弾かれたようでビャンコ様に当たることはありませんでした。
「オイ、何やってんだよ」
「君こそ口の聞き方には気をつけなよ? 君のその礼儀のなってない態度をある程度許してやってるのは、キー坊と親しいから以外に理由なんかないんだから」
「知るかよ、なんで許可とんなきゃなんねぇんだよ」
「ロクに修行もしてない童の癖に私の弟子と対等に話してるのは本当に気に食わないよ、術式の一つでもまともに組めるように見えないし」
「関係ないだろ、だからって雷当ててくるとか何考えてんの?」
「鳩には無理でも普通の人間様なら手加減が出来るんだよ、鳩には想像する事も難しいかもしれないけど」
仲が悪すぎます、私の私室で術を用いた喧嘩などなさらないで頂きたいです。
ビャンコ様はともかく、師匠が分かりやすく機嫌を損ねるのは初めて見るかもしれません。
「お二人共落ち着いてくださいますか? 話を本題に戻しましょう」
喧嘩の仲裁などどうしたら良いか分かりませんが、一旦私が師匠と話すのが良さそうです。
「あぁ、そうだったねぇ。石を壊せるかだっけ?」
「それが単純な力では破壊できなかったそうです」
「ん? 壊せたんじゃないの?」
「私は変化で砕きました」
「そうか、キー坊ならそれで壊せるねぇ」
「それで、師匠はどうやって破壊したのですか?」
私の質問を聞き、師匠が指を二本立てて見せます。
「二回」
「? 二回とは?」
「さっきの交換条件、一回じゃなくて二回」
そういう意味でしたか。
この言葉を聞いて、冷静さを取り戻したビャンコ様が答えます。
「分かったよ、後で正式に委任状送るわ」
「良いねぇ、そういう物分りが早いところは嫌いじゃないねぇ」
「で? どうやったんだよ?」
「魔力がない何かの血をかけると溶けるんだよねぇ、本当に気持ち悪い」
「は、血……?」
師匠の話によれば。
あの石はハーロルトが使ったように持ち歩きながら光る反応を見るような物ではなく、交渉の場で相手が術士だと証明するための道具として使われるそうです。
かの帝国では「貴族の証」として爵位と共に渡され、爵位の高さに応じて台座の装飾の豪華さが変わるそうです。
「それで私に伯爵夫人が見せびらかしながら『一晩相手をしてやる』なんて言うから、石と突き出してきた手を叩き落としてやったねぇ」
「お相手して差し上げれば良かったのでは?」
「はぁ、キー坊……本当にオツムが残念だねぇ。そんな面倒な上に可愛げ無いの相手にしたくないの分からない? なんならキー坊が相手にすれば」
「申し訳ありませんでした」
「ん、分かれば良いよ?」
余計な事は言わない方が良さそうですね。
「それで……」
「あぁ、叩き落としたら怒りながらそのまま帰ってねぇ。落とした石を部下が拾ったんだけど台座に付いてた飾りで指切っちゃって。その時石が溶けたんだよねぇ」
「それで分かったのですか?」
「そう、でもその後ちょっとした事故で私の血が石に付いたんだけど溶けなくてねぇ。気になったから色々試した結果、多分魔力の有無で変わるんじゃないかねぇ」
話を聞いたビャンコ様が腕を組んで唸ります。
「そうなると、今いるオレらじゃ検証は無理だね」
「フィルマとリィも無理ですし、誰かに頼めるでしょうか」
「あ、血なら料理に使う生肉の血でも大丈夫みたいだったねぇ」
「……マジかよ」
「本当にあの国は気味が悪い、あんな石を堂々と貴族の証にしてるだなんて神経を疑うねぇ」
料理用の肉なら保冷庫にありますが、検証に使いたくないと思ってしまいます。
「まぁ術士ならあんなもの無くても術士分かるし、いい加減あの国も虚勢張るのやめれば楽になりそうなのにねぇ」
本当にそう思います。
この不気味な石は術士がかの帝国にいない事をそのまま証明しています。
師匠のお陰で謎の多くが解けましたが、かの帝国に対してより嫌悪感に似た感情が強くなるのが分かります。
師匠は用事が済んだと判断したらすぐにお帰りになりました。
本当に暇なのでしょうか、今回は助かりましたがフィルマを通じて気軽に連絡するのは避けた方が良さそうです。
「石に関しての調査は決して無駄にはならないかと思います」
約二ヶ月ぶりでしょうか、お元気そうで何よりです。
「そうだねぇ、でもそれでウチの隠密使おうなんて中々いい神経してるねぇ。知ってる? ハーロルト・シーラッハって今私の部下で隠密やらせてんだよねぇ、気軽に鳶越しに頼むのやめて欲しいよねぇ」
「承知致しました、次回から彼宛ての連絡は別の手段をとろうかと思います」
「ん? 連絡手段の事なんて言ってないよね? キー坊は今私の隠密使おうとしてるんだよねぇ? 私のカラス返しておいて別の所有物使おうなんて、ちょっと会わない間に随っ分と価値観が変わったみたいだねぇ」
この人は暇なのでしょうか。
フィルマに頼んで師匠のカラスにハーロルトとやりとりがしたい旨を伝えてもらったところ、すぐにベランダにいたフィルマの座標に合わせて師匠が来ました。
招き入れるか考える前にベランダから部屋に入り、当然のようにソファに腰掛けます。
対応に迷いましたが、とりあえず暖かいお茶を用意してお出ししました。
今後フィルマに仲介を頼む際は、部屋から遠い場所に居てもらうのが良いかもしれません。
「それでさ、アイツに頼んでも良いの?」
ここまでのやり取りに少し苛立っていたのか、ビャンコ様が提案なさいます。
ですが私の経験則だけで言うなら、対象が私からビャンコ様に移るだけかと思います。
「あれ、白いのさ」
「ビャンコね、白いのじゃなくて」
「それってそっちの言葉で白って意味でしょ? じゃあヴァローナ語で言えばビィエーラヤで良い?」
「なんでよ、勝手に名付けるのやめてくんない?」
「そんな露骨な偽名で呼ぶわけないよねぇ、名付けたくはないけどそんなうっさん臭い名前よりマシだよねぇ」
「……もう面倒だし好きに呼びなよ」
「あっそ。じゃあ白いのさ、私の隠密に頼めるかって言ったねぇ。考えてあげない事もないんだけど、そっちが出す条件を先に聞かせて欲しいねぇ」
「良いよ、なんで」
「お待ちください」
なんでも良いと言うように思えたので、一度止めた方が良さそうです。
「何、考えないで私呼んだの?」
「そもそもネーゾロっさん呼んだわけじゃないし」
「ネウゾロフね」
「白いのよりマシでしょ」
師匠が大袈裟に呆れた反応を見せ、露骨な表情でビャンコ様を見ます。
「あぁ、やーっぱ君好きになれそうもないねぇ、白いのから鳩に格下げだねぇ」
「鳩じゃねぇよ、ったく好かれなくてケッコーだよ」
どうしてお二人の仲が悪いのか分かりませんが、交換条件に関して師匠経由でハーロルトに話すのは違う気もします。
「ご相談したいのは、かの帝国で使われている石の由来の調査です」
まずは目的を話してしまうのが早いと思いました。
交換条件はハーロルトに繋いで頂いてから提示する方が安全かと思います。
「あぁ、由来で良いの? 私が知ってるけど、その情報が欲しいのかねぇ?」
私もですが、ビャンコ様が言葉に詰まるのが分かります。
師匠が知っている可能性を失念しておりました、これから交渉を持ちかけられるのが目に見えます。
頼む相手が変わった事で交換条件の難易度が上がったのは間違いありません。
ビャンコ様が気を取り直して師匠に声をかけます。
「で、何したら教えてくれんの?」
「あれ、鳩君? それが私にもの頼む態度とは思えないけどねぇ」
「で? 何すれば教えてくれるん?」
「ん~、そうだねぇ……」
師匠は考える素振りを見せますが、おそらく私がフィルマを通じて連絡した段階で既に何か考えがあるのでしょう。
「じゃ、キー坊を私の好きな時に借りる権利が欲しいねぇ。正直に言うと別になくても勝手に借りるけど、私も一応立場があるから? 鳩みたいな局長様の言質でもある方がやりやすくてねぇ」
「マジで余計な一言多いな」
「ん? 何? 聞こえなかったことにしてあげても良いけど、聞こえた方が良かった?」
「それなら一回だけ、それならオレの責任で何とかするよ」
「えぇ~? たったの一回? それでも局長様~?」
「局長とか関係ないの、一回だけ!」
険悪な雰囲気で言い出しにくくはありますが、私の話ですよね?
私の意思に関係なく話が進んでおります。
「ふぅん、じゃあ……」
師匠がため息をつきながら姿勢を少し正します。
「あの石って、土を固めた泥団子なんだよねぇ」
「知ってる」
「あれ、そうなの?」
「他には?」
「んーじゃあアレ人と同じ成分なんだよねぇ」
「……それも知ってる」
「何、結構調べたんだねぇ。どうせキー坊が調べたんだろうけど」
「他は? 情報ないならキーちゃん貸出券ナシね」
少し得意げにビャンコ様が仰います。
それに少し眉をひそめて師匠が答えます。
「他ねぇ……アレ、リュンヌに生えてる木の下の土を精錬して作ってんだよねぇ。本当に気味が悪い、なんで人と同じ成分なんだか」
「木って、もしかして変わった桜?」
「ん? 違うと思うけどどうだろうねぇ」
「なんだ違うんか」
「あの木が何なのかはミヌレの連中しか知らないだろうしねぇ」
「え、知らないの?」
「必要無かったからねぇ。一応なんとなくの由来分かったし、壊し方も分かってたし」
「アンタも壊せんの?」
「あ、アンタとか言うの鳩君」
師匠の右手が上がり指を鳴らします。
小さな稲光が光りビャンコ様に当たるかと思いましたが、その直前で何かに弾かれたようでビャンコ様に当たることはありませんでした。
「オイ、何やってんだよ」
「君こそ口の聞き方には気をつけなよ? 君のその礼儀のなってない態度をある程度許してやってるのは、キー坊と親しいから以外に理由なんかないんだから」
「知るかよ、なんで許可とんなきゃなんねぇんだよ」
「ロクに修行もしてない童の癖に私の弟子と対等に話してるのは本当に気に食わないよ、術式の一つでもまともに組めるように見えないし」
「関係ないだろ、だからって雷当ててくるとか何考えてんの?」
「鳩には無理でも普通の人間様なら手加減が出来るんだよ、鳩には想像する事も難しいかもしれないけど」
仲が悪すぎます、私の私室で術を用いた喧嘩などなさらないで頂きたいです。
ビャンコ様はともかく、師匠が分かりやすく機嫌を損ねるのは初めて見るかもしれません。
「お二人共落ち着いてくださいますか? 話を本題に戻しましょう」
喧嘩の仲裁などどうしたら良いか分かりませんが、一旦私が師匠と話すのが良さそうです。
「あぁ、そうだったねぇ。石を壊せるかだっけ?」
「それが単純な力では破壊できなかったそうです」
「ん? 壊せたんじゃないの?」
「私は変化で砕きました」
「そうか、キー坊ならそれで壊せるねぇ」
「それで、師匠はどうやって破壊したのですか?」
私の質問を聞き、師匠が指を二本立てて見せます。
「二回」
「? 二回とは?」
「さっきの交換条件、一回じゃなくて二回」
そういう意味でしたか。
この言葉を聞いて、冷静さを取り戻したビャンコ様が答えます。
「分かったよ、後で正式に委任状送るわ」
「良いねぇ、そういう物分りが早いところは嫌いじゃないねぇ」
「で? どうやったんだよ?」
「魔力がない何かの血をかけると溶けるんだよねぇ、本当に気持ち悪い」
「は、血……?」
師匠の話によれば。
あの石はハーロルトが使ったように持ち歩きながら光る反応を見るような物ではなく、交渉の場で相手が術士だと証明するための道具として使われるそうです。
かの帝国では「貴族の証」として爵位と共に渡され、爵位の高さに応じて台座の装飾の豪華さが変わるそうです。
「それで私に伯爵夫人が見せびらかしながら『一晩相手をしてやる』なんて言うから、石と突き出してきた手を叩き落としてやったねぇ」
「お相手して差し上げれば良かったのでは?」
「はぁ、キー坊……本当にオツムが残念だねぇ。そんな面倒な上に可愛げ無いの相手にしたくないの分からない? なんならキー坊が相手にすれば」
「申し訳ありませんでした」
「ん、分かれば良いよ?」
余計な事は言わない方が良さそうですね。
「それで……」
「あぁ、叩き落としたら怒りながらそのまま帰ってねぇ。落とした石を部下が拾ったんだけど台座に付いてた飾りで指切っちゃって。その時石が溶けたんだよねぇ」
「それで分かったのですか?」
「そう、でもその後ちょっとした事故で私の血が石に付いたんだけど溶けなくてねぇ。気になったから色々試した結果、多分魔力の有無で変わるんじゃないかねぇ」
話を聞いたビャンコ様が腕を組んで唸ります。
「そうなると、今いるオレらじゃ検証は無理だね」
「フィルマとリィも無理ですし、誰かに頼めるでしょうか」
「あ、血なら料理に使う生肉の血でも大丈夫みたいだったねぇ」
「……マジかよ」
「本当にあの国は気味が悪い、あんな石を堂々と貴族の証にしてるだなんて神経を疑うねぇ」
料理用の肉なら保冷庫にありますが、検証に使いたくないと思ってしまいます。
「まぁ術士ならあんなもの無くても術士分かるし、いい加減あの国も虚勢張るのやめれば楽になりそうなのにねぇ」
本当にそう思います。
この不気味な石は術士がかの帝国にいない事をそのまま証明しています。
師匠のお陰で謎の多くが解けましたが、かの帝国に対してより嫌悪感に似た感情が強くなるのが分かります。
師匠は用事が済んだと判断したらすぐにお帰りになりました。
本当に暇なのでしょうか、今回は助かりましたがフィルマを通じて気軽に連絡するのは避けた方が良さそうです。
応援ありがとうございます!
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