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第25話 此奴も弱い
しおりを挟む相手の年齢は恐らく30歳前後だ…
両手に大きな包丁を持っている。
まるで刀みたいだ…
「あっははは…今日は思う存分殺せる…そしてこれからも…怖いだろう? これはマグロ解体用の包丁なんだ…凄いだろう…それでお前はなんで素手な訳…馬鹿にしているのかな?」
「いや、持っているじゃん…ほら」
「リックサック? 何かあるなら出してないと使えないでしょうが…馬鹿だな…まぁ良いや…死ねよ…」
そう言いながら守は俺を包丁で斬りつけてきた。
だが…怖くない…避けられる。
これだけでもう解ってしまった…此奴、強くない。
大きく分けて殺人鬼には二通りある。
殺す技術に優れた者と残酷な者…俺は運よく『残酷な者』にしかあっていない…
聖夜は暴力や殺しが得意じゃない…痛めつけられて弱った者にただ残酷な事をしていた…それを自分の力だと過信した。
此奴は…度胸はあるが、獲物は女ばかり…此奴も勘違い男だ。
俺は走って逃げた。
「こんな大会に出ておきながら逃げるのか…ああっだからラビットなのか…」
俺は距離をとれた瞬間、リュックサックから 小型の高圧洗浄機を取り出した アムゾンで9800円 メイドイン外国…
これは有名なメーカーみたいな威力は無いがコンパクトで充電式。
リュックのペットボトルに繋いである。
「行くぞ…」
俺は引き金を引いた…
「水…いやなんだ、痛ぇぇぇぇぇーー」
「そんなに痛くないだろう…只のガソリンだ」
俺はガソリンが掛った守るに火をつけたジッポを放った。
そのまま、守るに火が引火する。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁーーーーー」
此処が森とかなら水があるかも知れない…だが此処には無い。
火を消そうと転がりまわる守に遠巻きに高圧洗浄機でガソリンを掛けていく…
俺が持っていたのは2リットル2本…
「うあぁぁぁぁぁーーー体が焼ける…助けてくれーー」
此処が殺人鬼の戦場だと良く解る。
笑いながらイナダヒメは見ていた。
「これが敗者の末路です…大した実力もないのに出場するから死んじゃうのです…悔しい? 悔しい? たかが弱い女を殺しただけで強者気取り? バーカ、バーカ…クズですね…なんか言っていますね」
「助けて…」
「ラビットファング…もう君の勝ち…このゴミどうする…」
「それだけの大やけど黙っていても死ぬでしょう」
「そうですね…でも…次の試合の邪魔なんだよーーーーっ」
そう叫ぶとイナダヒメは守を思いっきり蹴った。
幾ら小柄とはいえ大の大人が場外に飛んでいく…
「勝者ラビットファング…実につまらない試合でした」
運が良い…だが次は…きっと恐ろしい相手だ。
だが、もう勝てる…今の守との戦いで俺は確信した。
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