【完結】守り姫[完全版]

桐生千種

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3章 旅する少年

4.魔物の導き

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 少年が、もうすぐ森を抜けようというとき、獣は再び姿を現した。

「人間」

 それは獣から発せられた声だった。
 人間の言葉を操れる獣は、やっぱり魔物だったのかもしれない。

 けれど少年は、それを気にすることなく、続けられるであろう言葉を待った。

「何故、見逃した」

 何故、村人に嘘を吐いて魔物を逃がしたのか、と。

「だって、キミは何もしていないだろう?」

 少年にとっては、その言葉がすべてだった。
 たとえ魔物であっても、どんなに人と違う姿をしていても、何もしていないのなら迫害の対象になるべきではない。

 何よりこの魔物は人の言葉がわかる魔物だ。

 魔物は少年を観察するように、じっと眺めてからひと言、「……そうか」と呟いた。

「お前は、どこへ行く?」

「人を探してるんだ」

 魔物の言葉に、少年は正直に答えた。

 村での話。
 眠り続ける少女。
 少年が探している人。

「死んでいるのではないか?」

「そんなはずない!」

 魔物の言葉に、少年は叫んだ。

「あの日から、身体は成長してる! 耳を傾ければ呼吸だってしてる! 心臓だってちゃんと鼓動してるのに、死んでなんかいるもんか!」

 それは少年が最も恐れていたことだった。

 目の前の魔物が言う分には構わない。

 だけど、少年の村の誰かが「少女は死んでいる」なんて言ったら、きっと本当に少女は死んだことにされてしまう。

 今度こそ本当に身体を焼かれて、土に埋められてしまう。

 だから早く、少年は帰らなければならなかった。
 目的の人物を、早く見つけなければならなかった。

「……蝶を、頼るといい」

 取り乱す少年に、魔物は告げた。
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