婚約者変更で傲慢アルファの妃になりました

雨宮里玖

文字の大きさ
22 / 41

22.優しい手

しおりを挟む
「これから俺がハルにすることは全部なかったことにするんだ。俺も一切を忘れる。ハルに言われても知らないふりをするからね」
「え……っ?」

 ハルが混乱しているうちに、オルフェウスはハルの首に鉄の首輪を装着する。首の後ろのほうが幅が太くなっている、うなじを守るための首輪のようだ。

「うなじは噛まない。だからハルは怖くないよ」

 オルフェウスはハルを抱きしめてきた。それだけでハルを強い快感が襲う。オルフェウスからは甘い花のようないい匂いがする。
 このアルファの香りをハルはよく知っている。

「大丈夫だ、ハル。今すぐ俺が楽にしてやる」

 オルフェウスにされた行為は、とても気持ちよかった。さっきまでハルを苦しめていた熱が解放されて、身体が落ち着きを取り戻したのを感じる。

「ハル、少しは楽になったか?」

 オルフェウスはハルの髪を撫でた。金色の髪が、男らしくて長い指のあいだをすり抜けていく。
 ハルを慈しむような、この優しい手をハルは知っている。

 ふたり目が合った。
 美しい漆黒の双眼が、愛おしそうにハルを見つめている。ヒートで乱れに乱れたハルは、どうみても汚いのに、目の前にある形のいい唇は「可愛い」と吐息を漏らした。
 甘い花のようなフェロモンの匂い。優しい手。その仕草。男らしくも透き通った耳障りのいい声。
 同じ顔をしていても、オルフェウスの服を着ていようとも、ハルにはわかる。

 目の前にいるのはゼインだ。

 なぜゼインがオルフェウスを演じているのかはわからない。でも、間違いなくゼインだ。

 ハルはゼインの左腕に手を伸ばす。その袖をめくり上げてもそこに小さな傷痕はない。
 オルフェウスの左腕には、傷痕が残っているはずなのに。

「どうした? 人肌が恋しいのか?」
「はい。もっと、欲しい……」

 ゼインだったら、心置きなく身を預けられる。何をされたっていい。
 いっそこのまま番にしてほしい。

「まだ苦しいか。わかった。ひと晩中一緒にいるから安心しろ」

 ゼインはハルの額に口づけた。それからハルの身体を優しく両腕で包んでくれる。
 ゼインからはハルの大好きな甘い花の匂いがする。ゼインの服もいい匂いだが、ゼイン本人のフェロモンが一番心が落ち着く。

 ゼインの手がハルの身体を這う。脇腹を伝い、尻を撫で、その手は後孔に触れる。

「びしょ濡れだ。ここが苦しいんだな」
「あっ、あぁっ……!」

 ゼインの指で入り口を確かめられる。それだけの刺激でハルはたまらず腰を揺らして身悶える。

「そこに、挿れて……早く……」

 ハルの理性は吹き飛んだ。今すぐそこにアルファが欲しくてたまらない。

「アルファの……っ、欲しい……欲しいよっ」
「ダメだ。俺にはその資格はない。ハルを汚すことは許されないんだよ……」
「いやだ、いやだっ、我慢できないっ」

 ハルがイヤイヤしていたら、ハルの後孔にゼインの指が入ってきた。

「あぁっ……あっ、んうっ……ん……っ!」

 ゼインの蠢く指が、ハルの中を掻き回していく。感じやすい粘膜を擦られ、ハルはあられもない声をあげる。

 ゼインがハルをベッドに押し倒すような形で、ハルの身体を仰向けにする。ハルの足のあいだに身体をねじ込ませ、指を入れたまま、もう片方の手でハルの脚を大きく開かせる。
 恥ずかしい。ぐっしょり濡れた後孔も、先端から我慢汁を垂らす陰茎も、全部ゼインに丸見えだ。

「あぁぁっ……!」

 あるところを触られて、ハルは息が止まる。
 そこは触れられただけで身体がビクンと痙攣するほどの場所だ。そこを攻められるたびに、ハルに快感の波が迫ってくる。

「大丈夫。優しく刺激するだけだ」

 ゼインの指から微弱な電流が放たれハルを襲う。オメガの後孔の一番弱いところをゼインは弱い稲妻の魔法で刺激したのだ。

「あ、あ、あぁーーーっ!」

 ハルはたまらず声を上げる。下腹の奥から迫り上がってくる絶頂への快感に、身体をのけ反らせ、何度も身体を震わせた。

「可愛い……」
「あっ、あっ、いま触らな……いで……あぁっ!」

 ゼインに前を握られただけでいとも簡単に達してしまった。さっき出したばかりなのに、また白濁をこぼしてしまう。
 後ろも前も解放されていく。それが良すぎてたまらない。

「ぎゅーして、ぎゅってしてほしいっ……」

 ハルが震える手を伸ばすと、ゼインは身体を倒してハルを抱きしめてくれた。

「好き……好き……」

 ハルはうわごとのように言ってゼインの肩にしがみつく。
 ヒートでのぼせたところに強い快楽を与えられ、もう何も考えられない。

「俺も好きだよ、ハル」

 それは、ハルがずっと望んでいた言葉だ。
 ハルの目から自然と涙がこぼれる。

 本当にいやらしいと思うけれど、ずっと、ずっとゼインからの愛情が欲しかった。
 世間に不仲がバレない程度に、最低限の夫としての役割を果たしてくれればいい。そう言い聞かせてきたけど、そんなものは嘘だ。
 心からゼインに愛してほしかった。

「大丈夫。全部ハルの願うとおりになるよ」

 ゼインは優しくハルの腕をさすってくれる。

「ハルは俺に幸せとは何かを教えてくれた。だから、これは恩返しだ」

 ゼインがなんのことを言っているのか、ハルにはわからない。
 これはゼインの言葉なのだろうか。それともオルフェウスを演じての言葉なのだろうか。

「あと少しだけ、夫でいさせてくれ……」
「あっ、ん……はぁ、うぅ、ん……っ!」

 ゼインが再びハルの身体を弄び始めた。感じやすくなっている身体は、すぐに快感を拾ってしまう。達したばかりの後孔をゼインの指でかき乱され、内壁を刺激されるたび、ハルはビクッビクッと何度も痙攣する。

「ハル……ハル……っ!」

 ゼインがハルを求めてくる。ハルの身体を散々愛撫し、時々たまらないといった様子でハルの身体を抱きしめてくる。
 ゼインはハルの耳に歯を当ててきた。耳梁を甘噛みしてくるのだが、ハルはそれがどうにもまどろっこしい。焦らされているみたいに感じる。
 アルファに噛んでもらいたいのはそこじゃない。

「これ、外して……」

 ハルはゼインに首枷を外すように懇願する。

「早く、挿れて……ここ、咬んでほしい……」

 ハルはゼインの下半身に手を伸ばす。だがその手はゼインによって阻まれた。

「そんな可愛いことを言うな……。ハル、俺だって限界なんだ……」
「あぁっ……はっ……んん……あぅ……!」 

 ゼインはハルの耳たぶを甘噛みしながらハルの屹立を手のひらで包み込んだ。それから容赦なく上下に扱かれ、ハルはみっともなく甘い声で喘ぐ。

「あぁっ……気持ちい……っ! あっ、あぁぁっ……」

 ゼインの手によって、ハルは再び快楽の波へと落とされていった。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」

星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。 ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。 番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。 あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、 平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。 そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。 ――何でいまさら。オメガだった、なんて。 オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。 2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。 どうして、いまさら。 すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。 ハピエン確定です。(全10話) 2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?

いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。 「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」 「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」 冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。 あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。 ショックで熱をだし寝込むこと1週間。 目覚めると夫がなぜか豹変していて…!? 「君から話し掛けてくれないのか?」 「もう君が隣にいないのは考えられない」 無口不器用夫×優しい鈍感妻 すれ違いから始まる両片思いストーリー

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

夫には好きな相手がいるようです。愛されない僕は針と糸で未来を縫い直します。

伊織
BL
裕福な呉服屋の三男・桐生千尋(きりゅう ちひろ)は、行商人の家の次男・相馬誠一(そうま せいいち)と結婚した。 子どもの頃に憧れていた相手との結婚だったけれど、誠一はほとんど笑わず、冷たい態度ばかり。 ある日、千尋は誠一宛てに届いた女性からの恋文を見つけてしまう。 ――自分はただ、家からの援助目当てで選ばれただけなのか? 失望と涙の中で、千尋は気づく。 「誠一に頼らず、自分の力で生きてみたい」 針と糸を手に、幼い頃から得意だった裁縫を活かして、少しずつ自分の居場所を築き始める。 やがて町の人々に必要とされ、笑顔を取り戻していく千尋。 そんな千尋を見て、誠一の心もまた揺れ始めて――。 涙から始まる、すれ違い夫婦の再生と恋の物語。 ※本作は明治時代初期~中期をイメージしていますが、BL作品としての物語性を重視し、史実とは異なる設定や表現があります。 ※誤字脱字などお気づきの点があるかもしれませんが、温かい目で読んでいただければ嬉しいです。

【完結】マジで婚約破棄される5秒前〜婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ悪役令息は一体どうしろと?〜

明太子
BL
公爵令息ジェーン・アンテノールは初恋の人である婚約者のウィリアム王太子から冷遇されている。 その理由は彼が侯爵令息のリア・グラマシーと恋仲であるため。 ジェーンは婚約者の心が離れていることを寂しく思いながらも卒業パーティーに出席する。 しかし、その場で彼はひょんなことから自身がリアを主人公とした物語(BLゲーム)の悪役だと気付く。 そしてこの後すぐにウィリアムから婚約破棄されることも。 婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ一体どうしろと? シナリオから外れたジェーンの行動は登場人物たちに思わぬ影響を与えていくことに。 ※小説家になろうにも掲載しております。

処理中です...