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第2話 ルナちゃん、いい名前だね!

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「ちょっと待っててね。すぐ外してあげるから」

 奴隷商人の服といっしょに奪った鍵でルナの首輪を外してあげた。

「あ、ありがと、ござます……」

 ルナがカタコトの異世界言語でお礼を言いながら、ちょっぴり不安そうに俺を見上げてくる。

「ひょっとして、余計なお世話だったかな?」

「そ、そなことない、です。助けて、くれて、うれし、です……」

「それならよかったけど」

 この子……改めて見てみると、本当に酷い格好だ。
 髪もボサボサで、ロクに手入れがされてない。
 あっちこっち泥だらけだし、ボロボロの布を重ね合わせたチュニックしか身に着けてない。
 ていうか、靴すらはいてないってどうなのよ!

「裸足だと痛くない? それにあちこち擦りむいてるし!」

「さっき、馬車から落ちた、です。でも、これくらい、へいき……」

「そんなのダメだよ。ちょっと待っててね」

 俺は焼けたスーツの切れ端を何枚か破いてルナの傷口に巻いた。

「よし。簡単な応急処置だけど、これで少しはいいかな?」

 こういうときに清潔なガーゼがあればいいんだけど、異世界だしなぁ。

「どして、そこまで、してくれる、ます……?」

 ルナが不思議そうに俺の目をのぞきこんでくる。

「えっ? いや、だって、怪我してるし」

「そじゃ、なくて……。どして、助けて、くれる、ます?」

「どうしてって言われても。だって、君は助けてって叫んでたわけだし」

 ルナの目が大きく開かれた。

「でも、わたし、目、赤です。こわく、ないです?」

 ん? 不思議なことを言うなぁ。

「とってもキレイな瞳じゃないか。まるでルビーみたいだよ」

 ルナがポカンと口を開けてる。
 そんなヘンなこと言ったかな?

 確かにちょっとクサ過ぎたかもしれないけど、異世界転生でテンション上がりまくってるから許してほしい。

「そなこと、はじめて、言われた……」

 あっ、この反応はいけない。
 このままでは幼女を口説く危ないおじさん認定されてしまう!

「ご、ごめん! 無神経だった」

 無表情のまま首を横に振るルナ。
 悲しそうにも嫌そうにも見えないけど、なんだかいたたまれなくなってきた。

「と、とりあえず移動しようか」

「ちょと、まって」

 ルナが馬車に乗り込んで、ガサゴソと漁り始める。

「あれっ、忘れ物?」

「じぶんのない、です。けど、いるものある、です」

 ルナがテキパキと大袋の中に鍋とかの金物を放り込む。
 さらに長めの布を自分の両足に巻き付けてから、馬車からぴょんと降りた。

「っとと、危ない」

 着地がちょっと危なっかしかったので、あわてて支える。

「ありがと、ござます。こっち、です」

 ぺこっと頭を下げたあと、街道沿いの雑木林に足を踏み入れていくルナ。

「マキナ、彼女は何歳くらい?」

『ルナさんの推定年齢は四歳です。』

「そっか。異世界の子供ってたくましいんだなぁ」

 素直に感心してそんな言葉を漏らしてしまう。

 だけど、マキナの言葉には続きがあった。

『ただし、ルナさんの栄養状態は非常に悪いので、もしかしたらもっと年齢は上かもしれません。』

「えっ……?」

 確かに痩せてるし頬もこけて見えたけど、そんなに酷いのか?

 そう思って見ていると、ルナが振り返ってジッとこちらを見つめた。
 銀髪がさみしそうに揺れている。
 赤い眼差しは俺がついてくることを期待してるみたいだった。

「ご、ごめん。今いくよ」

 あわてて駆け寄ると、ルナは何故かホッとする。

「おまたせ。どこか行くあてがあるんだよね」

 ルナが小さく頷く。

「ひみつのおうち、です」
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