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38 飲み会の参加※
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飲み会の日がやってきた。この日は何もかもがおかしかった。出勤すると、いつもならオフィスカジュアルが定番だった女性の社員のおしゃれ率が異様に高く、化粧も完璧にされていた。普段ならペタンコの歩きやすいパンプスが多いのに、今日はみんなヒールが高めだ。そしてトイレに行って、服装の身だしなみを整える人の多さったらなかった。当日でこれだが、私が誘われた次の日からぽつぽつと綺麗な格好をする女性社員が増えていた。
「…これが…ただの飲み会のノリな訳ないじゃん」
誰のかなんて口にしたら、駿平の目に止まろうと神経を尖らせている女性社員の耳に入って修羅場を迎えること間違いなしだ。
男性社員達も普段の女性社員とは違う雰囲気に戸惑っていたが、昼休みが終わって戻ってくると誰かに言われたのか納得した表情をしていた。
「やっぱり小笠原さんは安心するな」
なんて失礼な態度を取る男性社員を無視をした。おしゃれとまではいかないけど、だらしない格好をしていないいつも通りの私にいつもより男性社員が話しかけてくる。
その理由も知っている──今日は服装が乱れたり無神経な社員と接するのが嫌で、ピリピリしている女性社員に話しかけづらいから私に声をかけてけるのだ。
あれから、駿平とはちゃんと話してない。好きって気がついてから、どうしていいのかわからないからだ。
毎夜SNSのメッセージアプリでやり取りしたり、寝る前はおやすみの電話をするけどそれだけだ。
──好きと言ったら迷惑なのかな…それとも彼も私とは真剣交際なのだろうか
すごく聞きたいけど、聞いてしまったらこの関係が終わってしまう気がして、はっきりさせるのが怖い。
──私ってこんな弱々しかった…?
過去に付き合っていた元彼を思い出そうとしても、最後に付き合っていた男がずいぶん前だったのと、駿平との最近の出来事が印象が強烈過ぎて、当時付き合っていた時の思いなど忘れてしまった。
余計なことを聞いて嫌われたくない、捨てられたくないって思うなんて、この世界には何十億という人間がいるのにそんな事思うなんてありえないと思っていたのに、今の私がまさにそれだ。駿平に執着して、離れようとしない。
SNSのメッセージや電話で必死に重くない女を演じてるのに、離れている時はそわそわしてスマホを気にしてしまう。通知があれば読むし、返事に細心の注意をする。多分取引き先とのメールよりも気をつけているから、いずれ疲れてしまう気がする。
彼とのメッセージのやり取りを毎日見返していると知ったら、気持ちが悪いと思われるかな…と思いつつ、今日も気がついたらスマホに手が伸びる。
「好きなんだよ、本当に」
本当に駿平が好きだと自覚をしてからの、想いがヤバいくらいに溢れていた。
***************
「今日は、成澤の入社を祝して…カンパーイ!」
結局総勢40人近くとなった飲み会は、会社からほど近い居酒屋で貸切で行われた。普段なら仕切りはあるだろうが、貸切のために仕切りもなくなった広いフロアの座席は、企画部と推進部の2つの部署の社員で埋め尽くされた。
「おい、成澤いいのか?今日の主役がそんなに隅っこで」
「はい、私なんてまだまだ若輩者ですから、先輩達の後ろで満足してます」
今回のようなイベントの場合、普通主役は幹事兼司会を務める菊井くんの隣にいるのが筋なのに、なぜか駿平はフロアの隅の役職付きの人しか座らない席に座った。3人並んで座れて対面にも3人座れる6人テーブルの壁際の真ん中に座った彼は、そしてちゃっかりと壁際に座る私の横になった。
駿平は最初に一番端に座るつもりだったのだが、会社一のイケメンが座ると知った同じテーブルに座る係長や課長が、周りの人からの羨望の眼差しを受けて気分を良くして真ん中に座るように言ったのだ。普段ならそんな視線なんて受けないから、まだ歓迎会が始まって間もないのにあまり見たことのない笑顔を見せている。
「…本当に大丈夫なの?」
心配になって小声で聞けば、
「平気、ちょっとだけ挨拶回りに行くと思うけど…それ以外は動かないつもり」
と、返されてしまった。しかもなぜか彼は左足を私の足に寄せて、彼の膝が私の膝に当たっている。
「~~~っ!」
誰かに見られるかもしれないという思いと、大胆な駿平の行動に、かぁっと真っ赤になった私を見て、目敏い課長がツッコミを入れる。
「あれ?小笠原さんもう酔った?」
「っ…それはっ課長ですっ!」
「ははっ!相変わらず手厳しいっ」
条件反射ですぐさま返事をすると、周りにいた係長達が笑う。
──本当っ嫌な席になった
かと言って、駿平の隣が嫌なんじゃなくて、アルコールが入ったパワハラとも取れる発言をする可能性のある課長達の席に座った事自体、お店に入った時にここに座るように座席の指定をした幹事の意図を恨んだ。どうせ私が何言われても、言い返すからとこの席にしたんだと察した。そもそも他の課の課長も係長も参加する歓迎会って何なのと、心の中で悪態をつく。
「由紀ちゃん平気?」
また小声で話しかけられ、私は返事の代わりに膝を動かして、駿平の足に軽くぶつけた。
「…これが…ただの飲み会のノリな訳ないじゃん」
誰のかなんて口にしたら、駿平の目に止まろうと神経を尖らせている女性社員の耳に入って修羅場を迎えること間違いなしだ。
男性社員達も普段の女性社員とは違う雰囲気に戸惑っていたが、昼休みが終わって戻ってくると誰かに言われたのか納得した表情をしていた。
「やっぱり小笠原さんは安心するな」
なんて失礼な態度を取る男性社員を無視をした。おしゃれとまではいかないけど、だらしない格好をしていないいつも通りの私にいつもより男性社員が話しかけてくる。
その理由も知っている──今日は服装が乱れたり無神経な社員と接するのが嫌で、ピリピリしている女性社員に話しかけづらいから私に声をかけてけるのだ。
あれから、駿平とはちゃんと話してない。好きって気がついてから、どうしていいのかわからないからだ。
毎夜SNSのメッセージアプリでやり取りしたり、寝る前はおやすみの電話をするけどそれだけだ。
──好きと言ったら迷惑なのかな…それとも彼も私とは真剣交際なのだろうか
すごく聞きたいけど、聞いてしまったらこの関係が終わってしまう気がして、はっきりさせるのが怖い。
──私ってこんな弱々しかった…?
過去に付き合っていた元彼を思い出そうとしても、最後に付き合っていた男がずいぶん前だったのと、駿平との最近の出来事が印象が強烈過ぎて、当時付き合っていた時の思いなど忘れてしまった。
余計なことを聞いて嫌われたくない、捨てられたくないって思うなんて、この世界には何十億という人間がいるのにそんな事思うなんてありえないと思っていたのに、今の私がまさにそれだ。駿平に執着して、離れようとしない。
SNSのメッセージや電話で必死に重くない女を演じてるのに、離れている時はそわそわしてスマホを気にしてしまう。通知があれば読むし、返事に細心の注意をする。多分取引き先とのメールよりも気をつけているから、いずれ疲れてしまう気がする。
彼とのメッセージのやり取りを毎日見返していると知ったら、気持ちが悪いと思われるかな…と思いつつ、今日も気がついたらスマホに手が伸びる。
「好きなんだよ、本当に」
本当に駿平が好きだと自覚をしてからの、想いがヤバいくらいに溢れていた。
***************
「今日は、成澤の入社を祝して…カンパーイ!」
結局総勢40人近くとなった飲み会は、会社からほど近い居酒屋で貸切で行われた。普段なら仕切りはあるだろうが、貸切のために仕切りもなくなった広いフロアの座席は、企画部と推進部の2つの部署の社員で埋め尽くされた。
「おい、成澤いいのか?今日の主役がそんなに隅っこで」
「はい、私なんてまだまだ若輩者ですから、先輩達の後ろで満足してます」
今回のようなイベントの場合、普通主役は幹事兼司会を務める菊井くんの隣にいるのが筋なのに、なぜか駿平はフロアの隅の役職付きの人しか座らない席に座った。3人並んで座れて対面にも3人座れる6人テーブルの壁際の真ん中に座った彼は、そしてちゃっかりと壁際に座る私の横になった。
駿平は最初に一番端に座るつもりだったのだが、会社一のイケメンが座ると知った同じテーブルに座る係長や課長が、周りの人からの羨望の眼差しを受けて気分を良くして真ん中に座るように言ったのだ。普段ならそんな視線なんて受けないから、まだ歓迎会が始まって間もないのにあまり見たことのない笑顔を見せている。
「…本当に大丈夫なの?」
心配になって小声で聞けば、
「平気、ちょっとだけ挨拶回りに行くと思うけど…それ以外は動かないつもり」
と、返されてしまった。しかもなぜか彼は左足を私の足に寄せて、彼の膝が私の膝に当たっている。
「~~~っ!」
誰かに見られるかもしれないという思いと、大胆な駿平の行動に、かぁっと真っ赤になった私を見て、目敏い課長がツッコミを入れる。
「あれ?小笠原さんもう酔った?」
「っ…それはっ課長ですっ!」
「ははっ!相変わらず手厳しいっ」
条件反射ですぐさま返事をすると、周りにいた係長達が笑う。
──本当っ嫌な席になった
かと言って、駿平の隣が嫌なんじゃなくて、アルコールが入ったパワハラとも取れる発言をする可能性のある課長達の席に座った事自体、お店に入った時にここに座るように座席の指定をした幹事の意図を恨んだ。どうせ私が何言われても、言い返すからとこの席にしたんだと察した。そもそも他の課の課長も係長も参加する歓迎会って何なのと、心の中で悪態をつく。
「由紀ちゃん平気?」
また小声で話しかけられ、私は返事の代わりに膝を動かして、駿平の足に軽くぶつけた。
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