9 / 14
宵闇あやかし草紙
宵闇あやかし草紙(08) 検非違使は、令外の役儀なり
しおりを挟む
宵闇あやかし草紙(08) 検非違使は、令外の役儀なり
今は昔のこと、帝が、京洛に居た頃、京洛の警護を務める、役儀として定められたのが、“検非違使”という役職である。役職についても、令外の官であるため、官位は得られず、官位を欲しがる武士にとって、務めるには向いていなかった。それゆえ、高位貴族の中で武芸に秀でた者の役職だったが、高位貴族が権力闘争に明け暮れた結果、だれも検非違使に就くものが居なくなっていた。京洛北面の警護を担当する、北面の武士が、役儀を代わるようになった。
検非違使が冷遇されたのは、令外の官位で、宮中での出世に寄与しなかったからだ。検非違使が、通常の官位の外に設置され、令外とされたのは、官位に関係なく、取り締まりの対象としたからでもあった。“祀ろわぬモノ”となったあやかし退治、瘴気に喰われて、人の意思を喪失したモノは、斃すに難しく名誉から外れる、日ノ本の敵であった。高位の貴族は嫌がって、検非違使の役職を離れ、腕に覚悟がなければ、“祀ろわぬモノ”に喰われて死ぬ。高位貴族には、意味が無い、面倒なだけの役職となった。
検非違使の役目は、京洛の治安維持だけでなく、民政をも対象として扱っていた。また、検非違使は、京洛だけでなく、伊勢、浪花にも置かれて、伊勢斎、賀茂斎、浪花斎の守護役も兼ねていた。
「綾は、検非違使別当だよね、検非違使佐って」
「検非違使としての位は下がるが、浪花の検非違使から、京洛の検非違使となれば、どうなのだろうな。妾は、浪花で別当をしていたかった」
浪花斎である、斎宮院の母宮を護り、あやかしが半数を占める浪花の街が、綾様にとっては気兼ねなく暮らせる都であった。
「一寸、そなたは、少尉ゆえ、判官となる」
「へぇ、判官」
かつて、義経が、史実で就いた役儀で、九郎判官と呼ばれた理由だ。役儀としては法律を扱う大尉と、警護や警備の実務を担当する少尉に分かれている。つまり、一寸は、実務担当者ということになる。検非違使は、警護や警備だけでなく、民政も担当していて、民事訴訟の裁定も担当する役職であった。大尉が、法務を扱うのは、律格式令に精通していなければ、裁定ができないからである。
検非違使は、令外の官と呼ばれるのは、“祀ろわぬモノ”の征伐が、役儀であったことにあった。日ノ本征覇の中で、“祀ろわぬモノ”は敵であった。しかし、征覇が済んで日ノ本が日本国となれば、“祀ろわぬモノ”は、“叛くモノ”となる。最後の“祀ろわぬモノ”であった、酒吞童子が、清和源氏源頼光と嵯峨源氏渡辺綱を筆頭とする四天王によって、征伐された結果、“祀ろわぬモノ”を斃す役儀は終わった・・・ハズだった。
侍が武士となって、平将門や藤原純友のように、“叛くモノ”となった時、検非違使の役儀は、“叛くモノ”の征伐に代わった。主上に、“叛くモノ”が、検非違使の征伐対象となった。酒呑童子のように、小規模までであれば、検非違使の役儀で対応できたが、平将門や藤原純友のように、万を超える規模となると、検非違使の対応範囲ではなくなり、正式な征伐として将軍を立てる必要があった。
侍は“さぶろうもの”であり、高位貴族に仕えるモノを示したが、高位貴族の権力争いに巻き込まれ、自分自身の立場を失ってしまうことがある。立場を失えば、従うことはなくなり、“叛くモノ”となった時、征伐が困難になる。平将門や藤原純友の乱が、武士の抗争を超え、戦争の規模となれば、検非違使での対応は不可能になる。
今は昔のこと、帝が、京洛に居た頃、京洛の警護を務める、役儀として定められたのが、“検非違使”という役職である。役職についても、令外の官であるため、官位は得られず、官位を欲しがる武士にとって、務めるには向いていなかった。それゆえ、高位貴族の中で武芸に秀でた者の役職だったが、高位貴族が権力闘争に明け暮れた結果、だれも検非違使に就くものが居なくなっていた。京洛北面の警護を担当する、北面の武士が、役儀を代わるようになった。
検非違使が冷遇されたのは、令外の官位で、宮中での出世に寄与しなかったからだ。検非違使が、通常の官位の外に設置され、令外とされたのは、官位に関係なく、取り締まりの対象としたからでもあった。“祀ろわぬモノ”となったあやかし退治、瘴気に喰われて、人の意思を喪失したモノは、斃すに難しく名誉から外れる、日ノ本の敵であった。高位の貴族は嫌がって、検非違使の役職を離れ、腕に覚悟がなければ、“祀ろわぬモノ”に喰われて死ぬ。高位貴族には、意味が無い、面倒なだけの役職となった。
検非違使の役目は、京洛の治安維持だけでなく、民政をも対象として扱っていた。また、検非違使は、京洛だけでなく、伊勢、浪花にも置かれて、伊勢斎、賀茂斎、浪花斎の守護役も兼ねていた。
「綾は、検非違使別当だよね、検非違使佐って」
「検非違使としての位は下がるが、浪花の検非違使から、京洛の検非違使となれば、どうなのだろうな。妾は、浪花で別当をしていたかった」
浪花斎である、斎宮院の母宮を護り、あやかしが半数を占める浪花の街が、綾様にとっては気兼ねなく暮らせる都であった。
「一寸、そなたは、少尉ゆえ、判官となる」
「へぇ、判官」
かつて、義経が、史実で就いた役儀で、九郎判官と呼ばれた理由だ。役儀としては法律を扱う大尉と、警護や警備の実務を担当する少尉に分かれている。つまり、一寸は、実務担当者ということになる。検非違使は、警護や警備だけでなく、民政も担当していて、民事訴訟の裁定も担当する役職であった。大尉が、法務を扱うのは、律格式令に精通していなければ、裁定ができないからである。
検非違使は、令外の官と呼ばれるのは、“祀ろわぬモノ”の征伐が、役儀であったことにあった。日ノ本征覇の中で、“祀ろわぬモノ”は敵であった。しかし、征覇が済んで日ノ本が日本国となれば、“祀ろわぬモノ”は、“叛くモノ”となる。最後の“祀ろわぬモノ”であった、酒吞童子が、清和源氏源頼光と嵯峨源氏渡辺綱を筆頭とする四天王によって、征伐された結果、“祀ろわぬモノ”を斃す役儀は終わった・・・ハズだった。
侍が武士となって、平将門や藤原純友のように、“叛くモノ”となった時、検非違使の役儀は、“叛くモノ”の征伐に代わった。主上に、“叛くモノ”が、検非違使の征伐対象となった。酒呑童子のように、小規模までであれば、検非違使の役儀で対応できたが、平将門や藤原純友のように、万を超える規模となると、検非違使の対応範囲ではなくなり、正式な征伐として将軍を立てる必要があった。
侍は“さぶろうもの”であり、高位貴族に仕えるモノを示したが、高位貴族の権力争いに巻き込まれ、自分自身の立場を失ってしまうことがある。立場を失えば、従うことはなくなり、“叛くモノ”となった時、征伐が困難になる。平将門や藤原純友の乱が、武士の抗争を超え、戦争の規模となれば、検非違使での対応は不可能になる。
1
あなたにおすすめの小説
半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜
侑子
恋愛
小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。
父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。
まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。
クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。
その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……?
※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
乙女ゲームは始まらない
まる
ファンタジー
きっとターゲットが王族、高位貴族なら物語ははじまらないのではないのかなと。
基本的にヒロインの子が心の中の独り言を垂れ流してるかんじで言葉使いは乱れていますのでご注意ください。
世界観もなにもふんわりふわふわですのである程度はそういうものとして軽く流しながら読んでいただければ良いなと。
ちょっとだめだなと感じたらそっと閉じてくださいませm(_ _)m
妻が通う邸の中に
月山 歩
恋愛
最近妻の様子がおかしい。昼間一人で出掛けているようだ。二人に子供はできなかったけれども、妻と愛し合っていると思っている。僕は妻を誰にも奪われたくない。だから僕は、妻の向かう先を調べることににした。
琉球お爺いの綺談
Ittoh
経済・企業
歴史ifの小説、異世界歴史ifについて小説を描いております。
琉球お爺ぃは、小説などで掲載している、背景事情なんかを中心に記述してたりしています。
朝、寝て起きない、知人を起こしに行って、ゆすっても起きなかったという話をよく聞くようになった。職場で、昼寝をした状態から、自力で起き上がることができない知人もいる。
そんな時代に生きるお爺の一考察
琉球お爺ぃは、世界がみんな日本になったら、平和になるとは思うけど、その前に、日本は滅ぼされるだろうな。そんな風に、世界を見ています。
他に、技術関連のお話なんかも描いてます。
真実の愛のおつりたち
毒島醜女
ファンタジー
ある公国。
不幸な身の上の平民女に恋をした公子は彼女を虐げた公爵令嬢を婚約破棄する。
その騒動は大きな波を起こし、大勢の人間を巻き込んでいった。
真実の愛に踊らされるのは当人だけではない。
そんな群像劇。
蝋燭
悠十
恋愛
教会の鐘が鳴る。
それは、祝福の鐘だ。
今日、世界を救った勇者と、この国の姫が結婚したのだ。
カレンは幸せそうな二人を見て、悲し気に目を伏せた。
彼女は勇者の恋人だった。
あの日、勇者が記憶を失うまでは……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
