悪役令嬢に転生したと思ったら、乙女ゲームをモチーフにしたフリーホラーゲームの世界でした。

夏角しおん

文字の大きさ
6 / 15

6.紛い物の箱庭

しおりを挟む
施錠されているので、鍵を見つけますよとアピールしてから先に進む。
この階層では其処此処に瘴気が漂っている。薄紫の靄にぶつかると即座に窒息して死ぬから、目視で避けながら先を進む。靄だけに気を取られると、忘れたころに足元を刃物が奔り抜けていくから注意が必要だ。
男爵令嬢はハイヒールで良く着いて来るものだと思うが、三人がフォローしているので振り返る必要はないだろう。
順次部屋に入り、本棚を改めて壁の文字を読む。一階層目と同じ手順だが、机の引き出しが多いのでそこも忘れずに探索する。目に入らない棚の上は、椅子を移動させて乗るのが基本だ。
先程の施錠された部屋の鍵を見つけ、ヒントのメモもかなり揃った。魔法陣のある場所を確認し、更に隠し部屋で冤罪を晴らすための証拠を放り込む。
失われた生徒会の帳簿がそれだ。脳筋は初恋に我を忘れ、男爵令嬢の気を引くために多額の金銭を費やしていた。初めは家の金を盗んでいたのだが、次第に額がかさみ誤魔化しきれなくなる。そこで生徒会の帳簿とお金を盗み、私に横領の罪を擦り付けた。
貴族の子供たちが通う生徒会の扱う金銭は、それなりに多額だ。だから金貨よりも高額で嵩張らない白金貨が金庫に入っており、脳筋は盗んだ白金貨の替わりにそれを家の金庫に戻している。
だが脳筋は知らなかった。白金貨は高額であるゆえにシリアルナンバーが刻印されており、どこの家や商会でもナンバーを出納帳に記入していることを。
この帳簿を出すところに出せば、生徒会にあったはずの白金貨が脳筋の家の金庫に移動していることが解る。
そして家の金庫にあったはずの白金貨が脳筋の手によって持ち出され、両替されていることも銀行の記録を照会すれば判明するのだ。
隠し部屋から出ると、連中はまだ追い付いていないようで安堵する。冤罪の証拠は集めていることも知られたくない機密事項だが、男共は男爵令嬢に気を取られて私の動向を碌に確認できていないらしい。
泣き言を言う男爵令嬢に胸中で感謝しつつ、私はこの階層のメインイベントに向かうのだった。


やってきました、封印されし研究室。
等と言ってみたが地味なもので、見た所は植物の育成研究を彷彿とさせる部屋だ。広めの石畳には花壇様の区切りが成され、背の高い樹木の周囲を水路が奔っている。
その樹木の先端に果実を視認した脳筋が、俄然張り切って樹を登り出した。強アルカリ溶液で育つ樹木があるかと、友人であれば飛びついて止める所だ。
気配を消しつつ離れ、外敵を警戒していますと言わんばかりに出入り繰り付近に立つ。
落ちたときにお前のせいだと言われるのは知っているが、本人たちも言い掛かりと自覚できるときは直ぐに引き下がるから、時間の消費を考えれば自衛するに越したことはない。
見上げる先では案の定、体重を預けていた枝が折れて脳筋が落下していた。ここで捻挫することで、彼は唯一の取り柄である身のこなしを失うのだ。
男爵令嬢は回復魔法が使えるが、粛清の迷宮では魔力が封じられるため怪我を治せない。おまけに毟り取った果物は布とおが屑で出来た作り物だから、脳筋がいきり立つのは目に見えていた。
「貴様が止めないから、アレクが負傷したではないか!」
口がきけない私は言い返せないから、王太子どもは言いたい放題だ。止めた所で聞く訳もないだろうにと無表情で頭を下げると、これ見よがしに私を突き飛ばして連中は部屋を出た。
宰相令息…眼鏡と王太子が脳筋を支えているから、これからの移動は余計に時間がかかりそうだ。一先ず、付いていく前に脳筋が苛立ち紛れに放り出した作り物の果実を水路から拾う。
腐食した部分を石畳に擦り付けると、布が破れて中のおが屑が一斉に落ちる。作られた小山を探る指先が、硬い感触を探り当てた。
小指よりもまだ小さい、装飾の無い銀色の鍵。それをストレージに入れた私は、身を翻して彼らの後を追った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

卒業パーティーのその後は

あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。  だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。   そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。

ヒロインだと言われましたが、人違いです!

みおな
恋愛
 目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。  って、ベタすぎなので勘弁してください。  しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。  私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

王国最強の天才魔導士は、追放された悪役令嬢の息子でした

由香
ファンタジー
追放された悪役令嬢が選んだのは復讐ではなく、母として息子を守ること。 無自覚天才に育った息子は、魔法を遊び感覚で扱い、王国を震撼させてしまう。 再び招かれたのは、かつて母を追放した国。 礼儀正しく圧倒する息子と、静かに完全勝利する母。 これは、親子が選ぶ“最も美しいざまぁ”。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

処理中です...