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■ヒーロー視点
レッスンじゃない2
しおりを挟む「も、もう大丈夫、鳴瀬さん……」
彼女は強がるけれど、慣れるまでもう少し時間がかかるだろうことは、かたく緊張している身体からも予想できた。
「もう大丈夫だから、……して……ください」
それなのに、眉をひそめてぎゅっと背にしがみついてそんなことを言う。
鳴瀬は女性のおそろしく繊細な内壁を万が一にでも傷つけることのないよう、慎重に指を引き抜いた。そのまま彼女を抱きしめてベッドに転がる。不安にさせないようにと、なるべくぴったりと身体をひっつけたまま。
「無理せず。ゆっくりで。うまくいかなくても、いろんなやり方があると思うし」
「は、い……」
激しい高揚感や、入れて出すことだけがセックスじゃない。彼女となら、こうして抱き合っているだけでも充分満たされる──けど、繋がりたいと思う気持ちが同じなら、もっともっとよくしてあげなくては。その役目は自分のものだ。
「任せてくれます?」
先生は息を整えながら、小さく頷いてくれる。瞳にはまだ熱と好奇の色がある。よかった。したいと思うのが自分ばかりじゃないとわかると、がぜんやる気が出るというもの。
先生の閉じたまぶたに、頬に、耳に、唇の端に。顔の輪郭をなぞるように順に唇を押し当てる。焦らして焦らされて、やっと唇どうしが合わさった。柔らかくて甘くて、いくらでも食べていられる唇。
舌で唇をなぞれば、彼女の舌がむかえにきてくれる。
「んぅ、」
絡ませ合って、中に入って。吸ったりなぞったりする動きを、先生の舌も同じように応えてくれる。吐息は色っぽくて身体の芯が熱く疼いた。腰を引き寄せてきつく抱きしめる。このまましてしまいたい──けど、まだ。
「そか……。先生、キスは初めてじゃないんすね」
唇を離すと同時に、先生は目をあける。ゆっくりしたまばたきののち、恥じらいながら視線が逸らされる。
「どうせなら、全部俺が……、……いや、なんでもない」
ちっぽけな独占欲がむくむくと。けれどそれは今言ってはいけないことだ。過去もふくめた今の白石琴香が好きなのだから。
(それにここから先は、俺だけでしょう?)
「あっ」
「やっぱ好きなんすね、こっち」
どこよりも反応の良いそこを優しくくるくると刺激すると、ぎゅっと目をつむって指の動きに耐えている。
もっと、もっと気持ちよくなってほしい。彼女にとっての初めては、自分にとっても初めてだ。どこが好きで、どうしてほしいのか身体をすみずみまで暴きたい。
「あっ、舐め……っ」
指よりも反応がいい。やわらかい乳房のうえについた、つんとかたいそこをくりかえし舐めて、つついて、吸ってとしていると、彼女の嬌声と反応のいい身体につい夢中になってしまう。
「あぁんっ」
漏れ出る声がいやらしすぎる。気持ちよくさせるつもりが、自分のほうが興奮してくる。
もっと聞きたい。イかせたい。
脚を開かせて、そちらにも指を這わせる。さっきはまだ準備ができていなかったところが、今はとろとろに溶けはじめている。
「あっ、あーっ……」
愛液をなじませた指でクリをいじると彼女の腰が浮く。その間も舌で胸をいじりつづける。
もういいかな、入るだろうか。二度目の中指の侵入を、彼女のナカは拒まない。
はぁはぁと、自分の息も乱れる。入っている。本人も気付かないくらい、とろとろだ。
「も、だめ……! あっ!?」
「ん、二本入った」
先生はびっくりしたように目を見開いた。そこに恐怖や苦痛の色は見られない。
「たぶん、これだけ濡れたら、痛くないかと思うけど……」
息を整えながら、先生は小さく頷いた。
「ん、よかった。……ほら、よく滑る」
「ぁん、んっ、あ」
様子を見ながら、抜き差しを繰り返す。柔らかい内壁はぬるぬるとよく滑る。そしてあたたかくて、鳴瀬の指をよく締めた。
「ひぅっ……あ、っ」
のけぞって息をのむ先生を見下ろす。イイところはたぶん、このあたり。
「大丈夫そう、ですかね」
「も、いいの……ほんとに……」
はぁはぁと息を整えて、彼女は熱っぽくこちらを見上げている。
「はやくしたい……きて、鳴瀬さん、おねがい」
腰を振りながらねだる先生からのキスはとびきり淫らで、ちょっと飛びかけた。
鳴瀬はキスをやめないまま、シーツを手繰り寄せてコンドームの箱をぐしゃりと開けた。雑にパッケージを切って、かぶせるタイミングで一度キスを中断すると、先生がちらちらと興味を隠しきれないようにこちらの様子をうかがっているのがわかる。
「えっち」
「ひぃっ! ご、ごめんなさいっ」
「いいすよ。いつか、つけてくださいね。せんせ」
ひぇっと短く叫んで、先生は顔を覆った。久しぶりの装着に手間取るかと思ったけれど、見られていることに多少興奮して……それが良かった。
装着感は窮屈だ。はやくはやくと焦る気持ちをなんとか抑えつけて彼女の脚を持ち上げる。
「ん、入れていいですか」
「は……ん、んっ……」
ぬるぬるとこすりあわせると、先生が甘く喘ぐ。たまらなくなって先端を埋め込む。だめだ、ゆっくり、ゆっくりと自分に言い聞かせる。
押し進めるにしたがって腰の奥がますます疼くよう。
入り口はキツイくせに、奥はとけて迎えてくれる。
「鳴瀬さん、ちゃんと、ちゃんと気持ちいいですか……」
「すごく」
見下ろす先生もかわいくて。とてもじゃないけど我慢できるものではなかった。
「動いて、いいすか」
「はい、あっ……、ん、っ」
これ以上もなく気をつけて、ゆっくりした動きで様子をみる。
ん、と息を詰めて、先生が顎をあげて首をそらす。そのあたりを重点的にこすって、揺れる胸を食むとまたナカがぐちゅりと濡れた。慣れてきたように思えたから、あとはもう彼女の反応を見ながら好き勝手に動いた。
(やばい、きもちいー……)
お互いの高い体温と、甘い香り。彼女の喘ぎで脳がとかされるような感覚。
ときおり挿入の角度を変えながら、奥へ奥へと打ち付ける。
あんあん叫ぶ先生にキスして、ちょっとだけ声を抑えさせる。その一方でまた乳首を摘んで──のけぞって突き出された腰をがつがつと穿つ。ぐずぐずにとけたそこは、奥の奥までやわらかくかんじる。
「やっ、そこ、もっと」
「ん、俺も、気持ちいい」
「うん、うんっ……すき、そこ……あぁっ」
ただ擦りあっているだけなのに、なんでこんなにきもちいいんだろう。涙目の先生は見たこともないほど色っぽくて、綺麗で、エロい。
夢中で求め合って、指と指を絡め合う。ずっとこうしていたい。やらなきゃいけない仕事とか、責任とか、そういうものがいまは遠い。つながっている彼女のあたたかさだけがすべてだ。
「イきたい、けど、もうちょっとしたい」
このとけそうな感覚をもう少し味わっていたいのに、先生はまるで射精を促すようにきゅうと締め付けてくる。
「っ、もぉ、せんせ……」
「ん、だって、……いい、いつでも……んっ、あっ、あっ」
「ああ、イイ……だめだ……せんせ、……琴香、」
かわいい声も、イくときの涙目も、ぜんぶぜんぶ自分のものなんて。
ぎゅっと抱きしめて、吐精しながらも動き続けた。
(うわ、まだ出る……)
ごめん、ごめんと思いつつも動くのがやめられない。
早かったかな、満足させてあげられたかなと気になるけど、引き抜いたときに琴香は「んぅ」と小さく呻いてそのまま気をやったようだった。乱れたシーツの上に投げ出された身体の卑猥なことといったら。またもよおしそうになるけど、無心で後片付けに励む。
部屋はひんやりと冷たいけれど、二人の身体は湯気が出そうなくらい熱い。風邪をひかせてはいけないと、まず琴香の掛け布団をひきあげてやる。
「なるせ、さん……」
とろんとあまい声で呼ばれる。髪をなでつけてやると甘えるように頬ずりされた。うっとりするほど甘い時間だ。
「ありがとう、身体大丈夫?」
「だいじょうぶ……」
「片付けておくから、寝てていいすよ」
「で、も……」
「──ああ、仕事の残りか……。そっか、じゃあ6時に起きましょうか」
「ん……」
「ベッド、一緒に寝ていい?」
「いてください……朝まで……」
ほとんどゆめうつつに彼女はそう言った。指が鳴瀬の手を求めて冷たいシーツを撫でる。しっかりと繋いでやると、安心したように琴香は眠りに落ちた。
「……おやすみなさい、先生」
しばらく寝顔を眺めていた鳴瀬も、ベッドサイドの時計のアラームをかけてからもぞもぞと布団にもぐりこんだ。
夢みたいなあたたかさだった。
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