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5>>ミレニア

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 エイドリックたちとの関係が着実に深まっていく中、メロディーはある日の夕方、廊下で一人で居るミレニアと出会った。

「御機嫌よう、メロディー様」

 さもメロディーがここに来ることを知っていたかの様なミレニアの対応にメロディーは身構える。
 しかしミレニアはメロディーに近付いてくる事はなく、ただ立って廊下の窓から外を眺めていた。

「……ご、御機嫌よう御座います、セルス侯爵令嬢様」

 そんなメロディーにミレニアはフフッと笑う。
 そしてゆっくりとメロディーを見て口を開いた。

「メロディー様はエイドリック第一王子殿下がわたくしの婚約者だと知っていて?
 ゼード侯爵令息やキトルダ侯爵令息、レフィル騎士爵令息にも婚約者が居る事は知っていらして?」

 ミレニアの質問にメロディーの体は強張こわばった。胸の前に置いた手をギュッと握ってメロディーは視線を彷徨わせる。しかし答えなければこの場から離れられなさそうな空気感に遂にメロディーは重い口を開いた。

「…………はい」

「では知っていてあの方々の側にいるのですね?」

「……はい、だって私は……
 みんなと居ると楽しいんです。
 ただそれだけなんです」

 怯えた目でミレニアを見てそう伝える。

「あの方々の側に居る事の意味を貴方は理解していて? 周りからどんな風に見られているのかお分かりかしら? 
 ……それがどんな結果になるかまで想像されていて?」

 ただ淡々と聞いてくるミレニアの意図が掴めずに困惑したが、メロディーはここで引いては駄目だと震える自分を鼓舞してグッとミレニアと向き合った。

「な、何を言われたいのか、分かりませんがっ、私がお側に居る事はリック様たちが認めてくれています!
 あの方たちに言われたら改めますが、セルス侯爵令嬢にとやかく言われることではないと思います!」

 キッと睨んでそう強く言ったメロディーにミレニアは淑女としての顔を少しだけ崩して小さく溜め息を吐いた。

「そう……もう愛称で呼ぶ事も許しているのね……あの人はそこまで……」

 少しだけ悲しげな表情をしたミレニアはすぐにそれを淑女の仮面の下に隠してメロディーを見た。

「一つだけ教えてあげるわ。
 6歳の時からあの方の婚約者だったわたくしだから言える事……

 あの方々が貴女に見せている顔はあくまでも彼らの一面いちめんの一つよ。

 ……覚えておいて」

 そう言ってミレニアはメロディーに背を向けて歩いて行った。
 メロディーはただその場に立ち尽くす。言われた意味は分らない。

「……そんなの……誰だってあるじゃない……」

 私だってそうだもん……
 皆が無邪気だと言うメロディーの中身は全然無邪気じゃないとメロディー自身が知っている。でもそんなの誰にだって当てはまる事だ。エイドリックやセルジュたちをメロディーだってただの優しく紳士な令息だとは思ってはいない。誰だって内に秘めた欲望がある。
 そんな事は当たり前で、

 メロディーはミレニアの背中を見送りながらそう思った……




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