恋愛なんて、まだできない。

pigmaru

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2章

日が落ちて

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とぼとぼとナンパ男の後ろをついていく。


半歩前を歩くくせに、ちゃっかり雪乃の歩幅に合わせてくる。
その気遣いがなんだか今の雪乃には帰って逆効果だった。


「……どこまで行くんですか」

ムスッとした声色で尋ねれば「なんでそんなふてこいんー?」とあっけらかんとした顔で言われてしまって、なんだか拍子抜けしてしまった。


「もーすぐ、まあ、タクシー乗れば、だけど?」


どうやらタクシーを使う距離らしい。
手をあげればすぐにタクシーは捕まえられた。
ナンパ男は目的地をタクシー運転手に説明しているが雪乃はあまりぱっと来なかった。

なんてったってここは見知らぬ時なのだ。

しばらく走っていたが、雪乃はまだですか?と率直な疑問をぶつける。

「あー、まあもうすぐ。てかあれやで」

その言葉にぱっと顔をあげればびっくりするほどの高層マンション。
……この男、やっぱり怪しい…
若くしてこんなところに住めるのか……


それでも行くあてのない雪乃は仕方なく、半ば自暴自棄にナンパ男と共にマンションへと入る。


厳重そうなオートロックに、綺麗すぎるエントランス。そして静かすぎるエレベーター……


ナンパ男は28階のボタンを押す。
雪乃は何を話したらいいのか、話さないでついていくべきなのかもよくわからなかった。
もうここまで来てしまったらどうすることもできないのだ。


足音が響かないように廊下にひかれたカーペットに感心しつつナンパ男に「どうぞ」と微笑まれれば素直に玄関で靴を脱ぎ、部屋へと足を踏み入れた。


「……ひろぃ……」
驚きで吐息と共に囁けばナンパ男は「ひとりじゃ広すぎんねん。」と答えた。


とりあえずなんだか高そうなソファーに腰をかける。
何故か隣に座るナンパ男。
……これがおっさんなら張り倒してる。
心の中でそう唱えながらも雪乃はどうしていいか分からず固まってしまった。


「あんなとこで何しとったん?家出少女やろ?」

ナンパ男に笑い半分で質問され、雪乃はありえないほどムカついた。
こっちは死ぬ気で家出してたんだ、ばーか!
今すぐそう怒鳴りつけてやりたいくらいだ。
だがここを追い出されれば行く場所はない。
何度目かの状況説明を自分に言い聞かせ、雪乃は答える。


「ネカフェ泊まろうと思ってたけど、お金無くて……野宿するか悩んでて。」


それを聞いた浮気男はさっきまでの表情と変わって眉にシワを寄せた。


「……やめときや?このへん、へんなやつばっかふらついとるから、危ないで。」


私にとってはあんたも十分あぶねえ男だよ、という言葉は飲み込んで「ありがとうございます」と返した。


「てか、敬語じゃなくていいで?別に、その辺気にせんから。」


「……分かった。」

なんだか、変な感じだ。名前も知らないナンパ男にいきなりタメ口だなんて。やっぱり変な人だ。


「あ、名前は?」

ナンパ男が思い出したように聞いてくる。

「……雪乃…」

と小さく答えればナンパ男は「んー、じゃあゆきちゃん!」とにっこり笑った。


誰かにあだ名をつけられることなんてなかったなぁ……そんなことを漠然と考えていると、「俺はひなた。忘れんとってなぁ」と告げられる。


まるで女の子みたいな名前だ。ひーちゃんって友達いたな、なんて思い出していたが雪乃は先程から気になっていた質問を思い出し、投げかける。


「あの、ひなたさん、なんで私のことここに連れてきたの……?」


ナンパ男……否、ひなたはううーん、と頭を抱える。


「なんか、困ってそうやったし……普通に心配したから?」


いや、そこ疑問文なんだ。
雪乃はどうでもいいツッコミを頭の中で入れてしまう。すると今度はひなたの方から質問してきた。


「家出した経緯?みたいなのはなんやったん。てかどーやって生きていく気やったん?」


質問への答えを上手く組み立てて説明しようと雪乃は大きすぎる窓ガラスの向こうの景色を眺める。


もう既に窓の外の景色はネオンのあかりを溶け込ませた黒に染まっていた。
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