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<第二十六話>
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シェルは、自分がホープ・コードとして致命的な欠陥品であることを知っている。自我を持ってすぐ理解したことだ。性格以前の問題である。自分は――ホープ・コードとして、あってはならない存在だということを。
――違和感があった。男でも女でもない体に特に不快感を抱いたことはないが。……いずれ男の主人と番にならなければならないかもしれないと思った時、私には……言葉にできない感覚が背筋を走ったんだ。
自分は、男だ。
精神的な性別が、限りなく男性の側に寄っていることに、シェルはかなり早い段階で気がついていた。一人称で、私、と言わなければならないことも気分が良くなかったし、何より――好きになった相手のことを、自分が女性として見ていたから尚更である。
この自分がまさか。同胞を相手に一目惚れするだなんて、どうして予想ができようか。
『は、初めまして。ミリー、です。よろしく……』
まるでそこに、大輪の向日葵が咲いたようだと思った。他にもっと見目いいアンドロイドなどいくらでもいた筈だというのに、多数の美しい機械人形達に囲まれていてなお、その輝きは埋もれるということを知らなかったのだ。初めて見た時の笑顔を、その柔らかくて愛おしいその光を、自分は生涯忘れることができそうにない。同時に、絶望的なまでに、直感的に理解してしまった。自分はたった今、許されるはずのない感情を持ってしまったのだ、と。
最初に出会った時から。シェルにはミリーが、可愛らしい少女にしか見えなかったのである。
普段は大人しいし、何をやらせてもミスが目立つ彼女を、スタッフの者たちや多くの同胞たちが馬鹿にした。そのたびシェルは腹が立って仕方なく、同時に上手いフォローもできない自分自身に苛立って仕方がなかったのである。
ミリーの良さは、そんなことじゃない。確かに彼女を好きになったきっかけは単純な一目惚れで、つまりは外見的な問題だったわけだが。そうじゃないのだ。付き合えばすぐ分かる。彼女はどれだけ失敗してもけして諦めないし、向上心が素晴らしく高いのである。そして何より――彼女が物事を成功する時と失敗する時のパターンは決まりきっているのだ。
どうしてみんな気がつかないのだろう。彼女がミスをするのは決まって、自分一人の評価に関わる時だけだ。周りに迷惑をかけるグループワークや――誰かの為に作る料理などを失敗したことなど一度もないということに。
ミリーは、自分自身を信じきれていないし、愛しきれてもいない。恐らく、劣等生としてレッテルを貼り続けられてきたことから、その性質を悪化させてしまったのだろう。だから、自分自身の為には頑張ることができないのである。彼女が頑張れるのは、一生懸命になれるのはいつだって――大切な、誰かのため。
そういう子なのだ。いつも、誰かを助けたくて、誰かの役にたちたくて、その為にならけして諦めることなど知らない――そういうアンドロイドなのである。
自分なんかより、よほど。ホープ・コードとしても一個の存在としても完成されているのだ。誰もがそれに気がつかず彼女を貶めることがとても腹立たしく、同時に――どこか、シェルは優越感を感じていたのも確かなことだった。
ミリーの一番良いところを、自分だけが知っている。けして、番として結ばれることのできない存在であるとしても――それが何より、シェルにとって彼女の特別であるという誇りでもあったのだった。全く、変態思考にもほどがあるではないか。
――いずれ、誰かのところへ。私もミリーも伴侶として嫁がねばならない。耐えられなかった、そんなことは。
それが自分たちの存在理由だとわかっている。だが、自分の心に決めた相手はたった一人だというのに――もうミリーしか自分にはいないというのに。どうして他の、忌々しい人間なんぞにその身を明け渡さねばならないのか。自分自身さえ、奪われなければならないのか。あまりにも理不尽ではないか。
初めての対面日は、そうして無理矢理相手がキャンセルするように仕向けて、卒業を延ばしたが。同じ手段など二度と使えないだろうということくらい、シェルにも分かっていたのである。
今こんな事になったのもきっと――許されない恋をして、無理矢理ミリーの傍にいようとした、その報いなのだろう。前回の対面日、あのワガママなお嬢様のところに婿入りしていれば、自分ももう少しマシな待遇だったはずだ。そう思ってしまえば、自業自得と嗤うしかない。
――いっそ、死んでしまえば良かったんだろうか。誰にも汚されることなく、ミリーが汚される様を見ることもなく、恋心だけ抱いて……スクラップになってしまえたんだろうか。
ホープ・コードが。機械人形が自殺を考えるなんて、まったく滑稽な話である。しかし、シェルは何度も自ら死んでしまえたらと思うくらいには追い詰められていた。その結果、対面日前日の――ミリーへの告白である。
ミリーが自分のことなど、面倒見のいい友人にしか見ていないことくらい知っていた。規則を重んじる彼女が、自分を受け入れなくても当然だろうということも。同時に、優しい彼女のことだ。シェルの気持ちを無下にすることもできず、間違いなく苦しんでしまうことになるだろう。だから本当は、こんな気持ちは墓場まで持っていこうと思っていたのである。思っていたというのに。
――私は弱い。……何が過去最高のホープ・コードだ。綺麗な外見も、高い戦闘技術も家事能力も……そんなもの私には必要ないというのに。守りたい者を守ることも、愛でたいものを愛でることもできないなら、そんな力あって何の意味がある?
大切な存在を、傷つけるとわかっていながら、エゴを押し付けた。自分は弱い。ミリーよりずっとずと弱くて、その弱さを吐き出すこともできず、素直に愛を伝えることもできない、あまりにも弱くて惨めな欠陥品である。
自分はミリーの為にもう、何もしてやることもできない。彼女の初めてを貰うことも、彼女に初めてを捧げることもできない。
だから、せめて。せめて、キスだけはと、無理矢理奪ったのだ。あの最後の花火とミリーの笑顔、甘いキスの感触だけがあれば。それだけできっと、生きていけると、信じたかったから。
自分にはもう、それしかなかったのだから。
――これはきっと、罰なんだ。私は自分の事しか考えて生きてこなかった。自分で死ぬ勇気も、禁忌を犯して愛する者を奪う勇気もなくて……だから、天罰が下ったんだろう。
本多政紀は、シェルを別荘に連れて帰って。その晩には――もう。
『いいねえ、その絶望しましたって顔!すっげぇキモチイわ!』
男は嗤いながらシェルに覆いかぶさった。鎖で繋いで監禁し、殴って、切り刻んで、それから――それから。
絶対に泣いてやるものかと、そう誓ったはずだというのに。男が飽きて立ち去った後、シェルは傷だらけの身体で声を殺して泣いた。悔しくてならなかった。自分の精神は男だと思っていたのに。別の男に初めてを奪われて、女のように傷ついた自分が何より憎らしくてならなかったのである。
――死んでしまえ。消えてしまえ。クソな人間どもなんぞ、みんな、みんな。
何故だ。自分には、あんな男など簡単に縊り殺せるだけの力があるというのに。それだけの戦闘訓練を積んできたのに、何故何もできずにされるがままなのか。プログラムされた設定が憎くて仕方ない。ご主人様に逆らわないように、抵抗できないように、命令に従うように――インストールされたデータが忌々しくてならない。
一番殺したい相手を殺すこともできず、愛する相手を守ることもできず。自分は何の為に生きて、なんの為に存在しているというのだろうか。
目の前にあるのは闇ばかり。ここが奈落の底かと思った瞬間、さらに身体は下へと沈んで堕ちていくばかりなのだ。
引き取られて二ヶ月が過ぎる頃、恐れていたことは現実になった。否――想像していた以上に最悪の形で、目の前に現れたのだ。
シェルが政紀の子を身篭ったのである。
――それが私の、生まれついての仕事だ。わかっている。わかっていた。なのに、心が追いつかない。……産みたくないと、そう思ってしまった。
ホープ・コードの子供は、人間の子供より早く成長し、妊娠期間も短くなる。同時に、身体構造上子宮が内側に膨らめるようになっているため、臨月であってもそこまで腹が大きくならなかったりする。
だから二ヶ月の時点で。シェルの子供は、そこそこの大きさまで育っていたのだった。そして、それに気づいた政紀は、まさに悪魔としか思えない所業に出たのである。
『いいよなあ、お前らは。簡単に壊れねーって最高だぜ。サンドバックにしがいがあるってもんだよな!!』
政紀はシェルを鎖でつるし上げて、殴りつけて――子供を流させたのである。もう、流産と呼べるほど未熟児ではなかった。激痛にシェルが悲鳴を上げて、気づいた時には――下半身がオイルで真っ赤に染まっていて、半分人の形をした肉の塊が床に転がっていたのである。
何が悲しくて、何が苦しくて、何が痛いのかももうわからなかった。呆然とするシェルの前で、男は肉の塊を拾い上げて、蹴り飛ばして、床に叩きつけたのである。
――悪魔。
物語の中でしか見たことのない存在が。どれほどの創作よりも残酷で醜い存在が現実に在ることを。それは人間でしか有り得ないということを。シェルは身をもって実感したのである。
――誰か、殺してくれ。
助けなど求めない。この世界に神様などいないのだから。自分で自分を救う勇気もないのに、誰かのために足掻く努力もしてこなかったのに、助けを求める権利など自分にあるはずもない。
だから、助けてくれ、ではなく。殺してくれ、と。そう願った。
――この悪魔に屈してしまう前に。最後の優しい記憶さえ、塗りつぶされてしまう、その前に。
昼は男に見世物にされて、夜は玩具にされる日々で。シェルはそれだけを願い、緩やかに心を壊していった。だから、想像さえしていなかったことなのである。
「シェル」
小さく、呼ぶ声がして、目を見開いた。政紀に連れられていった地下クラブで、絶対にそこにいるはずのない存在が目の前に立っていたのである。
――嘘だろう……ミリー。
――違和感があった。男でも女でもない体に特に不快感を抱いたことはないが。……いずれ男の主人と番にならなければならないかもしれないと思った時、私には……言葉にできない感覚が背筋を走ったんだ。
自分は、男だ。
精神的な性別が、限りなく男性の側に寄っていることに、シェルはかなり早い段階で気がついていた。一人称で、私、と言わなければならないことも気分が良くなかったし、何より――好きになった相手のことを、自分が女性として見ていたから尚更である。
この自分がまさか。同胞を相手に一目惚れするだなんて、どうして予想ができようか。
『は、初めまして。ミリー、です。よろしく……』
まるでそこに、大輪の向日葵が咲いたようだと思った。他にもっと見目いいアンドロイドなどいくらでもいた筈だというのに、多数の美しい機械人形達に囲まれていてなお、その輝きは埋もれるということを知らなかったのだ。初めて見た時の笑顔を、その柔らかくて愛おしいその光を、自分は生涯忘れることができそうにない。同時に、絶望的なまでに、直感的に理解してしまった。自分はたった今、許されるはずのない感情を持ってしまったのだ、と。
最初に出会った時から。シェルにはミリーが、可愛らしい少女にしか見えなかったのである。
普段は大人しいし、何をやらせてもミスが目立つ彼女を、スタッフの者たちや多くの同胞たちが馬鹿にした。そのたびシェルは腹が立って仕方なく、同時に上手いフォローもできない自分自身に苛立って仕方がなかったのである。
ミリーの良さは、そんなことじゃない。確かに彼女を好きになったきっかけは単純な一目惚れで、つまりは外見的な問題だったわけだが。そうじゃないのだ。付き合えばすぐ分かる。彼女はどれだけ失敗してもけして諦めないし、向上心が素晴らしく高いのである。そして何より――彼女が物事を成功する時と失敗する時のパターンは決まりきっているのだ。
どうしてみんな気がつかないのだろう。彼女がミスをするのは決まって、自分一人の評価に関わる時だけだ。周りに迷惑をかけるグループワークや――誰かの為に作る料理などを失敗したことなど一度もないということに。
ミリーは、自分自身を信じきれていないし、愛しきれてもいない。恐らく、劣等生としてレッテルを貼り続けられてきたことから、その性質を悪化させてしまったのだろう。だから、自分自身の為には頑張ることができないのである。彼女が頑張れるのは、一生懸命になれるのはいつだって――大切な、誰かのため。
そういう子なのだ。いつも、誰かを助けたくて、誰かの役にたちたくて、その為にならけして諦めることなど知らない――そういうアンドロイドなのである。
自分なんかより、よほど。ホープ・コードとしても一個の存在としても完成されているのだ。誰もがそれに気がつかず彼女を貶めることがとても腹立たしく、同時に――どこか、シェルは優越感を感じていたのも確かなことだった。
ミリーの一番良いところを、自分だけが知っている。けして、番として結ばれることのできない存在であるとしても――それが何より、シェルにとって彼女の特別であるという誇りでもあったのだった。全く、変態思考にもほどがあるではないか。
――いずれ、誰かのところへ。私もミリーも伴侶として嫁がねばならない。耐えられなかった、そんなことは。
それが自分たちの存在理由だとわかっている。だが、自分の心に決めた相手はたった一人だというのに――もうミリーしか自分にはいないというのに。どうして他の、忌々しい人間なんぞにその身を明け渡さねばならないのか。自分自身さえ、奪われなければならないのか。あまりにも理不尽ではないか。
初めての対面日は、そうして無理矢理相手がキャンセルするように仕向けて、卒業を延ばしたが。同じ手段など二度と使えないだろうということくらい、シェルにも分かっていたのである。
今こんな事になったのもきっと――許されない恋をして、無理矢理ミリーの傍にいようとした、その報いなのだろう。前回の対面日、あのワガママなお嬢様のところに婿入りしていれば、自分ももう少しマシな待遇だったはずだ。そう思ってしまえば、自業自得と嗤うしかない。
――いっそ、死んでしまえば良かったんだろうか。誰にも汚されることなく、ミリーが汚される様を見ることもなく、恋心だけ抱いて……スクラップになってしまえたんだろうか。
ホープ・コードが。機械人形が自殺を考えるなんて、まったく滑稽な話である。しかし、シェルは何度も自ら死んでしまえたらと思うくらいには追い詰められていた。その結果、対面日前日の――ミリーへの告白である。
ミリーが自分のことなど、面倒見のいい友人にしか見ていないことくらい知っていた。規則を重んじる彼女が、自分を受け入れなくても当然だろうということも。同時に、優しい彼女のことだ。シェルの気持ちを無下にすることもできず、間違いなく苦しんでしまうことになるだろう。だから本当は、こんな気持ちは墓場まで持っていこうと思っていたのである。思っていたというのに。
――私は弱い。……何が過去最高のホープ・コードだ。綺麗な外見も、高い戦闘技術も家事能力も……そんなもの私には必要ないというのに。守りたい者を守ることも、愛でたいものを愛でることもできないなら、そんな力あって何の意味がある?
大切な存在を、傷つけるとわかっていながら、エゴを押し付けた。自分は弱い。ミリーよりずっとずと弱くて、その弱さを吐き出すこともできず、素直に愛を伝えることもできない、あまりにも弱くて惨めな欠陥品である。
自分はミリーの為にもう、何もしてやることもできない。彼女の初めてを貰うことも、彼女に初めてを捧げることもできない。
だから、せめて。せめて、キスだけはと、無理矢理奪ったのだ。あの最後の花火とミリーの笑顔、甘いキスの感触だけがあれば。それだけできっと、生きていけると、信じたかったから。
自分にはもう、それしかなかったのだから。
――これはきっと、罰なんだ。私は自分の事しか考えて生きてこなかった。自分で死ぬ勇気も、禁忌を犯して愛する者を奪う勇気もなくて……だから、天罰が下ったんだろう。
本多政紀は、シェルを別荘に連れて帰って。その晩には――もう。
『いいねえ、その絶望しましたって顔!すっげぇキモチイわ!』
男は嗤いながらシェルに覆いかぶさった。鎖で繋いで監禁し、殴って、切り刻んで、それから――それから。
絶対に泣いてやるものかと、そう誓ったはずだというのに。男が飽きて立ち去った後、シェルは傷だらけの身体で声を殺して泣いた。悔しくてならなかった。自分の精神は男だと思っていたのに。別の男に初めてを奪われて、女のように傷ついた自分が何より憎らしくてならなかったのである。
――死んでしまえ。消えてしまえ。クソな人間どもなんぞ、みんな、みんな。
何故だ。自分には、あんな男など簡単に縊り殺せるだけの力があるというのに。それだけの戦闘訓練を積んできたのに、何故何もできずにされるがままなのか。プログラムされた設定が憎くて仕方ない。ご主人様に逆らわないように、抵抗できないように、命令に従うように――インストールされたデータが忌々しくてならない。
一番殺したい相手を殺すこともできず、愛する相手を守ることもできず。自分は何の為に生きて、なんの為に存在しているというのだろうか。
目の前にあるのは闇ばかり。ここが奈落の底かと思った瞬間、さらに身体は下へと沈んで堕ちていくばかりなのだ。
引き取られて二ヶ月が過ぎる頃、恐れていたことは現実になった。否――想像していた以上に最悪の形で、目の前に現れたのだ。
シェルが政紀の子を身篭ったのである。
――それが私の、生まれついての仕事だ。わかっている。わかっていた。なのに、心が追いつかない。……産みたくないと、そう思ってしまった。
ホープ・コードの子供は、人間の子供より早く成長し、妊娠期間も短くなる。同時に、身体構造上子宮が内側に膨らめるようになっているため、臨月であってもそこまで腹が大きくならなかったりする。
だから二ヶ月の時点で。シェルの子供は、そこそこの大きさまで育っていたのだった。そして、それに気づいた政紀は、まさに悪魔としか思えない所業に出たのである。
『いいよなあ、お前らは。簡単に壊れねーって最高だぜ。サンドバックにしがいがあるってもんだよな!!』
政紀はシェルを鎖でつるし上げて、殴りつけて――子供を流させたのである。もう、流産と呼べるほど未熟児ではなかった。激痛にシェルが悲鳴を上げて、気づいた時には――下半身がオイルで真っ赤に染まっていて、半分人の形をした肉の塊が床に転がっていたのである。
何が悲しくて、何が苦しくて、何が痛いのかももうわからなかった。呆然とするシェルの前で、男は肉の塊を拾い上げて、蹴り飛ばして、床に叩きつけたのである。
――悪魔。
物語の中でしか見たことのない存在が。どれほどの創作よりも残酷で醜い存在が現実に在ることを。それは人間でしか有り得ないということを。シェルは身をもって実感したのである。
――誰か、殺してくれ。
助けなど求めない。この世界に神様などいないのだから。自分で自分を救う勇気もないのに、誰かのために足掻く努力もしてこなかったのに、助けを求める権利など自分にあるはずもない。
だから、助けてくれ、ではなく。殺してくれ、と。そう願った。
――この悪魔に屈してしまう前に。最後の優しい記憶さえ、塗りつぶされてしまう、その前に。
昼は男に見世物にされて、夜は玩具にされる日々で。シェルはそれだけを願い、緩やかに心を壊していった。だから、想像さえしていなかったことなのである。
「シェル」
小さく、呼ぶ声がして、目を見開いた。政紀に連れられていった地下クラブで、絶対にそこにいるはずのない存在が目の前に立っていたのである。
――嘘だろう……ミリー。
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