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8.離れていても
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「村井さんには和泉さんとふたりで先に帰ったとさっき連絡しておきました。これで心置きなくデートできますね」
はっ、はっと息が切れる。動悸がひどく、気持ち悪い汗が吹き出してきた。
間違いない。自分はこの男に支配されることに恐怖心を感じている。今すぐ逃げ出したいのに、Domの命令に背くことができない。
和泉の揺れる瞳は浜谷の視線を求めてしまう。
「これはやばいな……。その恐怖で歪んだ顔にそそられる……」
浜谷の目が細くなり、薄ら笑いを浮かべる。その笑みを見て、和泉の足がガクガクと震え出した。
もしかしたら浜谷はサディスティックなDomなのではないか。
Subを苛めて、怖がらせて、恐怖で支配することに悦びを覚えるタイプなのではないだろうか。
「うちに連れて帰ってもいいですか? うちにはSubの躾のための特別な地下室があるんですよ」
浜谷の冷たい微笑み。和泉はふるふると首を横に振る。あまりの恐怖で声が出なかった。
「楽しいですよ? 誰のSubなのかわかったらちゃんと出してあげますから安心してください」
まさか、浜谷のパートナーになると言わなければ地下室でのお仕置きが続くということなのだろうか。
浜谷の目を見ればわかる。お仕置きの内容はきっと生半可なものではない。
「拘束具も、オモチャもひととおり揃っていますから。和泉さん、僕とプレイ楽しみましょうね」
浜谷の手が和泉の頬をスーッと撫でる。その指先が触れただけで気持ちが悪いと思った。
「触るなっ!」
和泉は浜谷の手を振り払う。すると浜谷は「威勢がいいほうが好みです」と不気味に口角を上げた。
「大丈夫。安心してください。Subにとって最高の快楽ですよ」
「嫌だ!」
和泉が睨んだ瞬間、身体にズンと重苦しい波動のようなエネルギーを食らい、和泉はよろめく。浜谷が強いグレアを放ったのだ。
「無理ですよ。あなたはSubで、僕はDomです。その立場がひっくり返ることは今生ありません。あなたは僕のものになるしかないんですよ、和泉さん」
浜谷に顎を掴まれ、上を向かされる。Lookのコマンドはまだ有効だ。和泉は目を逸らせない。
「そんなに僕が怖いですか? 和泉さんはやっぱり可愛いなぁ。僕が思ったとおりの人です」
「うっ……!」
再び強いグレアを当てられた。浜谷は力の加減を知らないのか。Subの身体にはかなり堪える強さのグレアだ。
大量のグレアは身体に負担がかかる。グレアのせいでサブドロップしたら暗い闇の底に落ち、精神の闇から這い上がれなくなるかもしれない。
頭がズキズキと刺すように痛い。動悸で呼吸が荒くなる。
今にもうずくまりそうになるが、気を強くもっていなければ。今ここで気を失って倒れるわけにはいかない。
「ほら。早くセーフワードをねだってみてくださいよ。可愛くお願いしてくれたらセーフワードをあげます」
なんて意地の悪いDomなのだろう。こんな奴の思いどおりになんてなりたくない。でも、セーフワードをもらわないと、どんなプレイをされてもSubが逃れる術を失ってしまう。
どうすればいい?
プライドをかなぐり捨てて、こんな卑怯なことをする浜谷にセーフワードをねだるしかないのか。
「セーフワードなしでプレイしますか?」
浜谷がぐっと顔を近づけてきた。至近距離で見つめ合うことになり、今すぐ逃げ出したいのにDomのコマンドには逆らえない。
「……っ!」
浜谷の左手が和泉の腰を抱く。その手に身体を触れられただけで、嫌悪感が押し寄せてきた。
「困ってる顔が、また可愛いです……」
嫌だ。嫌だ。
逃げたい。
支配されたくない。
「Kiss」
浜谷からのコマンドが、和泉の心を撃ち砕く。
身体が震えているのは、恐怖なのか怒りなのか、もはや自分で自分の感情がわからない。
こんな奴にそんなことをしたくない。
『キスは好きな奴とだけするほうがいいな。俺なんかとしたくないだろ?』
いつかの佐原の言葉が急に頭をよぎる。
佐原は和泉を思い遣るためにそんなことを言ってキスをしなかった。コマンドを使えば和泉をいくらでも思い通りに動かせたのに、そんなことはしなかった。
戸惑う和泉の様子に気がついて、尚紘の思い出を失くさないようにと、佐原が残していったもの。
それをこんな奴に呆気なく奪われるのか。
「早く。聞こえませんでした? Kiss」
嫌で、嫌で、悔しくて涙が滲んでくるくらいにやりたくない。それでもDomの命令には決して逆らえない。
ここはイルミネーションの陰になっているだけで、少し離れたところには人もいる。
それでも誰も助けてはくれない。
浜谷に乱暴はされていない。パッと見た目は、ただのイルミネーションデートで気持ちが盛り上がって仲良くしている恋人同士にしか見えないのだろう。
心とは裏腹に、和泉の身体は吸い寄せられるように浜谷に近づいていく。
浜谷の唇はすぐ目の前にあって、和泉は浜谷と唇を重ね合わせた。
愛情のかけらもない、強制されただけのキス。
途端、浜谷が和泉の唇を舌で割って開き、中に舌を侵入させる。
「んんっ……!」
片手で腰を抱かれて、もう片方の手で頭を押さえつけられ、浜谷のねっとりとした舌に口内を犯されていく。
嫌だ。こんなことしたくないと思っているのに、浜谷のコマンドに従うしかない。
心の悲鳴が涙になって溢れてくる。それでも浜谷の許しが出るまではキスを強制される。
Subは何もできない。結局Domの言いなりだ。自分の身を守ることすらできない、弱い性だ。
はっ、はっと息が切れる。動悸がひどく、気持ち悪い汗が吹き出してきた。
間違いない。自分はこの男に支配されることに恐怖心を感じている。今すぐ逃げ出したいのに、Domの命令に背くことができない。
和泉の揺れる瞳は浜谷の視線を求めてしまう。
「これはやばいな……。その恐怖で歪んだ顔にそそられる……」
浜谷の目が細くなり、薄ら笑いを浮かべる。その笑みを見て、和泉の足がガクガクと震え出した。
もしかしたら浜谷はサディスティックなDomなのではないか。
Subを苛めて、怖がらせて、恐怖で支配することに悦びを覚えるタイプなのではないだろうか。
「うちに連れて帰ってもいいですか? うちにはSubの躾のための特別な地下室があるんですよ」
浜谷の冷たい微笑み。和泉はふるふると首を横に振る。あまりの恐怖で声が出なかった。
「楽しいですよ? 誰のSubなのかわかったらちゃんと出してあげますから安心してください」
まさか、浜谷のパートナーになると言わなければ地下室でのお仕置きが続くということなのだろうか。
浜谷の目を見ればわかる。お仕置きの内容はきっと生半可なものではない。
「拘束具も、オモチャもひととおり揃っていますから。和泉さん、僕とプレイ楽しみましょうね」
浜谷の手が和泉の頬をスーッと撫でる。その指先が触れただけで気持ちが悪いと思った。
「触るなっ!」
和泉は浜谷の手を振り払う。すると浜谷は「威勢がいいほうが好みです」と不気味に口角を上げた。
「大丈夫。安心してください。Subにとって最高の快楽ですよ」
「嫌だ!」
和泉が睨んだ瞬間、身体にズンと重苦しい波動のようなエネルギーを食らい、和泉はよろめく。浜谷が強いグレアを放ったのだ。
「無理ですよ。あなたはSubで、僕はDomです。その立場がひっくり返ることは今生ありません。あなたは僕のものになるしかないんですよ、和泉さん」
浜谷に顎を掴まれ、上を向かされる。Lookのコマンドはまだ有効だ。和泉は目を逸らせない。
「そんなに僕が怖いですか? 和泉さんはやっぱり可愛いなぁ。僕が思ったとおりの人です」
「うっ……!」
再び強いグレアを当てられた。浜谷は力の加減を知らないのか。Subの身体にはかなり堪える強さのグレアだ。
大量のグレアは身体に負担がかかる。グレアのせいでサブドロップしたら暗い闇の底に落ち、精神の闇から這い上がれなくなるかもしれない。
頭がズキズキと刺すように痛い。動悸で呼吸が荒くなる。
今にもうずくまりそうになるが、気を強くもっていなければ。今ここで気を失って倒れるわけにはいかない。
「ほら。早くセーフワードをねだってみてくださいよ。可愛くお願いしてくれたらセーフワードをあげます」
なんて意地の悪いDomなのだろう。こんな奴の思いどおりになんてなりたくない。でも、セーフワードをもらわないと、どんなプレイをされてもSubが逃れる術を失ってしまう。
どうすればいい?
プライドをかなぐり捨てて、こんな卑怯なことをする浜谷にセーフワードをねだるしかないのか。
「セーフワードなしでプレイしますか?」
浜谷がぐっと顔を近づけてきた。至近距離で見つめ合うことになり、今すぐ逃げ出したいのにDomのコマンドには逆らえない。
「……っ!」
浜谷の左手が和泉の腰を抱く。その手に身体を触れられただけで、嫌悪感が押し寄せてきた。
「困ってる顔が、また可愛いです……」
嫌だ。嫌だ。
逃げたい。
支配されたくない。
「Kiss」
浜谷からのコマンドが、和泉の心を撃ち砕く。
身体が震えているのは、恐怖なのか怒りなのか、もはや自分で自分の感情がわからない。
こんな奴にそんなことをしたくない。
『キスは好きな奴とだけするほうがいいな。俺なんかとしたくないだろ?』
いつかの佐原の言葉が急に頭をよぎる。
佐原は和泉を思い遣るためにそんなことを言ってキスをしなかった。コマンドを使えば和泉をいくらでも思い通りに動かせたのに、そんなことはしなかった。
戸惑う和泉の様子に気がついて、尚紘の思い出を失くさないようにと、佐原が残していったもの。
それをこんな奴に呆気なく奪われるのか。
「早く。聞こえませんでした? Kiss」
嫌で、嫌で、悔しくて涙が滲んでくるくらいにやりたくない。それでもDomの命令には決して逆らえない。
ここはイルミネーションの陰になっているだけで、少し離れたところには人もいる。
それでも誰も助けてはくれない。
浜谷に乱暴はされていない。パッと見た目は、ただのイルミネーションデートで気持ちが盛り上がって仲良くしている恋人同士にしか見えないのだろう。
心とは裏腹に、和泉の身体は吸い寄せられるように浜谷に近づいていく。
浜谷の唇はすぐ目の前にあって、和泉は浜谷と唇を重ね合わせた。
愛情のかけらもない、強制されただけのキス。
途端、浜谷が和泉の唇を舌で割って開き、中に舌を侵入させる。
「んんっ……!」
片手で腰を抱かれて、もう片方の手で頭を押さえつけられ、浜谷のねっとりとした舌に口内を犯されていく。
嫌だ。こんなことしたくないと思っているのに、浜谷のコマンドに従うしかない。
心の悲鳴が涙になって溢れてくる。それでも浜谷の許しが出るまではキスを強制される。
Subは何もできない。結局Domの言いなりだ。自分の身を守ることすらできない、弱い性だ。
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