宵闇百鬼夜行・・・心得の上・・・

Ittoh

文字の大きさ
6 / 14
宵闇あやかし草紙

宵闇あやかし草紙(05)  湯屋御厨と御狐燈篭勧請

しおりを挟む

[newpage]#01 湯屋御厨
 今は昔となりにけり。
 渡辺館には、家祖の築いた、湯屋御厨が建っておりました。渡辺館の建っていた場所は、上町台地の北端、今の大阪城が建っている、丘陵でありました。綾様は、一寸を肩に乗せて、渡辺館に戻ると、湯女狐に命じて、湯屋御厨の御厨厨房に設置された巨大な水桶には、鉄燈籠が置かれ、四六時中交代で湯女狐と呼ばれたあやかしひとあらざるものが狐火を入れて、湧き水を温泉のように湯をかけ流しで、湯舟を満たしていたのです。

 稲荷を建立する時、御稲荷様を迎えるために勧請を稲荷大社にて執り行います。

 御狐灯篭勧請というのは、湯屋御厨を建立し、湯女狐あやかしを迎え入れるため、稲荷大社で執り行う儀でございます。

 上町台地の北端、渡辺館には、湯女狐八名が配された、湯屋御厨がございました。一丈二丈3m×6mの湯船に、かけ流すように湯を送り、木枠に入った御狐灯篭も置かれて、温泉のような湯屋を造り上げておりました。湯女狐は、湯女とつけられていますが、女だけでなく男の狐を含めて、狐火が使える者として呼ばれておりました。

[newpage]#02 平安トイレ事情
 平安京の前は、長岡京が都でありましたが、水害で被害を受けたために、平安京に変更されたという経緯があります。このため、史実の平安京は、平城京のように、トイレが水洗ではなく、樋箱の形式で、衛生事情は良くなかったのであります。

 渡辺綱は、千年狐葛葉を妻に迎えていたので、稲荷大社に御狐灯篭勧請という形で、八人の湯女狐を迎えて、湯屋を造り上げると共に、東司と呼ばれるトイレの水洗化を進めたのであります。八名の湯女狐は、当初は、女性ばかりであったので、湯女狐と呼ばれていましたが、狐火が使える狐だったので、男女関係なく湯女狐と呼ばれていました。

 結果として主上おかみを含めて、五位以上の貴族は、大きさの大小はあっても、屋敷には湯屋御厨と呼ばれる、御台所+湯殿+河屋かわやという建物を建てていたのです。
 御所には、八瀬童子の血筋が護る、鬼火のサウナ、八瀬釜風呂もあって、京洛の湯屋事情は、かなり変わっておりました。

 渡辺綱によって、京洛の北方には、洪水対策の治水を兼ねて、いくつもの溜池が造られ、鴨川と桂川から水を引き込んで、幾筋もの堀川へ北から南へ水を流していって、樋箱の水を東西に流して、桂川や鴨川に流していく、上下水道が整備されていったのです。

[newpage]#03 御狐事情
 神眷属しんしである御狐様は、あやかしひとあらざるものであっても、ほとんどの御狐様は寿命が二十年ほどしかなく、十年もすればあやかしひとあらざるものの能力も衰えて、稲荷山へ還るながれとなっていました。

 しかしながら、貴族の家に入った御狐様が、主人や姫様の御手付きとなり、契りを交わす例も少なくはありませんでした。特に、八坂から伏見に至る、御狐通りと呼ばれた湯屋街は、一回六文銭で、風呂に入ることができたので、多くの御狐様との恋物語が語られるようになります。

 人を母とすれば人、あやかしひとあらざるものを母とすればあやかしひとあらざるものというのは、人とあやかしひとあらざるものの定めた律令格式に明記されておりました。
 湯女狐あやかしを母とすれば、あやかしひとあらざるものでしたが、姫を母とすれば、人なのですが、そうもいかないのが、人とあやかしひとあらざるものの事情でもありました。

 結果的には、京洛の玄関口でもある、京橋には、混血が住まう御狐長屋もあったのです。混血でも狐火を扱えることも多かったので、無飾灯籠を使った、町湯も造られました。町湯は伏見の監視もあって、湯で銭が取れないので、食堂と宿屋の客相手の商売となっていました。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜

侑子
恋愛
 小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。  父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。  まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。  クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。  その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……? ※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

乙女ゲームは始まらない

まる
ファンタジー
きっとターゲットが王族、高位貴族なら物語ははじまらないのではないのかなと。 基本的にヒロインの子が心の中の独り言を垂れ流してるかんじで言葉使いは乱れていますのでご注意ください。 世界観もなにもふんわりふわふわですのである程度はそういうものとして軽く流しながら読んでいただければ良いなと。 ちょっとだめだなと感じたらそっと閉じてくださいませm(_ _)m

妻が通う邸の中に

月山 歩
恋愛
最近妻の様子がおかしい。昼間一人で出掛けているようだ。二人に子供はできなかったけれども、妻と愛し合っていると思っている。僕は妻を誰にも奪われたくない。だから僕は、妻の向かう先を調べることににした。

琉球お爺いの綺談

Ittoh
経済・企業
 歴史ifの小説、異世界歴史ifについて小説を描いております。  琉球お爺ぃは、小説などで掲載している、背景事情なんかを中心に記述してたりしています。  朝、寝て起きない、知人を起こしに行って、ゆすっても起きなかったという話をよく聞くようになった。職場で、昼寝をした状態から、自力で起き上がることができない知人もいる。  そんな時代に生きるお爺の一考察 琉球お爺ぃは、世界がみんな日本になったら、平和になるとは思うけど、その前に、日本は滅ぼされるだろうな。そんな風に、世界を見ています。  他に、技術関連のお話なんかも描いてます。

真実の愛のおつりたち

毒島醜女
ファンタジー
ある公国。 不幸な身の上の平民女に恋をした公子は彼女を虐げた公爵令嬢を婚約破棄する。 その騒動は大きな波を起こし、大勢の人間を巻き込んでいった。 真実の愛に踊らされるのは当人だけではない。 そんな群像劇。

蝋燭

悠十
恋愛
教会の鐘が鳴る。 それは、祝福の鐘だ。 今日、世界を救った勇者と、この国の姫が結婚したのだ。 カレンは幸せそうな二人を見て、悲し気に目を伏せた。 彼女は勇者の恋人だった。 あの日、勇者が記憶を失うまでは……

処理中です...