17 / 20
第17話「燃え上がる都と、届いた叫び」
しおりを挟むその日は、風の匂いが違っていた。
いつもの冷たい石と煤の匂いに、焦げたパンみたいな、乾いた匂いが混じっている。
それはやがて、焼けた布と血の匂いに変わった。
リュミエール王都。
石畳の上に、最初の叫び声が落ちたのは、まだ太陽が頭の上にある時間だった。
◆
「もう限界だッ!」
パン屋の店先で、誰かが叫んだ。
並べられたパンは、信じられないほど小さい。
値札だけが、去年の二倍。
「これで“家族四人ぶんだ”って? ふざけるな!」
「すまねぇんだ……小麦がもう入らねぇ。
これ以上デカくしたら、うちが潰れる」
店主も限界だ。
頬はこけ、目は落ち窪んでいる。
それでも、怒りの矛先は彼だけを素通りしない。
「俺たちにどうしろってんだよ!」
「子どもが三日もまともに食ってねぇんだぞ!」
怒号が重なり、肩がぶつかり、誰かが看板を叩き落とした。
石畳に、木の割れる音。
木片が飛び散り、子どもの泣き声が上がる。
その瞬間。
「落ち着けって! ここで暴れたってパンは増えやしねぇ!」
群衆の後ろから飛んだ声は、よく通った。
黒髪を後ろで結んだ青年。
粗末なコート。
鋭い瞳。
ダミアンだった。
「落ち着け、って言って暴動止めるタイプじゃないでしょ、あんた」
野次を飛ばした男に、ダミアンは笑った。
「そうだな。
――だから、“落ち着いて怒れ”って言い直す」
彼は、一歩前に出た。
「おい、あんた。
今日のパン代、去年の何倍だ?」
「……二倍だ」
「そのパンの大きさは?」
「半分だ」
「つまり、“四倍の金”を払って、前より“少ないパン”を食うってことだよな」
周囲がどっと笑い、すぐに怒りに変わる。
「誰がその差額を食ってんだ?」
その問いに、答えられる者はいない。
だが、皆、心のどこかで知っている。
王宮。
王妃派貴族。
兵糧を握っている連中。
ダミアンは、群衆を見渡した。
顔見知りの顔。
見知らぬ顔。
飢えた頬と、血走った目。
(もう、止まらない)
レティシアがいなくなってから、王都は無茶苦茶にバランスを崩した。
パンの供給は途切れ、
燃料は高騰し、
サロンは締め付けられ、
怒りは行き場を失って溜まり続けている。
その蓄積が、今、表に噴き出そうとしている。
「俺たちは、もう十分我慢した」
ダミアンは、低く言った。
「パンがない夜を何度も越えた。
子どもの泣き声を聞きながら寝たふりをした。
“いつかきっと良くなる”って、誰の顔も見えない言葉を信じ続けた」
握った拳が震える。
「なのに――王宮では、まだ舞踏会をやってる。
まだ高いワインを飲んでる。
まだ、飾りみたいな服を新調してる」
誰かが、唾を吐いた。
「いいか、お前ら」
ダミアンは、声を張り上げた。
「パンを焼いてるのは誰だ?
家を立ててるのは誰だ?
石畳を敷いてるのは誰だ?
――俺たちだ」
「俺たちだ……!」
群衆が、呼応する。
「じゃあ、何で俺たちは、こんなちっぽけなパン一つに怯えてる?」
空気が、ぴき、と何かを割る音を立てた気がした。
「王も、貴族も、王太子も――“要らない”」
その言葉は、空へ投げるにはあまりに重い。
けれど、地面から湧き上がった怒りが、それを軽々と受け止める。
「俺たちの生活を決めるのは、俺たちでいい!
“見えない王冠”のために腹を減らすのは、もうやめだ!」
叫びに、誰かが応えた。
石が宙を飛ぶ。
店の窓ガラスが割れる。
たちまち、他の通りでも似たような光景が広がり始めた。
どこかの武器屋から、斧や棍棒が持ち出される。
鍛冶屋から鎚が消える。
怒りは、もう素手では収まりきらない。
◆
「報告!」
王宮の廊下を、靴音が走り抜けた。
「北区市場周辺で暴動発生!
住民が店を襲い、兵士と衝突! 負傷者多数!」
執務室では、アルマンが机の上の書類を乱暴に掴んでいた。
「またか……!」
思わず吐き捨てる。
ここ数ヶ月、“小さな騒ぎ”の報告は何度もあった。
そのたびに兵を出し、適当に鎮圧させてきた。
だが、今日は違う。
「規模が大きすぎます!
事前に噂が広まっていたのか、各通りから人が雪崩れ込んでいるようで――!」
「主導者は?」
「名前までは……しかし、“黒髪の青年が先頭で叫んでいる”と」
(ダミアン……)
シャルルが横で目を細める。
アルマンは、その名を知らなかった。
「兄上、まずは鎮静のための部隊を――」
「分かっている!」
苛立ちが先に立つ。
(どうしてこうなった?)
レティシアがいなくなってから、
王都の空気は明らかに変わった。
“謎の食糧供給”が止まり、
「王族以外の救い」への期待を持つ者は減ったはずだった。
なのに、その代わりに現れたのは、
“王族への絶望”だ。
「近衛兵と王立軍を出せ」
アルマンは、早口で命じる。
「威嚇射撃で構わん。
“王家は見ている”と分からせれば、すぐに引き下がる」
「しかし、殿下。
相手は飢えた民です。
下手に威嚇すれば、逆に――」
「俺の命令だ!」
叫んでしまった瞬間、自分の声の震えに気づく。
恐怖。
(俺は――“民衆の怒り”が怖いのか)
止めどころを知らない怒りの波。
その中心に自分の顔が掲げられる光景が、嫌でも頭に浮かぶ。
シャルルが、弟ではなく「王太子」を見る目で口を開いた。
「兄上。
武力を出すのなら、同時に“退路”も用意すべきです。
逃げ場のないところで威嚇すれば、
彼らは戦うしかなくなります」
「戦うなんて愚かだ。
兵に勝てるわけがない」
「追い詰められた者は、勝てないと分かっていても刃を向けます」
レティシアなら、きっと同じことを言うだろう。
『逃げ場のない人間を追いつめて、“なぜ反発するんだ”は、ちょっと頭悪いわよ、殿下』
その声が、シャルルの脳裏に蘇る。
だが――ここでぶつかり続けることが、
「兄弟喧嘩」では済まされなくなっているのも分かっていた。
「……兄上。
せめて“民を守るための鎮圧”という形に――」
「俺に説教をするのか? シャルル」
アルマンの声は、冷えていた。
「ヴァロワ嬢に毒されたお前の言葉を、
今この場で採用しろと?」
その一言が、空気を切り裂く。
シャルルは、拳を握りしめた。
「…………いいえ」
噛み殺した言葉が、喉の奥で血の味を伴う。
「……兄上のご判断に従います」
「なら、兵へ伝令だ。
“暴徒には容赦するな。
ただし、王宮への突入だけは絶対に許すな”」
中途半端な命令。
“容赦するな”と“ここだけは守れ”を並べたその指示は、
現場では「どこまでやっていいのか」が違う形で解釈されるだろう。
シャルルには、それが分かっていた。
(止められない……)
王族でありながら、
今この瞬間、彼はほとんど何もできない。
“第二王子”の命令は、“王太子”の命令を上書きできない。
その構造が、今ほど憎らしいと思ったことはなかった。
◆
王都の北区は、すでに火の匂いで満ちていた。
パン屋が一軒、燃えている。
燃え移った布。
逃げ惑う人々。
兵士たちは、楯を構え、列を作っていた。
最初の一撃は、石だった。
次が、棒。
その次が、刃物。
「下がれ! これは王太子殿下の命令による鎮圧である!」
隊長の声は、怒号にかき消される。
「俺たちを飢えさせたのは、その“殿下”だろうが!」
「だったらまず、あいつの食事を半分にしろよ!」
誰かが叫んだ。
兵士たちの顔にも、不安と怒りがあった。
彼らもまた、民衆の一部だ。
飢えた家族を抱えながら、
「秩序のため」と言われて刃を握らされている。
そこへ――火をまとった声が飛び込んできた。
「武器を捨てろ、兵士共!」
ダミアンだった。
人々の中に立ち、
血の付いたシャツのまま、
両手を広げて叫ぶ。
「お前らの家族も腹を空かせてるんだろ!
殿下のために同じ民を斬って、
お前らは誇りを持てるのか!」
兵士たちの列が、ほんの少しだけ揺らぐ。
「こっちに来い!
俺たちは、お前らを敵だなんて思ってない!
敵は――“俺たちの上に乗ってる連中だ”!」
その瞬間、誰かが石を投げた。
兵士の兜に当たり、カンと音がして弾かれ、
そこから一気に、空気が崩れる。
「前進!」
隊長の叫び。
楯が前に出て、棍棒が振り下ろされる。
悲鳴。
血が飛ぶ。
ダミアンは、咄嗟に近くの男を押し倒した。
自分の肩に、鈍い衝撃。
「ぐっ……!」
膝をつきながら、彼は歯を食いしばる。
(ここで止まってたまるかよ)
目の前で、女が倒れる。
その腕の中から、子どもが引き剥がされる。
怒りが、視界の端まで真っ赤に染め上げる。
「退くな!
退いたら、あいつらは“やっぱり力で黙らせられる”って確信する!」
ダミアンの叫びは、もう扇動なのか祈りなのかわからなかった。
兵たちの棍棒は、やがて剣に変わる。
威嚇射撃だったはずの銃声が、
いつの間にか、人を狙って撃たれるようになる。
最初の一発が誰かを倒した瞬間、
「撃ってもいい」という合図が、恐怖で固まっていた兵士たちの中を走り抜けた。
血が、石畳を濡らす。
誰かが泣き叫ぶ。
誰かが笑いながら突っ込んでいく。
もはや、誰にも止められなかった。
◆
「“王太子の命令で民衆が虐殺された”――」
その噂が形を取るのに、半日もかからなかった。
死者の数は、正確には誰にもわからない。
ただ、道ばたに転がる遺体の数と、
血の匂いと、
泣き崩れる家族の数が、
それを“虐殺”と呼ぶに十分だった。
王宮の窓から見える煙。
シャルルは、その灰色の筋を見つめていた。
手には、報告書の束。
そこには、“数字”としてだけ死者の数が書かれている。
「……シャルル殿下」
テオが、恐る恐る声をかけた。
彼もまた、現場から届いた断片的な情報をかき集めていた。
「北区だけでなく、
噂を聞いた別の地区でも、
“王太子の命令で民衆が殺された”と……」
シャルルは、目を閉じた。
(これは――レティシアの言っていた“最悪のパターン”だ)
権力が、恐怖で剣を振るう。
民が、それを“殺された”と感じる。
その認識が広まった瞬間、
もう“対話”の余地はほとんどなくなる。
「……俺は、何をしている」
呟きは、誰にも届かない。
王族として、
この国の未来に責任があるはずなのに。
目の前で、
国が、自分の体を切り刻むみたいに痛み続けているのを、
ただ眺めているだけ。
罪悪感が、胸を抉る。
レティシアなら、きっとこう言う。
『殿下の罪は、“何もしなかったこと”じゃない。
“できることを全部計算して、その中で一番マシな手を選び続けた結果、こうなってる”こと。
それは、“一緒に背負うべき罪”ですわ』
彼女がいない。
その不在が、
今まで以上に重く感じられた。
「――レティシア様に、使者を」
言われるまでもなかった。
シャルルは、机の引き出しから、いつもより少し厚い紙を取り出した。
ペンを握る手が、微かに震える。
書きたい言葉が多すぎて、
どこから手をつければいいのかわからない。
それでも、書かなくてはならない言葉は一つだけだった。
『王都へ戻ってきてほしい』
それを、最初に書いた。
インクが滲む。
震えを誤魔化すように、一気に書き進める。
『今の王都は、
お前が一番恐れていた形で燃え上がりつつある。
兄上は恐怖に駆られ、
民は絶望し、
“王家の名のもとに殺された”という認識だけが広がっている。
俺は、王族でありながら、
この流れを止める術を持たない。
それでも、
お前のいないこの国の崩れ方を、ただ見ているだけではいられない。
レティシア――
どうか、戻ってきてくれ』
最後の一文を書き終えたとき、
ペン先が紙を突き破りそうになった。
「急ぎだ」
シャルルは、封をしながら言った。
「一番早い馬で――あの辺境まで」
「かしこまりました」
ギルバートが受け取り、すぐさま部屋を出ていく。
シャルルは、一人になった部屋で、
拳を握り、額を机につけた。
「……頼む」
自分が王族として頼るべきではない相手に、
それでも祈るような気持ちで。
◆
その頃、辺境。
レティシアは、夜の村を歩いていた。
頭上には、星が少ない空。
雲の切れ間から、細い月が覗いている。
昼間、少年が持ってきた噂が、
まだ頭の中でざわざわと鳴っていた。
『都で暴動が起きたらしい』
その一言。
詳しい数字も名前も、まだ何もわからない。
でも――彼女には、十分だった。
(あの条件で起きる暴動が、“小さいまま終わる”わけない)
飢え。
重税。
王家への不信。
そこに、武力による鎮圧が重なれば、
炎は一気に広がる。
この辺境には、まだ火の粉は届いていない。
村人たちは、焚き火の周りで噂を半分冗談のように語っている。
「都会は大変だなぁ」「俺たちには関係ねぇよ」「こっちは腹減らすのに慣れてるしな」
それを聞きながら、レティシアは静かに思っていた。
(いいや。
この火は、必ずここにも届く)
革命は、都だけのものじゃない。
都が燃えれば、
周辺から兵がかき集められる。
税はさらに上がる。
兵糧はさらに減る。
“王都の火消し”のために、
辺境の水が全部持っていかれる。
(それまでに、どこまでここを守れるか)
焚き火の光に照らされた子どもたちの顔を見ながら、
レティシアは歯を食いしばった。
夜。
領主館の自室で、彼女は机に突っ伏したまま、
何度も何度もタイムラインを書き直していた。
王都暴動。
鎮圧。
噂の拡散。
地方への影響。
紙の上に引いた矢印が、
どうしても「血の色」に見えてしまう。
(本当はさ、“ここで小さな成功例作って、いつか王都に持っていく”って、のんきなこと考えてた)
辺境のミニ国家運営。
それは確かに楽しくて、
やりがいがあって、
レティシアの心を何度も救ってくれた。
でも――。
「革命の速度、なめてた」
自嘲気味に笑う。
歴史は待ってくれない。
前世の自分は、「革命前夜」を本で追いながら、
ページをめくる速度を自分で調整できた。
今は、現実のほうが先に進む。
夜が、やけに長く感じられた。
胸の中で、何度も同じ問いがループする。
(このままここにいて、
この村だけ守るのか?
それとも――)
窓の外を見る。
遠くに、王都は見えない。
でも、
自分の頭の中には、あの城壁も、塔も、
血で染まり始めた石畳も、
はっきりと浮かんでいる。
「やっぱり私は――」
言葉は、自然と口から溢れた。
「――あの場所に戻るしかないんだろうな」
逃げ場を与えられて、
そこで一度息を整えて、
その上で、もう一度戦場に戻る。
そんな自己満足みたいな選択でも、
今の自分には、それしか思いつかなかった。
決意は、まだふわふわしている。
具体的なルートも、
王宮までの道筋も、
全部これから考えなければならない。
でも、言葉にしてしまったことで、
心のどこかでスイッチが切り替わった。
そのタイミングで――
扉が、強くノックされた。
「お嬢様っ!」
クロエの声。
切羽詰まった響き。
「どうぞ」
レティシアが返事をすると、扉が勢いよく開く。
クロエの後ろには、見慣れない男が立っていた。
旅塵にまみれたコート。
肩で息をしている。
その胸元には、羽根の紋章。
「第二王子殿下の――緊急の使者です!」
クロエが叫ぶ。
男は、膝をつき、
懐から一通の封筒を取り出した。
レティシアの目が、その封蝋に釘付けになる。
小さな羽根の印。
震える指で封を切る。
中から出てきた紙には、短い文だけが記されていた。
『王都へ戻ってきてほしい』
その文字は、いつもの整った筆致ではなかった。
線が少し乱れ、
ところどころインクが濃く滲んでいる。
――手が、震えていたのだ。
シャルルの。
レティシアは、紙を持つ手に力を込めた。
胸の奥で、何かが音を立てて動き出す。
革命の炎。
王都の叫び。
遠くから届いた、その震え。
「……分かりました、殿下」
彼女は、誰に向けるともなく呟いた。
「行きます。
もう一回、“地獄のど真ん中”まで」
窓の外では、風が強くなっていた。
辺境の小さな“国づくり”は、
まだ途中だ。
でも――物語は、再び燃え上がる都へ向けて、
ゆっくりと舵を切り始めていた。
85
あなたにおすすめの小説
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームを元にした人気のライトノベルの世界でした。
しかも、定番の悪役令嬢。
いえ、別にざまあされるヒロインにはなりたくないですし、婚約者のいる相手にすり寄るビッチなヒロインにもなりたくないです。
ですから婚約者の王子様。
私はいつでも婚約破棄を受け入れますので、どうぞヒロインのところに行って下さい。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ
ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」
ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。
「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」
何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。
都合のいい女は本日で卒業。
今後は、余暇を楽しむとしましょう。
吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
婚約者として五年間尽くしたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる