最初のものがたり

ナッツん

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特別編 プロローグ(勇磨sideーアオハル)4

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なんだ、アイツ、ムカツクな。
中2病ってなんだよ、俺はそんな痛い奴じゃない、

いや、ちょっと待て。
何で俺はあんな奴に振り回されているんだ。

アイツは俺を狙っている、他の女達と一緒だ。
ただ、アイツは、普通のクラスメートとして俺に絡む。
俺が拒否できないような、する必要がないような話題しか出さない。
いや、ほぼ、挨拶だ。

それ以上は今のところしてこない。

俺が反応せざるおえない態度をとる。

もっと直接来たら打ちのめす事ができるのに。

気持ち悪い。

もう考えるのはやめよう。

体育館の入り口は閉まっていた。

開けよう。
そう思ったが躊躇された。

また歓声があがったら?
いや、間違いなくあがる。

すでに俺の後ろに何人もついてきている。

ダメだ、迷惑はかけられない。

その場にボールを置いて背を向けた。
女達が散る。

「ねぇ、帰るの?ボール返しにきてって言ったじゃん」

振り返ると今朝の先輩が立っていた。

「返しました、それ」

指差した方を見てボールを拾う。

拾ったボールの誇りを手で払うような仕草をしてみせる。

「あー、だめじゃん、ボールは大切に扱わないと。お前が地面に置いたから汚れただろ。
罰としてボール磨きしろ」

は?

「なんで、全然、汚れてないじゃないですか」

俺の反論は無視して腕を掴かみ、そのまま、引きずるようにして体育館に連れて行かれた。

想像通り、大歓声があがる。

「先輩、俺がいると迷惑ですから、帰ります」

そんな俺の気遣いを大爆笑された。

「なんだよ、歓声が迷惑?さすがモテる奴は違うなー。俺は大好物だよ。」

何、言ってるんだ、この人は。

そのまま、バスケコートまで有無を言わさず連れて来られた。

「大輝、アイドル、捕まえてきたの?」

俺を掴んでる奴は大輝と言うらしい。

大輝先輩はチャラそうなのに、腕の力がもの凄くあり、俺はどう足掻いても逃げられなかった。

「バスケ部、入部ね。1年生の工藤勇磨くん。」

は?
何、勝手に。

「おー、期待の新人、捕まえてきたんだ」
「ようこそ」
「エース候補か」
「部長自らのスカウトだもんな」

え、大輝先輩が部長なのか。
どういう事なんだ。

「勇磨、入るよな、バスケ部」

大輝先輩がじっと俺を見つめている。
入りたい。
またバスケがしたい。

でも

「俺が入るとみんなに迷惑がかかります。」

そう伝えた。
その言葉にまた大輝先輩が大爆笑する。

なんだよ、さっきから。

イラッとした。

俺のイラつきに気がついたのか、慌てて笑いを堪えた。

「ごめん、ごめん。勇磨、心配すんな。俺たちは歓声は大好物だ。それは誰に向けてのでもいい。みんな、自分に向けられたと思って調子に乗れる奴ばっかだ。」

「それにな」

大輝先輩がイタズラっぽく笑う。

「お前だけのファンじゃないんだぜ。俺にだってファンがついてる。」

そう言って右手を高く突き上げた。

途端に

「きゃぁー」

大歓声があがった。

「な、俺だって負けてないんだ、気にすんな。
好きな事ができないなんて間違ってる。お前がしたい事をすればいい。ギャラリーはギャラリーでしかないんだ」

ヤバイ、泣きそうになった。

「俺、なんかいい事言っちゃったなぁ」

笑いで終わるところはダサかった。
だけど、十分、俺に響いた。

俺を受け入れてくれた。

いいんだ、俺、バスケ部に入って。

今日からはまた、バスケに夢中になれるんだ
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