レンズに溶ける横顔

kaoru

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『12月23日 深夜2時過ぎ  山田 彩花 自室』

彩花は布団に潜り込んで、スマホをスクロールしていた。
スマホの画面だけが暗い天井をぼんやり照らしている。  
エアコンの音と、自分の鼓動だけが聞こえる。  
指が勝手に動いて、今日のハッシュタグを開く。

#C103 #白ハイレグお姉ちゃん #クールエロ姉

タイムラインは、もう完全に澪で埋まっていた。

「白ハイレグの開脚ヤバすぎ」「あの無表情で脚開くの最高」
「割れ目見えてた」「来月も絶対来てくれ!」  
……全部、澪のことだ。  

私の写真も勿論たくさんあるけど、リプの9割は「お姉ちゃん」に向いてる。  
私は、ただの添え物みたいになってる。

でも、それでいい。  
今日の主役は、澪だったから。

私は布団の中で膝を抱えて、画面をスクロールし続ける。  
写真を見るたびに、胸の奥が熱くなる。  
澪が初めてカメラの前に立ったときの、震える肩。  
最初は両手で胸を隠そうとしてたのに、
私が耳元で囁いたら、ゆっくり手を下ろして……。
  
あの瞬間、澪の瞳が、まるで別人みたいに変わった。

(あれは……本当の澪だったんだ)

中学のときからずっと一緒の澪。  
感情を表に出さない。  
いつも冷静で、委員長の仕事は完璧で、
誰かが困ってたらさりげなく手を差し伸べて。  
クラスのみんなは「佐藤さんってすごいよね」って言うけど、私は知ってる。  

あれは仮面だってこと。

私も同じだから、わかる。  
明るくて、誰とでも仲良くなれて、クラスのムードメーカー。  
でも、家に帰ると、誰もいない部屋でため息ばっかり。
  
演じてる。  

ずっと、別の自分を演じてる。

だから、コスプレを始めた。  
レンズの前でだけ、仮面を外せるから。  

個人撮影のバイトも始めた。  
撮られて、褒められて、欲情されて……  
それで、やっと息ができる。

でも澪は、  
ずっと仮面を外さなかった。  
厚くて、重くて、完璧な「佐藤澪」を、誰にも見せずに被り続けてた。

文化祭の後、澪が変わった。  

笑顔が減って、委員長の仕事でもミスするようになった。  
風の噂で、彼氏と別れたって聞いた。  
その日から、澪の瞳が、どこか遠くを見てるみたいだった。

だから、誘った。  
コミケに。  
「一緒に合わせしない?」って。  
無理やり衣装を押し付けて、無理やりメイクして、無理やり会場に連れ出した。

最初は拒んでた。  
「こんなの着れない」って、顔を真っ赤にして。  
でも、私が「今日だけ、佐藤澪じゃなくていいよ」って言ったら、  
澪の手が、震えながら衣装を握りしめた。

そして、会場で……  
澪は、壊れた。

カメラの前に立った瞬間から、別人だった。 
 
クールな顔で、脚を大きく開いて、布をずらして、腰を振って。 
 
私が耳元で「お姉ちゃんはエロいキャラだよ」って囁くたびに、  
澪の瞳がどんどん濡れて、熱くなって、  
最後には、自分から「見て……」って言ってた。

あれは、  
澪がずっと閉じ込めてた、本当の姿だった。

私はスマホを胸に押し当てて、目を閉じた。  

今日の澪の顔が、頭から離れない。  
カメラに向かって腰を振ってる澪。  
何百人もの男に囲まれて、股を開いてる澪。  
濡れて、震えて、それでももっと見られたいって顔してる澪。

(あんなに、綺麗だった...)

私は、澪を解放してあげたい。  
ずっと被ってた重い仮面を、全部剥がしてあげたい。  
佐藤澪じゃなくていい。  
優等生じゃなくていい。  
ただの、欲情する女の子でいい。

私は知ってる。  
澪は、私なんかよりずっと深いところに、  
ものすごい欲望を閉じ込めてる。  
今日、それが見えた。  
レンズに見つめられた瞬間、澪は生き生きとしてた。  
初めて、本当の笑顔を見た気がした。

(もっと……もっと壊れてほしい)

私は、澪の親友だから。 
 
だからこそ、思う。  
澪には、もっと過激な衣装を着せて、  
もっとたくさんのレンズに囲まれて、  
もっと淫らなポーズを取らせて、  
もっと、もっと、深いところまで堕としてあげたい。

私は、澪を救いたい。  
仮面の下で息ができなくて、死にそうになってる澪を、  
この手で、解放してあげたい。

布団の中で、私は小さく呟いた。

「ねえ、澪……次は、もっとすごいことしようね」

私は、澪のことが大好きだから。  
親友だから。 
 
だから、  
澪が一番欲してる「壊れ方」を、私が、ちゃんと教えてあげたい。

スマホの画面に映る、白ハイレグで脚を開く澪の写真を、私は何度も何度も拡大して眺めた。  
そして、胸の奥が熱くなるのを感じながら、静かに目を閉じた。

おやすみ、澪。  
次はもっと深いところまで、一緒に堕ちようね。

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