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<第八話・見>
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『美樹おじさんやっほ!あとちょっとで到着します!おばあちゃんの晩御飯楽しみにしてるって伝えておいてー!』
車でこちらに向かっているらしい美園から、美樹のスマートフォンにメールが来たのはつい先程のことである。当初は昼過ぎには着きたいと言っていた彼女だが、友人の寝坊もあってだいぶ遅くなってしまったらしかった。道が混んでいてどうにもならなかったというのもあるのだろう。お盆前、子供達の夏休みに真っ盛りの時期だ。車を出す家族連れも少なくなかったに違いない。
――もうちょっと、じゃわからんて美園ちゃん。せめてどこのサービスエリアまでついたとかインターチェンジの名前とか出してくれないと。高速降りたのかもわからないじゃないか。
相変わらず大雑把な美園である。とはいえ、友人の琴子ちゃんとやらはその上を行く適当な性格であるらしく、いつも苦労させられるんだからとぼやいていたのもよく覚えている。部屋は汚いしうっかり物はなくすし、の女性としてちょっと残念なかんじの美園だが、世の中には上には上がいるということらしかった。まあ、だからこそ大雑把同士、仲良くやれているのかもしれないが。
美樹はLANEを使わない。メールより便利だよ、と美園には勧められたが使う気にはなれなかった。既読がついてしまうのがどうにも苦手で、なんだか監視されている気分になるからというのが大きい。相手からするとそれが便利なのかもしれないが、こういった便利な文明の利器は“自由気ままに使ってなんぼ”だと美樹は思っている。いくら使いやすくても、既読スルーだの未読スルーだので火種になりそうなのはちょっとごめんというものだった。
ビニールハウスに向かう道すがら、ふとあるものが気になって足を止めてしまう美樹。それは、住宅地の塀の角にあるカーブミラーだった。このあたりの道は塀が高く、坂もあるので見通しが良くない。徐行しつつじりじりと周囲を確認して車を動かさなければならないような場所だった。そこまで車通りが多いわけでもないが、学校への通学路になっているという問題もある。美樹が子供の頃にも、小学校の上級生が一人撥ねられて死んでいたはずだ。死亡事故にまでならずとも、怪我をした子供は他にも過去に何人かいたはずである。
長いこと設置されていることもあり、オレンジ色の塗装は剥げかけてあちこちが錆びていた。そのうち折れてしまうかもしれない。なんといっても年期が入りすぎているし、当たり前だが雨ざらしである。大した重さではないにせよ、あの高さから落下したらかなりの衝撃だろう。自分でも直撃したらそれなりに大きな怪我をしてしまいそうだ、と見上げつつ思う美樹である。
だが、今鏡が気になった理由は、そこではなかった。
――……いる。
いつからだろう、と思う。それこそ、物心ついた時には、美樹にはそれが“見えて”いたのだ。勝木の家の男子は霊能力に目覚めるものが昔から少なくなかったという。自分の場合も、その例に漏れなかったということかもしれない。――あまり、嬉しいことではないけれど。
なんせ自分は本当にただ“見える”だけなのだ。
そして見えたところで――それを何かする力など、自分にはない。“対処”できるのは、基本的に“祭”の家の者だけなのだから。
――……ああ、やっぱり。今は駄目な“時”だったんだ。規則を破ってでも、美園ちゃんに……来るなと、そう言っておけば良かっただろうか。
“それ”は、左に折れた道の――電柱の影に立っているらしかった。真っ直ぐ直進して坂を上っている美樹から直接見える角度ではない。それでも、錆び付いたカーブミラーにはしっかりとそれが映りこんでいる。
電柱の影に、寄り添うように――否、貼り付くように立っているモノ。
生きているモノならば細い電柱の影に完全に隠れることなど出来るはずもないのに、それはぴったりと電柱の影の中に潜り込み、不自然なほど“厚み”が失われた体でのっぺりとそこに佇んでいた。
まるで影から生えているように。
影の中に、別の空間に繋がる出口でもあって、そここら体の前半分だけを覗かせているように。
それは、少女だった。
正確には――“少女であった”ものだった。
――ああ、いる。見ているんだ、俺を……!
ピンクのパジャマのようなものを身に纏った少女の、だらんと力なく垂らした手からは――全ての指が欠落していた。
引きちぎられた皮が、筋が、びらびらと伸びている。
強引に砕かれた、白い骨のようなものが覗いている。
それだけではない。なくなっているのは手の指だけではなかった。裸足の両足首の先は不自然なほど“小さい”。そして“あるべきものがない”。――欠落しているのは、足の指も同じ。血に染まった骨が、肉が、本来立てるはずのない足の先から無念そうにこちらを向いているのだ。
――見える。いる。……“みかげさまの使者”が、そこに。
少女の顔は、見えない。血で汚れた茶色の髪の毛はわかるのに――不自然なほど手足の傷口は生々しく鮮明に像を結ぶのに、眼や鼻のあたりだけがやけにぼやけて喪失しているのだ。見えるのは口元だけ。血で汚れた口が、こぽこぽと血泡を吹きながら何かを話している。
だが、その声は一切聞こえない。開かれるその口の中に――舌らしきものは、ない。
――ああ、みかげさま、みかげさま。
理解している。理解してしまう。
全て引き“裂”かれている。指も、耳も、舌も――ゆえに。
――お許しを……!
自分達は無力だ。地獄の蓋をするために、悪魔の力を借りる以外に手段を持たなかったほどの、無力で愚かな人間でしかない。
勝木の家の語源は“担ぎ”。祭の家の語源は“祀り”。つまり、笹下村というものは。
――どうか、杞憂であってくれ。
あの道は、進めない。いくら逃げ場がないと知っていても、“みかげさま”に視らたまま平然と振る舞うほどの度胸など美樹にはないのだ。
そのまま引き返し、大回りの道を行くべく歩き出した。あの姉妹が来た辺りからだ、どんどんあれの数が増えるようになったのは。
自分には見えてしまう。わかってしまう。なんて呪わしいのだろう。
此処が地獄の蓋の上であることなど――知らずにいられたらなんて。無い物ねだりをしても、何も変わりはしないのだけど。
***
ここはもう、ストレートに言っても問題あるまい、と美園は判断した。なんせ気兼ねするような間柄でもないのだから。
「琴子ってさ、馬鹿なの?」
「馬鹿って言う方が馬鹿なんですぅ!」
「小学生か!」
呆れ返る美園の視線の先には、両手にいっぱい紙袋をぶら下げている友人の姿が。確かにあちこちサービスエリアには寄ったし、面白そうなショップも見たのは確かである。久しぶりに来てみれば、寂れていていた笹賀SAがものすごく華やかになっていて、ついついはしゃいで見て回ってしまったというのも美園自身否定はできない。できないけども。
「普通……行きにそんな大荷物買ったりする?帰りに買えばいいじゃん、上り方面にも同じお店あるんだからさぁ。うちのおばあちゃん達へのお土産にっていうならわかるけど、それ殆ど自分用でしょ?どうすんの、そんなに大量のお菓子。トランクに入る?ていうかこの炎天下に置いていって大丈夫なわけ?」
美園が正論ツッコミをすると、知らん!と言いつつ彼女はトランクを開けてぐいぐいと荷物を詰め込み始めた。が。
「美園!この大量のビールどかして!入んない!」
「どかしても入りきらないことに最初に気付こうか!!アホ!!」
そもそも保冷バッグがなくても、自分達が乗ってきたのは軽自動車というヤツなのだ。そんなに大量のお菓子が入るスペースなど最初から用意されていないのである。
ついでに、今は夏。いくら常温保存できるクッキーの類いが大半だからといって、炎天下の車の中に何時間も置いておいて無事で済むとは思えない。そして常温保存ものだからこそ、保冷剤のようなものは貰えていないし――貰えたところで、ソッコーで使い物にならなくなるのは眼に見えた話である。
「……そのお菓子の一部をおばあちゃん達に供給するなら、涼しい部屋か冷蔵庫に置かせて貰えるよう私が交渉して差し上げますけどもー?」
「うう」
「いや、そこで迷うなし!この食いしん坊め」
「酒乱の美園サンに言われたくないですぅ……!」
コントのようなやり取りをしながら荷物を下ろし、焼けるような日差しに文句を言う琴子の尻を蹴飛ばしながら駐車場を後にした。ここから十分ばかり歩かなければいけないが、明日まで停められる駐車場を提供して貰えただけ有り難いというものである。
この時はまだ、美園達は単なるレジャー気分でしかなかった。
本当に怖いものなど、まだ何一つ知らなかったのだから。
車でこちらに向かっているらしい美園から、美樹のスマートフォンにメールが来たのはつい先程のことである。当初は昼過ぎには着きたいと言っていた彼女だが、友人の寝坊もあってだいぶ遅くなってしまったらしかった。道が混んでいてどうにもならなかったというのもあるのだろう。お盆前、子供達の夏休みに真っ盛りの時期だ。車を出す家族連れも少なくなかったに違いない。
――もうちょっと、じゃわからんて美園ちゃん。せめてどこのサービスエリアまでついたとかインターチェンジの名前とか出してくれないと。高速降りたのかもわからないじゃないか。
相変わらず大雑把な美園である。とはいえ、友人の琴子ちゃんとやらはその上を行く適当な性格であるらしく、いつも苦労させられるんだからとぼやいていたのもよく覚えている。部屋は汚いしうっかり物はなくすし、の女性としてちょっと残念なかんじの美園だが、世の中には上には上がいるということらしかった。まあ、だからこそ大雑把同士、仲良くやれているのかもしれないが。
美樹はLANEを使わない。メールより便利だよ、と美園には勧められたが使う気にはなれなかった。既読がついてしまうのがどうにも苦手で、なんだか監視されている気分になるからというのが大きい。相手からするとそれが便利なのかもしれないが、こういった便利な文明の利器は“自由気ままに使ってなんぼ”だと美樹は思っている。いくら使いやすくても、既読スルーだの未読スルーだので火種になりそうなのはちょっとごめんというものだった。
ビニールハウスに向かう道すがら、ふとあるものが気になって足を止めてしまう美樹。それは、住宅地の塀の角にあるカーブミラーだった。このあたりの道は塀が高く、坂もあるので見通しが良くない。徐行しつつじりじりと周囲を確認して車を動かさなければならないような場所だった。そこまで車通りが多いわけでもないが、学校への通学路になっているという問題もある。美樹が子供の頃にも、小学校の上級生が一人撥ねられて死んでいたはずだ。死亡事故にまでならずとも、怪我をした子供は他にも過去に何人かいたはずである。
長いこと設置されていることもあり、オレンジ色の塗装は剥げかけてあちこちが錆びていた。そのうち折れてしまうかもしれない。なんといっても年期が入りすぎているし、当たり前だが雨ざらしである。大した重さではないにせよ、あの高さから落下したらかなりの衝撃だろう。自分でも直撃したらそれなりに大きな怪我をしてしまいそうだ、と見上げつつ思う美樹である。
だが、今鏡が気になった理由は、そこではなかった。
――……いる。
いつからだろう、と思う。それこそ、物心ついた時には、美樹にはそれが“見えて”いたのだ。勝木の家の男子は霊能力に目覚めるものが昔から少なくなかったという。自分の場合も、その例に漏れなかったということかもしれない。――あまり、嬉しいことではないけれど。
なんせ自分は本当にただ“見える”だけなのだ。
そして見えたところで――それを何かする力など、自分にはない。“対処”できるのは、基本的に“祭”の家の者だけなのだから。
――……ああ、やっぱり。今は駄目な“時”だったんだ。規則を破ってでも、美園ちゃんに……来るなと、そう言っておけば良かっただろうか。
“それ”は、左に折れた道の――電柱の影に立っているらしかった。真っ直ぐ直進して坂を上っている美樹から直接見える角度ではない。それでも、錆び付いたカーブミラーにはしっかりとそれが映りこんでいる。
電柱の影に、寄り添うように――否、貼り付くように立っているモノ。
生きているモノならば細い電柱の影に完全に隠れることなど出来るはずもないのに、それはぴったりと電柱の影の中に潜り込み、不自然なほど“厚み”が失われた体でのっぺりとそこに佇んでいた。
まるで影から生えているように。
影の中に、別の空間に繋がる出口でもあって、そここら体の前半分だけを覗かせているように。
それは、少女だった。
正確には――“少女であった”ものだった。
――ああ、いる。見ているんだ、俺を……!
ピンクのパジャマのようなものを身に纏った少女の、だらんと力なく垂らした手からは――全ての指が欠落していた。
引きちぎられた皮が、筋が、びらびらと伸びている。
強引に砕かれた、白い骨のようなものが覗いている。
それだけではない。なくなっているのは手の指だけではなかった。裸足の両足首の先は不自然なほど“小さい”。そして“あるべきものがない”。――欠落しているのは、足の指も同じ。血に染まった骨が、肉が、本来立てるはずのない足の先から無念そうにこちらを向いているのだ。
――見える。いる。……“みかげさまの使者”が、そこに。
少女の顔は、見えない。血で汚れた茶色の髪の毛はわかるのに――不自然なほど手足の傷口は生々しく鮮明に像を結ぶのに、眼や鼻のあたりだけがやけにぼやけて喪失しているのだ。見えるのは口元だけ。血で汚れた口が、こぽこぽと血泡を吹きながら何かを話している。
だが、その声は一切聞こえない。開かれるその口の中に――舌らしきものは、ない。
――ああ、みかげさま、みかげさま。
理解している。理解してしまう。
全て引き“裂”かれている。指も、耳も、舌も――ゆえに。
――お許しを……!
自分達は無力だ。地獄の蓋をするために、悪魔の力を借りる以外に手段を持たなかったほどの、無力で愚かな人間でしかない。
勝木の家の語源は“担ぎ”。祭の家の語源は“祀り”。つまり、笹下村というものは。
――どうか、杞憂であってくれ。
あの道は、進めない。いくら逃げ場がないと知っていても、“みかげさま”に視らたまま平然と振る舞うほどの度胸など美樹にはないのだ。
そのまま引き返し、大回りの道を行くべく歩き出した。あの姉妹が来た辺りからだ、どんどんあれの数が増えるようになったのは。
自分には見えてしまう。わかってしまう。なんて呪わしいのだろう。
此処が地獄の蓋の上であることなど――知らずにいられたらなんて。無い物ねだりをしても、何も変わりはしないのだけど。
***
ここはもう、ストレートに言っても問題あるまい、と美園は判断した。なんせ気兼ねするような間柄でもないのだから。
「琴子ってさ、馬鹿なの?」
「馬鹿って言う方が馬鹿なんですぅ!」
「小学生か!」
呆れ返る美園の視線の先には、両手にいっぱい紙袋をぶら下げている友人の姿が。確かにあちこちサービスエリアには寄ったし、面白そうなショップも見たのは確かである。久しぶりに来てみれば、寂れていていた笹賀SAがものすごく華やかになっていて、ついついはしゃいで見て回ってしまったというのも美園自身否定はできない。できないけども。
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美園が正論ツッコミをすると、知らん!と言いつつ彼女はトランクを開けてぐいぐいと荷物を詰め込み始めた。が。
「美園!この大量のビールどかして!入んない!」
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そもそも保冷バッグがなくても、自分達が乗ってきたのは軽自動車というヤツなのだ。そんなに大量のお菓子が入るスペースなど最初から用意されていないのである。
ついでに、今は夏。いくら常温保存できるクッキーの類いが大半だからといって、炎天下の車の中に何時間も置いておいて無事で済むとは思えない。そして常温保存ものだからこそ、保冷剤のようなものは貰えていないし――貰えたところで、ソッコーで使い物にならなくなるのは眼に見えた話である。
「……そのお菓子の一部をおばあちゃん達に供給するなら、涼しい部屋か冷蔵庫に置かせて貰えるよう私が交渉して差し上げますけどもー?」
「うう」
「いや、そこで迷うなし!この食いしん坊め」
「酒乱の美園サンに言われたくないですぅ……!」
コントのようなやり取りをしながら荷物を下ろし、焼けるような日差しに文句を言う琴子の尻を蹴飛ばしながら駐車場を後にした。ここから十分ばかり歩かなければいけないが、明日まで停められる駐車場を提供して貰えただけ有り難いというものである。
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