【完結】龍の姫君-序-

桐生千種

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第3話 少年と姫君

初めての友達

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 興味を示したように、キバは龍麗へと目を向けた。

「俺、家位もねぇ野良だけど?」

「でも! 話しかけてくれたっ!」

「はあ?」

 「意味わかんねぇ」とキバは呟く。

 キバの目に映る龍麗は、どう見ても、自分のような家位を持たない人間を毛嫌いする側の、本家に近い上位の家位を持つ家の子供。

 けれどそれが、自分のような人間に話しかけられて嬉しいと、その表情が言っている。

「私、ルリっ! そっちに行ってもいい?」

 上に登る、と育ちのいいお嬢様のはずの人間が言っている。

「……いい。俺が行く」

 龍麗が、自分のいる場所まで登って来られるとは、キバには到底思えなかった。

 起き上がったキバは、真っ直ぐに、迷いなく、龍麗の目の前へ飛び降りた。

「で? 何を話したいんだよ?」

 キバは、今度は気の根本へと腰を下ろした。

 地面に座るキバを見て、それに倣うように龍麗も地べたに座り込む。

「お、おい、こんなとこに座っていいのかよ」

 キバの目は、驚きに見開かれる。

「どうして? あなたも座ってるじゃない」

 龍麗は、当然だとでもいうように言ってのけた。

「私ね、みんなと同じがいいの。どっちが偉いとか偉くないとか、そういうの関係なく、みんなと同じようにお喋りして、遊んだりしたくて。だって、その家に生まれたってだけで偉いなんて、おかしいもん。私は何も偉いことしてないのに」

 呆然と、キバは龍麗を見つめる。

「でもね、学舎に来て、先生はみんなと同じに特別扱いはしないって言ったけど、みんな違うんだ……。誰もお友達になってくれない……」

 落ち込んだように話す龍麗を、キバはただ見つめるだけ。

「でも、あなたは話しかけてくれた! すっごく嬉しかったよ!」

「お前……」

「ん?」

「いいヤツだなっ!」

 ニカリと、笑うキバに龍麗の心臓がドキリと跳ねた。

「俺、キバってんだ。ただのキバ。家位持ちって傲慢なヤツばっかだと思ってたけど、お前みたいなヤツもいるんだな。お前とだったら、仲良くしてやってもいいぜ」

「本当!?」

 龍麗が声をあげる。

「お友達になってくれる!?」

「お、おう……」

「やったあ! ありがとう、キバ!」

 ドキリと、キバの心臓が跳ねた。

「変なヤツ……」

 フイ、と顔を背け地面に視線を移したキバのその頬は、どことなく、赤い。

「私、変?」

 じっと、龍麗がキバの横顔を見つめる。

「キバ、顔赤い」

「赤くないっ!!」

 否定を口にしながらも、自らの頬が熱く熱を以ていくのがキバにはわかった。

「お前、アレ迎えじゃねーの」

 話を逸らすように告げられたその言葉に、龍麗は視線を動かした。

 そして、龍麗が中庭へと入って来た入り口に、1人佇む優雅の姿をとらえた。
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