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Phase 1.6
しおりを挟む『2024年1月4日、15時11分 佐藤 澪 自室』
自室の机に座って、私はようやく冬休みの課題を片付けた。
英語のレポートを最後に印刷して、ファイルに挟むと、肩の力が抜けた。
ふう、と息をついて、コーヒーカップに口をつける。
熱い苦味が喉を滑り落ちて、ほんの少しだけ心が落ち着く
。
でも、机の上に置いたスマホが、視界の端で光ってるみたいで気になってしまう。
イベントから2週間経った今も、あの日の記憶が、毎日頭を占領してる。
私は、コーヒーを一口飲んでから、ゆっくりスマホを手に取った。
画像フォルダーを開く。
そこには、イベント以降の新しい趣味の痕跡が並んでる。
下着を露出した自分を、自撮りした写真たち。
最初は、イベントの夜に試しに撮ってみただけだった。
鏡の前でブラウスをはだけて、ブラのレースを少しずらして、シャッターを切った。
撮った瞬間、胸がざわついて、でも削除できなかった。
それから、毎日少しずつ過激になってる。
昨日のは、スカートを捲ってパンティーを横にずらしたやつ。
股間の輪郭がくっきり浮かんで、蜜で光ってるのがわかる。
私は、スマホの画面をスクロールしながら、息を潜めた。
……これ、私。
佐藤澪が、こんな淫らな姿を、自分で撮ってる。
誰も知らない部屋で、誰も見ないはずの写真。
でも、想像するだけで、身体が熱くなる。
あのコミケの会場で、何百本のレンズに囲まれて、
脚を開いて、腰を振ってた時の感覚が蘇る。
男たちの視線が肌を刺すように熱くて、股間がびしょびしょになって、
でもそれがたまらなくて。
彩花の言葉が、耳元で響く。
(気持ち良かったんでしょ?...)
ああ、そうだ。
気持ち良かった。
レンズに見られて、撮られて、欲望の対象にされるのが、こんなに満たされるなんて、知らなかった。
私は、恍惚とした表情でスマホを眺め続けた。
写真の中の自分が、クールに、でも目が潤んでて、唇が少し開いてる。
右手が、自然とスカートの奥に伸びる。
指先が太腿の内側を這って、今日のパンティーの布に触れる。
熱い。
もう、湿ってる。
……今、ここで、誰も見てないけど、想像するだけで。
スマホの写真を拡大して、
自分の割れ目をなぞるように指を動かそうとした瞬間、スマホが振動した。
着信。
彩花から。
慌てて指を引いて、電話に出る。
「……は、はい」
出た声が、甘くて掠れてて、自分でびっくりした。
彩花の笑い声が聞こえる。
「澪? あれ、声エロいよー。もしかして、一人でしてたの?」
からかうような、甘い声。
私は、顔が熱くなって、慌てて否定した。
「ち、違うよ! そんな……ただ、課題やってて、疲れてただけ……」
声が上ずってるのが自分でもわかる。
彩花はくすくす笑って、
「ふふ、冗談だって。澪の声、なんか色っぽくなったよね。最近」
私は、コーヒーカップを握りしめて、息を整えた。
「そ、そんな事ないよ。……彩花こそ、今日は何してるの?」
話題を変えようとした。
彩花は、のんびりした声で答えた。
「私? 家でゴロゴロ。年末の片付けとか、めんどくさくてさ。
澪は? 課題終わったの?」
「うん、さっき終わったところ。英語のレポート、死ぬほど長くて……」
「わかるー! 私も昨日やったよ。先生の出題、毎年同じだよね。
コピペでいけそう」
二人は、くだらない課題の愚痴で少し笑い合った。
彩花の声が、明るくて、いつもの親友の感じ。
でも、イベントの記憶がチラチラ頭に浮かんで、股間が疼く。
彩花は、ふと天気の話に振った。
「そういえば、明日って晴れだって。
珍しいよね、冬休み中こんなにいい天気続くなんて」
「うん、散歩したくなるね。でも、寒いかな」
「寒くても、澪と一緒なら楽しく歩けそう。
イベントの時みたいに、露出衣装で脚長く見せてさ」
また、からかう。
私は、頰が熱くなって、
「もう、やめてよ。あれは……キャラだから……」
「キャラだからって、澪のポーズ、めっちゃ自然だったよ。
最後の方なんて、自分から腰振っちゃってて」
彩花の声が、甘く響く。
私は、息を飲んだ。
あの感覚が、蘇る。
レンズの群れ、シャッター音、視線。
「彩花……あのとき、みんな私を見てて……私、変だった?」
声が震える。
彩花は、少し真剣なトーンで、
「変じゃないよ。最高だった! 澪、生き生きしてたよ。いつもより、ずっと」
胸が締めつけられる。
彩花は知ってる。
私の仮面を。
そして、続けて、
「年末年始、何か面白いことした?
私、家族で初詣行ったんだけど、めっちゃ混んでてさ」
無駄話に流れる。
私は、ホッとして、
「私も家族で神社行ったよ。おみくじ、大吉だった」
「えー、いいな! 私、凶だったわ。
来年はイベントでの澪みたいに、エロい年になるのかもね?」
またからかう。
私は、笑って、
「バカ……」
でも、心の中では、頰が熱い。
イベントの話に、戻りたくて。
彩花は、ふと、
「そういえば、イベントの写真まだ見てんの?
SNSでバズってるよ、白ハイレグお姉ちゃん」
「う、うん……少し」
嘘。
毎日見てる。
彩花は、くすくす笑って、
「澪、絶対毎日見て、一人でニヤニヤしてるでしょ。
あの開脚ポーズ、最高だったもん」
私は、声が詰まる。
「彩花……もう、やめて」
でも、股間が熱くなる。
彩花の声が、優しくなる。
「ごめんごめん。でも、澪、めっちゃ楽しんでたよね? 私、嬉しかったよ」
少しの沈黙。
私は、小さく、
「うん……楽しかった」
認めてしまった。
彩花は、満足気に、
「よし、それじゃあ。明日の予定、聞いてもいい?」
ようやく本題。
私は、息を整えながら答えた。
「うん、何も予定ないよ」
彩花の声が明るくなった。
「じゃあさ、明日わたしに付き合ってよ。朝10時、渋谷の駅前で待ってるから」
一方的に決めてくる。
私は、戸惑って声を出した。
「え、明日? 何するの? 急すぎるよ……」
彩花は、笑って、
「内緒。きっと、澪も楽しめるから……また、澪のいいとこ、見せてあげるよ」
言い残して、電話を切った。
スマホが静かになる。
私は、呆然と画面を見つめた。
彩花の言葉が、頭に残る。
「楽しめるから……?」
何を?
また、コスプレ?
それとも……。
心臓が速くなる。
イベントの記憶が、また鮮やかになって、股間が熱い。
スマホに映る自分の写真を、改めて眺める。
割れ目を指でなぞってる写真。
……これ、私。
佐藤澪が、こんなことしてる。
彩花の誘いが、なんだか予感めいてて、怖いのに、興奮する。
私は、スカートの奥に手を沈めた。
パンティーの布を横にずらして、直接指を入れる。
熱い肉壁が、指を吸い込む。
ぐちゅ、という音が部屋に響く。
妄想が膨らむ。
明日の彩花との待ち合わせで、何か過激なことが起きる。
渋谷のハチ公前で、彩花に連れられて、露出した衣装で歩く。
周りの男たちが、視線を向ける。
スマホで撮り始める。
「エロいな」「脚開けよ!」そんな声が聞こえて、私は脚を開く。
彩花が、耳元で囁く。
「ほら、澪。みんなが見てて……気持ちいいでしょ?」
レンズが、私を狙う。
シャッター音が、耳に響く。
指の動きが速くなる。
クリトリスを優しく、でも強く擦る。
蜜が溢れて、太腿を伝う。
部屋の空気が、重く甘くなる。
私の息が、荒く乱れる。
胸が上下に激しく動き、下乳がぷるんと揺れる。
鏡に映る自分の姿を想像する。
黒髪が乱れ、目は潤んで、唇から小さな喘ぎが漏れる。
「あっ……彩花……見て……みんな、見て……」
妄想の中で、渋谷の街中が、カメラの海になる。
男たちの手が、私に伸びる。
触れる。
揉む。
挿れる。
「澪、こんなに濡れてる……エロいよ」
彩花の声が、混じる。
私は、腰を浮かせて、指を深く沈める。
肉壁が、収縮して、指を締めつける。
熱い波が、腹の底から上がってくる。
指の腹で、敏感な点を押す。
びくん、と身体が跳ねる。
蜜が、指を滑らせ、床に滴る。
汗が、首筋を伝い、背中を濡らす。
乳首が硬く尖り、空気に触れているだけで、電流が走る。
「はあ……あっ……イク……」
声が漏れる。
妄想の頂点。
男たちの視線が、射精のように私を覆う。
熱い飛沫が、肌に降り注ぐ。
その瞬間、絶頂が来た。
「あぁぁっ!」
身体が硬直し、びくびくと痙攣する。
蜜が噴き出し、パンティーに大きな染を作る。
指を引き抜いても、余韻が続く。
股間が、ぴくぴくと脈打つ。
息が切れて、視界が白く染まる。
へたり込み、スマホを胸に抱く。
幸せ...。
彩花の誘いが、明日何を連れてくるのか。
怖いのに、待ち遠しい。
この快楽が、止まらない。
私は、ゆっくり目を閉じた。
明日は、もっと深いところへ。
私は、もう、止まれない.......
『1月5日 9時28分』
渋谷の駅前、私は待ち合わせの噴水の近くに立っていた。
ベージュのピーコートに、清楚な白いブラウス。
膝丈のスカートに黒いストッキングとローファー。
まさに「佐藤澪」らしい格好。
でも、心の中は穏やかじゃなかった。
昨日、彩花から急な電話で誘われて、
何が起きるのかわからないのに、胸が高鳴ってる。
……楽しめるから、って。
彩花の言葉が、頭に残ってる。
きっと、またあのイベントみたいに、レンズに見られる何か。
怖いのに、期待してる自分がいる。
スマホの自撮りフォルダーを思い出すだけで、股間が熱くなる。
私は、噴水の音を聞きながら、腕時計を見た。
まだ早いけど、早めに来て良かった。
気持ちを落ち着ける時間がとれる。
『9時33分』
ジーンズに黒いセーター、メンズサイズのジャケットを羽織って、
大きなバッグを肩にかけた彩花が、息を弾ませて走って来た。
「澪! 早いよ、もう来てたの? 約束は10時だよ?」
彩花の笑顔が、いつもの明るさ。
私は、少し照れくさくて、
「うん、課題終わって暇だったから……早めに」
彩花はバッグを下ろして、私の隣に立った。
「ふふ、澪らしいね。じゃあ、早速行こっか」
歩きながら、彩花と無駄話をする。
天気の話、年末の話。
でも、彩花の目が、時々私を観察してるみたいで、ドキドキする。
やっぱり、何かある。
渋谷の雑踏を抜けて、少し静かな路地に入ったところで、彩花が立ち止まった。
「ねえ、澪。今日の予定、実は私の個人撮影のバイトなんだ」
私は、息を飲んだ。
個人撮影?……彩花のバイト?
イベントのとき、個人撮影は聞いたことある。
コスプレのモデルで、カメラマンと一対一で撮るやつ。
「それで……澪も、被写体として誘ったの。合わせて撮ろうよ」
心臓が、早鐘みたいに鳴った。
「え……私? 被写体? そんな、できないよ……」
断ろうとした。
でも、頭の中では、コミケのレンズの群れが蘇る。
見られる快感。
撮られる興奮。
彩花は、私の目を見て、
「でも、私のバイトに興味あったんでしょ?
イベントのとき、澪の目、輝いてたよ」
口ごもった。
確かに、興味ある。
いや、興味以上。
あの感覚を、もう一度味わいたい。
でも、怖い。
知らない人と、一対一で。
彩花は、笑顔で説得を続けた。
「ちゃんとバイト代出るよ。1回で3万円くらい」
「相手の身元も、免許証撮って押さえてるし、
画像流失させない誓約書も書いてもらってる」
「被写体の嫌がる行為は絶対しないって、ちゃんと記入して、
私が持ってるから。変な事なんて起きないよ」
矢継ぎ早に彩花が話し続ける。
しぶしぶ、頷きそうになった。
でも、まだ不安。
「でも……密室で、襲われたりしないの?」
彩花の顔が、少し困ったように曇った。
「それはまぁ……相手によるかなぁ……」
心臓が、止まりそう。
「え……?」
彩花は、慌てて手を振って、
「その話は、後で詳しく説明する、今は、行ってみよう!」
はぐらかされた。
でも、彩花の笑顔に、つい引きずられる。
私は、親友の彩花を信じてる。
彼女が、嫌なことさせないって、信じてる。
『9時54分』
路地の前に、黒いミニバンが停まった。
運転席から、手を上げる男の人。
30代前半くらい、サラリーマン風、眼鏡をかけて、気の弱そうな笑顔。
彩花が、明るく手を振った。
「伊藤さん! おはようございます!」
私たちは、ミニバンのサードシートに乗り込んだ。
車内は、クッションが柔らかくて、少し緊張が解ける。
でも、心臓は鳴り止まない。
伊藤さんが、バックミラーで私を見て、
「本当に、"お姉ちゃん"も来てくれたんだ、嬉しいな。コスネームは?」
伊藤さんが私にコスプレーヤーとしての名前を聞く。
「え...コスネームって.....」
彩花が、慌てて、
「雫ちゃんです! よろしくね、伊藤さん」
勝手に名前を付けられた。
雫……。
彩花は静流だって。
伊藤さんは、静流ちゃんと呼んでる。
車が走り出す。
窓の外の景色が流れる中、彩花が私に耳打ちした。
「澪、実は複数の私の顧客から、
澪との個人撮影を仲介してほしいって、高額オファー来てるの」
戸惑った。
「え……私と? そんな……」
高額って、どれだけ?少し興味はある。
でも、別の興奮が胸の奥で渦巻く。
また、見られる。
また、撮られる。
彩花は、笑顔で、
「だから今日は、私との合わせの続きみたいな感覚で、現場見てよ。
自分で決めればいい。澪の嫌がる事は、絶対させないから!」
強く言われて、胸が熱くなった。
彩花の目が、真剣。
彼女は、私の親友。
解放してくれようとしてる。
私は、頷いた。
でも、不安と期待が、混じり合って、股間が疼く。
この後、何が起きるんだろう?
車は、スタジオに向かって走る。
私は、窓の外を眺めながら、息を潜めた。
『10時50分』
郊外のハウススタジオに着いた。
ミニバンが停まると、彩花がドアを開けて先に降りた。
私は震える足で続いて車外に出る。
足元がふわふわして、まるで地面が揺れてるみたい。
心臓の音が、大きく鳴り響く。
……ここで、何が起きるんだろう。
彩花の誘いに乗ってきて良かったのか。
でも、胸の奥で、何か甘い疼きが広がってる。
見られるかもしれない。
撮られるかもしれない。
あのコミケでの感覚が、頭をよぎって、股間が熱くなる。
目の前にはコテージ風の小さな建物がいくつも並んでいて、
周囲は木々に囲まれている。
静かで、孤立した感じ。
誰も助けに来ない場所。
不安が、胃を締めつける。
「……ここ、AV撮影にも使われる事あるんだって」
彩花がさらっと言った。
「え……AVって!」
声が裏返った。
頭が真っ白になる。
AV……そんな場所で、私が何を?
想像しただけで、膝が震える。
犯される? 撮られる? 裸にされて?
恐怖が、波のように押し寄せる。
でも、何故か、股間の熱が強くなる。
彩花は苦笑いして、
「そういう目的で借りる人もいるってだけの話だよ。
今日は普通の撮影だから」
普通の撮影……でも、エロい格好やポーズで撮るんだよね?
コミケのときみたいに、脚を開いて、腰を振って。
でも、あれは大勢の前で、匿名だった。
ここは、一対一。
知らない男に、欲望のままに撮られる。
怖い。
怖いのに、期待してる自分がいる。
この疼き、何?
どっちみちエロい格好やポーズで撮るんだから、コスプレイベントみたいに他のレイヤーやカメラマンがいっぱいいる場所じゃ撮れないって、彩花は言ってる。
私は、唇を噛んだ。
確かに、そうかもしれない。
でも、AVって言葉が頭から離れない。
犯される妄想が、頭を駆け巡る。
伊藤さんの手が、私の胸に伸びて、股を撫でて。
レンズが、それを記録する。
……いやだ。
でも、身体が熱い。
指定されたコテージに向かう途中、庭でビキニ姿の女性を、何人もの男性が囲んで撮影していた。
派手なライトに、たくさんのカメラを手にした男性。
水着の紐が食い込んだ、ビキニの女性の肌が、ライトに輝いてる。
男達のレンズが、貪欲に彼女を捉えてる。
「ね、健全なグラビア撮影に使う人も大勢いるよ」
彩花が笑顔で指差す。
私は、頷くしかなかった。
健全……?
でも、あの女性の表情、どこか恍惚としてる。
見られて、興奮してる?
私も、あんなふうになる?
メイクルームに入ると、伊藤さんは
「セッティングしてきますね」と、先に撮影部屋へ行った。
二人きりになると、彩花がバッグから衣装を出した。
……普通の制服。
知らない学校のブレザーにチェックのスカート。
下着も、ごく普通のシルクの白いブラとパンティー。
てっきりアニメやゲームのキャラだと思ってた。
胸がざわつく。
これじゃ、ただの私。
佐藤澪が、エロいポーズをするだけ。
スマホの自撮りと同じ。
でも、あれは一人で、秘密で。
ここは、他人のレンズに晒す。
「……彩花、今日はコスプレの撮影じゃ……」
声が震えた。
私のスマホにある、誰にも見せられない自撮りと同じ。
普通の格好で、淫らなポーズをして、他人のレンズに晒すなんて。
恐怖が、喉を締めつける。
でも、微かな甘美な感覚が、股間を疼かせる。
見られたら、どうなる?
伊藤さんの視線が、私の股を、胸を、貪る。
興奮した息遣いが、部屋に満ちる。
私は、赤面して狼狽えた。
制服に袖を通す手が震える。
ブレザーのボタンを留めるとき、指が滑る。
スカートを穿いて、姿見の前に立つ。
そこにいるのは、いつもと違う制服を着た佐藤澪。
ただの私。
鏡の中の自分が、泣きそうな顔でこっちを見てる。
このまま、レンズの前に?
佐藤澪として、エロいことをする?
仮面が、剥がされるみたいで、怖い。
胸が苦しい。
泣きそうな顔で、彩花を見た。
「澪のままで、レンズの前に立てない……」
声が掠れる。
涙が、にじみそう。
彩花は優しく微笑んで、私の前に膝をついた。
「大丈夫だよ」
彩花は、私のメイクを始める。
ファンデーションを塗られるとき、彩花の指が優しく肌を撫でた。
アイラインを引かれると、目が少し大きくなる。
チークで頰が赤らみ、マスカラで睫毛が長くなる。
栗毛色のセミロングウィッグを被せられて、髪の感触が変わる。
細い金属枠の伊達メガネをかけられた。
手鏡を渡される。
……そこにいたのは、佐藤澪じゃなかった。
別人。
少し大人びた、どこか淫靡な雰囲気の女の子。
目はシャープで、唇が艶やか。
これなら……佐藤澪じゃない。
仮面の下の自分が、出て来てもいい。
「女の子はメイクと髪型で、いつだって別人になれるんだよ」
彩花が微笑む。
私は、鏡の中の自分を見つめたまま、息を呑んだ。
これなら、いけるかもしれない。
でも、不安が消えない。
この姿で、何を指示される?
脚を開け? 胸を寄せ? もっと過激な?
想像しただけで、股間が熱くなる。
撮影部屋に向かう直前、彩花が真顔になった。
「レンズの前に立ったら、私たちはただの男性の欲望の対象だから」
「基本的にエロいポーズや行為の指示しか来ないよ」
私の顔が、不安で歪む。
期待と恐怖が、ぐちゃぐちゃに混じって、息が浅くなる。
股間が、じんわり湿る。
彩花は、私の目をじつと見て、はっきりと言った。
「でも、指示に従うかどうかは自分で決めること、
澪のこと、絶対私が守るから!」
差し出された手。
温かくて、強い。
私は、震える手を重ねた。
彩花の掌の感触が、安心を与えてくれる。
信じられる。
彩花がいるなら、大丈夫。
でも、胸の奥で、別の自分が囁いてる。
……見られたい。
普通の格好の佐藤澪が、淫らなポーズで撮られるのを。
誰かに、欲望のままに撮られるのを。
甘い疼きが、身体を駆け巡る。
私は、彩花の手を握りしめたまま、撮影部屋のドアに手をかけた。
心臓が、破裂しそうだった。
この先で、何が待ってる?
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