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──11──黒髪の少女
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異世界に聖女として呼ばれた少女は目を開けた。
コンビニに行った帰りに異世界に召喚された彼女は同じ場所に戻ってきた。
ぼうっとする頭でスマホを取り出して時間を確認する。
そういえば異世界で着替えていて荷物も持っていなかったのに今は召喚される前と同じ格好をしている。
あんなコスプレみたいな服で戻されなくてよかった……、と彼女は無意識に思った。
時間を確認すればコンビニを出る前に時計を見た時間から大して変わっていない。異世界で過ごした数日。やっぱり時間とか超越してるのかな? とまだハッキリと動かない頭で考える。そして……
「帰ろ……」
彼女は家に帰った。
そして次の日。
彼女は学校で親友の顔を見るとなんだか怒りがぶり返した気がして全部喋った。
「おはよう、ミキちゃん!
聞いてよ凄い夢見たの! それも白昼夢!!」
「はく?」
「起きてる時に見る夢!!
私なんと異世界に聖女として召喚されちゃった!!」
「ぶはっ!! あんたが聖女っ!!」
「ね! 私も笑っちゃうわ!
私がいくらネトゲでヒーラー専門で仲間から聖女様とか呼ばれた事があるからって、私が聖女はないわよね~」
「夢だから、願望? シホってば実は逆ハーレム願望があったとか?」
「ある訳ないでしょ!
聖女=逆ハーレムはザマァ小説に毒され過ぎ!!」
「え~そうかな~~」
「でねでね!
私、召喚されて西洋風の異世界で超美形ばかりの異世界人に囲まれたんだけど、そいつら、勝手に人のこと呼んだくせに、私の顔見て「え?」みたいな顔するのよ!?」
「あ~、召喚される聖女って決まって美少女だもんね~。
アイドルから選んでんのかってくらいに」
「じゃあそもそも私を呼ぶなって感じでしょ?! 勝手に拉致っといて「え?」って顔すんの!! 凄いムカつく!!!」
「夢にどれだけキレてんのよ」
「でね! なんか第二王子とかいうキラキライケメンがニコニコしながら近付いて来て私に媚び売って来ようとすんのよ!!」
「私らみたいなのに近付いてくるイケメンは詐欺師しかいないからね」
「ね! 美形が微笑めば不細工はイチコロで落ちるなんて思うなよ、って感じ!!」
「それで? どうしたの?」
「なんか聖女さまにはって色々説明とかなんか色々聞かされたけど、そんなの私には関係ないじゃん?
帰れるかって聞いたらはぐらかすから、これ絶対に駄目なやつだって思ったから私絶対に帰ってやるんだって思ってさ!
異世界召喚される聖女って大抵その世界で一番力強いじゃん? だからその力を使えばどうにかなるんじゃないかと思ってめちゃくちゃ考えた!!!」
「シホらしいわ」
「ほら、漫画とかだと力を集めれば、とか魂を集めれば、とかやるじゃない? なら私もそれすればいいんじゃないかって思ってやったらできた」
「ん?」
「やったらできた。
さすが聖女の力。最強だったわ」
「何を集めたって?」
「……帰るのに必要な力」
「……それは……?」
「…………魂……」
「魂……」
「異世界移動できるだけの魂……」
「魔王じゃん!!!!
魂集めるとか魔王爆誕じゃん!!!!!(爆笑)」
「仕方ないじゃん!! 帰る為だったの!! そもそも誘拐する方が悪いんだからみんな同罪よ!!!
それに考えてもみてよ!?
あの世界がバーチャル空間じゃないって否定できる?
よくよく考えたらあんな美形ばっかりの世界、ネトゲの仮想空間だと思えばおかしくないのよね! 目の前に居た第二王子もメイドもあれが本体だって、どうやって証明するのよ? アバターかもしれないのに」
「あ~、ネトゲとかまんま異世界小説の舞台みたいなもんだもんね~」
「たがら私がやったのはアバターの破壊かもしれないけど、そんな大事じゃないのよ!!」
「アバターの破壊も相当やばくない?」
「あんな世界に私を閉じ込めた奴が悪い!!!
みんなのレベルとか力とかをエネルギーにして私は現世に帰ってきたのよ!!
決して大量殺人の魔王とかじゃないわ!!!」
「まぁ、夢の中で何人殺しても数には入らないしね~
精神は疑うけど」
「夢よ夢!! だからミキちゃん引かないでっ!!」
「はいはい。私はシホがグロエロBLの超ド級の変態性癖垂れ流しの夢見ても友達辞めたりしないから安心しな」
「そんな夢見ないよ!??!!」
「はいは~い」
「ちょ、ミキちゃん!!」
「あ、アンちゃんおはよ~」
「おはよ~」
「アンちゃんおはよっ、聞いてよアンちゃん!」
「聞いてよシホの逆ハーの夢を」
「だから違うってば!!!」
「朝から元気だね~」
ごく普通の高校の教室の中で、ごく普通な少女たちの楽しそうな声が響く。
それはなんの変哲もない、いつもと変わらない時間。
異世界に召喚された聖女は、聖女であることを望まず、自分の世界へと帰った。
それを咎められる者はどこにもいない。
『一人の少女を犠牲に』しようとした国が返り討ちにあった。
ただそれだけの事なのだ……──
[完]
─────────
□補足□
・神→この世界を生み出した創作者。誰かの生み出した異世界創作の世界が平行世界のどこかで“現実”となり歴史を重ねている。
・悪魔→実は居ない。この世界が『誰かの創作した物語の世界』なので、魔物を作ったのも神なのだがそれを『神がそんなことする訳ない』という考えから原因として考えられたのが悪魔という概念。
・神の国→日本。というか“現代”。異世界転移の影響で想像力が魔力(チート能力)へと変換される。
異世界に聖女として呼ばれた少女は目を開けた。
コンビニに行った帰りに異世界に召喚された彼女は同じ場所に戻ってきた。
ぼうっとする頭でスマホを取り出して時間を確認する。
そういえば異世界で着替えていて荷物も持っていなかったのに今は召喚される前と同じ格好をしている。
あんなコスプレみたいな服で戻されなくてよかった……、と彼女は無意識に思った。
時間を確認すればコンビニを出る前に時計を見た時間から大して変わっていない。異世界で過ごした数日。やっぱり時間とか超越してるのかな? とまだハッキリと動かない頭で考える。そして……
「帰ろ……」
彼女は家に帰った。
そして次の日。
彼女は学校で親友の顔を見るとなんだか怒りがぶり返した気がして全部喋った。
「おはよう、ミキちゃん!
聞いてよ凄い夢見たの! それも白昼夢!!」
「はく?」
「起きてる時に見る夢!!
私なんと異世界に聖女として召喚されちゃった!!」
「ぶはっ!! あんたが聖女っ!!」
「ね! 私も笑っちゃうわ!
私がいくらネトゲでヒーラー専門で仲間から聖女様とか呼ばれた事があるからって、私が聖女はないわよね~」
「夢だから、願望? シホってば実は逆ハーレム願望があったとか?」
「ある訳ないでしょ!
聖女=逆ハーレムはザマァ小説に毒され過ぎ!!」
「え~そうかな~~」
「でねでね!
私、召喚されて西洋風の異世界で超美形ばかりの異世界人に囲まれたんだけど、そいつら、勝手に人のこと呼んだくせに、私の顔見て「え?」みたいな顔するのよ!?」
「あ~、召喚される聖女って決まって美少女だもんね~。
アイドルから選んでんのかってくらいに」
「じゃあそもそも私を呼ぶなって感じでしょ?! 勝手に拉致っといて「え?」って顔すんの!! 凄いムカつく!!!」
「夢にどれだけキレてんのよ」
「でね! なんか第二王子とかいうキラキライケメンがニコニコしながら近付いて来て私に媚び売って来ようとすんのよ!!」
「私らみたいなのに近付いてくるイケメンは詐欺師しかいないからね」
「ね! 美形が微笑めば不細工はイチコロで落ちるなんて思うなよ、って感じ!!」
「それで? どうしたの?」
「なんか聖女さまにはって色々説明とかなんか色々聞かされたけど、そんなの私には関係ないじゃん?
帰れるかって聞いたらはぐらかすから、これ絶対に駄目なやつだって思ったから私絶対に帰ってやるんだって思ってさ!
異世界召喚される聖女って大抵その世界で一番力強いじゃん? だからその力を使えばどうにかなるんじゃないかと思ってめちゃくちゃ考えた!!!」
「シホらしいわ」
「ほら、漫画とかだと力を集めれば、とか魂を集めれば、とかやるじゃない? なら私もそれすればいいんじゃないかって思ってやったらできた」
「ん?」
「やったらできた。
さすが聖女の力。最強だったわ」
「何を集めたって?」
「……帰るのに必要な力」
「……それは……?」
「…………魂……」
「魂……」
「異世界移動できるだけの魂……」
「魔王じゃん!!!!
魂集めるとか魔王爆誕じゃん!!!!!(爆笑)」
「仕方ないじゃん!! 帰る為だったの!! そもそも誘拐する方が悪いんだからみんな同罪よ!!!
それに考えてもみてよ!?
あの世界がバーチャル空間じゃないって否定できる?
よくよく考えたらあんな美形ばっかりの世界、ネトゲの仮想空間だと思えばおかしくないのよね! 目の前に居た第二王子もメイドもあれが本体だって、どうやって証明するのよ? アバターかもしれないのに」
「あ~、ネトゲとかまんま異世界小説の舞台みたいなもんだもんね~」
「たがら私がやったのはアバターの破壊かもしれないけど、そんな大事じゃないのよ!!」
「アバターの破壊も相当やばくない?」
「あんな世界に私を閉じ込めた奴が悪い!!!
みんなのレベルとか力とかをエネルギーにして私は現世に帰ってきたのよ!!
決して大量殺人の魔王とかじゃないわ!!!」
「まぁ、夢の中で何人殺しても数には入らないしね~
精神は疑うけど」
「夢よ夢!! だからミキちゃん引かないでっ!!」
「はいはい。私はシホがグロエロBLの超ド級の変態性癖垂れ流しの夢見ても友達辞めたりしないから安心しな」
「そんな夢見ないよ!??!!」
「はいは~い」
「ちょ、ミキちゃん!!」
「あ、アンちゃんおはよ~」
「おはよ~」
「アンちゃんおはよっ、聞いてよアンちゃん!」
「聞いてよシホの逆ハーの夢を」
「だから違うってば!!!」
「朝から元気だね~」
ごく普通の高校の教室の中で、ごく普通な少女たちの楽しそうな声が響く。
それはなんの変哲もない、いつもと変わらない時間。
異世界に召喚された聖女は、聖女であることを望まず、自分の世界へと帰った。
それを咎められる者はどこにもいない。
『一人の少女を犠牲に』しようとした国が返り討ちにあった。
ただそれだけの事なのだ……──
[完]
─────────
□補足□
・神→この世界を生み出した創作者。誰かの生み出した異世界創作の世界が平行世界のどこかで“現実”となり歴史を重ねている。
・悪魔→実は居ない。この世界が『誰かの創作した物語の世界』なので、魔物を作ったのも神なのだがそれを『神がそんなことする訳ない』という考えから原因として考えられたのが悪魔という概念。
・神の国→日本。というか“現代”。異世界転移の影響で想像力が魔力(チート能力)へと変換される。
応援ありがとうございます!
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読んで頂きありがとうございます^^
私の書く話を気に入って頂けて嬉しいです!😆自分的にはテンプレを書いてるつもりなんですが、『捻くれ者』と言われる部分が作品に濃く出てしまっているようです😅笑
これからも楽しんでいただけるように頑張ります😆
ネタはまだまだあるので!👍笑
感想ありがとうございます^^
チート能力があっても意外と自分で制限つけて使ってる人が多いので『チート能力ならもっとできるでしょ?』って常々思ってたんですよね(笑)
誘拐された時点で『相手方の条件を呑む必要性』がない気がしますよ。召喚される者の優しさにつけ込んで使い倒すだけの世界の役に立つ必要もないかと😑
初めての召喚であればあれこれ細かく情報処理してるでしょうし、調査隊はそれらを集めて纏めて報告した形です。きっとメイドとかは日記なんかもつけてたでしょうし。
紳士的でも『誘拐』は最悪行為なので……『召喚しなければもうこの世界が滅亡する!後が無い!』ぐらいの理由がなければワンチャンない気がします😅笑
感想とエールありがとうございます!(*^∀^*)