偽りの姿(仮)

麻沙綺

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41話 思わぬ再会…冬哉side

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  夏休みに入り、毎日勉強漬けになっていた俺。
  勉強の息抜きにと幸矢の家が開いている道場に赴いた。
 
  一頻り暴れた後、外の空気を吸う為に道場からで出た。
  道場から出ても、外はカラット晴れているから、暑いのは変わらない。蒸し暑さがないだけでもましだと思う。
  次いでに喉を潤す為に水道まで足を向ける。
  
  水道まで辿り着くと蛇口を捻り、口を軽く濯いでから、水を飲む。
  そして、頭から水を被った。
「ウッヒャー冷たくて気持ちいい!」
  一人騒ぎながら、頭をフリフリし水気を振り払う。
  と目に入ってきたのは、小部屋のある場所。

  そういえば、幸矢は良く入れられてたよなぁ、何て思いながらその部屋に足を向けた。
  居るわけ無いよなぁなんて思っていたのだのだが、人影があった。
  俺は、ドキドキしながら其所に近付く。
  見れば、華奢な身体に少し延びた髪を一つに括っている女の子が其所に居た。
  えっ、まさか……。
「幸矢……。」
  恐る恐る声を掛ければ、此方を振り返る。
  あぁ、やっぱり俺の思い人が其所に居た。
  見慣れない髪型だけど、輪郭はそのままだ。
「幸矢……。お前、髪……。」
  と声をかけると。
「兄さん?」
  不思議そうに首を傾げている。
  元気そうな声が聞けて。
「今まで、何処に……。」
  と口に出していた。
  元気な姿を見れただけでも良しとしなければならないと思ったのだが、どうしても気になってしまい言葉にしていたのだ。
「あの日、冬哉兄さんが告白の後に家に戻ったんだよね。お祖父様達と話をしようとね。出も、帰ってきたら入れ替わるように偽幸矢が学校に行ったから、私の居場所がこの家には無いと思い知らされてね、母さんとある町で暮らしていたんだ。其所では、女として過ごす事が出来てたんだけどね……。こうやって、連れ戻されてしまったの。で、お祖父様と衝突してこの有り様って訳。」
  淡々と話す幸矢。
  簡単な説明だったが、幸矢自身の居場所が無くなったから消えていたのは、充分に分かった。
「それは、分かったが、其所って夏場はメチャクチャ暑くなるんじゃなかったか?」
  俺は、過去の事を思い出しながらそう告げたのだが。
「そうだよ、良く覚えてたね。風通り悪いんだよね、風穴あっても。しかも、南部屋だから上の通気孔からの直射日光が当たるしね。」
  幸矢は苦笑交じりで答える。
  俺は、心配してるのだぞ。
「早く爺さんに謝って出してもらえよ。」
「そうはいかないよ。お祖父様は私にもう一度男に馴れって、言うんだもん。私は、女なんだもの。今更男の格好に戻って学校に行けないよ。」
  幸矢の覚悟を決めた顔付き。
  今まで、言われるまま過ごしてきた幸矢。
  その反動が大きくなっているのだろう。
  だけど、幸矢の体力は持つのかよ。それにあの爺さん幸矢よりも頑固なんだぞ。幸矢の方が、先に参ってしまう。
「幸矢……。」
  そんな幸矢になんて声を掛けやれば良いのか分からず、名前しか呼べなかった。
「これは、細やかな私の反抗なの。今までの事も踏まえてのね。」
  決意表明するように言う幸矢。
「無理するなよ」
  俺は、それしか言う事ができなかった。
「うん、ありがとう。」
  幸矢が笑顔でそう言うから、安心したのだろう。

  だがそれが間違いだった。

  数日後、気になって小屋に近付いた。
  其所には、部屋に横たわる幸矢の姿があった。
  俺は、慌てて伯父さんに知らせて、救急車を呼ぶ。
  反省室から出てきた幸矢は、ぐったりしていて息も浅かった。
  救急搬送された幸矢。
  暫く入院となってしまった。

  何で、あの時直ぐにでも止めなかったのだろうと、後悔の日々が俺を襲った。

  
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