世界大戦は終わらない

Ittoh

文字の大きさ
37 / 59
オスマン帝国の黄昏

オスマン帝国の黄昏01 オスマントルコ帝国の崩壊

しおりを挟む
 世界大戦は、欧州だけでなく、中近東にも大きく影響を与えていた。東ローマ帝国の領域を中心として勢力圏を築いた、巨大帝国であったオスマン帝国も19世紀末期には、衰退の一途を辿っていた。

 欧州諸国家の圧力によって、バルカン半島の領域を失い、強大なロシア帝国の圧力を受けて、徐々に北方領域を失い、クリミア半島の維持すらできなくなった。世界大戦への参戦は、最終的にほとんどの領土を失い、現在のトルコとしての領域に終わる結果となった。国力が低下した、オスマントルコは、帝国全土を防衛することができず、イギリス、ロシアと激戦を繰り返しながら、徐々に後退に追い込まれる結果となった。イギリスは、ペルシャ湾岸に上陸して、石油利権の確保を図り、スエズ運河での防衛にも成功した。オスマントルコ帝国は、ロシア帝国の攻勢によって、アナトリア半島東部防衛にも失敗したが、ロシア帝国が崩壊したことで、失地を回復しアゼルバイジャンへの侵攻も成功させていた。

 大正7年1918年ムドロス休戦協定締結後、オスマン=トルコ帝国は内戦によって崩壊し、トルコ共和国となって最終的な講和条約、大正9年1920年セーブル条約が締結された。国際連盟は、ボスポラス海峡およびダーダネルス海峡の航行権を確保し、フランス、イタリアがロシア白軍への支援物資や義勇兵派遣を進めたが、結果的にはロシア白軍が敗北し、黒海の北岸がソビエト連邦の傘下に入る結果となった。海峡の航行は、国際連盟の管理下であったが、地上への支援は難しく、ロシア白軍の亡命支援に終わったのである。

 大正10年1921年以降になると、トルコ共和国は内乱を終結させつつあったソビエト連邦の圧力を受ける形となり、ソビエト連邦との講和条約を締結する結果となった。国際連盟はトルコとの条約再締結に迫られることとなる。セーブル講和条約には含まれていた、ボスポラス海峡の国際連盟による管理を確定するに留まり、南部および東部国境については、継続審議事項となった。アルメニアとクルドについては、自治区の設立が焦点となっていた。

 トルコ南部については、西側をフランスの管理区域、東側をイギリスの管理区域とされたが、これはアラブ系諸民族の反発を呼んでいて、各地のアラブ部族による自治を認める形となっていた。。

 中東の地域を巡っては、イギリスがおこなった幾つかの協定によって、フランスを含めて欧米諸国家から問題視された。国際連盟の会議で、最終的にエルサレムおよび周辺地域の帰属については、国際連盟の「委任統治地区」として、エルサレムを宗教の聖地として「特別開放区」と認定し、エルサレム郊外に建設される、国際連盟事務局以外の建物およびエルサレムへの居住を禁止すると決定された。いかなる国も、エルサレムについて権利を主張してはならないとして、エルサレム郊外に国際連盟管理局が設置された。管理局長に就任したのは、ハプスブルグ家のカール1世である。

 実際に国際連盟管理局から赴任したのは、警備局長として春日耕平大佐と指揮下の一個大隊と、オランダから警備副長にオルガ・イルーナ少佐と指揮下の一個大隊が、大正12年1923年に派遣された。エルサレム郊外にキャンプ地を確保し、事務局の建設と巡礼者へ対応することであった。オランダ軍は、3年を任期として国へ戻るが、日本軍は、そのまま駐留していたのである。

 在留日本軍キャンプおよびオランダ軍キャンプは、史実Beit Zayitに七段に分けて堰を建設、キャンプ地とした丘陵を囲うように水源とした。海岸のハイファには、イギリス海軍が駐留する形となり、エルサレムまで鉄道の敷設が、イギリスと日本の共同で進められていた。日本からは、工兵隊5000がハイファに駐屯し、鉄道の敷設活動を開始した。

 大日本帝国陸軍の欧州を含めた、海外派遣組は、将校が主に拓殖大卒から選考され、生前恩賜と呼ばれる、二階級昇進(実際には、1日おいて2回昇進する)を受けて派遣される。これは、欧州で交渉を行うための地位確保という意味合いがあり、片道切符とも言われ、生きて帰れない任務とされていた。ソビエト連邦による、東欧地域への進出によって、海外派遣部隊の被害が拡大していた結果でもあった。このため、中東方面への派遣は、一個大隊と支援の工兵隊5千だけであった。当初は、中東の石油確保もあって、増派も検討されたが、樺太油田が採掘を開始したことと、満洲「特区」で油田が発見されたことで、中東への増派は見送られることになった。結果として、エルサレム派遣軍は、幾度か追加支援が派遣されるだけで、活動を余儀なくされたのである。

 春日大佐は、「欧米聖地にて」を記し、エルサレムからハイファの地理情報だけでなく、現地でオランダ軍将兵との話や、エルサレムを訪れる巡礼者との話、ハイファでの状況について、克明に記述し、拓殖大に送っていた。拓殖大では、春日大佐だけでなく、世界各地に派遣された卒業生の寄稿として、印刷製本していて、春日大佐の記録も、拓殖大に保管されている。

 春日大佐は、工兵隊がハイファからテルアビブを経由して、エルサレムに鉄道路線を引くことに成功すると、テルアビブに製塩作業所建設を工兵隊に依頼した。工兵隊は、テルアビブに製塩工場を建設、エルサレムとテルアビブの間にオリーブや檸檬の植樹を始めたのである。日本からミカンの種を送ってもらい、ミカンの栽培も始めたのである。工兵隊は、テルアビブ郊外のヤーコン川沿いに堰の工事を始め、貯水池建設を進めて、水田の設置も始めたのである。

 日本からの支援が手形決済に切り替わると、実質取引が日本のみとなり、事実上の自律決済が求められる結果となり、日本の中東派遣軍は、塩による決済取引を行う結果となった。武器弾薬の送付は継続されるが、兵站の確保が、非常に厳しい状況となったのである。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~

bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。 ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。 また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。 その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。 この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。 またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。 この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず… 大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。 【重要】 不定期更新。超絶不定期更新です。

大東亜架空戦記

ソータ
歴史・時代
太平洋戦争中、日本に妻を残し、愛する人のために戦う1人の日本軍パイロットとその仲間たちの物語 ⚠️あくまで自己満です⚠️

連合艦隊司令長官、井上成美

ypaaaaaaa
歴史・時代
2・26事件に端を発する国内の動乱や、日中両国の緊張状態の最中にある1937年1月16日、内々に海軍大臣就任が決定していた米内光政中将が高血圧で倒れた。命には別状がなかったものの、少しの間の病養が必要となった。これを受け、米内は信頼のおける部下として山本五十六を自分の代替として海軍大臣に推薦。そして空席になった連合艦隊司令長官には…。 毎度毎度こんなことがあったらいいな読んで、楽しんで頂いたら幸いです!

処理中です...