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レックスの記憶喪失は魔封じの腕輪と瀕死の重症という二つの危機が重なったことによる魔力の乱れが引き起こしていたらしい。
ベアトリクスに魔力を調整され、正常さを取り戻したレックスは自分の全てを取り戻した。あの日――リーフに拾われる前、記憶を失う前に何があったのかも。
ベアトリクスの部屋からレックスの私室まで抱え上げられて運ばれたリーフはそのまま大きなベッドへ横たえられた。沈み込むように柔らかな寝心地の良さに、眠くもないのに瞼が閉じていく。
「ありがとうリーフ。疲れたろ。寝るといい」
「……ん、ん……」
ゆったりとした自身の呼吸音が眠気を誘う。ううとし始め、静かになったリーフを寝入ったと判断したのか、ニウェウスが声を潜めてレックスの名を呼んだ。
何かを察し、目配せをするレックスへ聞くべきことを聞く。
「何があったのです」
「俺は東に行っていたな。親父の命令で」
「はい。都からそう離れていない町へ視察に向かった貴方は、私の目すら誤魔化して何処へ行ったのかと思ったら。大層な冒険をされたようで」
記憶を失う前、レックスは魔王の後継者として政務を任されていた。都から東、半日とかからない距離の町へニウェウスと数人の部下を連れ視察に赴いただけ。なんの問題もなく終わる筈だったというのに、レックスは突如失踪した。
「町中で腕輪をはめられた。抗うことも出来ず転移魔術で森へ……リーフの暮らしていた森のさらに奥、魔獣どもの森に飛ばされたんだ」
「まず。何故腕輪をはめられたというのです」
「……悪意の感じられない小さな子供が、どうぞってくれたんだよ」
気さくなレックスは臣民からの人気が高い。政務で訪ねた町で民から何かを贈られるのはしょっちゅうで、怪しい物以外は喜んで受け取っていた。
魔封じの腕輪もそうと知るまでは何の変哲もない鉄の輪としか思えず、疑いもなくはめてしまったのだ。
実際、腕輪は巧妙にその真価を隠されている。相手を貶めることを目的とした呪具がやすやすと見抜かれては意味がない。
「魔獣に襲われて……魔力がなくとも知性のある獣ごときに劣る俺じゃない。数匹潰せば勝てないと踏んで獣は逃げていくが、本命達はそうはいかない」
レックスを殺すよう命を受けた者達は、魔力を封じられ獣と戦い消耗したレックスに襲いかかった。
「武装は奴の私兵ではなさそうだった。暗殺者でも雇ったのか。結構な数だったが全員殺して……殺したんだが流石に無傷とはいかなかったな。何ヵ所か刺されたまま動き回ったから血が足りなくなって、倒れた所へこいつが来てくれたんだ」
すり、とリーフの頬が太い指に撫でられる。遠退きつつあるがまだリーフの意識はあり、レックスの話も理解していた。ただ瞼だけは開かない。
「ありがとう。ご主人様」
お礼を言いたいのはリーフの方だった。
両親の不在に寂しさを覚えずに済んだのはレックスのおかげだ。力のないリーフを侮る様子を見せず、優しく接してくれた彼が記憶を取り戻すのは怖かった。
行き場のわからなかった彼が帰る場所を思い出したらリーフなんてどうでもよくなってしまうのではないかと、そう考えると彼の記憶が戻らなければいいとすら思った。
(蓋を開ければ王子様。優しくて皆に好かれてるすごい人だ)
記憶がなかったとはいえリーフと契約を結ぶような存在ではなかった。本当なら関わることも出来ないし、そんなつもりもない。
「……やぎのかわ」
「ん? やぎ?」
小さな独り言を聞き逃さず、返答を求めない問い返しをするレックスの顔を見たニウェウスは諦めたようにため息をつく。認めるしかなかった。
城へ戻ったレックスには政務が山と積まれていたらしく、日夜忙しく動き回っている。リーフの相手をする時間はなく、連れられてきたものの暇をもて余しているリーフにニウェウスは預かり物を渡してくれた。
手乗りの袋に詰め込まれた金貨と銀貨。それでも足りなければこれを示せと渡されたコインには厳めしい悪魔の顔とレックスの名前が刻まれている。
私服の兵士を護衛につけられ、リーフは街へ繰り出した。店らしきものを見かける度に何を扱っているのか尋ねるリーフに、護衛は嫌な顔一つせずに答えてくれる。
大通りには服飾店が多く、機能性よりも造形を重視しているように見えた。
「はぁ。僕が着たら笑われそう」
「そんなことはないと思いますよ。気になる物があればご試着してみてはいかがでしょうか。実際に着てみると感じ方も変わると思います」
店先に飾られた衣服を眺めて思わず呟くと護衛に慰められる。欲しい物は衣服ではないので大丈夫だと断り、隣の店は何かと尋ねながらリーフは魔道具や素材を扱う店を探した。
目的の店を見つけて中に入るとリーフの目はみるみる輝きに満ちていく。
トカゲやヤモリの尻尾。ドラゴンの鱗や牙に爪。死霊の心臓。瓶に詰められた人魚の歌声。不可思議でおぞましい物品が所狭しと並んでいる。
地獄谷の山羊の皮は勿論、蹄や角も売られていた。
「……高い」
「当たり前だろ? 地獄谷の山羊を仕留めようと思ったら熟練の戦士どもに頭を下げなきゃならん。うちはまだ安い方だよ」
黒いローブのフードをすっぽり被った店主がリーフの呟きに言葉を返してくる。文句のつもりで言ったわけではないので謝り、山羊皮を手に取る。
値札の通りに金貨を渡し、ついでに悪魔の血は売っていないか尋ねると首を振られた。
他にも店を訪ね歩くが、悪魔の血を売っている店はなかった。
「悪魔の血。罪人のもので良ければ用意しますよ」
リーフが城へ戻るとニウェウスと鉢合わせ、彼に聞かれるままに街での買い物の話をした。悪魔の血が欲しいのだとこぼした所、もたらされた提案にリーフは何度も頷いた。
「出来たら少しでも魔力の高い悪魔がいい。一体からだけじゃなくて、混ぜてもいいから山羊皮が鞣せるくらい欲しいです」
「……血で、皮を鞣すのですか」
「はい。悪魔の血で作られた羊皮紙はそれだけで強い魔力を秘めるのです」
それをさらに加工してやれば契約者達の魔力で結び縛る、魂の契約書になる。
「母さんから作り方は聞いてたけど、実際に作るのは初めてで。上手く出来るといいな……」
「何を作られるのでしょうか」
「契約書です。レックスと僕が交わした、魔力による絶対的な効力を持った契約書」
「まだ必要なのですか?」
蔑みや嘲笑ではなく、本当に不思議そうな問いだった。リーフが従えた相手は未来の魔王なのだから、彼以上の下僕はいない。
「はい。必要だから作るんです」
ニウェウスの問いは契約の継続が前提になっている。
リーフとは違った。
見本とも言える母手製の契約書には、署名部分などに罫線が引かれている。遠目から見ればただの直線に見えるそれらは極小さな文字の擬態だ。
拡大鏡を翳せば罫線の姿がよく見える。古語の羅列は意味を理解出来なければ内容がわからないが、リーフはしっかり覚えていた。
『全てを糧にしろ』
『逆らうな』
『魂を縛れ』
他にも書かれているのは契約書への命令だ。古語による命令を契約書に刻み込み、守らせる。契約書に宿っていた魔力は命令通りに変質していた。
古語の罫線の上には署名が刻まれている。記憶を失っていたレックスが書いた彼の名と血判。契約文はリーフへの服従。
ぼうっと眺めているとレックスとの出会いが思い起こされていく。それら全てがリーフに未練の杭を打つ。
「……」
レックスとの契約書を折り畳み、懐へしまう。鞣し終えた白紙の羊皮紙へ拡大鏡を翳しながら命令を書き込んでいく。
教えられた通りに作っているのだから当然のように母と同じ物になる。新しく出来上がった契約書をまじまじと眺め、リーフはため息をついた。
「もう少しだけ。そうしたら……」
元々リーフが都にいる理由はない。レックスが連れてきただけで、記憶を取り戻した彼にリーフは必要ない。
リーフへの恩を忘れなかったレックスの好意に甘えているだけだった。
多忙なレックスの仕事が落ち着いて、リーフと話をする時間が出来たら改めて礼を言って。レックスと過ごした短い日々は楽しく、嬉しかったことを伝えて。
そうしたら帰る。魔界の隅、東の果て。魔獣を隣人に恐ろしい悪魔の住むセロの森へ。リーフの故郷へ。
「……次は……特別強くなくていい。僕とずっと一緒にいてくれる、そんな…………都合のいい相手、見つかるわけないよね。そもそも契約出来るかどうか……」
リーフが使うことはもうないかもしれない。そんな予感を覚えさせる契約書を折り畳み、それも懐へしまいこんだ。
リーフはレックスの部屋で寝泊まりしている。
城へ連れられてからそのように通され、客室を使わせてほしいと言い出すこともなく、レックスと同室でも困りはしないリーフは当然のように受け入れていた。
過ごした時間は短いが、そうなる程度の信頼がリーフの中に育っていたのだ。朝から夜遅くまで仕事に追われる彼とろくに顔を合わせる時間もなく、同じ部屋で過ごしている感覚が薄いのもあるかもしれない。
その日のリーフは少し疲れていた。リーフが暇しているという話を聞いたらしいベアトリクスがお茶に誘ってくれたのだが、彼女と目が合うと相変わらず背筋が凍り感情がざわつく。
嫌悪とは違う純粋な恐怖、畏怖。覚えのあるようで他人事のようなそれを、確かにリーフは知っている気がするのだが思い出せない。
リーフと同じく魔道具の製作もするらしい彼女の話は興味深いものばかりだったが話をしていたのは大半がリーフだった。リーフが一つ尋ねようとするより先に彼女は三つも四つも問い掛けてくる。
リーフのこと。レックスと出会った時のこと。そしてやはりリーフのことをいくつもいくつも。よく思い付くものだと感心してしまう。
「……んー……」
ベアトリクスが帰ってすぐに夕食の時間になり、森では食べられないようなご馳走をいただいて。眠気と戦いながら湯浴みをすればもう抗う理由もない。
寝心地のいいベッドへ寝転んだリーフは誘われるまま、瞼を閉じて眠りにつく。
肌に何かが触れる感覚があった。深い眠りに包まれていた筈なのに、リーフの意識はゆっくりと浮かび上がっていく。
誰かの優しい指先がリーフの頬を撫でている。そんなことをするのは一人しかいない。
確かめるように開いた視界にはやはりレックスが見えた。
おかえり、と言葉を掛けたつもりでいたがふにゃふにゃとした声にしかならず、それでも伝わったのかレックスは「今帰った」と返してくれる。
闇夜を照らす月のように美しく輝く金の瞳を細め、薄く微笑む彼が広いベッドへ乗り上げてくる。眠いのだろう。
城へ来てからそうしているように、リーフの隣へ寝そべる。そのまま眠りにつくのだと思っていたレックスの頭は枕へ向かうことなく、リーフの方へと近付いてきた。
驚いているうちに距離が詰まる。あ、と声が出る頃には唇が塞がれた。
「え」
触れるだけの口付けはすぐに離れ、唖然とするリーフを見つめるレックスは微笑んでいる。
森で過ごした日々の中、慣れないながらも懸命に看病したリーフに向けて感謝を滲ませたものとは違う。もっと甘くねばついた何かを含ませた笑みだ。
固まるリーフの体へ手が伸びる。唇も顔中に降ってくる。何を、どうしてそんなことをするのか。
「レックス」
制止を込めて名前を呼ぶがレックスの手は止まらず、リーフの薄っぺらい体をまさぐろうとする。
「やめて」
懇願だった。これでやめてくれたならリーフもそれで終わりにしたのに、リーフへ覆い被さる男は薄く笑っただけだった。
「やめろ」
はだけられた衣服の裏、衣嚢の中に隠された契約書がじわりと魔力を滲ませる。契約を結びながら全く使われずにいたそれを、ようやく思い出したレックスには何も出来ない。
契約書は絶対だ。契約者自身の魔力を糧に効力を発揮するのだから。
「リーフ」
「僕に触るな」
言葉にされた途端、レックスの体はリーフの上から退いた。ベッドの側に跪き、主の命令を勝手に待つ。
「……二度と僕の視界に入るな」
レックスへ目を向けることなく、ベッドから降りたリーフは衣服の乱れを正しながら扉へ向かった。
「リーフ、どこに……」
「帰る。こんな所、もう居たくない」
扉へ手を掛けたリーフは動きを止め、一言だけ伝えた。
「今まで楽しかったよ。ありがとう。さようなら…………レックス殿下」
すぐに反応したレックスの声に耳を傾けることはなく、リーフは今度こそ扉へ手を掛け出ていった。
リーフはレックスに対して好意を抱いている。それは純粋な好感で、愛欲ではない。仮にそうであったとしても、リーフとレックスは一緒になることはない。
ニウェウスやベアトリクスを見ていればわかる。周囲から期待され、それに応える次なる王の器である彼は誰かの下僕になるような存在ではないと。
辺鄙な森で母親に護られて生きる半魔との関わりは必用ない。誰に言われなくとも理解出来る。
本当なら契約を破棄してやるべきなのだろうが、リーフには彼を従わせる意思はない。二度とリーフを視界に入れないようにと命じた以上、契約は継続した方が関わりは生まれないだろう。
リーフを害することは出来ず、リーフの視界に入れないのだから。
「朝になったら。ニウェウスさんに話して帰ろう……あ、お金。返さないと」
城に迎えられた際に与えられた金貨の残りは部屋の中に置かれている。使ってしまった分は返すつもりでいたので、ニウェウスに話を通して送金すればいいだろう。
それよりも問題はどこで夜明けを待てばいいかだった。賓客とはいえリーフの部屋はなく、レックスの部屋には戻れない。
誰かに部屋を用意してもらおうと歩き出したリーフの前に女が一人立ち塞がる。
長く波打つ桃色の髪。毎日意匠の違う、色彩だけは黒に統一されたドレスに身を包んだとても美しい魔女はリーフを見つけると嬉しそうに微笑んだ。花のように可憐な笑みに見つめられると、リーフの背筋は相変わらず凍ってしまう。
「あら。リーフさん。こんな遅くにどうしたの?」
「……帰りたくて」
優しく微笑むベアトリクスへ、リーフは簡潔に答えた。
「帰してあげましょうか。貴方の森へ」
理由の見えない答えに対し、ベアトリクスは赤く艶めく唇を動かして提案する。
崩されない微笑みは親切というより裏があるような何かを感じさせた。この笑みをリーフはよく知っている、そんな気がした。
「……僕は貴女にお返しするものがありません」
「いいえ。いいえ! 貴方にしか出来ないお返しがあるわ!」
頬を染めて強く言い放つ彼女が次に告げた言葉はリーフの予想から遥かに外れていた。
「ベア、ベス、トリス、トリクシー。何でもいいわ。私のこと、親しみを込めて呼んでほしいの」
城勤めのベアトリクスと会うことはもうないだろう。そんな相手への愛称なんてほとんどないようなものだ。
「ベアトリクスさんは何て呼ばれたいんですか?」
「……えっ……え……あっ……え……?」
いつも微笑みを湛える彼女の顔が驚きに崩れていく。おかしなことを聞いただろうかと首を傾げるリーフは言葉を足した。
「貴女の呼び名なんだから、貴女が呼ばれたいものがいいと思ったんですけど」
「…………ア……ん」
顔を伏せ、何か呟くベアトリクスだがリーフの耳にはよく聞こえなかった。もう一度言ってくれと頼むと、今度は聞こえた。
「ベアちゃんって呼んでほしいの……」
「ベアちゃん」
瞬間。瞬く間に帰っていた。
豪奢な城の回廊ではなく、長年過ごして見慣れた、レックスの部屋と比べたら狭くて質素なリーフの部屋に。
ふらふらと足を動かし、ベッドへ倒れ込む。木の板を組み布を敷き詰めただけの簡素で硬いベッドの寝心地は最高とは言えないが、全てに勝る安心感があった。
「……さよなら。レックス」
緊張の糸が切れたのか、リーフはすぐに寝入ってしまった。
ベアトリクスに魔力を調整され、正常さを取り戻したレックスは自分の全てを取り戻した。あの日――リーフに拾われる前、記憶を失う前に何があったのかも。
ベアトリクスの部屋からレックスの私室まで抱え上げられて運ばれたリーフはそのまま大きなベッドへ横たえられた。沈み込むように柔らかな寝心地の良さに、眠くもないのに瞼が閉じていく。
「ありがとうリーフ。疲れたろ。寝るといい」
「……ん、ん……」
ゆったりとした自身の呼吸音が眠気を誘う。ううとし始め、静かになったリーフを寝入ったと判断したのか、ニウェウスが声を潜めてレックスの名を呼んだ。
何かを察し、目配せをするレックスへ聞くべきことを聞く。
「何があったのです」
「俺は東に行っていたな。親父の命令で」
「はい。都からそう離れていない町へ視察に向かった貴方は、私の目すら誤魔化して何処へ行ったのかと思ったら。大層な冒険をされたようで」
記憶を失う前、レックスは魔王の後継者として政務を任されていた。都から東、半日とかからない距離の町へニウェウスと数人の部下を連れ視察に赴いただけ。なんの問題もなく終わる筈だったというのに、レックスは突如失踪した。
「町中で腕輪をはめられた。抗うことも出来ず転移魔術で森へ……リーフの暮らしていた森のさらに奥、魔獣どもの森に飛ばされたんだ」
「まず。何故腕輪をはめられたというのです」
「……悪意の感じられない小さな子供が、どうぞってくれたんだよ」
気さくなレックスは臣民からの人気が高い。政務で訪ねた町で民から何かを贈られるのはしょっちゅうで、怪しい物以外は喜んで受け取っていた。
魔封じの腕輪もそうと知るまでは何の変哲もない鉄の輪としか思えず、疑いもなくはめてしまったのだ。
実際、腕輪は巧妙にその真価を隠されている。相手を貶めることを目的とした呪具がやすやすと見抜かれては意味がない。
「魔獣に襲われて……魔力がなくとも知性のある獣ごときに劣る俺じゃない。数匹潰せば勝てないと踏んで獣は逃げていくが、本命達はそうはいかない」
レックスを殺すよう命を受けた者達は、魔力を封じられ獣と戦い消耗したレックスに襲いかかった。
「武装は奴の私兵ではなさそうだった。暗殺者でも雇ったのか。結構な数だったが全員殺して……殺したんだが流石に無傷とはいかなかったな。何ヵ所か刺されたまま動き回ったから血が足りなくなって、倒れた所へこいつが来てくれたんだ」
すり、とリーフの頬が太い指に撫でられる。遠退きつつあるがまだリーフの意識はあり、レックスの話も理解していた。ただ瞼だけは開かない。
「ありがとう。ご主人様」
お礼を言いたいのはリーフの方だった。
両親の不在に寂しさを覚えずに済んだのはレックスのおかげだ。力のないリーフを侮る様子を見せず、優しく接してくれた彼が記憶を取り戻すのは怖かった。
行き場のわからなかった彼が帰る場所を思い出したらリーフなんてどうでもよくなってしまうのではないかと、そう考えると彼の記憶が戻らなければいいとすら思った。
(蓋を開ければ王子様。優しくて皆に好かれてるすごい人だ)
記憶がなかったとはいえリーフと契約を結ぶような存在ではなかった。本当なら関わることも出来ないし、そんなつもりもない。
「……やぎのかわ」
「ん? やぎ?」
小さな独り言を聞き逃さず、返答を求めない問い返しをするレックスの顔を見たニウェウスは諦めたようにため息をつく。認めるしかなかった。
城へ戻ったレックスには政務が山と積まれていたらしく、日夜忙しく動き回っている。リーフの相手をする時間はなく、連れられてきたものの暇をもて余しているリーフにニウェウスは預かり物を渡してくれた。
手乗りの袋に詰め込まれた金貨と銀貨。それでも足りなければこれを示せと渡されたコインには厳めしい悪魔の顔とレックスの名前が刻まれている。
私服の兵士を護衛につけられ、リーフは街へ繰り出した。店らしきものを見かける度に何を扱っているのか尋ねるリーフに、護衛は嫌な顔一つせずに答えてくれる。
大通りには服飾店が多く、機能性よりも造形を重視しているように見えた。
「はぁ。僕が着たら笑われそう」
「そんなことはないと思いますよ。気になる物があればご試着してみてはいかがでしょうか。実際に着てみると感じ方も変わると思います」
店先に飾られた衣服を眺めて思わず呟くと護衛に慰められる。欲しい物は衣服ではないので大丈夫だと断り、隣の店は何かと尋ねながらリーフは魔道具や素材を扱う店を探した。
目的の店を見つけて中に入るとリーフの目はみるみる輝きに満ちていく。
トカゲやヤモリの尻尾。ドラゴンの鱗や牙に爪。死霊の心臓。瓶に詰められた人魚の歌声。不可思議でおぞましい物品が所狭しと並んでいる。
地獄谷の山羊の皮は勿論、蹄や角も売られていた。
「……高い」
「当たり前だろ? 地獄谷の山羊を仕留めようと思ったら熟練の戦士どもに頭を下げなきゃならん。うちはまだ安い方だよ」
黒いローブのフードをすっぽり被った店主がリーフの呟きに言葉を返してくる。文句のつもりで言ったわけではないので謝り、山羊皮を手に取る。
値札の通りに金貨を渡し、ついでに悪魔の血は売っていないか尋ねると首を振られた。
他にも店を訪ね歩くが、悪魔の血を売っている店はなかった。
「悪魔の血。罪人のもので良ければ用意しますよ」
リーフが城へ戻るとニウェウスと鉢合わせ、彼に聞かれるままに街での買い物の話をした。悪魔の血が欲しいのだとこぼした所、もたらされた提案にリーフは何度も頷いた。
「出来たら少しでも魔力の高い悪魔がいい。一体からだけじゃなくて、混ぜてもいいから山羊皮が鞣せるくらい欲しいです」
「……血で、皮を鞣すのですか」
「はい。悪魔の血で作られた羊皮紙はそれだけで強い魔力を秘めるのです」
それをさらに加工してやれば契約者達の魔力で結び縛る、魂の契約書になる。
「母さんから作り方は聞いてたけど、実際に作るのは初めてで。上手く出来るといいな……」
「何を作られるのでしょうか」
「契約書です。レックスと僕が交わした、魔力による絶対的な効力を持った契約書」
「まだ必要なのですか?」
蔑みや嘲笑ではなく、本当に不思議そうな問いだった。リーフが従えた相手は未来の魔王なのだから、彼以上の下僕はいない。
「はい。必要だから作るんです」
ニウェウスの問いは契約の継続が前提になっている。
リーフとは違った。
見本とも言える母手製の契約書には、署名部分などに罫線が引かれている。遠目から見ればただの直線に見えるそれらは極小さな文字の擬態だ。
拡大鏡を翳せば罫線の姿がよく見える。古語の羅列は意味を理解出来なければ内容がわからないが、リーフはしっかり覚えていた。
『全てを糧にしろ』
『逆らうな』
『魂を縛れ』
他にも書かれているのは契約書への命令だ。古語による命令を契約書に刻み込み、守らせる。契約書に宿っていた魔力は命令通りに変質していた。
古語の罫線の上には署名が刻まれている。記憶を失っていたレックスが書いた彼の名と血判。契約文はリーフへの服従。
ぼうっと眺めているとレックスとの出会いが思い起こされていく。それら全てがリーフに未練の杭を打つ。
「……」
レックスとの契約書を折り畳み、懐へしまう。鞣し終えた白紙の羊皮紙へ拡大鏡を翳しながら命令を書き込んでいく。
教えられた通りに作っているのだから当然のように母と同じ物になる。新しく出来上がった契約書をまじまじと眺め、リーフはため息をついた。
「もう少しだけ。そうしたら……」
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そうしたら帰る。魔界の隅、東の果て。魔獣を隣人に恐ろしい悪魔の住むセロの森へ。リーフの故郷へ。
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城へ連れられてからそのように通され、客室を使わせてほしいと言い出すこともなく、レックスと同室でも困りはしないリーフは当然のように受け入れていた。
過ごした時間は短いが、そうなる程度の信頼がリーフの中に育っていたのだ。朝から夜遅くまで仕事に追われる彼とろくに顔を合わせる時間もなく、同じ部屋で過ごしている感覚が薄いのもあるかもしれない。
その日のリーフは少し疲れていた。リーフが暇しているという話を聞いたらしいベアトリクスがお茶に誘ってくれたのだが、彼女と目が合うと相変わらず背筋が凍り感情がざわつく。
嫌悪とは違う純粋な恐怖、畏怖。覚えのあるようで他人事のようなそれを、確かにリーフは知っている気がするのだが思い出せない。
リーフと同じく魔道具の製作もするらしい彼女の話は興味深いものばかりだったが話をしていたのは大半がリーフだった。リーフが一つ尋ねようとするより先に彼女は三つも四つも問い掛けてくる。
リーフのこと。レックスと出会った時のこと。そしてやはりリーフのことをいくつもいくつも。よく思い付くものだと感心してしまう。
「……んー……」
ベアトリクスが帰ってすぐに夕食の時間になり、森では食べられないようなご馳走をいただいて。眠気と戦いながら湯浴みをすればもう抗う理由もない。
寝心地のいいベッドへ寝転んだリーフは誘われるまま、瞼を閉じて眠りにつく。
肌に何かが触れる感覚があった。深い眠りに包まれていた筈なのに、リーフの意識はゆっくりと浮かび上がっていく。
誰かの優しい指先がリーフの頬を撫でている。そんなことをするのは一人しかいない。
確かめるように開いた視界にはやはりレックスが見えた。
おかえり、と言葉を掛けたつもりでいたがふにゃふにゃとした声にしかならず、それでも伝わったのかレックスは「今帰った」と返してくれる。
闇夜を照らす月のように美しく輝く金の瞳を細め、薄く微笑む彼が広いベッドへ乗り上げてくる。眠いのだろう。
城へ来てからそうしているように、リーフの隣へ寝そべる。そのまま眠りにつくのだと思っていたレックスの頭は枕へ向かうことなく、リーフの方へと近付いてきた。
驚いているうちに距離が詰まる。あ、と声が出る頃には唇が塞がれた。
「え」
触れるだけの口付けはすぐに離れ、唖然とするリーフを見つめるレックスは微笑んでいる。
森で過ごした日々の中、慣れないながらも懸命に看病したリーフに向けて感謝を滲ませたものとは違う。もっと甘くねばついた何かを含ませた笑みだ。
固まるリーフの体へ手が伸びる。唇も顔中に降ってくる。何を、どうしてそんなことをするのか。
「レックス」
制止を込めて名前を呼ぶがレックスの手は止まらず、リーフの薄っぺらい体をまさぐろうとする。
「やめて」
懇願だった。これでやめてくれたならリーフもそれで終わりにしたのに、リーフへ覆い被さる男は薄く笑っただけだった。
「やめろ」
はだけられた衣服の裏、衣嚢の中に隠された契約書がじわりと魔力を滲ませる。契約を結びながら全く使われずにいたそれを、ようやく思い出したレックスには何も出来ない。
契約書は絶対だ。契約者自身の魔力を糧に効力を発揮するのだから。
「リーフ」
「僕に触るな」
言葉にされた途端、レックスの体はリーフの上から退いた。ベッドの側に跪き、主の命令を勝手に待つ。
「……二度と僕の視界に入るな」
レックスへ目を向けることなく、ベッドから降りたリーフは衣服の乱れを正しながら扉へ向かった。
「リーフ、どこに……」
「帰る。こんな所、もう居たくない」
扉へ手を掛けたリーフは動きを止め、一言だけ伝えた。
「今まで楽しかったよ。ありがとう。さようなら…………レックス殿下」
すぐに反応したレックスの声に耳を傾けることはなく、リーフは今度こそ扉へ手を掛け出ていった。
リーフはレックスに対して好意を抱いている。それは純粋な好感で、愛欲ではない。仮にそうであったとしても、リーフとレックスは一緒になることはない。
ニウェウスやベアトリクスを見ていればわかる。周囲から期待され、それに応える次なる王の器である彼は誰かの下僕になるような存在ではないと。
辺鄙な森で母親に護られて生きる半魔との関わりは必用ない。誰に言われなくとも理解出来る。
本当なら契約を破棄してやるべきなのだろうが、リーフには彼を従わせる意思はない。二度とリーフを視界に入れないようにと命じた以上、契約は継続した方が関わりは生まれないだろう。
リーフを害することは出来ず、リーフの視界に入れないのだから。
「朝になったら。ニウェウスさんに話して帰ろう……あ、お金。返さないと」
城に迎えられた際に与えられた金貨の残りは部屋の中に置かれている。使ってしまった分は返すつもりでいたので、ニウェウスに話を通して送金すればいいだろう。
それよりも問題はどこで夜明けを待てばいいかだった。賓客とはいえリーフの部屋はなく、レックスの部屋には戻れない。
誰かに部屋を用意してもらおうと歩き出したリーフの前に女が一人立ち塞がる。
長く波打つ桃色の髪。毎日意匠の違う、色彩だけは黒に統一されたドレスに身を包んだとても美しい魔女はリーフを見つけると嬉しそうに微笑んだ。花のように可憐な笑みに見つめられると、リーフの背筋は相変わらず凍ってしまう。
「あら。リーフさん。こんな遅くにどうしたの?」
「……帰りたくて」
優しく微笑むベアトリクスへ、リーフは簡潔に答えた。
「帰してあげましょうか。貴方の森へ」
理由の見えない答えに対し、ベアトリクスは赤く艶めく唇を動かして提案する。
崩されない微笑みは親切というより裏があるような何かを感じさせた。この笑みをリーフはよく知っている、そんな気がした。
「……僕は貴女にお返しするものがありません」
「いいえ。いいえ! 貴方にしか出来ないお返しがあるわ!」
頬を染めて強く言い放つ彼女が次に告げた言葉はリーフの予想から遥かに外れていた。
「ベア、ベス、トリス、トリクシー。何でもいいわ。私のこと、親しみを込めて呼んでほしいの」
城勤めのベアトリクスと会うことはもうないだろう。そんな相手への愛称なんてほとんどないようなものだ。
「ベアトリクスさんは何て呼ばれたいんですか?」
「……えっ……え……あっ……え……?」
いつも微笑みを湛える彼女の顔が驚きに崩れていく。おかしなことを聞いただろうかと首を傾げるリーフは言葉を足した。
「貴女の呼び名なんだから、貴女が呼ばれたいものがいいと思ったんですけど」
「…………ア……ん」
顔を伏せ、何か呟くベアトリクスだがリーフの耳にはよく聞こえなかった。もう一度言ってくれと頼むと、今度は聞こえた。
「ベアちゃんって呼んでほしいの……」
「ベアちゃん」
瞬間。瞬く間に帰っていた。
豪奢な城の回廊ではなく、長年過ごして見慣れた、レックスの部屋と比べたら狭くて質素なリーフの部屋に。
ふらふらと足を動かし、ベッドへ倒れ込む。木の板を組み布を敷き詰めただけの簡素で硬いベッドの寝心地は最高とは言えないが、全てに勝る安心感があった。
「……さよなら。レックス」
緊張の糸が切れたのか、リーフはすぐに寝入ってしまった。
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座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
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話しかけても「別に」。
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むしろ避けられている気さえある。
けれどある日、発情期トラブルで倒れた俺を助けてくれたのは、
その塩対応αだった。
しかも普段とは違い、必死な顔で言われる。
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距離は相変わらず近くない。
口数も少ない。
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発情期が近いと察すると、さりげなく世話を焼く。
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