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■ヒーロー視点
レッスンじゃない
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急いでシャワーを浴びて出ると、先生は作業中だった。
仕事と向かい合う真剣な後ろ姿はいくらでも眺めていられる。そっと近づいて明るいディスプレイを覗き込めば、残り四ページだと言っていたノルマはほとんど終盤──感動のラストをむかえようとしているところだ。
びっくりするだろうなと思いつつ声をかけたら、予想通りのリアクションが返ってくる。そんなところもかわいくて、二人でいられるこの時間の尊さを噛み締めた。
先生お手製のコーヒーを飲み干せば、ほんの数週間前、初めて先生と訪れたホテルでの出来事が思い出される。
(あの時は……手助けしたいっていう気持ちだけのはずだったんだけどな)
今は違うなと、鳴瀬は濡れた前髪に伸ばされた細い手首を掴んで思った。
意味ありげにこちらを見つめる、眼鏡の奥の瞳。吸い込まれるようにキスをする。今度は離れがたくなって、繰り返し食んで何度も柔らかさを味わった。
「な、鳴瀬さん……眼鏡、はずしていいですか……」
いちいち確認をとるあたりが初々しくてまたかわいい。眼鏡を外して、もっと近くで見つめ合って、抱きしめて、キスをして。
自分がどれくらい焦っているかというと、もうそこのソファでいたしてしまってもいいのではと考えるくらいには余裕がなかった。
先生は恥じらいながらも寝室へと案内してくれた。手を引く彼女を抱きしめたい──冷たい廊下の空気のおかげでちょっぴり頭が冷えた。我慢できてよかった。
寝室はベッドとクローゼット、それからやっぱり本棚にたくさんの本。そっと見渡して、なんだか嬉しくなる。ここに入ることを許された男は自分だけなのだ。
「先生のにおい、しますね」
「や、やだ、その言い方、なんか」
「好きっすよ、甘くてかわいい」
以前、万が一にと用意したモノの、万が一の使用時が今だ。
けど先生はそれを手にしたままもじもじと指をこまねいている。
「でも、鳴瀬さん……私、……ピル飲んでるから、その……」
ちらりと上目遣いをよこす先生は、鳴瀬の前に爆弾を落とした。
「な、なまでも……いいですよ」
ドッカーン。
頭の中でピンク色の煙幕がほわほわと広がる。
「……いや。いやいやいや」
口元を押さえる。この子、処女って言ってたよね?
「でも……男の人ってそっちのが気持ちいいって聞くし……」
(まだ言うかー!)
薄暗闇の中、彼女に自分の顔が見えていなくて本当によかった。
先生の気持ちはわかるのだ。相手に尽くしたいというか、気持ちよくなってほしいという思いはわかる。健気さゆえにそんなことを言ってしまうのだろう。その心は嬉しいけれど男にとって非常に危険な誘いだ。
いや、よくよく考えれば最初から彼女の誘いは危険だった。本当によかった、今までの白石先生が悪い男にひっかからなくて。
そう思うと同時に、自分がその悪い男にならないようにと、鳴瀬は必死に自分を制しなくてはいけなかった。
「……大事にします」
嘘偽りなくそう思う。薄暗闇の中で彼女が微笑んだ気配がする。
「服、脱がされるのと自分で脱ぐのと、どっちがいいですか」
「……こういうの聞かれるのって、恥ずかしいんですね……」
「はは」
結局、ベッドに押し倒して自分の手で脱がせた。だってそっちのが早い。
ふたつ、みっつ。上着を開くと、電気をつけなくてもわかるやわらかいまるみがつんと上を向いている。
「触っていいですか」
ほとんどかたちだけの確認ののち、まるみを支えるようにそっと手を添わせる。大きさを確かめるように押し上げると、なんとも幸せな気持ちになった。
大きいのが好きというわけではない。感じやすい先生が可愛くてうれしくなっただけ。
つんと立つそこを掌で撫でまわして、指先でいじってしていると、彼女の吐息がずいぶん熱っぽいものになってくる。
「あ、ん、…………いっ……」
「い?」
「……きもち、いい、です……」
とびきり甘い囁き声は、すぐにみだらな喘ぎに変わる。聖母のように神聖なのに、娼婦のように妖艶で、これ以上もなく男の欲を煽る。このかわいい身体のどこから、こんな声が出るのか。
「声、聞かせて。すげー興奮する……」
「こ、え……んっ、ここ、好きです……あ、あぅ」
「先生、エロい」
首筋に顔を埋めて、鳴瀬は熱く息を吐いた。
「腰、動いてる」
「んあっ、はぁ」
そこをみずから突き出したのは彼女のほうだ。鳴瀬の手は促されるように、そこをぐりぐりと撫でまわす。
「ん、あ、あっ」
「クリも好きなんすか……まじか……かわいい」
初めてにしては敏感。自分で慰めたことがあるのだろうか。先生の自慰……想像するだけで爆発しそう。
「まって、やぁっ……あ、あーっ」
指で撫でているだけで、先生は軽く達したようだった。足の爪先がシーツを掻いて、腰が浮き上がる。その隙間に腕をいれて抱き寄せ、薄い腹にキスをした。
(ここ……ああ、はやくしたい……けど、もう少し……)
初めての身体に負担をかけないよう、最大限に努力をしなければ――自分の愛撫で乱れ始めた彼女を見ているのは愉しくもあるけど、我慢の時間でもある。
「あ、うそ、だめっ」
ズボンと下着を引き抜いて、直接秘部に指で触れる。
「あっ、んんーっ」
まだ、もうすこし濡れていない。茂みをかきわけて、敏感なところをやさしくやさしく上下する。傷つけないように、怖がらせないように、丁寧に丁寧に溝をなぞる。
「やだやだ見ないでっ」
心からの拒絶なのかどうか、指を動かしながら慎重に探る。とろりと垂れる蜜をかきまぜる音と甘い声がたえまなく鳴瀬の耳を刺激する。もう少し、もう少し。自分の息もあがってくる。
「やめてえ……!」
先生は身を縮めて、頭にしがみついてきた。鳴瀬の髪をぎゅっと掴んで、ああと熱い息を吐いて。
「なるせさんっ、なるせさっ……あっ、やだ、い、イく、イくからぁっ……!」
いれたい、いれたい。
自分の下半身を押し付けながら、ぬかるみのなかに指をさしこむ。
「ひぁっ!?」
とけていて、熱くてせまい。けれど男を受け入れたことのない場所は、それ以上の侵入を拒む。
「は、あ……ゆ、び……」
「痛い?」
「だいじょうぶ、です……でも」
声が震えている。
「き、……キスしてほしい、鳴瀬さん」
怖がらせたかな、痛かったかな。余裕のない自分が嫌になったかな。ごめんねとキスを繰り返す。
「ごめん、ちょっと焦って、……急いだかも」
優しくしたいと思っている。けど一方で今すぐにつながりたいと身体は疼いていて――そんな複雑な男心をわかってくれたかのように先生は笑う。
「好き……」
脚を絡めて、早くほしいと言ってくれる。
(ほんと……先生には……)
敵わないなと思う。たぶん、彼女が思う以上に自分は溺れている。
仕事と向かい合う真剣な後ろ姿はいくらでも眺めていられる。そっと近づいて明るいディスプレイを覗き込めば、残り四ページだと言っていたノルマはほとんど終盤──感動のラストをむかえようとしているところだ。
びっくりするだろうなと思いつつ声をかけたら、予想通りのリアクションが返ってくる。そんなところもかわいくて、二人でいられるこの時間の尊さを噛み締めた。
先生お手製のコーヒーを飲み干せば、ほんの数週間前、初めて先生と訪れたホテルでの出来事が思い出される。
(あの時は……手助けしたいっていう気持ちだけのはずだったんだけどな)
今は違うなと、鳴瀬は濡れた前髪に伸ばされた細い手首を掴んで思った。
意味ありげにこちらを見つめる、眼鏡の奥の瞳。吸い込まれるようにキスをする。今度は離れがたくなって、繰り返し食んで何度も柔らかさを味わった。
「な、鳴瀬さん……眼鏡、はずしていいですか……」
いちいち確認をとるあたりが初々しくてまたかわいい。眼鏡を外して、もっと近くで見つめ合って、抱きしめて、キスをして。
自分がどれくらい焦っているかというと、もうそこのソファでいたしてしまってもいいのではと考えるくらいには余裕がなかった。
先生は恥じらいながらも寝室へと案内してくれた。手を引く彼女を抱きしめたい──冷たい廊下の空気のおかげでちょっぴり頭が冷えた。我慢できてよかった。
寝室はベッドとクローゼット、それからやっぱり本棚にたくさんの本。そっと見渡して、なんだか嬉しくなる。ここに入ることを許された男は自分だけなのだ。
「先生のにおい、しますね」
「や、やだ、その言い方、なんか」
「好きっすよ、甘くてかわいい」
以前、万が一にと用意したモノの、万が一の使用時が今だ。
けど先生はそれを手にしたままもじもじと指をこまねいている。
「でも、鳴瀬さん……私、……ピル飲んでるから、その……」
ちらりと上目遣いをよこす先生は、鳴瀬の前に爆弾を落とした。
「な、なまでも……いいですよ」
ドッカーン。
頭の中でピンク色の煙幕がほわほわと広がる。
「……いや。いやいやいや」
口元を押さえる。この子、処女って言ってたよね?
「でも……男の人ってそっちのが気持ちいいって聞くし……」
(まだ言うかー!)
薄暗闇の中、彼女に自分の顔が見えていなくて本当によかった。
先生の気持ちはわかるのだ。相手に尽くしたいというか、気持ちよくなってほしいという思いはわかる。健気さゆえにそんなことを言ってしまうのだろう。その心は嬉しいけれど男にとって非常に危険な誘いだ。
いや、よくよく考えれば最初から彼女の誘いは危険だった。本当によかった、今までの白石先生が悪い男にひっかからなくて。
そう思うと同時に、自分がその悪い男にならないようにと、鳴瀬は必死に自分を制しなくてはいけなかった。
「……大事にします」
嘘偽りなくそう思う。薄暗闇の中で彼女が微笑んだ気配がする。
「服、脱がされるのと自分で脱ぐのと、どっちがいいですか」
「……こういうの聞かれるのって、恥ずかしいんですね……」
「はは」
結局、ベッドに押し倒して自分の手で脱がせた。だってそっちのが早い。
ふたつ、みっつ。上着を開くと、電気をつけなくてもわかるやわらかいまるみがつんと上を向いている。
「触っていいですか」
ほとんどかたちだけの確認ののち、まるみを支えるようにそっと手を添わせる。大きさを確かめるように押し上げると、なんとも幸せな気持ちになった。
大きいのが好きというわけではない。感じやすい先生が可愛くてうれしくなっただけ。
つんと立つそこを掌で撫でまわして、指先でいじってしていると、彼女の吐息がずいぶん熱っぽいものになってくる。
「あ、ん、…………いっ……」
「い?」
「……きもち、いい、です……」
とびきり甘い囁き声は、すぐにみだらな喘ぎに変わる。聖母のように神聖なのに、娼婦のように妖艶で、これ以上もなく男の欲を煽る。このかわいい身体のどこから、こんな声が出るのか。
「声、聞かせて。すげー興奮する……」
「こ、え……んっ、ここ、好きです……あ、あぅ」
「先生、エロい」
首筋に顔を埋めて、鳴瀬は熱く息を吐いた。
「腰、動いてる」
「んあっ、はぁ」
そこをみずから突き出したのは彼女のほうだ。鳴瀬の手は促されるように、そこをぐりぐりと撫でまわす。
「ん、あ、あっ」
「クリも好きなんすか……まじか……かわいい」
初めてにしては敏感。自分で慰めたことがあるのだろうか。先生の自慰……想像するだけで爆発しそう。
「まって、やぁっ……あ、あーっ」
指で撫でているだけで、先生は軽く達したようだった。足の爪先がシーツを掻いて、腰が浮き上がる。その隙間に腕をいれて抱き寄せ、薄い腹にキスをした。
(ここ……ああ、はやくしたい……けど、もう少し……)
初めての身体に負担をかけないよう、最大限に努力をしなければ――自分の愛撫で乱れ始めた彼女を見ているのは愉しくもあるけど、我慢の時間でもある。
「あ、うそ、だめっ」
ズボンと下着を引き抜いて、直接秘部に指で触れる。
「あっ、んんーっ」
まだ、もうすこし濡れていない。茂みをかきわけて、敏感なところをやさしくやさしく上下する。傷つけないように、怖がらせないように、丁寧に丁寧に溝をなぞる。
「やだやだ見ないでっ」
心からの拒絶なのかどうか、指を動かしながら慎重に探る。とろりと垂れる蜜をかきまぜる音と甘い声がたえまなく鳴瀬の耳を刺激する。もう少し、もう少し。自分の息もあがってくる。
「やめてえ……!」
先生は身を縮めて、頭にしがみついてきた。鳴瀬の髪をぎゅっと掴んで、ああと熱い息を吐いて。
「なるせさんっ、なるせさっ……あっ、やだ、い、イく、イくからぁっ……!」
いれたい、いれたい。
自分の下半身を押し付けながら、ぬかるみのなかに指をさしこむ。
「ひぁっ!?」
とけていて、熱くてせまい。けれど男を受け入れたことのない場所は、それ以上の侵入を拒む。
「は、あ……ゆ、び……」
「痛い?」
「だいじょうぶ、です……でも」
声が震えている。
「き、……キスしてほしい、鳴瀬さん」
怖がらせたかな、痛かったかな。余裕のない自分が嫌になったかな。ごめんねとキスを繰り返す。
「ごめん、ちょっと焦って、……急いだかも」
優しくしたいと思っている。けど一方で今すぐにつながりたいと身体は疼いていて――そんな複雑な男心をわかってくれたかのように先生は笑う。
「好き……」
脚を絡めて、早くほしいと言ってくれる。
(ほんと……先生には……)
敵わないなと思う。たぶん、彼女が思う以上に自分は溺れている。
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