宵闇百鬼夜行・・・心得の上・・・

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宵闇御伽草紙

宵闇御伽草紙 第一章(05) 花の都に、船は渡辺津から遡航す

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宵闇御伽草紙 第一章(05) 花の都に、船は渡辺津から遡航す

[newpage]#01 淀川を遡航する
 上町台地の北端、淀川と別れる大川に、渡辺津がありました。京洛から船で川を下り、渡辺津で降りると、熊野街道の起点となり、南に向かうと四天王寺、大和川を越えて、熊野権現に繋がる街道となります。

 綾様と一寸の「契り盃」から一ヶ月、淀川遡航の段となります。

 上洛は、綾姫は紺地に銀糸の刺繍の狩衣を設えてしつらえて、腰に鬼斬りで有名な、鬼斬安綱を佩いております。かつて京洛で暴れた、茨木童子という鬼の右腕を、渡辺綱が見事に斬り落として、鬼斬安綱と呼ばれるようになった、日ノ本に名高い源氏の宝刀、天下五剣の逸品、大業物にございます。さらに、槍のような矢六寸18cm鏃の十四束126cm矢を入れたえびらを、右腰に着装して、五人張りの弓持ちが従っていました。
 綾姫のつまとなりました一寸法師は、狩衣を着けた綾姫の肩に、肩掛けのように皮衣をかけ、肩の形に合わせて固めた皮衣に、座椅子を縫い付けて、座れるようにしてもらった特注品に座ってます。京洛に上洛するということで、刀鍛冶に頼んだ、打刀も仕上がり、白鞘ではなく、ちゃんと、細い麻紐で柄を巻き、刃渡り八分2.4cm柄を合わせて|一寸、浪花の刀鍛冶一角の鍛え業物にございます。

 京洛より浪花に向かうには、京橋より船に乗って、川を下れば、渡辺津に着きます。現在の大阪天満橋、八軒屋浜の船着き場が、渡辺津のあった場所であります。

 京洛より、浪花に向かうのは、川の流れるままに下れば、浪花の渡辺津、今の天満橋の八軒屋に着きます。しかしながら、淀川を遡航しまして、京洛に向かうのは、かなり大変なのでございます。
「一寸、もしや、そなた茶碗で、京洛に行こうとしていたのか」
「はい・・・ダメなのですか」
「そうだな、椀で行くと、椀を紐で縛って、紐を河岸から引っ張って、京洛に向かうから、歩いて京洛に向かった方が速く着くぞ」
 綾様が、一寸に言います。どうやら一寸法師は、上洛するには船で行くと教わって、船で行くのが大変だとは、教わらなかったのです。実際に、綾姫が仕立てた屋形船は、三十石4.5トンの船ですが、十人程の漕手かこが、流れが速くなると、川岸から綱で引っ張って、川を遡航しておりました。
 侍女達を含めて十人程に、漕ぎ手を乗せて、京洛に向かうこととなりました。

[newpage]#02 御狐燈篭勧請と湯女狐
 京橋に着いて、船を降りて、綾様は馬に乗って、伏見へと向かいます。
 伏見には、稲荷狐を神眷属しんしとする、稲荷大社があります。京洛の渡辺屋敷に、湯女狐を迎えるために、御狐燈篭勧請を行います。銭十貫を寄進して、勧請を執り行って、湯女狐を迎えます。

 御狐燈篭勧請は、渡辺綱が、湯屋御厨を屋敷に建立するために、始めた勧請でありました。鴨川に堰を築いて、溜池を造り、堀川に注ぐ水量を増やして、堀川から水車で屋敷に水を引き込みます。引き込んだ水を、中庭の池に溜めて、東司トイレを水洗にしました。

 湯船で湯を造るのは、神眷属しんしである湯女狐が、木枠で囲った窓の無い鉄燈篭に狐火を灯して、湯船を温めます。鉄燈篭には、窓が無いので、炎が見えないけど、熱量が水に伝わってお湯となります。

 窓の無い鉄燈篭は、薪の火では消えてしまいますが、狐火は消えることなく、温めることができます。鬼火だと、熱量が高すぎて、鉄燈篭を溶かしてしまうので、湯女の仕事は、湯女狐が務めることで、稲荷大社に多くの寄進が集まっていました。

[newpage]#03 京洛、一条戻り橋の北、渡辺屋敷
 京洛、かつて渡辺綱が、茨木童子の腕を斬った、一条戻り橋の北に、京洛の渡辺屋敷がありました。渡辺綱は斬った腕を、茨木童子に返して、二人目の妻に迎えます。

 綾様が、腰に佩いている鬼斬安綱は、嵯峨源氏の家宝であり、茨木童子の腕を斬った、天下五剣の逸品大業物であります。
「京洛では、検非違使となるのか、綾」
「そうだ、検非違使の役は、すけだな」
 嵯峨源氏には、右大臣を務めた公家であり、渡辺綱も五位を賜った殿上人、貴族でありました。検非違使は、督と呼ばれる上官の元、副官の地位にすけ、大尉少尉と続いて、検非違使庁舎を賜っています。

 日ノ本の武士もののふは、騎乗して強弓を射て、初めて武士と名乗ることが許されます。源義経のように、弱弓でしか射てない弱兵など、武士もののふを名乗るも烏滸がましいのです。だからこそ、源平合戦のおり、義経は弓を落としてしまって、必死に拾っていたのは、敵に拾われたら「武士もののふに非ず」と、莫迦にされるからでございます。

 綾様は女子おなごですが五位の殿上人であり、嵯峨源氏の頭領、五人張りの強弓を引く、本物の武家もののふでありました。

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