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3巻

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   第一章 竜の国へ



 天界からの刺客しかく、破壊神ズーマとの壮絶な戦いから数ヵ月後――
 つかの平穏を得た俺、ケインはパーティハウスでこれからの事について、所属するパーティ自由の翼の皆と話し合っていた。

「……う~ん、僕達強くなりすぎちゃったから、もうダンジョン探索は意味ないかもね」

 パーティ一の剣使いで、褐色かっしょくの肌とブラウンのポニーテールが特徴的な剣聖のケイトが言った。

「でも、ダンジョンは素材の宝庫だから、採取のためにもぐっても良いんじゃない?」
「そうですね……うちもそれがいい気がします」

 魔法使いアークウィザードのアリスが口を開き、ポーターのクルダがうなずいた。

「でも、私達は金に困っているわけではないし、装備も整っている。そうなると、素材を集める意味はないんじゃないか」

 剣姫けんきと呼ばれるアイシャが、長い金髪を揺らして首をかしげた。
 今現在の俺達は、王都近郊でやる事が全くない状態だ。
 冒険者ギルドから〝自由の翼はワイバーン以下の獲物は狩ってはいけない〟なんていうルールを課され、気軽に討伐依頼も受けられない。
 ワイバーン以上の存在といえば竜種だが、ひょんなきっかけで青龍せいりゅうという高位の竜種に気に入られ加護をもらってしまった俺は、彼らを傷つける事ができない。
 そして、魔族をべる魔神ルラトともズーマとの戦いを通して親しくなり、そのせいで俺は魔族にあがめられてしまっている。
 何も狩れないし狩る必要もなくなってしまったので、俺はしばらくしたら以前国王より領地として与えられたラグドリアン湖に、避暑ひしょを兼ねて皆を連れていくつもりだった。
 パーティ設立当初の目標だった〝面白おかしく暮らす〟っていう予定が、ここ最近は達成できていなかったため、そろそろ軌道きどうを修正してもいいのではないかと思っていたのだ。
 しかし、まだ避暑には行けそうにない。
 凄く面倒くさい問題がいくつかある。その一つが目の前にいるこいつだ。

「おいケイン、今現在マルスは天界に幽閉ゆうへいされている。馬鹿弟子の代わりに俺がお前をきたえてやろう」

 そう言って俺の肩を叩くのは、魔神ルラトと共に倒した破壊神ズーマだ。こいつはルラトにぼこぼこにされると急に手のひらを返して天界を裏切り、俺達の側についた。
 マルスとは以前まで俺達と一緒に行動していた武神で、天使長ハービアと共に天界の使命を放棄した神の一人。そのばつとして天界からの使者に連れ去られ、幽閉されているらしい。
 マルスは戦う事が大好きでいつも稽古けいこと称して、俺をいたぶっていた。ズーマは天界におけるマルスの師匠だったそうだ。

「俺は今の強さがあれば十分です」
「お前は孫弟子だ。俺から指導を受ける義務がある。良かったな、破壊神に直々じきじきに指導を受けられるなんて、人間じゃお前だけだぞ」

 駄目だ、ズーマのこの目は無理やり稽古に付き合わせるマルスと同じだ。

「……はい」
「まぁ仕方ないわね。死んでもよみがえらせてあげるから、思う存分頑張りなさい」

 全ての元凶である天使長ハービアが言った。
 そもそも天使長のハービアが天界を裏切ったり、魔族の四天王になったりしているせいで、天界からズーマみたいな強力な刺客が送られてきているのだ。成り行きでハービアのしもべになってしまった俺にとってはいい迷惑だった。
 しかし、ハービアはズーマの問題が解決してから安心したのか、随分と明るくなった。
 また気のせいかもしれないが、少し優しくなった気がする。

「それじゃ、やるか」
「はいっ」


 ズーマと俺は、稽古を行う時に使用する王城近くのコロシアムにやって来た。
 俺がいつも使用する武器は、すっかり相棒となったしゃべる剣――七星神剣しちせいしんけんなのだが、ズーマ相手にこれを使うと壊れてしまう可能性が高い。
 剣の中でも最高峰と言われる神剣ですら通用しないなら、この世界に存在する武器は通用しないだろう。まあ、相手は神様だし仕方ないんだけど。
 だからこぶしで行くしかない。
 コロシアムの中央でズーマと向かい合った俺は、拳を握りしめなぐりかかった。
 だが、ズーマはけもしない。

「そんなものは俺には通用しない」

 そう言ったズーマの腹に、俺の拳がめり込んだ。少しだがズーマがよろめいた。
 ん……? 何かがおかしい。マルスと戦った時は、俺の拳なんていくら当たろうが、マルスは微動だにしなかった。それなのに、マルスの師匠であるズーマには若干ではあるものの、効いているみたいだ。もしかして、マルスよりズーマの方が弱いのか?
 俺は立て続けに、回し蹴りをお見舞いする。ドゴーンという音を立てて蹴りがさく裂した。
 確かに勝てるビジョンまでは見えないのだけど、初めてマルスやハービアを目の前にした時のような圧倒的な差は感じない。

「人間にしてはすごいな……聞こうと思ってたんだが、お前は何者だ」

 ズーマが意外そうな顔でたずねてくるので、俺は答える。

「ただの人間です」
「絶対に違うと思うぞ。今の攻撃もそうだが、お前は数ヵ月前俺と戦った時に、魔族やドラゴン族、それに天使の技まで使ってみせた」

 確かに俺にもその記憶はある。ただ、なぜ自分がそれらの技を使えたのかについては、今でもわからないままだ。

「そんな事を言われても、人間なので……」
「下級天使を超えるくらいの力を行使しておいて、まだ自分を人間と言うか。面白い」

 その後はズーマの攻撃を受ける一方だった。
 ただ、確かに腕や足が千切れたりするが、マルスの時のように一撃で死ぬ事はない。
 本当にズーマがマルスより強いなら……俺が少しは強くなったという事だろう。


   ◇◆◇◆◇


 ズーマと修業をした翌日――
 俺はズーマとの修業の他にもう一つ頭をなやませる存在と対峙たいじしていた。

「ケイン、久しぶりだね。元気していた?」

 俺の目の前に座るのは、ズーマと共にハービアとマルスを討伐するため天界から派遣されている凶神イービルだ。こいつは俺の事を妙に気に入って加護を与えたうえ、現在はハービアを狙う事をやめている。マルスはイービルによって天界に連れ去られてしまったが。
 隣には彼が王都の奴隷どれい商で買ったという女性――エルザもいる。
 つい最近知ったのだが、イービルはこの人間界に興味を持っているらしく、これを機にエルザとここで生活をしていくと決めたらしい。
 それで問題なのが仕事だった。
 イービルに何ができるか聞いたら、〝わざわいをもたらしたり、のろいをかけたりかな? あとズーマほどじゃないけど強いよ?〟と、そんな具合だった。
 もう、仕事は決まったようなものだよな。

「それなら、冒険者はいかがでしょうか?」
「あっ、それってケインがやっているやつだよね。どんな仕事?」
「薬草の採取とか討伐とか、いろいろありますよ」
「う~ん、今一わからないから、教えてくれない」
「わかりました」

 俺はイービルを連れて、冒険者ギルドに向かった。


 ギルドに着くと、俺は受付で用件を伝える。

「冒険者の登録を頼む」
「ケイン様、承知いたしました。ケイン様のご紹介という事は、かなり優秀な方なのですね」
「そうだな、凄い人だよ。それでちょっとお願いなんだけど、俺の推薦をつけるからランクを飛び級扱いにしてくれないかな?」

 冒険者はその強さや依頼の達成率に応じてランクがつけられるのだが、最初はだいたいEランクだ。もちろんランクが高いほど難度の高い依頼を受けやすい。イービルに薬草探しとかさせても仕方ないからな。

「飛び級ですか……わかりました。Cランクからでいかがでしょうか?」

 これがかなりの条件なのは理解している。ただ、イービルの強さを考えると、まだ足りないな。

「ギルドマスターのアウターを呼んでくれないか?」
「はい、わかりました」

 その間、イービルは物珍しそうに周りを見ていた。

「ケイン、今はなんの相談をしているの? 僕に関する事かな?」

 その問いには俺の代わりにエルザが答えてくれる。

「冒険者の格付け……ランクについての事だと思います」
「さすが、僕のエルザは賢いね」
「ありがとうございます」

 イービルとエルザの関係は本当によくわからない。今も普通に話しているが、ずうっと手を握り合っている。俺の前世で言うところのバカップルみたいな感じだ。
 しばらく待っていると、ギルドマスターのアウターが現れ、そのまま二階にある彼の部屋に案内された。

「話は聞いた。英雄王ケインの推薦だ、特別にAランクからのスタートにしよう」

 そうだ、英雄王……最近いろいろありすぎて、すっかり忘れていた。俺は以前、魔族の四天王の一人〝死霊王しりょうおうスカル〟を倒しており、また魔族の四天王に降っていたハービアからも王国を守った、という事になっていて、国の英雄として王と同等の地位を与えられている。実際は、俺はハービアに下僕にされ、王国はハービアが裏から操っている状態なんだけど。
 アウターの言葉を聞き、イービルが突っかかってくる。

「ちょっとケイン、Aランクって何? 僕は冒険者の仕組みはよくわからないけど、確か前にケインはSランクだって聞いたよ。僕、ケインより下なの?」
「君は確かに強いのかもしれないけど、ケインと最初から同じにはできないよ。ケインには実績があるんだからね」

 アウターが代わりに説明すると、イービルは考え込むような表情を浮かべる。

「あー、確かにそうだね……ケインも最初は下からスタートしたんだよね?」

 俺が頷くと、イービルは納得したように言う。

「それなら、仕方ない……それで一階に依頼書が張ってあったけど、ドラゴンを討伐してくれば昇格させてくれるの?」
「はははっ、それができればもちろん考えますよ」

 アウターが笑って答えた。

「それなら百匹くらい狩ってこようかな?」

 イービルがそんな事を言い出した。やばい、俺は青龍の加護があるから、竜種と極力対立したくない。もしイービルがドラゴンを討伐しまくった後、青龍がイービルと俺の関係に気付いたら、彼らとの関係が破綻するし最悪俺が殺されかねない。

「そんな、ケイン様達じゃあるまいし……ケイン様?」
「アウター、イービル様なら簡単にドラゴンを仕留められるんだ。正直に言えば、俺でも彼にはかなわないし、怒らせたらハービア様でも止められない」
「冗談はやめてください……それじゃ、神みたいな存在じゃないですか」

 王都の冒険者を統括するアウターには、本当の事を話しておいた方がよいだろう。
 俺は細かい部分は省きながら、大まかにイービルの正体についてアウターに説明する。

「凶神様……神様なのですか?」

 驚愕の表情を浮かべるアウターに、イービルは得意顔で言う。

「そうだね、ケインより強いよ!」
「ですが、正体を隠して生活したいのであれば、Sランクは目立つような……」
「そうなの、ケイン?」

 イービルが尋ねてきたので、俺は頷く。

「確かに目立ちますね。俺のパーティメンバーは皆Sランクですが、メイドのシエスタなんて買い物に行くたびに人に囲まれて困っています」
「それじゃ、目立たないAランクが良いや」

 意外とあっさり引き下がってくれたな。それだけ、人間界での生活を楽しみにしているのかもしれない。

「それじゃ、アウター、後は頼んだ。イービル様、困ったらアウターやギルドの受付嬢に聞いてください」

 俺はアウターとイービルに声をかけると、その場を後にした。


 結論から言うと、イービルをAランクにとどめた意味は全くなかった。
 彼はすぐに、竜種やワイバーンを大量に討伐し、その結果、Sランクに昇格した。
 人化した青龍が俺の前に現れて、どうにかしてくれと泣きついてくるまで時間はかからなかった。

「ケイン、また大量に竜種が狩られているんだ。どういう事だろうか……」
「そうなのか……」

 心が痛い……だが、相手は凶神。今のところ良好な関係を築いているものの、イービルはその気になれば俺なんか一瞬で殺せる強者だ。
 青龍は俺の反応を見て、疑わしげな視線を向けてくる。

「ケイン、まさかお前達じゃないだろうな? 調査の結果次第では、またお前と……」

 彼の本気の表情を見ると、素直に話すしかない気がする。
 俺はイービルの事について、青龍にそのまま話した。

「凶神様だって……」
「そうだ」
「それって、武神のマルス様とどっちが強いんだ?」
「マルス様より断然強い。たぶん戦ったらマルス様は瞬殺されるだろうな」

 それを聞くと、青龍は泣きそうな顔で俺の両肩をつかんだ。

「ケイン、なんとかしてくれ! お前は俺の親友だよな? 俺達のあるじである竜王様にどうにかしろと言われているんだ! おい、どうした? なぜ目をらすんだ」

 確かに青龍は友達だ。友のためなら命懸けで戦う。そのくらいの覚悟はある。
 だが、バッタを助けるためにバッタが手を貸したところで、相手が象なら踏みつぶされて終わりだ。
 いろいろ考えた末、俺は勇気を出して、青龍をイービルに会わせる事にした。

「俺は竜種を殺さないようイービル様を説得する自信がない。お前をイービル様に会わせるから後はどうにかしてくれ」
「いや、そうじゃなくてケインの方でどうにかしてくれないか?」
「いや、いや、そこは自分でどうにかしてくれ」
「頼むからケインの方で……」

 そんな言い合いがしばらく続いた後、俺は青龍に命の保証がある事を伝える。

「大丈夫、死んでもハービア様が蘇らせてくれるから」
「ケイン、お前は死ぬ事に慣れすぎだ。死を怖がらないようなやつは竜種にすらいないぞ」
「いや、俺だって怖いぞ。だがさすがに二百回以上死ぬと慣れる」

 マルスと稽古をしていた時は殺されるたびに、ハービアの魔法〝パーフェクトヒール〟で蘇生そせいしてもらって、またマルスと対峙するというサイクルを繰り返していたんだから、仕方ないじゃないか。

「お前はそうかもしれないが、俺は怖いんだ……なぁ頼むよ、親友」
「わかった。お前とイービル様の話が終わるまで横にいる。これでどうだ」
「……仕方ねーな」

 なんとか話をまとめて、俺達はイービル様の住む王都の屋敷に向かった。


「ケイン、お願いって何? それに、そっちの人は?」

 俺が青龍を連れて屋敷を訪れると、イービルは快く中に迎え入れてくれた。
 こうして普通にしていると、凶神なのに凄く温和に見えるな。

「ここにいる青龍が頼みたい事があるそうです」
「ふーん、青龍って事は竜種か。トカゲが僕に何か用なのかな?」
「……」

 しかし、なぜか青龍は黙っている。

「おい、話せ。僕は忙しいんだよ?」
「ハァハァ……が」

 イービルのオーラにやられているのか、青龍は歯をガタガタさせるばかりで言葉を発せていないので、俺が代わりに答える。

「すみません、イービル様。青龍は、イービル様に竜を狩るのをやめてほしいのだそうです」
「まぁ、もうSランクになったしお金にも余裕があるから、考えても良いよ? だけど僕に何かメリットはあるのかな?」

 確かにそうだ……メリットか。何かないか? 俺は青龍に尋ねる。

「青龍、イービル様に差し出せるものはないか?」
「……」
「お前いい加減にしろよ。いつものお前らしくないぞ」

 駄目だ、このままじゃ話にならない。仕方ないので、俺からイービルに提案する。

「それなら、青龍に王都での生活費や必要なお金を出させてはいかがでしょうか? 竜種を狩れないと、イービル様も継続的な資金確保が難しいと思いますので……」
「うーん、まあいいか。じゃあ、そういう事で。これで話は終わりで良いよね? いやぁまさか竜種が僕のために金を持ってきてくれるようになるなんて思わなかったよ。ケイン、君には本当に世話になりっぱなしだね。そうだ、お礼に……」
「何するんですか……痛いっーーー!」

 イービル様が俺の右目に手をかざすと急にあたりが光に包まれ、目に激痛が走った。

「今までのお礼に、僕の目と君の目を交換してあげたんだ。感謝してよ」

 イービルが恩着せがましく言ってくるが、先ほどの痛みで俺はまだ頭がくらくらしている。

「そ、それって、何か意味があるのでしょうか?」
「う~ん、僕にもわからないけど、僕の目は〝イービルアイ〟なんて呼ばれているから、何かあるんじゃないかな? ちなみに自分の体の一部をあげたのは僕も初めてだよ」
「でも、そんな貴重なものを……」
「気にしないで良いよ? 君はいつもなぜか僕の欲しいものを的確にくれるからね。この世界を管理しているのがもし僕だったら、〝勇者〟のジョブは君にあげている」

 なんで俺はこんなに好かれているのだろう。
 理由はわからなかったが、俺はとりあえずお礼を言う。

「ありがとうございます」
「それじゃ、今日はこれで失礼させてもらうね。エルザに服を買ってやる約束だから」
「そうなんですね。そうしたら、ちょっと待ってください」

 俺はそう言って、王都にあるブティックの場所をメモに書いてイービルに渡す。

「これ何?」
「うちのパーティの女性メンバーに聞いた評判のお店です。ぜひ服を選ぶ際の参考になれば……」
「そう、ありがとう。それじゃ僕は行くね」


 イービルの屋敷を後にして、パーティハウスに戻る道中――
 俺は青龍に尋ねる。

「どうしたんだ、青龍。今日は全くお前らしくなかったじゃないか」
「逆に聞くが、お前はなんでイービル様の前で平然としていられるんだ?」

 青龍は続けて言う。

「あんな禍々まがまがしい気をまとって、殺気がだだれになっている存在、怖くて仕方ないだろう?」
「俺は全然そうは感じないけどな。それに俺達と一緒に屋敷を出た後のイービル様を見ただろう。近所の人と楽しそうに話していたぞ。お前の言う事が正しければ、普通の人間なんて卒倒してるはずだ」
「それは、イービル様の力を理解できないくらい弱い存在だからだ」
「そうか……」
「まあいい。そんなお前に新しいお願いだ。今度は俺と一緒に竜王様のところに来てくれないか?」

 青龍の唐突な頼みを疑問に思い、俺は尋ねる。

「なぜ?」
「お前が竜種から金をみつぐようイービル様に言ったろ。竜種の中でも高位の俺が金を貢ぐという事は、竜種がほぼ全てイービル様の信者になるという事と同義だ。竜王様に黙ってるわけにもいかないから、説得を頼む」
「説得は青龍がすれば良いんじゃないか?」
「竜王様は怒らせると怖いんだ」
「なら、俺だって嫌だよ」
「あのなぁ、お前が決めてしまったのだろう」

 それは、青龍が黙っているからだ。俺は悪くない。青龍にそう伝えるが、彼は譲らない。

「だが決めたのはケインだ。ちゃんと俺が責任は持つから交渉をお願いしたい」
「はあ……仕方ない、わかったよ」

 こうして俺は休むひまもなく竜の国に旅立つ事になったのだった。


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