7 / 20
第7話「王妃派サロンの仮面舞踏会」
しおりを挟む王城の一角――普段は王妃の私的なサロンとして使われている大広間が、その夜だけは別世界みたいに姿を変えていた。
天井から吊るされたシャンデリアには、無数のクリスタルが絡みつき、ろうそくの光を砕いては床へと降らせている。
壁には金糸で刺繍されたタペストリー、床には真紅の絨毯。
そして、あちこちに配置された大きな鏡が、仮面とドレスと笑い声を何倍にも増幅していた。
仮面舞踏会――。
王妃派の重鎮たちが主催し、政治と娯楽と噂話が入り混じる夜。
顔を隠す仮面は、「本音が漏れても責任を減らしてくれる便利な小道具」として、貴族たちに愛されている。
(まあ、顔隠れてても声も身長も仕草もそのままなんだけどね。
“誰かわからないふり”っていうゲームなんだよ、これは)
レティシア・ド・ヴァロワは、鏡の前で自分の姿を確認した。
深い群青色のドレス。
胸元と腰にだけ控えめに銀の刺繍が入っていて、動くたびに微かに光を返す。
仮面は目元だけを覆うタイプで、黒と銀のレースが重なり合い、片側にだけ小さな羽根があしらわれている。
派手すぎず、地味すぎず。
「私は私である」と主張しながらも、「わざわざ目立とうとしている」とは思われない絶妙なライン。
「お嬢様、とてもお綺麗です……」
クロエが、うっとりした目でレティシアを見つめている。
その横で、ギルバートが淡々と確認する。
「仮面の紐はしっかり結んでおります。踊っている最中に外れる心配はありません」
「ありがと。途中で素顔が丸見えになったら、それこそ“悪役令嬢の醜態”って明日の朝刊行きだものね」
冗談めかして言いながらも、胸の鼓動はいつもより少し早い。
今日の目的は、ただ踊ることじゃない。
――モンテール伯爵を含む王妃派の連中から、“余計なこと”を喋らせること。
テオが昨日渡してくれた帳簿には、とんでもない数字が並んでいた。
王家の兵糧として買い上げた麦や干し肉が、途中で謎の「中継支出」として姿を消している。
その名前のひとつが、モンテール伯爵。
(兵糧をどこかに横流ししてる。
用途はまだわからないけど、“私腹を肥やすため”か、“何か別の勢力を肥えさせるため”か)
どちらにしても、放っておけない。
革命前夜の国で兵糧が消えるのは、火薬庫に火を投げ込むのと同じだ。
「お嬢様、本当にお一人で……?」
クロエが不安げに袖を掴む。
レティシアは、その手をそっと握り返した。
「ギルバートも一緒よ。
それに、今日は“仮面”があるもの。ちょっとくらい悪役ムーブしても、言い訳ききやすいでしょう?」
クロエはまだ納得しきれない顔をしていたが、最後には「お気をつけて」と頭を下げた。
レティシアはマントを翻し、ギルバートとともに馬車に乗り込む。
夜の王城へ向かう道は、いつもより静かで、街灯がやけに冷たく光っていた。
◆
王城の仮面舞踏会用の大広間は、普段の舞踏会よりもさらに幻想的だった。
全員が仮面をつけている。
羽根付き、宝石付き、顔全体を覆うもの、目元だけを隠すもの――形は様々だが、それでも誰が誰かはだいたいわかる。
歩き方、背丈、いつも好んでいる色、連れの顔ぶれ。
それらの情報を合わせれば、「正体当てクイズ」は簡単だった。
「……いるわね、モンテール伯爵」
レティシアは、シャンデリアの光の隙間から、部屋の中央付近をそっと見渡した。
金縁のマスク。
腹の出た中年の男。
笑い声が妙に大きく、手の動きがやたらと芝居じみている。
(あの笑い声と腹回り、隠しようがないのよね……)
彼の周りには、王妃派の取り巻きが数人。
みんな似たような金の飾りをつけた仮面で、酒を片手に盛大に自分たちの話だけをしている。
レティシアが姿を現した瞬間、その輪の外側から、いくつもの視線が刺さった。
「あら……あれ、ヴァロワ嬢じゃない?」
「本当に来たんだ……てっきり、もう王妃派の場には顔を出さないかと思っていたのに」
「恥知らずもここまでくるとすごいわね。婚約破棄されたくせに」
ひそひそ声。
仮面の奥の目が、愉快そうに細められている。
レティシアは、あえて堂々とした足取りで会場の中心へ向かった。
視線を受け止めるのは、慣れている。
昔から、「あいつは生意気だ」「生意気な女は嫌いだ」と言われ続けてきた。
今さら、何を足されようと、ラベルはもう変わらない。
「レティシア・ド・ヴァロワ嬢。お見事ね」
仮面越しに声をかけてきたのは、王妃付きの伯爵夫人だ。
紅い羽根の仮面に、唇だけを真っ赤に染めている。
「何がお見事かしら?」
レティシアが首を傾げると、夫人はくすくす笑った。
「“婚約破棄された元婚約者”として、これだけの場に出てこられるその根性よ。
ほら、普通の令嬢なら、恥ずかしくて部屋に引きこもっている頃でしょう?」
「まあ。
――私、普通じゃなくてよかったわ」
即答。
「引きこもるくらいなら、こうして美味しいワインと面白い噂話を取りに来たほうが、ずっと生産的ですもの」
その返しに、周囲から小さな笑い声が漏れる。
表向きは「おどけた冗談」、裏では「まだ負けを認めてない女」の扱い。
モンテール伯爵も、こちらを見てにやりと笑った。
「おお、これはこれは。
王太子殿下にふられたのに、まだ王宮に顔を出すとは――さすがヴァロワ嬢。面の皮が厚い」
仮面に隠れていなくてもわかるくらいのニヤニヤ顔。
レティシアは、ゆっくりとグラスを揺らした。
「ありがとうございます、伯爵。
“面の皮が厚くなければ、生き残れない場所”って、ここで学んだものですから」
さらっと返すと、伯爵は「はっ」と笑い声を上げた。
「言うじゃないか。
だが、もう少し“ご自分の立場”をわきまえたほうがいいぞ? ヴァロワ公爵家が、いつまでも今の地位にいられるとは限らない」
「そうですわね」
レティシアは、あっさり頷いた。
「だからこそ、“今のうちにやれること”をやっておこうと思いまして」
「やれること?」
「例えば――」
レティシアは、グラスを傾けながら、わざと何気ないふうを装って呟いた。
「“最近、税務官たちも仕事熱心ですわね”とか」
その一言で。
モンテール伯爵の手が、わずかに止まった。
ほんの一瞬。
本当に、刹那の“間”だった。
普通の人間なら見逃すようなその微細な変化を、レティシアは逃さない。
「税務官、だと?」
伯爵の声がわずかに硬い。
周囲の取り巻きが、「何の話だ?」と目を見合わせる。
レティシアは、わざととぼけた。
「ええ。最近、王都のほうでも“麦の動き”に目を光らせているとか。
ほら、あまりに在庫の数字が合わないと、帳簿の神様が怒りますでしょう?」
モンテール伯爵の喉が、ごくりと鳴ったのが聞こえた。
取り巻きの一人が、慌てて笑い声を被せる。
「はは、帳簿の神様とは面白いことを仰る」
「冗談よ。
――でも、“数字は嘘をつきにくい”っていうのは、本当ですわ」
レティシアは、笑顔のまま続けた。
「人は平気で嘘をつきますけれど。
数字は、不自然なところでちゃんと『ここに何かある』って顔を出しますもの」
テオと一緒に夜な夜な眺めていた帳簿の列が、頭に浮かぶ。
王妃派の名前と、怪しい支出の線。
モンテール伯爵は、無理やり笑い声を作り出した。
「ま、まあ、ヴァロワ嬢は昔から数字がお得意だったな。
だが、数字ばかり見ていると、人の温かさを忘れるぞ?」
「そうですね。
……だから、“人の冷たさ”も忘れないように気をつけていますの」
さらっと刺す。
伯爵は、「ふん」と鼻を鳴らしてワインをあおった。
わかりやすすぎる。
(ビンゴ。
税務官と兵糧の話が、ちゃんと神経に触った)
これで確信が持てた。
モンテール伯爵は、兵糧の横流しに関わっている。
問題は、その兵糧がどこに消えているかだ。
単なる私腹肥やしならまだマシだが、もし反王家勢力に流れていたら――革命の火薬庫に直通の導線だ。
「レティシア嬢」
別の男の声がした。
少し高めで、芝居がかった響き。
仮面の向こうで、レティシアは目を細める。
この声は――王妃の愛人として噂されている侯爵。
彼もまた、帳簿上では怪しい出入りが多い人物だ。
彼女は、あえて傲慢そうに顎を上げた。
「夜会の主役が揃ってきましたわね。
――“この国の金の流れを握っている皆様”が」
わざと意味深な言い方をすると、数人の眉間に皺が寄る。
それを見ながら、レティシアはひそやかに満足した。
(はいはい、びびって。
“悪役令嬢が何か知ってる”って思ってくれたほうが、いろいろ楽だから)
噂は、時に武器になる。
「冷酷で傲慢で、何をしでかすかわからない女」という印象は、こういう場では実に便利だ。
◆
やがて、楽団の音が少しだけ柔らかくなった。
舞踏会の定番――ワルツのリズム。
仮面越しに、幾つもの手が差し出され、ドレスの裾がふわりと舞い始める。
レティシアは、壁際でグラスを傾けながら、その光景を眺めていた。
(踊りたくないわけじゃないけど……
ここで変に相手を選ぶと、また変な意味付けされそうなのよね)
王太子アルマンと踊る気は、一ミリもない。
かといって、王妃派の中堅貴族と踊れば、「まだ権力にすがっている」と言われるだろう。
そんなことを考えていたとき。
「お一人で壁の花、というのも珍しいな」
聞き慣れた、低い声。
レティシアは振り向いた。
そこに立っていたのは、黒いシンプルなマスクをつけた男。
深い青の礼服。
姿勢は真っ直ぐで、所作のひとつひとつが無駄なく美しい。
(……仮にこの人が誰だかわからなくても、多分一瞬で“王族だ”って察すると思う)
シャルル・ド・リュミエール。
氷の第二王子。
もちろん、お互いに正体はわかっている。
だが、形式上は“仮面をつけた匿名の紳士淑女”として、会話をしなければならない。
「まあ。
“こんなところにいて大丈夫なんですか、殿下”と聞くべきかしら」
レティシアが肩をすくめると、シャルルは微かに目を細めた。
「仮面の下で、普通に身分を呼ぶのはルール違反では?」
「仮面舞踏会のルールって、“破るために存在してる”みたいなところありますし」
さらっと返すと、シャルルは小さく息を吐いた。
「……本当に、君と話していると、油断すると笑いそうになる」
「笑ってくださって構いませんわよ。
どうせここ、誰がどんな顔して笑ってるかなんて、誰もちゃんと見てませんから」
小さく皮肉を混ぜる。
周囲では、仮面をつけた貴族たちが踊り、笑い、噂話をばらまいている。
そのどれもが、この国の未来から見れば取るに足らない「今の快楽」の延長線上にある。
「一曲、どうだ?」
シャルルが手を差し出した。
予想していなかった誘いに、レティシアは一瞬だけ目を丸くした。
「殿下、私と踊ると“第二王子は悪役令嬢と手を組んでいる”って噂が立ちますよ?」
「もう半分くらいは立っているだろう。今さらだ」
あっさり。
レティシアは、少しだけ迷った。
けれど――この場で、第二王子と公然と一曲踊ることは、「自分が完全に捨てられた駒ではない」という示威にもなる。
「……では、喜んで」
レティシアは、その手を取った。
手袋越しに伝わる体温。
シャルルの手は、武人のそれではないが、無駄に柔らかくもない。
彼に導かれ、ダンスフロアの中央へ進む。
周囲の視線が、一瞬だけこちらに集中するのを肌で感じた。
(さあ、見てなさいな)
レティシアは、仮面の奥で笑った。
ワルツのリズムに合わせて、一歩、二歩、三歩。
シャルルのリードは、驚くほど滑らかで、安心感がある。
「殿下、意外とお上手なんですのね」
「“意外と”は余計だ」
口ではそう言いながらも、口調はどこか柔らかい。
「宮廷にいると、嫌でも踊りを覚えさせられる。
ただ――君ほど“足を揃えるのが上手い相手”とは、あまり踊ったことがないが」
「それ、褒め言葉として受け取っておきます」
レティシアはくすりと笑った。
「私、何かと“場を乱す女”だと思われてますから。
“ちゃんとリズムに乗れる”って思ってくれる人がいるなら、それだけで救われますわ」
シャルルの視線が、ほんの少しだけ柔らかくなる。
「君は、わざとリズムを外すときがあるだろう」
「バレてました?」
「周囲があまりに愚かだと、合わせる気が失せるのは――よくわかる」
その言葉に、レティシアは、胸の奥がきゅっとなるのを感じた。
この人は、本当に見ている。
自分の「ずらし」も、「合わせ方」も、その理由も。
「しかし」
シャルルは、少しだけ視線を落とした。
「君のように頭の切れる女は――宮廷には向かない」
不意の一言に、レティシアは目を瞬く。
「それ、遠回しに“早く出ていけ”って言ってません?」
「違う。
ここでは、“余計に見える者”は真っ先に排除される」
シャルルの声は、氷のように静かだった。
「考える女。
数字を見る女。
現実を直視する女。
――そういう者は、王妃派にとっても、兄上にとっても、都合が悪い」
その言葉の一つ一つが、レティシアの胸に刺さる。
前世でも、そうだった。
数字を直視する歴史家や、警鐘を鳴らす思想家は、たいてい最初に嘲笑され、次に無視され、最後に消される。
「でも、国にとっては?」
レティシアが問い返すと、シャルルは、ほんの少しだけ苦い笑みを浮かべた。
「――国には、必要だ」
その一言は、胸の内側をじんわりと熱くした。
仮面の下で、頬が少しだけ熱くなるのを自覚する。
それをごまかすように、レティシアは視線を横に流した。
「殿下、そんなこと言ってると、“私が勘違いして惚れちゃったらどうするんです?”」
「それは困るな」
即答。
「私は、恋愛沙汰で足元をすくわれる趣味はない。
君も同じだろう?」
「まあ、そうですけど」
言い切られて、レティシアは思わず笑ってしまった。
(本当にこの人、容赦ない)
その“容赦のなさ”が、妙に心地いい。
甘い言葉で誤魔化されるより、ずっと信頼できる。
「ただ――」
シャルルは、ほんの少しだけ声を落とした。
「君がこの国に残る限り、私は君の存在を“利用したい”と思っている」
「こわ」
反射的にそう返しながらも、心のどこかで、レティシアは安堵していた。
(“利用したい”って明言してくれるほうが、私は楽)
利用し、利用される。
その関係のほうが、よっぽど健全だ。
ワルツが終わりに近づき、最後の一回転。
シャルルがレティシアの腰を支え、ふわりとスカートが広がる。
仮面越しに目が合った。
初めて会ったときよりも、少しだけ距離が近い。
そう感じたのは、踊っているからだけ――だと、自分に言い聞かせた。
「ありがとう、殿下」
音楽が終わり、礼を交わして離れる。
シャルルが一歩下がり、軽く頭を下げた。
「こちらこそ。
――“危険な悪役”とのダンスは、なかなか刺激的だった」
「褒め言葉としていただいておきます」
別のペアに視線をそらしながらも、レティシアの耳には、さっきの一言が何度も反芻されていた。
『君のように頭の切れる女は、宮廷には向かない。
だが、国には必要だ』
宮廷に向いていない。
けれど、国には必要。
(……じゃあ私は、どこに立てばいいの?)
悪役令嬢として?
改革派のブレーンとして?
それとも――歴史の外側の「異物」として?
答えはまだ出ない。
ただ、胸の奥に、小さな熱とざらっとした痛みだけが残った。
◆
シャルルと別れたあと、レティシアは再びサロンの中を歩き始めた。
テオから渡されたメモには、モンテール伯爵以外にも、いくつか怪しい名前が書かれている。
今日の目標は、「彼らがどんなネットワークで繋がっているか」を掴むこと。
仮面の奥で、レティシアの目は獲物を探す猛禽みたいに鋭くなっていた。
ちょうどその時。
「……ヴァロワ嬢」
背後から、粘っこい声が聞こえた。
振り返ると、そこには金と深紅のマスクをつけた男――噂の侯爵が立っていた。
王妃の愛人。
兵站関係の予算にも口を出していると言われる男。
「先ほどは、お話をゆっくりできず残念でしたな」
「私も残念ですわ。
――“兵糧の話”は、じっくり聞いてみたかったのに」
あえてストレートに言うと、侯爵の肩が僅かに揺れた。
「ふふ……本当に、あなたは危険な女だ。
仮面をつけているのに、まるで裸にされているような気分になりますよ」
「褒められている気がしないんですけれど」
侯爵は、レティシアの耳元に顔を寄せてきた。
アルコールと香水の濃い匂い。
ギルバートが視界の端で身構えるのがわかるが、レティシアはあえてその場に留まった。
「王妃様のサロンでは、時々“面白い話”が飛び交うのです」
侯爵が囁く。
「例えば――“王妃派の中に、兵糧を横流しして私腹を肥やしている者がいる”とか」
心臓が、どくんと鳴った。
わざと、グラスを静かに揺らす。
「あら怖いお話。
そんなことをしたら、“そのうち首が飛ぶ”って、歴史書に書いてありましたわ」
侯爵は、くつくつと笑った。
「ええ、私もそう思います。
ですが――“誰が”“どこへ”“どれくらい”流しているかは、なかなか表には出てこない」
その言い回しに、レティシアは確信した。
(こいつ、知ってる)
帳簿の線の先。
兵糧の行き先。
モンテール伯爵一人の仕業じゃない。
「ヴァロワ嬢ほど頭の切れる方なら、すぐに突き止めてしまうかもしれませんがね」
挑発。
そして、ほんの少しの期待。
侯爵は、レティシアの耳元から離れ、仮面越しに笑った。
「――私としては、あなたのような人材が、“どちらに転ぶか”を眺めるのが楽しみでならない」
「転ばないように気をつけますわ」
レティシアは、ふっと笑ってみせた。
その笑みの奥に、「すでにあなたの足元、掘ってますけどね?」という含みを込めながら。
侯爵が去っていくのを見送り、レティシアは深く息を吸った。
(兵糧横流しの噂、王妃派の中でも認識されてる。
“誰かひとりの秘密”じゃない。ネットワークそのものが腐ってる)
仮面舞踏会の喧騒の中で、ただひとり、違う温度で世界を見ている女がいた。
悪役令嬢の仮面。
その下で、レティシアは静かに笑う。
「……いいわ。
兵糧を弄ぶ連中の首、ひとつひとつ、丁寧に絞ってあげましょう」
シャンデリアの光が、彼女の銀の仮面に反射する。
その瞬きは、まるで刃の光のように鋭く、冷たかった。
この夜、王妃派サロンの仮面舞踏会で交わされた幾つもの言葉が、
数年後――“革命の炎”の形を変える、小さな伏線として積み重なっていくことを、
この場にいる誰も、まだ知らない。
105
あなたにおすすめの小説
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームを元にした人気のライトノベルの世界でした。
しかも、定番の悪役令嬢。
いえ、別にざまあされるヒロインにはなりたくないですし、婚約者のいる相手にすり寄るビッチなヒロインにもなりたくないです。
ですから婚約者の王子様。
私はいつでも婚約破棄を受け入れますので、どうぞヒロインのところに行って下さい。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ
ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」
ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。
「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」
何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。
都合のいい女は本日で卒業。
今後は、余暇を楽しむとしましょう。
吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる