【完結】婚約破棄? 致しません!

水江 蓮

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会議

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「ライラロック国王陛下、ラズライト帝国内でのスタンピートは収束したと考えられます。まだ原因が解明されていない為しばらくは冒険者や魔導師団、そしてレティシアが現場となった場所にて検証を行う予定です。そちらはどうなりましたか?」

「連絡ありがとうございます。冒険者ギルドからの連絡によると、森の中にいた魔物は全て光と共に消滅。しかし町中にいた魔物は消えることがなかったとの連絡がありました。あと…こちらは死者が出ました。ライディクトを含む23名の者が亡くなりました。」

「それは追放された者たちか?」

「そうです。追放された者達の中で追放されてから何もしなかった者達です。冒険者ギルドを通し魔物を狩っていた者たち15名の無事が確認されております。この者たちが討伐に参加していた事も腕輪から確認が取れました。亡くなった者たちは…全員の力で1体を倒した程度の様です。その後は…魔物の餌と…。ただ亡くなった者の中の1人だけ…その者だけは死因違います。」

「どういう事だ?そしてそれは誰だ?」

「マリア・ノルト男爵令嬢と名乗っていた者です。冒険者ギルドから派遣された冒険者達が発見した時、彼女は魔物の中心で黒いオーラを纏いライディクト達の亡骸の上で笑っていたと。黒いオーラから邪悪な者を感じた為聖騎士により殺害されましたが…刺された後彼女は、ヒロインだとかいう言葉を残して塵1つなく消えたのだと…。」

「黒いオーラ…そして消えたと…。」

「はい。黒いオーラを斬った事がある聖騎士に聞いてみたのですが、この様に塵一つなく消えることはなかったとの事でした…。」

「なるほど、そちらの聖騎士にこちらのダンジョン付近まで来てもらうことは可能だろうか?代わりに人材が必要であればこちらからも冒険者か騎士を送るが?」

「大丈夫です。今の所落ち着いておりますので。ご配慮感謝します。それでは、聖騎士だけではなくその光景を見たもの3名程を一緒にそちらに向かわせます。ノルト男爵領から国境を越えさせていただいてよろしいでしょうか?」

「大丈夫だ。国境近くに冒険者を向かわせる。その後冒険者と共にダンジョンやその周囲を見てもらい、その後消えた女の話を詳しく聞かせてもらおう。」

「それではそのように伝えておきます。失礼致します。」

国王陛下は通信を切ると、項垂れた。
除籍したとはいえ、自分の息子が亡くなったのだ。
しかし、彼は王家の墓に入ることなくノルト男爵領に埋葬される。
彼はもう王家と関係のない平民なのだから…。
それも亡くなっていたその場所にそのまま埋葬されることとなった。
亡骸を動かす事が出来ないからだ。
埋葬する前、最期の姿を見せて欲しいと王妃は冒険者ギルドに懇願した。
冒険者達は見るも無惨な姿の為、辞めておいた方がいいと進言してきたのだが、王妃は聞かずにその姿を通信で目にしてしまった。
王妃は、その姿に驚きそして倒れた。
今もまだ目を覚ましていない。
あの姿を見たのだから仕方がないだろう。
私だって倒れそうになったのだから…。

私はどうしてライディクトを王妃に任せきりにし、見ないふりをしてきてしまったのだろうか?
王妃が何度も婚約者探しのお茶会をしている時にそれを辞めさせれば良かったのか?
それとも、本当の婚約者を私が決めてライディクトに大切にするように言えばよかったのか?
追放された後、ライディクトが心を入れ替え少しでも魔物を討伐していればこんな事にならなかったのではないか?
後悔の波が押し寄せる。

しかしもう遅いのだ。
彼は死んだのだ。
ただの平民ライディクトとして…。


国王陛下は、深いため息をついた。
その後聖騎士達にアズライト帝国へ向かうよう指示をし部屋を後にした。

その夜縁を切ったとは言え我が子を喪った者たちがただひっそりと我が子の冥福を祈っていた。
ただただひっそりと…息を殺して…。
その姿をただ月明かりが照らしていた。


そんな静かな夜だった。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
アズライト帝国side

通信を切ったアルバートは一人メモを片手に考え込んでいた。
黒いオーラに塵一つなく消えた女…。
黒水晶と何か関係があるのかもしれない。
関係があるから、自分しかスタンピートを止められないと言っていたのか?
でもいつそんな事が出来たのか?
それに何をしたんだ?
いくら考えても分からなかった。

「いるか?」

「はい、ここに。」

アルバートの前に1人の影が降りてきた。

「悪いが何人かをライラロック王国に送り込みマリア・ノルトについて調べてきて欲しい。もし何か彼女の持ち物が残っていた場合は持ち帰ってきてくれ。彼女のいた場所から魔力残滓があればそれの鑑定も頼む。魔道具は自由に使ってもらって構わない。なるべく早く持ち帰って来てくれ。頼んだ。」

そう伝えると影は礼をとり姿を消した。


あの女は一体何者だったのだろうか?
謎は深まるだけだった…。
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