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20.図星の婚約破棄
しおりを挟む「……セイラ。それにネインとジュネ、君達は一体何をやっているのかな?」
レクターの言葉。
それはまるで私達を警戒しているようで……。
「別に何って、談笑ですとも、談笑。お天気がいいなーとかそんな感じのー……」
こういう時のジュネは強い。
この修羅場のような空気にも物怖じせず受け答えが出来る。
「セイラがネインに抱きついたりしてかい?」
「あらー……そこから見ていましたか」
あっさりと彼の微笑みに黙殺され、ジュネはそれ以上、返すのをやめた。
「あの、それには理由があって」
今度はネインがフォローに入る。
「理由? 納得する理由を言えるのかい。場合によっては、君をこの地から追放しても構わないよ」
すかさずレクターが言い返した。
「それは……」
ネインが口ごもる。
それはそうだろう。いきなり追放などという言葉をぶつけられたんだから。
「さあ、言いなさい」
レクターが見下すように冷たく告げた。
おかしい。
「……」
「どうしたんだい?」
さっきから何かがおかしい。
なんだろう。この、一方的に相手を悪と決めつけるやり方は。
この会話は、本当に続けてもいいのだろうか。
「言えないなら……」
「待って!」
私は彼に届くようにはっきりと声をあげた。
「セイラ?」
「お嬢様」
みんなが私に注目する。
「どうしたのかな?」
背筋の凍る微笑み。
勘違いかもしれない。
でも、これは絶対におかしいと、私の中で何かが言っている。
「あなた……本当にレクターなの?」
私は静かに訊ねた。
「何を言っているんだ。当たり前だろ、セイラ」
「本当に?」
「本当だとも」
「……じゃあどうして、私と一従者であるネインのことを気にするの?」
良くも悪くもネインとジュネは従者。
従者という存在は、結局のところそれ以上には成りえない。
そんなこと、私もレクターも生まれながらに十分理解していたハズ。
それなのに、そこにいちいち突っかかるこの展開は、まるで――
「もしかしてあなた……婚約破棄を狙ってる?」
「えっ?」
「??」
「…………」
沈黙。
けれど彼は、確実に、笑っていた。
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