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第21話 裏切り者 エルザ
しおりを挟む「スース―」
「スース―」
2人は疲れたのか眠っている。
この僅かな期間で此処迄の事があったんだ眠らせて置いてやろう。
しかし、なんでこんなに落ちていくのがはやいんだ。
折角用意した、ハーブもまだ使ってない。
それより、何よりエルザだ…
彼奴をどうするか?
恐らく、ドルマンとセシリア、イザベルの争いを見て、怖くなって逃げ出した可能性が高い。
どっちに着く事もしないで、仲裁もしないで逃げ出した…
どうする?
俺の中の『竜二』が仲間を置いて逃げ出す奴は『クズだからもう要らねー』そう騒ぐ。
だがリヒトは彼奴に未練があるようだ。
2人は寝ているし、時間はある。
少し、散歩がてら探して見るか。
◆◆◆
「剣聖のエルザを知らないか」
「…知りません」
ドルマンが暴れたせいか、随分と白い目で見てくるな。
村の為に討伐もしないでヤリまくり…こう言う目で見られても仕方ない。
「剣聖のエルザを知らないか?」
「勇者様の騒動の時に村から飛び出していきましたよ」
「村から外に?」
「はい、そこからは知りませんが…」
「近くに川はありますか」
「それなら…」
川の場所を教えて貰い、そこへ向かった。
エルザは、嫌な事や落ち込む時、水場に行く事が多い。
此処だけ探して居なければもう放置するつもりだったが…
石で水切りをしているエルザはあっさり見つかった。
「お前、なにしているの?」
「リ、リヒト…」
「なぁ、パーティが分解寸前なのに、剣聖のお前が何しているんだ!あの場に居たんだろうが!」
「僕、怖くて…」
「そう?怖かったんだ…だがお前が仲裁をしなかったせいで、セシリアもイザベルも大怪我を負ったんだ、女なのに顔に大きな傷を作って、もう真面に歩けない…終わりだよ、終わり、勇者パーティのメンバーとしても、人間としてもな…残りの人生はもう寝たきりだ…」
「ドルマンに逆らうのがいけないんだよ…」
「そう? 乳くりあっているドルマンを諫めようとした、あいつ等二人が悪いんだ…それならそれで良い、もう知らねーから自由にすれば良いさ、ドルマンと一緒に頑張れよ」
「どういう事? リヒトはどうするのさ!」
「話し聞いて無かったか? セシリアもイザベルも真面な生活を送れない、勿論旅は此処で終わりだ…俺は2人についていく、いや俺が世話しなければ生きていけないからな…お前は五体満足だ、ドルマンが正しいんだろう…ドルマンと一緒に魔王討伐の旅を続けていけば良いんじゃないか?」
「僕とドルマンじゃ…」
「ああっ、恐らく勝てねーよ! 死ぬだけだな…」
「そうだよね…」
「ああっお前が居たんじゃ勝てる物も勝てねー! ドルマンも可哀そうにクズの剣聖なんか連れてちゃ終わりだな」
「僕がクズだって言いたいの?」
「そうだ、剣の扱いなら、ドルマンよりエルザの方が上だ、あそこでお前が仲裁に入れば揉めなかった可能性が高い…それに後衛の2人じゃなく前衛の剣聖のお前ならドルマンの剣も受け止められた筈だ、それもしないで逃げたお前はクズだ」
「僕はクズじゃない」
「そうか、見ていた村人は、少なくとも俺を呼びに来た…自分1人で無理なら俺を呼びに来れば良いのに、それもしない! それの何処がクズじゃないんだ? クズだろう? 今回はドルマンだが、これから先、魔族、魔王と戦うんだろう? この程度で逃げ出す人間とドルマンのパーティ…うんうん死ぬ運命しか無いな」
「ふざけないで、僕が死ぬっていうの?」
「絶対に死ぬな…良いか? 恐らく 勇者 聖女 剣聖 賢者 この4職が揃って恐らく魔王と戦えるんだと思う!だが、そこから聖女と賢者が居ないんだ、もう勝てない…そう思わないか?」
「そんな…」
「俺は、2人を引き取り、どこかで静かに暮らすつもりだ、まぁお前はドルマンと一緒に死ねば良いさ…多分、もうすぐ本当のお別れだ…じゃぁな」
「待って…」
「なんだ!」
「僕も連れていって…」
「無理だな、お前は五体満足だから、どう考えても抜けられないだろう?」
「リヒトは…」
「俺は四職じゃないから関係ない…それじゃ…また後でな…」
俺はエルザに背を向け歩き出した。
ザブン
何かが水にぶつかる音がした。
後ろを振り返ると、右手を肘から先を切り落としたエルザが笑顔で俺を見ていた。
「リヒト、これで僕も戦えないよ…連れていってよ…」
「馬鹿、なにやっているんだよ!」
俺は川に飛び込み、エルザの右腕を探した。
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