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第770話
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――感じるべきは敵が何処を狙っているか。
姉のふわっとした説明を要約するとそう言う事らしい。
殺気――要は相手の意識の焦点が向かう先を見極める事。
生身ならまだしもゲームでそんな真似が可能なのかといった疑問はあったが、姉は見事にやってのけていた以上はやってできない事はないのだろう。
――という訳で私は姉に何度も切り刻まれたんだよなぁ……。
目隠し状態で姉の猛攻を躱すという苦行のような特訓と呼ぶのも憚られる何かを強いられる事となったのだ。 そしてそれはリアルでも続いた。
道場が終わった後、目隠しして殺気を感じる訓練と称して姉の振るう木刀――寸止めではあるが――を躱すという謎のメニューをこなす事となったのだ。
これはもはや虐待ではないかと思っていたが、せびった装備分ぐらいは働けというのが姉の主張だったのでシニフィエとしては逆らう事が出来ずに泣く泣く従う事となった。
さて、その訓練は身を結んだのか?
地面を這うように飛行し、エネルギーウイングで動きに緩急を付ける。
飛んで来たレーザーを際どいところで躱す。
――一応は身を結びはした。
何となく、本当にぼんやりとだが、殺気らしき物をゲームでも感じられるようになったのだ。
流石に姉ほどの精度は難しいが、何処を狙っているのかどのタイミングで攻撃してくるのかがぼんやりと感じられた。 言葉では説明し辛いが視線のような物を感じるのだ。
そこから相手の狙いを逆算して回避行動を決める。
これの難しい所はそれをほぼノータイムでやらなければならない。
姉はこれができるから銃弾を切り払うなんて人間離れした真似ができるのだろう。
残念ながらシニフィエはそこまでは無理だ。 できるのは躱しながら相手の位置を割り出す事。
キュムラスは無数の小型ドローンを使用して霧に紛れてレーザーでアバターを射抜く。
それ以外の場所は被弾してもそこまでのダメージはない。
狙いはコックピット部分のみ。
ドローンの位置は不明だが、攻撃のタイミングさえ分かれば躱せる。
後は殺気の出所さえ分かれば――撃破は可能だ。 エネルギーウイングを全開にして加速。
霧を掻き分けて真っすぐに敵がいるであろう場所へと向かう。
抜けた先に特徴的な機体の陰が見えた。 動揺するように敵機が揺れる。
流石に視界どころかレーダーがまともに機能しない状態で居場所を割って来るとは思わなかっただろう。
――微妙に殴り難い形だなぁ。
接地していないから打撃を喰らわせた方向へ飛んでダメージを逃がされる。
肘や膝に武器を仕込んだのはこの手の敵に対しての備えという意味もあったのだが、そもそもが正面から殴りに行くのはシニフィエのスタイル的にあまりよろしくなかった。
同格以下ならまだしも格上は彼女よりも機体の扱いに通じており、構成を見れば打撃戦に特化している事は直ぐに分かる。 大抵の相手は距離を取りに行くが、目の前の敵はどうか?
浮遊しているリングが発光。 エネルギーのブレードが展開され、高速で回転。
そのまま突っ込んで来た。
リングは胴体部分辺りで浮遊しており、体ごと突っ込んむ事で敵機を切り刻むのだろうが、これに関しては聞いている。 リングは上下で割れ、二つになって敵機を切り刻む。
嫌がって距離を取ればレーザーと中々に上手くできている。
――リングの対処は貫手。 レーザーは密着すればそこまで怖くない。
形状的にリーチはそこまで長くない。 伸ばせば素手の方が長いぐらいだ。
打撃攻撃を最大限に活かせる構成にしているので、何の問題もない。
殺気を感じる。 敵機は正面、この状況でどこから狙うか?
――左右!
力強く地面を踏みしめて制動。 左右からレーザーが飛んで来たが、目の間で交錯するだけ。
敵機はその隙に旋回。 背後に回るつもりのようだ。
踏みしめた足を軸に機体を半回転。 後ろ回し蹴り。
命中したがリングで受けられた。 回転するリングと足に装着された装備が火花を散らす。
軸足に力を込めて爪先と踵だけで軽く跳躍。 空中でエネルギーウイングを全開。
回転力を強化。 敵機は踏ん張りが利かずに吹き飛ぶ。
距離が離れたと同時に無数のレーザーが飛んでくるが、腕を交差させて防御。
籠手で防ぐ。 着地と同時にダッシュで敵機へと肉薄。
行ける。 シニフィエは手応えを感じていた。
感覚的に攻撃に対して反応できるようになった事で相手の動きに対して先回りができるからだ。
ドローンの位置までは不明だが、数は五。 自動ではなく手動での操作。
リングを使っての体当たりといった攻撃手段で近接戦闘を賄っているのは複雑な動きができる程のリソースがないからだろう。 推進装置はエネルギーウイングではなく重力制御。
動きの自由度は高いが、加速ではこちらにやや分がある。
蹴りは見せた以上、闇雲に突っ込むのは悪手と判断するはずだ。
レーザーで削りつつリングの向きを縦に変えてリズムの変調で仕留める可能性が高い。
キュムラスの戦い方は一通り頭に入っている事もあってまだ見せていない攻撃手段への対処も問題ない。
時間もかけていられない。 次で仕留めに行く。
蹴りを意識させた後、懐に誘い込んで頂肘――肘打ちを喰らわせる。
肘にはインパクトボルトが仕込んであり、密着状態なら衝撃で重装甲の機体でも内部機構を破壊できる代物だ。
ジェネシスフレームでも一撃で仕留められる威力を求めてこれに行きついたのだが、中々にしっくりくる。 レーザーの軌道は敵機と自機の位置関係を意識していれば問題ない。
さっきと同じように地面を踏みしめて制動。 左右からレーザー。
敵機が移動。 上半身を捻る。
背後から飛んで来たレーザーを躱し。 その動きに乗せる形で周り蹴り。
後ろ回し蹴りと違って正面からなので仕込んだクレイモアが使える。
鞭のようにしなる蹴りを敵機は下降――地面スレスレまで落とす事で回避。
懐に入ろうとしている。
――ここ!
エネルギーウイングを全開。
蹴りの回転方向とは逆に噴かして強引に姿勢を戻し、全力で前へと一歩踏み出すと同時に肘を突き出す。
それにより全身に合わせて肘が槍のように敵機の中心に突き刺さる。
読み通り。 タイミングも完璧だ。
仕留めたと確信したが不意に飛んで来たレーザーが彼女のアバターを射抜いた。
――え?
姉のふわっとした説明を要約するとそう言う事らしい。
殺気――要は相手の意識の焦点が向かう先を見極める事。
生身ならまだしもゲームでそんな真似が可能なのかといった疑問はあったが、姉は見事にやってのけていた以上はやってできない事はないのだろう。
――という訳で私は姉に何度も切り刻まれたんだよなぁ……。
目隠し状態で姉の猛攻を躱すという苦行のような特訓と呼ぶのも憚られる何かを強いられる事となったのだ。 そしてそれはリアルでも続いた。
道場が終わった後、目隠しして殺気を感じる訓練と称して姉の振るう木刀――寸止めではあるが――を躱すという謎のメニューをこなす事となったのだ。
これはもはや虐待ではないかと思っていたが、せびった装備分ぐらいは働けというのが姉の主張だったのでシニフィエとしては逆らう事が出来ずに泣く泣く従う事となった。
さて、その訓練は身を結んだのか?
地面を這うように飛行し、エネルギーウイングで動きに緩急を付ける。
飛んで来たレーザーを際どいところで躱す。
――一応は身を結びはした。
何となく、本当にぼんやりとだが、殺気らしき物をゲームでも感じられるようになったのだ。
流石に姉ほどの精度は難しいが、何処を狙っているのかどのタイミングで攻撃してくるのかがぼんやりと感じられた。 言葉では説明し辛いが視線のような物を感じるのだ。
そこから相手の狙いを逆算して回避行動を決める。
これの難しい所はそれをほぼノータイムでやらなければならない。
姉はこれができるから銃弾を切り払うなんて人間離れした真似ができるのだろう。
残念ながらシニフィエはそこまでは無理だ。 できるのは躱しながら相手の位置を割り出す事。
キュムラスは無数の小型ドローンを使用して霧に紛れてレーザーでアバターを射抜く。
それ以外の場所は被弾してもそこまでのダメージはない。
狙いはコックピット部分のみ。
ドローンの位置は不明だが、攻撃のタイミングさえ分かれば躱せる。
後は殺気の出所さえ分かれば――撃破は可能だ。 エネルギーウイングを全開にして加速。
霧を掻き分けて真っすぐに敵がいるであろう場所へと向かう。
抜けた先に特徴的な機体の陰が見えた。 動揺するように敵機が揺れる。
流石に視界どころかレーダーがまともに機能しない状態で居場所を割って来るとは思わなかっただろう。
――微妙に殴り難い形だなぁ。
接地していないから打撃を喰らわせた方向へ飛んでダメージを逃がされる。
肘や膝に武器を仕込んだのはこの手の敵に対しての備えという意味もあったのだが、そもそもが正面から殴りに行くのはシニフィエのスタイル的にあまりよろしくなかった。
同格以下ならまだしも格上は彼女よりも機体の扱いに通じており、構成を見れば打撃戦に特化している事は直ぐに分かる。 大抵の相手は距離を取りに行くが、目の前の敵はどうか?
浮遊しているリングが発光。 エネルギーのブレードが展開され、高速で回転。
そのまま突っ込んで来た。
リングは胴体部分辺りで浮遊しており、体ごと突っ込んむ事で敵機を切り刻むのだろうが、これに関しては聞いている。 リングは上下で割れ、二つになって敵機を切り刻む。
嫌がって距離を取ればレーザーと中々に上手くできている。
――リングの対処は貫手。 レーザーは密着すればそこまで怖くない。
形状的にリーチはそこまで長くない。 伸ばせば素手の方が長いぐらいだ。
打撃攻撃を最大限に活かせる構成にしているので、何の問題もない。
殺気を感じる。 敵機は正面、この状況でどこから狙うか?
――左右!
力強く地面を踏みしめて制動。 左右からレーザーが飛んで来たが、目の間で交錯するだけ。
敵機はその隙に旋回。 背後に回るつもりのようだ。
踏みしめた足を軸に機体を半回転。 後ろ回し蹴り。
命中したがリングで受けられた。 回転するリングと足に装着された装備が火花を散らす。
軸足に力を込めて爪先と踵だけで軽く跳躍。 空中でエネルギーウイングを全開。
回転力を強化。 敵機は踏ん張りが利かずに吹き飛ぶ。
距離が離れたと同時に無数のレーザーが飛んでくるが、腕を交差させて防御。
籠手で防ぐ。 着地と同時にダッシュで敵機へと肉薄。
行ける。 シニフィエは手応えを感じていた。
感覚的に攻撃に対して反応できるようになった事で相手の動きに対して先回りができるからだ。
ドローンの位置までは不明だが、数は五。 自動ではなく手動での操作。
リングを使っての体当たりといった攻撃手段で近接戦闘を賄っているのは複雑な動きができる程のリソースがないからだろう。 推進装置はエネルギーウイングではなく重力制御。
動きの自由度は高いが、加速ではこちらにやや分がある。
蹴りは見せた以上、闇雲に突っ込むのは悪手と判断するはずだ。
レーザーで削りつつリングの向きを縦に変えてリズムの変調で仕留める可能性が高い。
キュムラスの戦い方は一通り頭に入っている事もあってまだ見せていない攻撃手段への対処も問題ない。
時間もかけていられない。 次で仕留めに行く。
蹴りを意識させた後、懐に誘い込んで頂肘――肘打ちを喰らわせる。
肘にはインパクトボルトが仕込んであり、密着状態なら衝撃で重装甲の機体でも内部機構を破壊できる代物だ。
ジェネシスフレームでも一撃で仕留められる威力を求めてこれに行きついたのだが、中々にしっくりくる。 レーザーの軌道は敵機と自機の位置関係を意識していれば問題ない。
さっきと同じように地面を踏みしめて制動。 左右からレーザー。
敵機が移動。 上半身を捻る。
背後から飛んで来たレーザーを躱し。 その動きに乗せる形で周り蹴り。
後ろ回し蹴りと違って正面からなので仕込んだクレイモアが使える。
鞭のようにしなる蹴りを敵機は下降――地面スレスレまで落とす事で回避。
懐に入ろうとしている。
――ここ!
エネルギーウイングを全開。
蹴りの回転方向とは逆に噴かして強引に姿勢を戻し、全力で前へと一歩踏み出すと同時に肘を突き出す。
それにより全身に合わせて肘が槍のように敵機の中心に突き刺さる。
読み通り。 タイミングも完璧だ。
仕留めたと確信したが不意に飛んで来たレーザーが彼女のアバターを射抜いた。
――え?
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