17 / 24
2章
6
しおりを挟む
結局授業は殆んど頭に入ってこなかった。スライドに写された文字を必死でノートに写していたつもりだが、気づくと複数の文字が一ヶ所に重ねられている。気合いを入れようと姿勢をただす。2分後には腰が曲がる。頚椎を切断されたかのように頭が真下にガクンと落ち、目が覚める。いつの間にか語られている資料が変わっている。超短時間睡眠の効力か、授業終了五分前くらいに目が冴え始める。
授業が終わり、いつものようにガラガラと机の上を片す音が木霊する。例に漏れず、僕も筆箱にシャーペンと消ゴムを入れているところに廉がやって来た。
「一服しに行こう。」
「そのつもりだった。」
雲一つ無い青空の下、複数の学生たちが時代遅れな雲を作る。作っては消え、消えては作るを繰り返す。
「ノート取ってた?」
「そんなわけない。」
廉があっけらかんに答える。
「だよね。」
廉はわりとなんでもそつなくこなす。どんな分野の学問でも、一度聞けばある程度は理解できるため、授業中にノートは取らず、テスト期間や課題が出たときだけみんなの勉強会に参加して知識を盗む。という事を知っているから尋ねるだけ無駄だとは知っていた。
「なに、寝てたの?珍しい。」
廉とは真逆で自分は授業内である程度のメモをとる。テスト前に忙しくなるのが嫌だから。それに知識偏重型の自分は数字を扱う分野がとにかく苦手なため、そういう授業の対策のため少しでも学習時間を作りたい。
ため息と一緒に吐いた煙はやはり頼りない。
「やっぱり紗綾でいいんじゃないの?」
廉が急に会話の舵を切る。
「何を根拠にしたやっぱりなわけ?」
「根拠なんてないよ。何かを好きになったり、なられたりするのに理由が必要か?」
「それを言えば恋愛は誰々でいい、でするものじゃないだろ。」
「言えてるな。」
そう言って廉は笑った。
「でもさ、マジな話、今の状態はあんまり良くないよ。自分で理解してるだろうけどさ。」
煙草を加えた彼が少し真面目な顔をする。
「きっとお前は終わらせる勇気が無いんじゃなくて、終わらせ方を知らないだけさ。もしくは知ってはいるが機会に恵まれていないか。」
続けて彼は言う。
「終わらせ方を知ることも大人になるのに必要なんだよ。」
「誰の言葉?」
「俺の親父。」
そう言って廉が、また屈託なく歯を見せる。
人は生を受けた時から色々な事を始め、その際に周りの誰かから何かを学ぶ。歩き方を、話し方を、感情や表現を。だが往々にして誰も止め方は教えてくれない。人は死に方を教わらない。きっとそれは大人になる過程で自分で学ぶのだ。他者から受けとるのではなく、歩む道の途中に落ちているものを拾うのだ。そういう意味ではたまたま僕の歩んだ道には落ちていなかったのかもしれない。そして今がそれを拾うときなのかもしれない。
授業が終わり、いつものようにガラガラと机の上を片す音が木霊する。例に漏れず、僕も筆箱にシャーペンと消ゴムを入れているところに廉がやって来た。
「一服しに行こう。」
「そのつもりだった。」
雲一つ無い青空の下、複数の学生たちが時代遅れな雲を作る。作っては消え、消えては作るを繰り返す。
「ノート取ってた?」
「そんなわけない。」
廉があっけらかんに答える。
「だよね。」
廉はわりとなんでもそつなくこなす。どんな分野の学問でも、一度聞けばある程度は理解できるため、授業中にノートは取らず、テスト期間や課題が出たときだけみんなの勉強会に参加して知識を盗む。という事を知っているから尋ねるだけ無駄だとは知っていた。
「なに、寝てたの?珍しい。」
廉とは真逆で自分は授業内である程度のメモをとる。テスト前に忙しくなるのが嫌だから。それに知識偏重型の自分は数字を扱う分野がとにかく苦手なため、そういう授業の対策のため少しでも学習時間を作りたい。
ため息と一緒に吐いた煙はやはり頼りない。
「やっぱり紗綾でいいんじゃないの?」
廉が急に会話の舵を切る。
「何を根拠にしたやっぱりなわけ?」
「根拠なんてないよ。何かを好きになったり、なられたりするのに理由が必要か?」
「それを言えば恋愛は誰々でいい、でするものじゃないだろ。」
「言えてるな。」
そう言って廉は笑った。
「でもさ、マジな話、今の状態はあんまり良くないよ。自分で理解してるだろうけどさ。」
煙草を加えた彼が少し真面目な顔をする。
「きっとお前は終わらせる勇気が無いんじゃなくて、終わらせ方を知らないだけさ。もしくは知ってはいるが機会に恵まれていないか。」
続けて彼は言う。
「終わらせ方を知ることも大人になるのに必要なんだよ。」
「誰の言葉?」
「俺の親父。」
そう言って廉が、また屈託なく歯を見せる。
人は生を受けた時から色々な事を始め、その際に周りの誰かから何かを学ぶ。歩き方を、話し方を、感情や表現を。だが往々にして誰も止め方は教えてくれない。人は死に方を教わらない。きっとそれは大人になる過程で自分で学ぶのだ。他者から受けとるのではなく、歩む道の途中に落ちているものを拾うのだ。そういう意味ではたまたま僕の歩んだ道には落ちていなかったのかもしれない。そして今がそれを拾うときなのかもしれない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
#秒恋9 初めてのキスは、甘い別れと、確かな希望
ReN
恋愛
春休みが明け、それぞれに、新しい生活に足を踏み入れた悠里と剛士。
学校に向かう悠里の目の前に、1つ年下の幼なじみ アキラが現れる。
小学校時代に引っ越した彼だったが、高校受験をし、近隣の北高校に入学したのだ。
戻ってきたアキラの目的はもちろん、悠里と再会することだった。
悠里とアキラが再会し、仲良く話している
とき、運悪く、剛士と拓真が鉢合わせ。
「俺には関係ない」
緊張感漂う空気の中、剛士の言い放った冷たい言葉。
絶望感に包まれる悠里に対し、拓真は剛士に激怒。
拗れていく友情をよそに、アキラは剛士をライバルと認識し、暴走していく――
悠里から離れていく、剛士の本心は?
アキラから猛烈なアピールを受ける悠里は、何を思う?
いまは、傍にいられない。
でも本当は、気持ちは、変わらない。
いつか――迎えに来てくれる?
約束は、お互いを縛りつけてしまうから、口にはできない。
それでも、好きでいたい。
いつか、を信じて。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる