たとえば勇者パーティを追放された少年が宿屋の未亡人達に恋するような物語

石のやっさん

文字の大きさ
24 / 53

第24話 カルミー無残

しおりを挟む
「うふふっ、楽しんできてね…今日は遅くなっても良いし、泊まって来ても良いからね」

「ちゃんと帰ってくるから…お酒位は飲んでくるかも知れないけどね…」

意味深な顔のルミナスさんに見送られながら俺はカルミーさんの元へ向かった。

反対されるかも知れない…そう思っていたのに拍子抜け。

ルミナスさんには許可を得たからこれで堂々と訪問出来る。

しかし…なんで、こんな場所にカルミーさんが住んでいるのか解らない。

夫婦揃ってCランク冒険者だったし、かなり金銭的には余裕のある生活をしていた筈だし…あの頃は良く、奢って貰った。

此処は完全にスラムだし…しかも進むにつれどんどん環境が酷くなる。

『ドブ臭い』

卵の腐った様な臭いと異臭。

そこら辺にあるゲロやおしっこの後…

酒瓶を持って横たわる親父に痩せたガリガリの子供…

間違いない…此処がスラムの最底辺だ。

俺は冒険者として顔が売れている、だからこそ誰も襲ってこないが…

こんな危ない場所…女性が1人で住める場所じゃない。

可笑しいな…この辺りに住んでいる筈なのに家が見当たらない。

しいて、言えば…前世でいうブルーシートハウスみたいな物が幾つかあるだけだ。

異世界なので、更に劣悪な物だ。

「この辺りにカルミーという女性は住んでいませんか?」

「「「…」」」

此処はスラムだ、無料じゃ動かない。

「この辺りに住んでいる女の情報が欲しい、何処にいるか教えてくれないか、教えてくれたら銅貨1枚やる…」

「僕知っているよ」

「私、知っている」

「どけーーーーっ! それは俺のだーーっ そこのテントに頭の可かしいゴミ豚女ならいるぜ…死んでいるかもしれないけどな…ほら約束だ…その銅貨寄越せーーっ」

俺は銅貨1枚放って…そのテントに近づいた。

『うぷっ』 

吐き気がする程の異臭。

男なら良く嗅いだことのある栗の花の様な臭い。

だが、それとは比べられない程…臭い…

それだけじゃない、死んだ魚が腐った様な臭いまでしてきた。

「うぷっうげぇぇぇぇえぇーー」

我慢できずに吐いた…人が住んで良い環境じゃない。

奥にボロキレの様な布があり…ハエがたかっている。

そればかりじゃない…近くにある…皹の入った器には…蛆とハエの死骸が沢山ある…

まさか…死んでいるのか?

俺はボロキレを勢いよく捲った。

『死んでいる』

嘘だろう…栗の花の臭いに、吐き気を覚える魚の腐ったような臭いは彼女からしていた。

これをスラムの人間がやったのか…

殺してやる…皆殺しにしてやる…

「助けて…」

「…生きているのか?」

「死にたくない…」

かすかだが声が聞こえる。

「生きている…」

よく見ると片手でハエを払っていた…

だが、駄目だ…もう死にかけだ…

右足が膝から無い。

左手も肘から先が無い

目も左目が…嘘だろう…眼球が潰れている。

これだけじゃない…嘘だよな性器から腐った様な臭いがしてくる。

教会に連れて行く間に死んでしまう。

『やるしかない』

俺は上級ポーションを収納袋から取り出し…口移しで流し込んだ。

口からも腐った栗の花の様な匂いがし…口づけした瞬間に吐き気がもようしてくる…

「うぷっ…」

頼むから飲んでくれ…頼む…

「うぐっうぐっ…」

彼女の生きようとする本能からか、どうにか飲んでくれた。

『彼奴らが死にかけたら』そう思って救急処置や治療の勉強をしてきた。

聖女が倒れた時の為に勉強はしてきたんだ…

『だが、やった事はない』

何処から手を付ければ良い?

見落としが無い様に頭から掛った方が良い。

頭は虫がたかっているが、大丈夫そうだ…目か…

俺は小型ナイフを取り出し…潰れた眼球を取り出そうとした…

手を少し動かすだけだ。

凄い痛みなのに…体を震わせ弱い力で手を動かすしかしない…

『カルミーさんゴメン』

俺じゃ綺麗には治せない…

吐き気を押さえながら、潰れて固まっている目をポーションをかけながら取りだした。

顔にも大きな怪我はあるが、これは後回しだ…大丈夫だ。

体は痣だらけだが、大きな怪我は性器位しかない。

「ウォーターボール」

水で汚物を洗い流しながら掻きだした。

前からも後ろからもドロッと気持ち悪いねばねばした液体が出てくるが手を止めたら終わりだ。

手を止めず…掻きだし…上級ポーションを振りかけた。

後は手足だな…

左手は…傷が完全に壊死している切断されたんじゃない引きちぎられたのか…酷い。

虫迄湧いている。

右足もか…

『ゴメン…』

俺は傷口から上から再度切断した。

「ううっ…うう」

恐らく、凄い痛みが走っている筈だが最早抵抗する気力もないんだろう。

「ファイヤーナイフ」

「うぐっ…」

傷口を炎を纏ったナイフで焼き、上級ポーションを振りかけた。

これで良い…後は包帯を巻きつけた。

「カルミーさん、何があっか知らないけど行こう…此処はカルミーさんの居る場所じゃないから…」

俺はカルミーさんをおぶって出た。

外には沢山のスラムの人間がいたが…

「お前らがこれをやったんじゃねーよな!」

「しし知らねー…その女はその状態でここに流れ着いてきたんだ」

さっきのジジイだけじゃなく…近くの子供も首を振っているから嘘じゃないのだろう…

「なら良い…」

助けなかった此奴らに腹も立ったが…此処はスラムだ。

自分が生きるのが精いっぱいの場所でそれを求めるのは酷だ。

俺は、その場を黙って後にした。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活

石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。 ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。 だから、ただ見せつけられても困るだけだった。 何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。 この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。 勿論ヒロインもチートはありません。 他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。 1~2話は何時もの使いまわし。 亀更新になるかも知れません。 他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

処理中です...