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第14話 お買い物
しおりを挟む「ちょっと出てくるけど、アイカは何か欲しい物はある?」
「特にありません…そのリヒト様、いえ何でもありません」
アイカの顔が少し赤い。
少しだけ心を開いてくれたのかも知れない。
本当なら手を繋いだり、腕を組んで貰って出かけたいが、今はそれは難しい。
糞っ!本当に『貧乳聖女』碌な事しないな。
勇者パーティに所属して魔王を倒して、引く手あまたの生活をしていたんだから『こんな世界』にする事無いのに。
過去の人間に文句言っても仕方ない。
「そう? それなら何かお土産買ってくるよ」
「あの…」
「『奴隷ですから!』と『化け乳なのに』は禁止ね! それじゃ行ってきます!」
「行ってらっしゃい…それしか言えないじゃないですか」
「それで良いと思う、ついでに笑ってくれると少し嬉しい」
「こうでしょうか?」
これは駄目だ。
無理して笑っているから、どこか表情が可笑しい。
しいていうなら、怒らせた女性の少し怖い笑い方に近い。
多分、アイカはそうは思って無いのだろうけど…
無意識にでる『愛くるしい笑顔』じゃない。
それをわざわざいう事は無いだろう。
「うん、ありがとう、それじゃ今度こそ行ってきます」
◆◆◆
しかし、好きなアイカの為と考えると買い物も楽しい。
まずは家具屋に行くことにした。
アイカに広い部屋に移動するか聞いたら、微妙に寂しそうな顔をした。
『このままで構いません…』
そう言っていた。多分離れて寝るのが寂しいのかも知れない。
多分、これは恋愛感情ではなく、恐らく『寂しさ』からだと思う。
子供の頃から嫌われ1人で生きてきた、だから今は恋とか恋愛でなく『ぬくもり』が欲しい。
それに近いのかも知れない。
それでも、理想の美少女と一緒のベッドで眠れる生活は楽しい筈だ。
まぁ…眠れるかどうかは別だけどな。
しかし、あのベッドじゃどうしても狭くて窮屈だ。
アイカと話し、大きな部屋や二つベッドのある部屋に移るのではなく、ベッドだけ宿屋に話して大きい物に変える事にした。
宿屋的には出る時に置いていくなら問題はないそうだ。
「すみません、ベッドの注文をお願いしたいのですが」
「はいよ、どんなのがお好みですか?」
ダブルベッドじゃ少し広すぎるから、前世でいう所のセミダブルベッド位が理想だ。
俺は大体の大きさを伝えた。
「ああっ、騎士や大柄な冒険者用のサイズですね、それなら在庫でありますよ」
見せて貰ったら、まさにサイズがドンピシャなので、そのまま注文した。
今あるベッドは下取りしてくれるそうだ。
こうして見るとまるで新婚の買い物みたいだな。
次に寝具屋に行き寝具一式を頼んだ。
「一番良い物ってどれになりますか?」
「それなら何と言ってもスワニーダックです」
「それじゃ、それで大きさは少し大きく、これ位で…」
大きさを指定した。
「畏まりました、前金で宜しいですか? 直ぐに制作に取り掛かります」
「それじゃお願いします」
この世界は前世と違い布団は特注だから10日間待たされる事になる。
後はお揃いの食器を揃えてと…
本当なら一緒に買い物もしたいが、多分またアイカが嫌な思いをしそうだから今は無理だな。
今の所は打開策は無いから考えても仕方が無い。
最悪どうしようも無かったら、余り影響が無さそうな場所への引っ越しも考えた方が良いのかも知れない。
今度は洋服屋に来た。
この世界に洋服屋は大きく分けて2つある。
古着屋とオーダーメイドだ。
殆どの平民は古着で済ましている。
だが、アイカの胸は凄くでかい。
それは惚れ惚れする程に大きく綺麗だ。
この世界にはナインペタンしか居ないから、男物の野暮ったい服しか古着でアイカが着れそうな服は無い。
折角可愛くて綺麗でスタイルが良いんだから、似合った服を着せてあげたい。
これはアイカの為でもあるが『その姿を見たい』俺の我儘でもある。
「いらっしゃいませ、これは、これはリヒト様、今日はどんな服を?」
此処に来る前にちゃんとアイカを採寸してきた。
そのまま寸法を伝えた。
一応スカートの丈は短めにお願いしたのだが…
「あの…このサイズの胸の女性が居たとしたら、それは『化け乳女』じゃないですか?寸法をお間違いなのでは?」
此処でも『化け乳』なのか…少し腹が立つな。
「化け乳だとしたら、服は作って貰えないのか?」
「当店は高級店でございます! 顧客には貴族の令嬢もおりまして『化け乳女』の服を作ったとなればお店の品格に傷がつきます…大変恐縮でございますがお断りさせて貰います」
「本当に駄目なのか?」
「申し訳ございませんが…」
多分、この店で断られるならどの店に行っても同じだ。
此処は高級な洋服店。
顧客に冒険者が居ないからこの間の様な手は使えない。
今は諦めるしか無いのか。
うん、待てよ…
「どうしても駄目なのか?」
「幾ら頼まれても駄目なものは駄目です」
「そうか! なら仕方がないな…そこの君、さっきから見ていたが中々の腕だな? どうだい?この店を辞めて独立する気は無いかい?」
「あの僕ですか?」
「そうだ、俺がお願いする服を5着作ってくれるなら金貨10枚(約100万円)払うよ! それにこれからも継続的に服を注文するし、こう見えても元勇者パーティだから貴族にも知り合いがいるし、安い服も作るなら、冒険者も沢山紹介出来る。どうだい?」
「やっ、止めて下さい、店の中で引き抜き等、非常識です!」
「ならどうする? 今俺がやっているのは犯罪じゃないだろう? 衛兵を呼んでも無駄だよな? 冒険者、用心棒、誰を呼んでも俺には敵わないだろう? 所で君はどうする? 今がチャンスだぜ」
「僕は」
「待って、待って下さい! 解りました、そんな事しなくても5着で金貨4枚で作りますから…そんな酷い事しないで下さい」
「そう…良かった、悪いな! 君、今の話は無しだ」
「解りました」
チャンスは自分で掴む物だ。
逃したな。
「無理言って悪かったな! この先もし国王や大貴族に会う事があったら『良くしてくれた』と伝えるよ…いや俺も酷い事しないで済んで良かったよ」
「国王様…」
何を驚いているんだ?
S級冒険者なんだから指名依頼位入るだろう…
「あのな、これでもS級冒険者なんだぜ! ガイア達は魔王や魔族専門、もし普通じゃ対処できない事が起きたら俺の所に話が来る、当たり前だろう?」
まぁ、現実問題その可能性は高い。
「はははっ、そうでしたな…失礼な事を言って申し訳ございませんでした。服はしっかりと作らせて貰いますのでご安心を」
「無理言って済まないな、宜しく頼むよ、あと下着も数着お願いする」
「解りました」
最後は少し揉めたがこれで全部どうにかなった。
美味しいクリーム菓子をお土産に帰るか。
明日は…冒険者ギルドでアイカとパーティ登録をしないとな。
揉めないと良いが…本当に『貧乳聖女』碌な事しない。
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