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10.ライバルはお子様?お嬢様?

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「それでネインさん、彼の好みそうな女性とか近くにいないかしら?」
「……好みそうな女性は、お嬢様以外心当たりはありませんけど…………レクター様を慕っている女性なら……心当たりがあります」

 数十分後。
 ようやく落ち着いたネインに私は、作戦の足がかりを探すべく質問を投げかけた。その期待が的中し、彼は思わぬ情報源へとなったのである。

「おお、流石ネイン!」
「その人がどなたか教えて貰える?」

「……ご親戚のエリーナ様です」

「ああ!」
「あの方ですか」

 私とジュネは顔を合わせた。

 彼女のことはよく知っている。
 私とレクターの婚約が決まる前から、社交場あるいは彼の家などでその姿は度々目撃していた。確か年齢は私達より10歳くらい下だっただろうか。レクターを兄のように慕う、可愛らしいお嬢様。

「私には妹はいないけど、彼女なら年下だし妹のようなものだものね」
「それにレクター様を気に入っているというのもポイントですね。現に婚約している今でさえ、二人の隙に割って入ろうとレクター様宅を度々訪れている。お嬢様とレクター様の仲をさりげなく妨害するプロですよ、あれは」
「え?」
「え?」

 私の言葉にジュネが動きを止めた。
 でも、知らなかったから。

「そうなの?」
「……そうですよ」

 何とも形容のしがたい微妙な空気が流れた。

「レクター様の誕生日にだって、二人の婚約記念日にだって、ちょっとしたバカンスの時にだって、何故かタイミング良く現れたじゃないですか、あの方……」
 
 言われてみれば確かに。

「偶然かなって」
「妨害ですよ、十中八九」
「……」

 そう言われたら、なんだか恥ずかしくなってきた。

「え、えっと」
「なんです?」
「それって、レクターの方は気付いていたのかしら?」

 気付いていたとしたら、私だけその事実に気付かずにエリーナを快く招いていたことになる。

「気付いていませんよ」

 そう言ったのはネインだった。

「レクター様は普通に『ああ遊びに来たんだな』って、迎え入れてました」
「そっ、そうなのね……」

 よかった。私だけじゃなかったんだ。
 それだけで、少し心が軽くなった気がする。

「はあ全く」
「え? どうしたの?」

 私はこうも安心したのに。
 ジュネが珍しくネインのように苦々しい顔でこちらを見つめていた。

「別に」
「別にって」

 何か含みがありそうな言葉だ。

「ま、私は、お嬢様達のそう言うところが好きなんですけどね」
「姉に同じく」

 何だかよく分からないけど褒められた。

「ありが、とう?」

 その真意は分からないけど、お礼を言って今日のところは幕を閉じることにした。

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