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第37話 勇者SIDE この選択は譲れなかった。
しおりを挟む「それじゃ、皆はそれで良いんだな」
「ああっ、それで構わない」
「私も、それで良いわ、 それしか方法が無い物」
「絶対にリヒトに帰って来て貰おうね」
「ああっ! もうそれしか方法が無いからな! 悪いが、三人掛かりで色仕掛けまで頼む……そして、本当に悪いがもし乗ってきたら行きつく所まで行ってくれ」
「解ったよ」
他の二人もそのまま頷いた。
この条件でリヒトが断るわけが無い。
俺とは違い、彼奴は村や此奴らが好きだった。
此奴らとも俺とも親友の様に過ごしてきたんだ。
そんな彼奴が此奴らの色仕掛けを受け入れないわけ無い。
もしかしたら、本当に好きなのはエルダだとしても、交友範囲の狭いリヒトなら次に好きなのはこの三人達の筈だ。
エルダは高齢で子供も産めない。
リヒトは俺達のパーティに居たから複数婚も可能だ。
つまり、彼奴が望めば『幼馴染を含む村の大好きな女独り占めパーティ』も可能だ。
ハーレムに家族を持てるチャンス。
これなら彼奴だって戻ってきてくれる筈だ。
本来、3職(聖女 賢者 剣聖)だからイチャつく事は出来てもそこから先は無い。
そこから先が出来るのは魔王討伐の旅が終わってからだが今回はそんなのは度外視する。
行きつく所まで行きついて貰う。
俺がしてない三人の初めてまで行きつかせる。
そこ迄してしまえば、もう絶対にパーティから抜けられなくなる。
三職の『初めてを奪った』と国や教会に報告すれば責任を取らされる筈だ。
俺はもう三人は諦める。
魔王の討伐を終えれば、俺は王女を正室に迎える話や貴族の縁談がくる。
そう考えたら、あいつ等ももういいや。
魔王討伐の駒として、リヒトを繋ぎとめる駒として働いてくれればそれで良い。
うん、問題は無い……会計をリヒトに任せて旅の間は……リヒトには娼婦と遊ぶお金を裏でねだれば良い。 この条件なら文句はないだろう。
俺達4職は避妊紋を立場的に刻めないが『リヒトは刻める』 2回目からはしっかり刻ませて避妊さればあいつ等がやっていても問題は無い。自由にやらせれば良い。
部屋を俺が4人と別にとってやれば、ハーレム生活をリヒトが送れ、俺も自由に過ごせるお互いWINWINだ。
『リヒトに幼馴染ハーレムプレゼント作戦』
これなら失敗はないだろう。
要らないと気が付いた幼馴染を押し付けてリヒトが帰ってくる。
最高だ。
顔が緩む…駄目だ、今は笑顔を漏らしていけない。
俺は何か言いたそうに見つめる三人に…...
悲しそうな顔を作り……謝った。
「俺が不甲斐ないばかりに済まない」と…
◆◆◆
俺達は近くの教会にきている。
怒られるのは覚悟の上だ……魔国に向かっている勇者パーティの俺達が、引き返すこれは重大な問題だ。
「司教はいるか? 今日は重大な報告に来た」
ギルドを通して時間が掛かるより、教会に報告した方が早い。
冒険者ギルドの話では守秘義務があるからと細かくは教えてくれなかったが、リヒトはエルダとタミアに居るようだ。
『大人しく村に帰って田舎で冒険者にでもなるか、別の弱いパーティでも探すんだな』
言うんじゃなかった…まさか彼奴が真に受けて本当にタミアなんかで冒険者をしているなんて普通は思わないだろう。
一刻も早く、タミアに向かわないと……
「これは、これは勇者ライト様、よくぞいらっしゃいました、聖女マリアンヌ様に剣聖リメル様に賢者リリア様......全員で来られるとは、重要な話ですかな?」
「ああっ、極めて重要な話だ……リヒトを連れ戻しに行きたい」
俺は、これまでの経緯を話し、リヒトを追いかけたい、その旨を説明した。
今迄笑っていた司教の顔が怖い顔に変わった。
さっきまでの優しい雰囲気が消えた。
「なりません」
頭ごなしに否定をされた。
教会の人間が俺達を否定する事なんか今迄は無かった。
だが、俺達も此処で引き下がるわけにはいかない。
「だが、俺にとってリヒトは必要なんだ」
「なりません」
「私から頼んでもだめですか?」
「こればかりは聖女マリアンヌ様のお願いでも聞けません」
「そうか、俺は勇者だ、もう良い勝手にさせて貰う」
「私が一人で言っている訳じゃありません。国や教会総意で『勇者達には先に進むませるように』そういう方針なのです」
総意だと…
「だが、俺にとっては…」
「勇者様―――っ」
何だ、此奴急に土下座等して…
「勇者様、どうかどうか…歩を進めて下さい! お願いします…お願いですから…」
「だが、リヒトが俺には必要なんだー-っ」
「お願いでございます……この通りお願いでございますから」
「私からも……お願いです」
「私だってー――っ」
どうしてこうなるんだよ。
俺はただリヒトを迎えにいきたいだけなんだよ……
その後はちゃんと巻き返せと言うなら巻き返すさ。
「ちょっと待って、何でそんな大変な事になるの、解るように説明して」
「リリア様……周りを見て下さい!」
リリアは周りを見て青ざめた顔をしているがどうした? 別に貧相な子供と女が居るだけじゃないか。
「これがどうかしたのか?」
「遠くの村から逃げてきた者でございます……」
「逃げてきた?」
「貴方は勇者様ですよ……貴方が少しでも早く魔王城に向かう事が世界の平和につながるのです。文句は言わない、そう決めておりました。 あの者達は魔王領の近くから逃げて来た者です。ですから、急いだ所で到底間に合いません。ですが、もし勇者様が引き返したりせず、先に進めば、この先にいる沢山の者を救う事が出来る。こんな所でまごまごしていてどうするんですか? この先に沢山の人が貴方達の到着を待っているのです。 お願いでございます。そんな事せず先にお進みください」
「そんな…私達は……」
「リメル様、貴方1人でもオークの巣など簡単に潰せますよね……貴方が剣を振るうだけで何百何千の人々が救われます……この先に沢山の不幸な人間が貴方達を待っています……貴方達は皆の希望なのです……お願いします……先に進んで下さい」
「だが、俺たちは、この通りボロボロなんだ……」
「ボロボロいいじゃないですか! 勇者様や聖女様達が血だらけだったり、汚れていても誰も笑ったりしない! 自分達を守る為に汚れた姿を見て笑う者など居ませんよ! もし居たら、教会が罰します……気になるならその都度近くの教会に立ち寄って下さい! 何時でも暖かい湯に食事、清潔な服に寝床、ご用意させて頂きます」
「ライト止めよう……私達が悪かったわ」
「だが、マリアンヌ」
「駄目だ……よく見ろ、周りを……すまなかった」
「リメル…」
「ごめんなさい、私達が悪かったわ……ちゃんと先に向かうから」
「賢者様リリア様……ううっ、ありがとうございます」
「私はこの剣で魔物や魔族全部に思い知らせてやる……約束する」
「リメル様」
「ほら、ライト行くよ」
「ああっ、俺が間違っていた…司教済まなかった、頭を上げてくれ」
「では解って下さったのですか?」
「ああっ、俺が悪かった……」
だが、幾ら言われても俺達はリヒトを諦めきれない。
誰がなんて言おうとリヒトを迎えに行くしかない。
◆◆◆
「ライト……それでどうする?」
「怒られても罵られてもリヒトを迎えに行く……そうしないと魔王討伐は無理だ! このマイナスは後で挽回すれば良い! リヒトを回収したあとはまっ直線に魔王城を目指せばよい」
「そうだな、それしかない」
「そうね」
「それしかないわ」
やってはいけない事。
それは解るが……リヒトを連れ戻さない。
その選択はどうしても出来なかった。
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