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初顔合わせ

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夏がはじまる予感がある雲ひとつない綺麗な青空
私アンナは朝から磨かれ絞られ着飾り、公爵家専用の馬車に父と乗り、騎士団長様のところへ向かっていた



軽く化粧をし、瞳と同じブルーの薔薇の刺繍をあしらったプリンセスラインの可愛らしいドレスにキラキラ輝く金髪の髪をドレスと同じブルーの髪飾りでうなじが見れるようまとめあげ、綺麗な曲線の首元を1粒のダイヤのネックレスで強調した


いくら婚約者に会うとはいえ社交界デビュー前のために成人のように着飾るのではなく、女の子とも女性ともとれる装いが必要になったのだが、いかんせん母と同じであまり外出しないアンナは化粧もコルセットもプリンセスラインのドレスも慣れなく困っていた

アンナ付きの侍女ユナは、社交界デビューのために色々な工房で短期間修行を積み腕を上げていたので、
ついに!お嬢様を完璧な女神!社交界の花にする!
と、鼻息荒く意気込み鬼の形相でアンナを仕上げていたので、当の本人は苦しいとか目がしょぼしょぼするとか口にできなかったのだ

完成したアンナを見たユナは涙を流し、父も母も可憐で美しく仕上がった娘に納得したのだった
アンナ自身は、軽く化粧をしただけでこんなに変わるのかと感動したのだった




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アンナ達が到着し、アスガート王国城の一面黄色いひまわりが咲いてある中庭に案内された

騎士団長様は王族ではないが、国王からの命なので城でのお目通しとなったのだ

大きめの白い丸テーブルに白いイスが4つ向かい合わせに設置されていて、テーブルの上には一輪の青の薔薇の花が挿してある透明の花瓶が置いてあり、給仕係がお茶会のセッティングをしていた

父と案内された席に着くと、執事長が現れ騎士団長様が遅れる事を知らせてくれた

アンナは父と執事長の話をぼぅっと聞きながら
目の前の青い薔薇の花を見た

…………私が1番好きな花…珍しい青い薔薇の花がある…すごい!王都ってすごい!


誰にも言ったことがなかったけど、青い薔薇の花はアンナが大好きな花だ。
小さい頃に青薔薇騎士という絵本を読んでからプロポーズに青い薔薇を差し出した騎士にドキドキして、ヒロインと同じ気分を味わいたいと青い花を探すようになったのだが、なかなか見つからず
密かに公爵家の庭園にも咲かせたかったが、そもそも青い花自体がなく庭師にも業者にもお願いしたが、公爵家でも難しいと遠回しに断られたのだった
ーーーー今の庭園も充分に美しいのだけれども。



うっとりと頬を染め青い薔薇の花を眺めていると、給仕係がじーっとアンナに見惚れ手が完全に止まっていた
その様を見ていた執事長がゴホンっと咳払いをすると、ハッとして給仕係は赤くなりながら手を動かした


給仕係と執事長のやりとりなど知らず目をうっとりと青い薔薇を眺めていたアンナは、青い薔薇の向こうから黒い短髪の男性が来るのに気が付きハッとした

ーーあの方が騎士団長様かしら?


黒い短髪に、黒い瞳はまるで人を殺してしまいそうなほど鋭い眼差しをアンナに向けており、遠く離れているのに身体が大きいことがはっきりとわかるほど筋肉がついており、感情を押し殺すように手はギュッと握られていて血管が浮き出ていた
濃紺の軍服には沢山の勲章バッジがついていて、歩くたびに金属の音がした




歩く速度を落とさないまま青い薔薇越しに近くまでくると、チラリと父を見て横に座る私に視線を戻すと鋭い眼差しのまま固く結んでいた口を開いた


「遅れてすまない、アスガート王国騎士団団長のヴィン・ハウンドだ」



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