妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん

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第六話 私が言っても何も変わらない。(感情追加 加筆)

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お父様たちから話を聞いた。

正直に言わせて貰うなら、かなり重すぎる気がする。

話をしながら、お父様もドリアーク伯爵様も、お義母様も下を向いて悲しそうだわ。

そりゃ、そうだよね、血がつながった子供なんだから誰だって罰したいなんて思わない筈だよ。

貴族じゃ無ければ、こんな大事にはならない筈だし。

貴族じゃ無ければ、お父さまとお義母さま、ドリアーク様がビンタして正座させてお説教して、私に謝罪して終わる位の事だわ。

だけど、貴族だからこそ、それじゃ終わらない。


そんなに悲しい顔をしないで欲しい。

私は何とも思ってないんだから。

「お前からしたら、腹の虫が収まらないと思うが、これで許してやって欲しい」

許すも何も私はそんなに怒って無い。

少しはムカっとはするが、それは『ちゃんと筋を通さなかった』そぼ馬鹿さにだよ。

「私の娘が本当に酷い事したわ、本当にごめんなさい、私の躾が悪かったからこんな事になった、恨んでも恨み切れないでしょう...ですが私には謝る事しか出来ないの、ごめんなさい」

確かにムカっとはするけど、その程度の事なのに、なんだか申し訳ない。

「愚息が本当に申し訳ない事をした...この償いは必ずする、許して等貰えないのは解っている、だが今はせめて謝罪をさせて欲しい」

確かに貴族としては大事に違いない。

だけど、私個人としては『そこ迄の事じゃない』

心の底から好きになった人間なら、私だってオーガみたいになるかも知れないわ。

だけど、フリードとの付き合いはまだ浅いから『恋』や『愛』には届いてない。

それに、今回の事で『凄く幻滅』してしまったから、寧ろ今は結婚しなくて良かったとさえ思えるのよ。

あの怒鳴りつけるフリードを見て、後先考えない行動を見たら。

一生この人の傍に居たい、なんて気持ちも無くなったわ。

だから、私の気持ちは円満に婚約破棄でいいとさえ思っている。

此処は貴族社会、前世の日本とは違う、それは解っているけど、前世の日本という社会なら…

『慰謝料無しの財産分与無しで破棄』

そんなので充分な気持ちだわ。

家族の縁はそんなに軽くは無いから、寧ろ二人から恨まれたくない気持ちの方が強いわ。


「お父様、身分の事ですがもう少しどうにかなりませんか?」


「そうだな、確かにしでかした事を考えたら市民じゃ駄目か? マリアが言うなら平民にまで落とそう」

私はそんな事は望んで居ないわ。

重くじゃなくて、軽くして欲しいのよ。

「確かに此処までしたんだ、それも仕方ないだろう」

「マリアちゃん、あれでも娘なの...市民で許してあげて」

お義母さま、私はそんな事は言ってませんてば。

本当に、市民じゃ無くて平民まで落とせなんて言わないよ?

そんな鬼みたいな事しないよ、貴族から市民だって物凄くあの二人からしたら、辛いのに、流石に平民にしろ、なんて言わない。

市民なら、貴族つきの仕事や、公共施設に勤める仕事につきやすい。

昔の世界で言うなら【公務員】や【警官】等の良い仕事に就ける、平民でも可能ではあるが余程優秀じゃ無いとそんなに良い仕事に就けないし出世もまず無い。

ちなみに、私がつきたかった王立図書館の司書は市民で無いとまずなれない。

あの二人は今迄働いた事は無いんだよ、そんな温室育ちの二人じゃ、平民は元より市民でも生活出来ないと思うよ。

出来たら、貴族の末席にでも最低残してあげないと、多分大変な事になる様な気がする。

だから、私は、多分聞いては貰えない。

だけど、自分なりの意見は伝えさせて貰う事にした。


「そんな事考えてませんよ、どうにか貴族のままでいられる様にしてあげれませんか?」

「マリア? お前それで本当に良いのか? あらぬ疑いを掛けられ婚約破棄されたんだぞ、ロゼに恨み位あるだろう?」

お父さまが驚いた顔で私を見た。

恨み、確かにある。

それは手順を踏まずに馬鹿な事をした事。

大勢の前で恥をかいた事だ。

だけど、それとこれは別。

此処までの事をして欲しいとは私は思っていない。

「我が愚息がした事だが、普通に考えて許せる事じゃないだろう、公衆の面前で恥をかかされたのだからな」

確かに貴族としてならそうなんだろうね。

ムカっとは来たよ。

前世で読んだライトノベルのヒロインなら泣き喚き...場合によっては復讐に走るわね。

だけど、私は違う。

自分でも前世を引き摺りすぎだと思うけど。

こんな事、いやこれ以上悲惨な目に何回もあってきた。

その度に私は自分の心と向き合って乗り越えてきたんだ。

まぁ、結果本が好きになり、人とは趣味以外で最低限しかつきわないようになったけし、『ボッチの方が気が楽だな~』なんて思考になったけどね。

恋人を寝取られたからと言って、人の人生を全部壊すのはやりすぎだと思う。

少なくとも前の私なら、振られたからって地位や財産迄根こそぎ奪うような事はしない。

それを主張しんだけど、此処は貴族社会、だからそのままいう事は出来ないわね。

どう言えば良いのかな?

「確かに嫌な思いはしましたが、ロゼは可愛い妹、フリードは友人です、楽しい思い出も沢山あります、だから、余り酷い事はしたく無いのです、どうにか2人が貴族でいられるようにして頂けませんか?」

これでどうかな? 少しは罪が軽く出来たかな。

「マリア...貴方って子はなんて良い子なの、 それに比べてロゼはロゼはあああああーーっ本当にごめんなさい」

泣かないで良いのに、それより、苦しいから、この手放してくれないかな?

それに、お義母様、泣いていたら化粧も剥げてきて大変よ。


「マリア、お前の気持ちは良く解った、だがな、今現在はこの国は平和で豊かだ、誰も爵位なんて手放さない」

「もし売りに出されても騎士爵位しかまず無い、それも相当お金を積まないと買う事が出来ない」

確かにこの世界は剣と魔法の世界では無いから滅多に人は死なない。

どちらかと言えば、乙女ゲーの世界観に近く、安全な世界だ。

そんな安全な社会で貴族籍など、そうは手放したり売り出されたりしないわね。

何かないかな。

「あの、もし可能なら、私への慰謝料を減額して、騎士爵を買い上げ二人を貴族の末席に残してあげる事は出来ないでしょうか?」


「愚息の未来を案じてくれた事は感謝する、だが、愚息は剣が苦手だ、更にもう宰相のユーラシアン様に伝えた後なのだ、今頃は王に伝わっておる無理だ」

「そうだな、マリアの気持ちは解ったがもう遅い」

何か手は無いかな?

円満解決になる方法はないの?

考えろ、私。


「それならば、ロゼとフリードが結婚するなら、私がドレーク家の家督を手放します、そうすれば、全て丸く収まります...私はそうね、ロゼとフリードが貰う筈だったお金を貰って、王都で市民として暮らしますわ」

これで私は充分。

だって、正直言わせて貰えれば、ロゼとフリードが貰えるお金の金額は凄く魅力的に思える。

流石は貴族、質素に暮らせば、一生働かないで暮らせる金額なんだから驚きだ。

お父さまから推薦状を貰えるなら確実に図書館の司書にはなれるし、働いて嫌だったら困らないお金があるのだから辞めれば良いしね。

その前に、後ろ盾に伯爵がいるなら、誰も意地悪なんてしてこないから『嫌』とは無縁だと思う。

まぁ、実際にやって見なければ解らないけどね。

少なくと私にとっては素敵な未来だ。

だが、多分そうはいかないよね。


「マリア、それは母として認めません、私はロゼの母ですが、貴方の母でもあるつもりです、 悪い事した娘が良い人生を歩み、正しく生きる娘が不幸な人生を生きるなんて許せません、 家督は貴方の物。 それだけは、なにがあっても覆ってはいけないのです」


昔は私を追い出そうとしていたのに、今はお義母さまは、凄く優しい。

だけど、本当に私はそれで良いと思っている。

だって、追い出されたとはいえ、伯爵家だから恐らく金貨3000枚位はくれる筈。

金貨1枚、前世で言う10万円くらいだから3億円。

私からしたら、何の責任も無くこんなお金が貰えるなら、そっちの方が良い。

王立図書館の司書になって本に囲まれながら暮らして、生活に困らないし。

多少贅沢しながら、誰の顔色も見ないで暮らせる。

うん、決して不幸じゃないよね。

まぁ、フリードやロゼじゃ、そんな大金でも半年も持たずに使ってしまいそうだけどね。


「マリア、優しいのは良いが、貴族としてお人好しはいかんよ! 幾ら妹だからって甘やかしすぎは良くない、出て行くのはロゼで決まりだ」

「マリア嬢にそんな事させたら、もう責任の取り方が解らなくなる、婚約者の妹と不倫した挙句、家まで愚息が手に入れた、そんな事になるなら俺は彼奴を手に掛け引退する」


結局、私の意見は聞いて貰えず、決定は何も変わらなかった。




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