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第一章 オークション

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 動揺を隠せない様子のリオに、男は満足げに頷いた。
「した事があるんだね。男の子なんだから当然だよ。ちっとも恥ずかしがることはないんだよ」
 男はソフトな手つきで、ケットに覆われた少年の身体の線をなぞる。もじもじと逃れようとすれば、
「おや、逆らっちゃいけないって言われてるんじゃないのかい?」
 柔らかな脅迫が降ってくる。
 男は毛布の上から、そっと少年の証を包み込み、撫でて形を浮き上がらせた。
 むずがゆい感覚がその部分から、じんわりと周辺に広がっていく。
「おじさん、今から……何、するの?」
 震える声で、リオは尋ね、
「君を大人にしてあげるんだよ」
 おおらかに男は答えた。
「君は、もう十六を超えていたはずだよね。それなのにあそこはまだ皮を被ったまままのようだし、顔も体も、あどけなくてまだ幼い子供みたいだろう。実はおじさん達はお医者さんなんだよ。ここにいる全員で、リオ君の身体を一人前の大人にしてあげる。でも、その前に患者は医者に心も身体も開かないといけないよ」
「心と身体を……?」
 リオは鸚鵡返しに問いかけた。
「そう。心と身体を開いて、私達に全てを委ねるんだ」
 男は徐に毛布を捲り、リオのか細いなで肩を露にする。
 体が小刻みに震えるのは、恥ずかしさからなのか、それとも夜気のせいなのか、わからない。
 熟れた木の実のように赤く腫れた胸の飾りや、未だ大人になりきれぬ雄の部分を、両手で隠してしまいたかったが、視界の隅に映り込む壁のムチに威圧された。
 逆らえば、おしおきが待っている。
 ロングコートの男より、今リオを取り囲んでいる四人の方が、口調が優しげな分、はるかにましに思えた。

 いきなり一番身近にいた男が、リオの腕を万歳の格好に持ち上げた。
「な、何っ」
 悲鳴と同時に、つるんとした脇の下がむき出しになる。
 男は、素早くベットに上がりこみ、ゆるくあぐらを組んだ膝の上に、小さな少年の頭をのせた。
 髪の毛を優しく撫でてあやしながら、
「さあ。私はここで押さえているから。最初は誰からいく?」
 男は仲間たちを一瞥する。

「俺が……いく。ああ、もうたまらん」
 小太りの男が、ぎらついた目で近寄ってきた。
「ああ……君にはそんな無防備な格好がよく似合うよ」
 足元にひざまずき、もう一人が感に耐えぬという風につぶやく。

 二人目の男がべットに上がり、スプリングがみしりと音を立てて沈み込んだ。
 顎をとられ、太腿に、誰かの手が触れる。

「やっ、やだっ。お願い、やめてっ」 
 やっぱり、ダメだ。できない。無理。
 頭の中を逃げの言葉が駆け巡り、はじかれたようにリオは暴れ始めた。
「おお、よしよし、どうしたね。いきなり恐くなったのかい?」
 背後の男は、起き上がりかけたリオの体を羽交い締めにし、耳元であやすように囁いた。
「いやっ。お願い……、おじさん、やだっ」
 か細い声を振り絞りながら、リオは両足をばたつかせる。
「怖がらなくていいんだよ。痛いことは何もしないからね」
「嫌だ……、ねえ、やめてっ」
「ごめん、それだけは無理みたいだ。だっておじさん達、もうこんなになっている」
 片手で少年を拘束したまま、男はもう片方の手でリオの手を取り自身へと誘った。
 堅く膨れ上がった男根に、一瞬リオはひるむが、引く事は許されず、男はなおもそれを押し付け、
「ね、僕たちがどんなに君を欲しがっているか、わかっただろう? それなのに処女をいただくのは後回しにしてやると言ってるんだよ。ありがたいと思わないのかい?」
 やんわりとリオを脅迫する。
 リオは、周りにいる男達を順ぐりに見た。
 誰もが優し気な顔をしているが、その眼は欲望にきらついている。助けてくれそうなものは一人としていない。
「やだっ」
 おしおきとか、壁のむちとかその時にはもうすっかり頭から抜け落ちていた。
 リオは男の手を振り解き、はじかれたようにベッドから飛び降りる。一瞬おいて男達は逃げ道を阻もうと立ちはだかるが、その間をすりぬけ、リオは裸のままドアに向かって走った。
 全速力でコンクリートフロアに下りれば、足の裏に小さな砂粒がめりこむ。
 だが、気にしている場合ではない。リオはドアノブに手をかけた。
 一気に回そうと試みるが、銀色の取っ手はもどかしい角度までしか動かない。ガチャガチャと虚しい束縛の音が、暗い部屋の中に響く。
「逃げちゃダメだろう? 君のオーナーに叱られるよ。僕たちは優しいけれど、彼はずいぶん厳しそうだったじゃないか」
 後ろ側に立った誰かが、リオの肩に手を置いた。

「いい子にしてなきゃ、おしおきだぜ」

 冷たいバリトンが頭の中によみがえる。そう。あのコートの男は、赤い月から生まれた化け物と、深い関係がある人物なのだ。
 言葉の中に込められたさまざまな可能性に、リオはパニックに陥ってしまった。
「ねえ、おじさん、お願い、助けて」
 振り向きざま、リオは爪先だちで、男の首筋にしがみついた。
「おっと、リオ君は甘えん坊さんだな」
 意表をつかれ、男はリオの肩から両手を離すが、頬をすりつけて懇願する少年に、たちまち相好を崩す。

 ふいに男の体が離れ、顎を摘まれ上向かされた。
「……あ……」
 頼りなく開いた唇に、長い舌が刺し込まれる。
「んっ……ふっ……あっ」
 口腔を思い切りまさぐった後、唾液の糸を引きながらそれは離れる。次いで思い切り抱きしめられた。
「小さい、可愛い唇だね。どうしようか。おじさんはリオ君の事が本気で欲しくなってしまったよ」
 せわしなく囁かれ、無骨な指が脇腹をまさぐる。
「や……」
「うん、いいね。その嫌そうな顔。ぞくぞくするよ。大丈夫。僕たちに任せていればきっと気持ちよくなれるから。おじさん達はお医者さんだって言っただろう? いうこと聞けば、もしかしたら君の心臓をこんなにもドキドキさせている不安の種も、刈り取ってあげられるかもしれないよ」
「おじさん……」
 診察するだけだよと言いながら、男はリオの薄い胸に片手を這わせた。
 温かい手のひらに、心臓は大きく脈打ち鼓動を伝える。
「そう、君を助けてあげる。可哀想に。こんなに脅えて。あの男に苛められたのかい? おじさん達は君を苛めたりしない。ただ可愛がってあげるだけなんだよ」
 背の高い男が、傍らに寄り添った。
「君を助けてあげるから。おとなしくベッドに戻ろうね」
 男の台詞にリオは顔をあげた。 
「助けて……くれるの?」
「ああ、その代わりおじさん達の言う事をちゃんと聞いてお利口さんにしていたらね」
 桃色の乳首を摘まみながら、男はきっぱりと頷いた。

 男に手をとられ、リオはよろよろと部屋の中央へと引きずられていった。優しいが有無を言わせぬ強引さで、男はもう一度少年をベッドに横え、まるで恋人のように体を沿わせる。
 リオは、必死で毛布をたぐり寄せ、すがるような目で、覆いかぶさる男を見上げた。
「いい子だ。何も怖がることは無いからね。そんな風におとなしくしていたら、すぐに終わらせてあげるからね」
 少年の髪を撫でながら男は言った。
 額に触れる男の指は、とても冷たくて、リオはぶるぶると震えてしまう。男はもう片方の手で、少年の両腕をひとまとめにしシーツの上にそっと止めた。そして耳たぶに唇をつけてそっとささやく。
「従順だね。かわいいよ。リオ君……今から脚も大きく開いてあげるから待っててね。君は裸に剥かれ、四肢を開いたこの上なく無防備な格好で、私達の愛撫を受けるんだよ。恥ずかしくても、我慢するんだ。これが君の運命なんだからね」
 リーダー格がなだめている間に、ほかの男たちも上着を脱ぎじりじりとベッドに近づいてきた。
「お願い……おじさん、もう許して」
うわずる少年に、男は苦笑し、
「どっちにしてもリオ君は、奴隷になるんだよ。おじさん達の誰かが、君を競り落とすんだ。そうしたら、君はご主人様の命令には従わないといけない。体中を舐められて、君の小さくて可愛い秘密の部分に、ご主人様のものを毎日受け入れないといけないんだよ」
 そんな恐ろしいことをささやく。
 痩せぎすの男が、毛布の中に手を入れて、リオの陰毛をそっと撫でた。
「あ……」
 続いてもう一人が、ダイレクトに、リオの小さなものに触れてきた。
「やあっ」
 悲鳴は、大きな手のひらに阻まれくぐもったうめきになる。
「君はこんなに可愛いから、きっと誰もが夢中になるよ。もし、おじさんが君のご主人様になったら、欲しいものは何でも買ってあげる。どこへだって連れて行ってあげるし、服だって、好きなものを買ってあげる……わがままはなんでもきいてあげるよ……でも、これを嫌がるのだけは、許さないよ」
 男は、リオの秘めやかな窄まりにそっと指を当てた。そして微妙なタッチでなで上げる。
「んん……んっ……」
 口をふさがれ、懇願すら言えず、両目に涙が浮かび上がる。
 ベッドサイドの二人が、リオの両足をそれぞれ持ち、予告どおり大きく左右に開き始めた。
「だめえっ」
 噛みつかんばかりの激しさでリオは叫んだ。上にいる男は、唇を押さえていた手をはずし、にやにやとパニック状態のリオを観察している。
 懇願は、聞き入れられなかった。
 誰にも見られたくない、恥ずかしい場所が再びむき出しになり、男達の、ごくりと唾を飲む男が暗い部屋に響いた。
 リーダー格の男が掠れた声で言う。
「綺麗な色をしているね。ここに男のものを出入りさせたら、どんな色に変るんだろうね。ああ、おじさんはもう、我慢できないよ。おい、もっと大きく広げるんだ」
 命ぜられて、二人の男は、リオの腿の裏に手を当てると、これ以上ないくらい大きく割り拡げた。
「ああっ……」
 全てを拘束されて、陵辱のために身体を開かれる。
「さっきも言っただろう。おじさんはお医者さんなんだ」
 むき出しの部分を凝視しながら男は言った。目の色がすっかり変わっている。
「今から君を、たまらなく気持ちよくさせてあげるからね」
 その言葉が陵辱開始の合図になった。

 ※ ※ ※ ※ ※ ※

「んっ……んっ……ああ……んっ」
 胸の飾りを、ぬめぬめとした男の舌が這い回る。
 両手を軽く押えられ、覗き込まれるようにして、唾液のたっぷりと塗された舌で転がされる。
 両足は、開かれたまま手際よくベッドサイドに縛りつけられてしまっていた。
 細いロープが足首に食いこむ。痛い。だけど、痛みよりも未知の行為への恐怖心が上回っている。
「これだと、あまり大きくは開けないね」
 太ももを嘗めながら、残念そうにリーダー格の男が呟いた。
 確かに二人がかりで両足を開かれていた時より、ロープによる拘束は、角度が大分狭くなってはいる。
 だが、そのかわり、行為に没頭できる分、四人分の愛撫は限りなく濃い。頭の先から、足の爪の先まで、舐められて、リオは喘ぎ声を止める事ができないでいた。
 ひどく優しく、壊れ物を扱うように、男達は触れてきた。
 乳首を嬲られる、たまらない感覚から意識を逸らそうとすると、太ももの裏に生暖かい息を吹きかけられ、またたく間に飛ばしかけていた意識を呼び戻される。
 暖かないくつもの掌が華奢な身体を撫で回し、身体の奥から、何かじんわりとした、不可思議な感覚が湧き上がってきた。
 「いやらしくお尻を動かして……可愛いよ。君はそうやって、男に可愛がってもらう姿がとても似合っている」
 男の一人が、掠れた声で囁いた。
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