悪役令嬢に転生したと思ったら、乙女ゲームをモチーフにしたフリーホラーゲームの世界でした。

夏角しおん

文字の大きさ
9 / 15

9.宰相令息も愛に散る

しおりを挟む
部屋を巡って宝玉を回収し、魔獣の気配を感知しては身を隠してやり過ごす。ヒントメモに従って隠し通路を開き、漸く引き出しの鍵を手に入れた。
下の階層で手に入れた鍵を使うのは、もう一つ上の階層だ。そういえば製作者様は後書き代わりのメタ部屋で、この構成については失敗だったと嘆いていた。
その階層で解く謎やキーアイテムは、その階層で手に入るようにすべきだった。無駄な難易度の上昇はゲームを詰まらなくさせると反省の弁を述べられていたが、初めて製作したゲームにしては驚きの完成度だと私は思う。
一階層で全てが完結するのは確かにやりやすいが、幾つかはこういう不可逆な仕掛けがあってもいいのではないだろうか。そう思えるのはゲームだからであって、今現実として向かい合っている分には、確かにやり込んでいなければ詰むしかないのだろうが。
閑話休題。この階層ではもう一つ、ロザリンドの覚醒を促す重要なアイテムがある。戻り際にとある部屋に入り引き出しを探ると、父の名が書かれた帳簿が出てくるのだ。
ざっと目を通すと、父からの支援金の出納帳だと解る。王太子同様、王妃も私の生活費を着服しており、それを当然のように公爵家に出させていた。私の食費や学費、服飾費。王太子から送られることのないドレスや宝飾品を賄うお金まで、全てがここに記載されている。
同じ所に入っていた手紙は、支援金とその采配を託した相手に宛てられたものだ。王宮での私の扱いに心を痛め、ふがいない親の代わりにどうか見守って欲しいと懇願の言葉が綴られていた。
ロザリンドは自分が尽くしてきた王太子の手によって冤罪が作られたものと知り、更にこういったアイテムを閲覧して洗脳を解いていく。それによってイベントへの反応も変化し、王太子への不信感を育てる事で正しい未来に辿り着くのだ。
これも、王妃陛下の横暴を示す証拠となる。後は魔獣と鬼ごっこしつつ順次宝玉を集め、更に王太子の執務室にある引き出しから横領の証拠も回収するだけだ。


虹と同じ色の宝玉は最期の一つを残すのみとなった。
最後の紫の宝玉は少し意地悪で、他ならぬ謎解き部屋に隠されている。入ってすぐ正面にあるレリーフに気を取られがちだが、入り口すぐ横に隠し通路があり、細いそこを抜けていくと宝箱があってその中に入っているのだ。
宝箱しかない割に、思わせぶりに広い部屋。背後に意識を向けながら宝箱を開け、中身を掴みざま宝箱を盾にするよう体勢を入れ替えた。
「がぁあああああああ!!」
獣の咆哮。否、これは眼鏡の断末魔だ。宝玉を入手するとすぐに出てくる魔獣は、少し前に眼鏡を撥ね飛ばしたあの大きな個体だった。男爵令嬢の悲鳴に王太子の怒号が混じり、少ししてから今度は魔獣の断末魔が響く。
要するにこうだ。視界を悪くしていた眼鏡が魔獣の接近に気付けず、致命傷を受けて倒れた。混乱した王太子は安定の案山子となり、男爵令嬢に襲い掛かった魔獣は護りのカフスによってあっけなく死んだ。
眼鏡が割れていなければ、眼鏡は生存できていただろう。これも私が判っていて見殺しにした結果だが、脳筋の時と同様にそれそのものについて感慨はない。
弱弱しく微笑み、君が無事でよかったと言い残して眼鏡が事切れる。愁嘆場を眺めながら考える事は、次の階層で手に入れるべきアイテムと罠の回避方法だけだ。

『愚かな奴隷は慈しむものを遠ざけて、己を屠るものに縋りつく』
レリーフの声に頷き、私は先の階層に進んだ。


第三階層クリア
この階層での犠牲者 1人
犠牲者の総数    2人
現時点での生存者  3人
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

卒業パーティーのその後は

あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。  だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。   そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。

ヒロインだと言われましたが、人違いです!

みおな
恋愛
 目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。  って、ベタすぎなので勘弁してください。  しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。  私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

王国最強の天才魔導士は、追放された悪役令嬢の息子でした

由香
ファンタジー
追放された悪役令嬢が選んだのは復讐ではなく、母として息子を守ること。 無自覚天才に育った息子は、魔法を遊び感覚で扱い、王国を震撼させてしまう。 再び招かれたのは、かつて母を追放した国。 礼儀正しく圧倒する息子と、静かに完全勝利する母。 これは、親子が選ぶ“最も美しいざまぁ”。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

処理中です...