天啓によると殿下の婚約者ではなくなります

ふゆきまゆ

文字の大きさ
115 / 145

見限る

しおりを挟む
ギリッと睨みつけてハッキリと言い切るが、国王は真顔を崩さず冷静にユースに歩み寄った。

「ユース、まさかお前がそう考えているとは思わなかったな。」

国王の冷たい眼差しにユースの足も震えている。ウィンノルに至ってはすっかり座り込んでしまっていた。

「お前たちは知っているはずだ、王家の天啓がどういうものか。それが分かっていての発言か。」

「それは……。」

ユースは一瞬言いよどむも何とか自分を奮い立たせ国王に立ち向かう。そうしなければ国王は何も分かってくれないと思った。

「……ウィンノルの天啓は些細なものです。多少普段気をつければどうにかなるものでしょう。俺や父さんのものと違って。」

「どうしてそう舐めた考えが出来る。」

「舐めているのは父さんでしょう。リリーベル家にもっと厳格に対処していればこうはならなかった!」

「……お前は何でも自分の言うとおりになると思っているのか。まだ王家からの命令が万能なものだと。」

「出さなければならない事態にまで対処を遅らせたのは父さんです。もっと最初から動いていれば命令を出さなくても済んだんです!」

憎いものでも見るように睨みつけるユースに国王はただ呆れることしか出来ず再び窓の外を見る。

「……間違えたようだな。」

「そうでしょう!」

「お前の教育を。留学も無意味だったようだ。」

ユースはショックを受けるが背を向けていた国王には見えない。ウィンノルは二人の言い争いに戸惑い眺めている。

「命令は出さない。」

「どうしてですか!」

「もう婚約解消の話し合いを進めているからな。」

「なんでそう勝手に!ウィンノルの気持ちはどうなるんですか!」

「そもそも命令とは自由に出せるものではない。上の立場なら尚更だ。」

「それすらもどうにか出来る存在が国王でしょう。」

「……はあ。」

背を向けたままの国王に言いつのっても返ってくるのはため息だけだ。もうこの問題をどうにかする気はないと分かったユースはもう震えの止まった足で執務室から引き返すことにした。

「ガッカリですよ父さん。相手が公爵家だからって怖気づいて、愛する息子の為に行動することもしない。父さんに国王の資質がないことがよく分かりました。行くぞウィンノル。」

「兄上……しかしまだ、」

「いいんだ。これ以上父さんに言っても無駄だ。俺たちがどうにかするしかない。」

ユースに促されてウィンノルは立ち上がりついていく。扉から出る前に国王を見るといつの間にか振り返っていた国王は再び冷たい目で姿が見えなくなるまでこちらを見ていた。

「兄上、どうするつもりです。アレンシカがどこに行ったのか分からなくなった以上、父上の助力を得ることが最適のはずですが。」

「……俺たちがどうにかするしかない。俺たちは王子なんだからどうにかなるはずだ。出来ることをしよう。」

ユースは足早に自分の執務室へ行くとまだフィラルが待っていてくれていた。心配してくれていたその顔にはホッとしたが、いい報告をあげられなかったことが悔しかった。

「駄目だったんだね。」

「ああ……もう国王は駄目かもしれない。」

「そっか……何が変えてしまったんだろう。国王陛下はいつも最善の判断をなさる方なのに。」

「ウィンノルへの試練のつもりかもしれないが、やり方が間違えている。王家のことも考えるならばウィンノルの為の行動をするべきなのに。」

「それでどうするの。」

「……ウィンノル、お前が決めろ。お前の婚約問題なんだから。」

二人してウィンノルを見てもいまだに国王の怒りに触れた恐怖で青い顔が戻っていない。それでもウィンノルはやるしかなかった。

「……予定通りリリーベル公爵家への抗議。ミラー子爵家の話も聞いてこの件に関わっているかを聞かなければ。ただプリム・ミラーは確実に関わっているだろうから必要なら処罰を。」

ウィンノルの言葉を聞きユースは満足そうに頷く。

「……エイリーク・スプリンガードにも話を聞く必要はありそうです。ただレイシーラ領からいなくなったのは日数的にも単純に学園に戻る為かもしれません。」

「だが全く因果関係がないとも断言できないぞ。」

「……どちらにせよ、プリム・ミラーもエイリーク・スプリンガードも学園に来るのです。そこで話を聞きましょう。」

「学園だとお前しかいられないだろう。外部の者が入れるのは庭園までだ。まあ俺たちならどうにか出来るかもしれないが、国王の名の元に建てられた学園だからな。父さんが介入してくるかもしれない。外に呼んだほうがいいんじゃないか?」

「大丈夫です。」

まだ恐怖感は残っているが、それでも自分を取り戻したウィンノルはしっかりと答えた。

「逆にいえば父上の目の届く場所ならば学園であっても正式な場になり得るということです。だからこそそこで二人に問い詰めます。アレンシカの責任をしっかりと言い聞かせれば正直に話してくれるでしょう。」

「ウィンノルは優しいな……。」

「まだ学生で未熟な二人なのです。王族は正しく導かなければ。」

「そうだね……。昔からウィンノルって責任感が強くてしっかりしてるとは思ってたけど、やっぱりきちんと考えるよね。」

「それがアレンシカの為ですから。」

いくら考えていてもアレンシカには通じてくれない虚しさはあるが、どんなに聞いてくれなくても、これが王族として婚約者としての責務だ。ウィンノルは淋しげに笑った。

「大丈夫だウィンノル。期待しているぞ。いざとなればサポートは欠かさない。」

「協力するからいつでも言いなね。」

ユースとフィラルが励ます。二人の支えがウィンノルには嬉しかった。
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

夫には好きな相手がいるようです。愛されない僕は針と糸で未来を縫い直します。

伊織
BL
裕福な呉服屋の三男・桐生千尋(きりゅう ちひろ)は、行商人の家の次男・相馬誠一(そうま せいいち)と結婚した。 子どもの頃に憧れていた相手との結婚だったけれど、誠一はほとんど笑わず、冷たい態度ばかり。 ある日、千尋は誠一宛てに届いた女性からの恋文を見つけてしまう。 ――自分はただ、家からの援助目当てで選ばれただけなのか? 失望と涙の中で、千尋は気づく。 「誠一に頼らず、自分の力で生きてみたい」 針と糸を手に、幼い頃から得意だった裁縫を活かして、少しずつ自分の居場所を築き始める。 やがて町の人々に必要とされ、笑顔を取り戻していく千尋。 そんな千尋を見て、誠一の心もまた揺れ始めて――。 涙から始まる、すれ違い夫婦の再生と恋の物語。 ※本作は明治時代初期~中期をイメージしていますが、BL作品としての物語性を重視し、史実とは異なる設定や表現があります。 ※誤字脱字などお気づきの点があるかもしれませんが、温かい目で読んでいただければ嬉しいです。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!

迷路を跳ぶ狐
BL
*あらすじを改稿し、タグを編集する予定です m(_ _)m後からの改稿、追加で申し訳ございません (>_<)  社交界での立ち回りが苦手で、よく夜会でも失敗ばかりの僕は、いつも一族から罵倒され、軽んじられて生きてきた。このまま誰からも愛されたりしないと思っていたのに、突然、ろくに顔も合わせてくれない公爵家の男と、婚約することになってしまう。  だけど、婚約なんて名ばかりで、会話を交わすことはなく、同じ王城にいるはずなのに、顔も合わせない。  それでも、公爵家の役に立ちたくて、頑張ったつもりだった。夜遅くまで魔法のことを学び、必要な魔法も身につけ、僕は、正式に婚約が発表される日を、楽しみにしていた。  けれど、ある日僕は、公爵家と王家を害そうとしているのではないかと疑われてしまう。  一体なんの話だよ!!  否定しても誰も聞いてくれない。それが原因で、婚約するという話もなくなり、僕は幽閉されることが決まる。  ほとんど話したことすらない、僕の婚約者になるはずだった宰相様は、これまでどおり、ろくに言葉も交わさないまま、「婚約は考え直すことになった」とだけ、僕に告げて去って行った。  寂しいと言えば寂しかった。これまで、彼に相応しくなりたくて、頑張ってきたつもりだったから。だけど、仕方ないんだ……  全てを諦めて、王都から遠い、幽閉の砦に連れてこられた僕は、そこで新たな生活を始める。  食事を用意したり、荒れ果てた砦を修復したりして、結構楽しく暮らせていると思っていたのだが…… *残酷な描写があり、たまに攻めが受け以外に非道なことをしたりしますが、受けには優しいです。

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

君に不幸あれ。

ぽぽ
BL
「全部、君のせいだから」 学校でも居場所がなく、家族に見捨てられた男子高校生の静。 生きる意味を失いかけた時に屋上で出会ったのは、太陽に眩しい青年、天輝玲だった。 静より一つ年上の玲の存在は、静の壊れかけていた心の唯一の救いだった。 静は玲のことを好きになり、静の告白をきっかけに二人は結ばれる。 しかしある日、玲の口から聞いた言葉が静の世界を一瞬で反転させる。 「好きになられるからあいつには近づかない方がいいよ。」 玲に対する感情は信頼から憎悪へと変わった。 それから十年。 静の容姿は昔の面影がないほど美しくなり、玲を惚れさせた上で捨てようとするが…

【完結】それ以上近づかないでください。

ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」 地味で冴えない小鳥遊凪は、ずっと憧れていた蓮見馨に勢いで告白してしまう。 するとまさかのOK。夢みたいな日々が始まった……はずだった。 だけど、ある出来事をきっかけに二人の関係はあっけなく終わる。 過去を忘れるために転校した凪は、もう二度と馨と会うことはないと思っていた。 ところが、ひょんなことから再会してしまう。 しかも、久しぶりに会った馨はどこか様子が違っていた。 「今度は、もう離さないから」 「お願いだから、僕にもう近づかないで…」

主人公の義弟兼当て馬の俺は原作に巻き込まれないためにも旅にでたい

発光食品
BL
『リュミエール王国と光の騎士〜愛と魔法で世界を救え〜』 そんないかにもなタイトルで始まる冒険RPG通称リュミ騎士。結構自由度の高いゲームで種族から、地位、自分の持つ魔法、職業なんかを決め、好きにプレーできるということで人気を誇っていた。そんな中主人公のみに共通して持っている力は光属性。前提として主人公は光属性の力を使い、世界を救わなければいけない。そのエンドコンテンツとして、世界中を旅するも良し、結婚して子供を作ることができる。これまた凄い機能なのだが、この世界は女同士でも男同士でも結婚することが出来る。子供も光属性の加護?とやらで作れるというめちゃくちゃ設定だ。 そんな世界に転生してしまった隼人。もちろん主人公に転生したものと思っていたが、属性は闇。 あれ?おかしいぞ?そう思った隼人だったが、すぐそばにいたこの世界の兄を見て現実を知ってしまう。 「あ、こいつが主人公だ」 超絶美形完璧光属性兄攻め×そんな兄から逃げたい闇属性受けの繰り広げるファンタジーラブストーリー

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

処理中です...